アイキャッチ画像:ポンチョ
レイングローブを使っていますか?

レインウエアが雨天時専用ではなく風除けや保温着として役立つように、レイングローブも、雨、風、寒さから手先を守ってくれる、登山の基本装備のひとつです。
でも、そう考えて装備しているハイカーは、かなり少数派でしょう。
春~秋の3シーズンの防寒グロープ。それは、フリース製の薄手保温グローブだと考える人が大多数。
私自身も、そうでした。
レイングローブは、“U.L.グローブ”なんです!

でも、もし雨に濡れ、風に吹かれ、気温が低いと、フリースグローブは手先がしびれるほどに冷えてしまうことがあります。
20年程前、まだ規制が強くなかった時代の秋の富士登山でのこと。私が装着していたフリースグローブは雨に濡れ、強い風にもやられ、手先はしびれるどころか痛くなり、レイングローブ装備の重要性を、まさに痛感しました。
また冬の伊豆大島・三原山では予期せぬ雲がやってきて、濃い霧と断続的な雨、そして強い風に包まれ、フリースグローブの保温力を失わせる冷気に、手先にもウィンドシェルやレインジャケット同様のカバーとなる、レイングローブの必要性を体感しました。
どちらも気温は5℃くらい。この、もう少し気温が下がれば雨は雪になるという状況は、濡れると冷えが厳しく、グローブには保温力よりも、防水力が必要なんです。
防水スタッフバッグをミトン代わりに使用してみて……

「あぁ、なんでレイングローブを装備しなかったのか……」と手先の冷えに耐えながら後悔したときに閃きました!それは、防水スタッフバッグをレイングローブ代わりにするアイデアです。
すぐに手先を包むと、ちょっと大きかったけれど、風雨から守ってくれ、想像以上に快適でした。その使用法を再現したのが、上画像。見た目はイマイチ。ですが、この防水スタッフバッグ簡易グローブは、レイングローブが使える装備であることを私に教えてくれました。
その役割を考えるとレイングローブは“エマージェンシーアイテム”であり、軽量コンパクトという特長からは“U.L.グローブ”といえます。
そして登山では雨だけでなく、寒さに備えて常に装備しておいて、間違いのない道具です!
ペラペラの極薄防水透湿素材で、重さ20g強!
さて、レイングローブ=防水透湿素材1枚でできたU.L.グローブの有用性を、ハイカーとは違い、ブランド側は認識してきているようです。事実、それを掛けるブランドは、増加傾向にあります。

今シーズンのラインナップされるなかで、「コレは!」と感じたのが、アクシーズクインの『W2P ライトシェル トリガーミトン(上画像右)』と『W2P ライトシェル グローブ(上画像左)』です。
価格はどちらも¥9,680とちょっと高価ですが、重量は両手でミトン21g、グローブ25g!と、超軽量です。他ブランドのモデルと比較して、これは最軽量クラスといえます。
しかも、完全防水なので、雨に降られても安心!

U.L.グローブで注意したいのが、軽さを重視したモデルは、完全防水ではなく、撥水性だけのグロープが案外多いことです。防水素材を採用していても、シーム処理がされていないグロープは、ウィンドシェル同様に弱い雨なら弾きますが、強い雨になると浸水する可能性が高いです。
そうなると、濡れによる手先の冷えが起こり得ます。
そこでシーム処理を確認するために、W2P ライトシェルシリーズを裏返してみると、上画像のように指先までしっかりとシームシーリングが施されていました。これなら、防水性は間違いありません。
ちなみにグローブのシーム処理は、高い技術が必要だそうです。多くのU.L.グローブがシーム処理を省略しているのは、高い技術を要するシーム処理による、価格高騰をを抑えるためだろうと、想像します。
薄い生地と立体的なパータンが、握りやすさを邪魔しない

ところでこのグローブの名に冠された「W2P」とは「Water and Wind Proof」の短縮表現だそう。つまり、防水&防風という意味で、使用される素材は、パーテックスシールド15デニール・2.5層です。
表地に15デニール生地を採用した2.5層の防水透湿素材は、握る、開くという動きを邪魔しない、ソフトさがあります。しかし、柔らかすぎず適度にハリのある生地感なので、シワに雨が溜まらず、弾いて流れていってくれます。
さらに指先はサイド面にマチが施され、上画像の黄色矢印部のように、指を違和感なく包むデザインになっているのもポイントです。素材の薄さも手伝って、握りやすさを実現しています。
でも、滑りどめはなし!という潔さがいい

改めて紹介すると、上画像の珍しい3本指タイプが、『W2P ライトシェル トリガーミトン』です。
装着時に人差し指が間違ってミトン側に入りがちではありますが、軽さと操作性のバランスを取った、この形状が最大の特長です。

親指と人差し指の先には、スマホ等のタッチパネル対応の当て布が施されています。
が、生地が薄いので、ミトン部でタッチパネルに触れても、ほぼほぼ動いてくれます。むしろ当て布部で操作したときのほうが、少しコツや慣れが必要です。
一方、アウトドア用グローブは、指先、手のひらに補強の滑り留めパッチが施されることが多いですが、コレは不採用。つまりクライミング等、グローブの手のひらに強度や摩擦力を求めるアクティビティでの使用は想定しておらず、ハイキングやランニング時に、風雨から手先を守ることを目的にしています。
加えて、滑り留めパッチが手の平に装備されていると、雨天時にはパッチが水分を吸い、気温が低いと冷えを感じるデメリットがあります。それを回避したということも考えられます。

ちなみに、鎖場の鎖を掴むと、薄い生地なので素手に近い感覚ですが、その反面、気温が低いと鎖の冷たさが手先に伝わってくることが気になる点、弱点といえます。
とはいえ、それも素手に装着した場合であり、インナーグローブを装着すれば、その冷えは解消されます。
5本指の方が、温かい!

上画像は、5本指の『W2P ライトシェル グローブ』です。3本指のミトンタイプよりも、指が多い分少しだけ重いです。が、素手に装着してみると、指の1本1本のスペースが狭い5本指のグローブタイプの方が、ミトンタイプよりも温かさを感じました。それはムレなのかもしれません。
冬山グローブでは、操作性のよさがグロープタイプ、保温性のよさがミトンタイプと特長づけられていますが、この完全防水のU.L.グローブについては、そうではないようです。

