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北・中央・南アルプスに富士山を踏破!520km歩ききって見えた登山の楽しさって?

2024年夏。とある夫婦が日本海から北アルプス、中央アルプス、南アルプス、そして日本最高峰の富士山を越えて、太平洋まで歩き通しました。

その距離はなんと520km!この壮絶な旅を歩き通した2人が伊豆でサンカクスタンドというアウトドアショップを営む、もじゃまる夫婦。「なんでこのルートを歩いたのか」  「リタイヤしたくならなかったの?」 「歩ききって何を考えた」など、大冒険を振り返ってもらいました。

目次

記事内の写真はすべて提供:もじゃまる夫婦

日本海から日本アルプスと富士山を越える旅

2024年の夏、伊豆でサンカクスタンドというアウトドアショップを営む2人が壮大なチャレンジを行いました。

日本海から太平洋へと歩く520kmのタフなルート

合計距離: 690.81 km
最高点の標高: 3730 m
最低点の標高: 0 m
累積標高(上り): 39199 m
累積標高(下り): -38042 m

ibukiによるログデータをもとに作成

スタート地点は日本海。新潟県糸魚川市にある親不知という場所から、栂海新道を通り、北アルプスに入っていきます。
その後、北アルプスの稜線を歩き、舗装路を歩いて中央アルプスへ向かい、南アルプスを歩き終えたのち最後に富士山へ。
富士山を登りきったあと下山し、太平洋にタッチをして終了という、約520kmにも及ぶルートでした。

そんな壮大なチャレンジを終えた2人に、520kmの旅の話を聞かせてもらいました。

2人のチャレンジを「みんなゴト」に

ーーーまず、今回のチャレンジを行った理由からお伺いできますか?

まるさん

2023年にアメリカのジョン・ミューア・トレイルを歩いたことが大きいです。
 
自分たちの挑戦というか、趣味の延長で行った新婚旅行の様子をYouTubeで配信したら、思っていた以上にたくさんの方が共感や憧れのような感情をいだいてくださったみたいで、いろんな反響や感想をもらったんです。それが「また挑戦したい」気持ちにつながっていきました。
 
なので、今回はいろんな方と実際に山で交流しながら歩けるような挑戦にしたいなというのがあり、必然的に場所は日本になったんです。

もじゃさん

現地に来れない人にも自分ごととして感じてほしかったので、IBUKIというGPSサービスを使って位置情報の共有を行いました。
例えば、自分の行ったことがある場所を通ったら「自分もあそこ行ってこうだったね」と思える、参加型の旅にしたかったんです。
 
自分たちの旅なんですけど、みんなゴトにもなってほしい。そういう旅にしたいねと話しながら決めていきました。

まるさん

あとは、今回のルートがおそらく日本の山岳シーンの中でもトップレベルで険しいかなと思っていて、30代になってからの1つ目の挑戦なんです。
 
お客さんや出会う人など、本当にいろんな人から「できる時にできることにドンドンチャレンジしたほうがいいよ」って言葉をいただきます。
なので、体力があっていろんなことにチャレンジできる時に、この過酷なルートにしたいと思いました。

ぶっちゃけ520km歩いてみてどうだった?

ゴールした瞬間は「もう終わったな」という感覚があったと話すもじゃさん。30代初めてのチャレンジを終えた2人の率直な感想をそれぞれ聞いてみました。

山を楽しむ視野がひろがった

もじゃさん

歩く前は距離も長いし、達成できるかもわからなかったので今までにないくらい緊張したり、不安だったりも大きかったんですけど、終わってみると「あれ?もう終わっちゃった」みたいな寂しさがありました。
ゴールした瞬間にトレラン大会の当選連絡がきたので、次のチャレンジもう来ちゃったよっていう嬉しさもありました。笑
 
でも、寂しさを感じたのはそれだけチャレンジが楽しかったんだなと思います。

ーーー歩く前と歩いた後で、自分の中で変化はありましたか?

もじゃさん

いろんな視野を持てるようになりました。
 
例えば、人との出会いから登山を見てみるっていうのは、今まで自分の中にはなかったので、成長というか、変わった点かなと。

1日終える事に、自信や新たな挑戦への気持ちが生まれた

まるさん

歩き終えた時に思ったのは、まだ歩けそうだなということでした。
くたくたになって、ボロ雑巾のようになってゴールすると思っていたんですけど、ゴールした時に「おっ!意外とまだ歩けそうだな」って思って、それが嬉しかったですね。
 
歩いているうちにこんなに体力がついたんだなとか、自分で立てた計画が実行できた喜びとか、自信になりました。

ーーー毎日の計画を達成していくうちに、着実に登山者として実力と自信を積み重ねていたんですね。

まるさん

登山に対して、自信がなかったというわけではないのですが、胸を張ってこんなことができる!っていうものが1つできたなと思います。
 
何に対してかわからないんですけど、やっぱり不安な気持ちが漠然とあったんです。でも、1日終えるごとにだんだんと自信になっていったり、最終的には1つの大きなものを乗り越えるために挑戦したいなっていう気持ちが生まれてきたりとか、そういうのが大きかったですね。

この旅で感じたつらかったことや、気持ちの変化はあった?

24日間も歩いていると楽しいこともあれば、もちろんつらかったり、しんどかったりすることもあるはず。そんな道中の心境を聞いてみました。

経験したことの無い疲労度だった

ーーー歩いてみて、日々の疲れは想定内でしたか?

もじゃさん

去年歩いたジョン・ミューア・トレイルとは、比べものにならない疲労感でした。

ーーー事前に想定していたものを100%とすると、どれくらいの疲労感でしたか?

もじゃさん

毎日120%くらいですかね。笑 で、日によって150%くらいの日があります。

まるさん

そうですね。MAX150%くらいで、200%まではいかない。でも、経験したことのない疲労感でした。
南アルプスの後半以外は100%を下回ることはなかったよね。笑

もじゃさん

南アルプスの後半になって、ようやく身体が高度感とか歩くことに慣れてきた感じがしました。

ーーーかなり長いウォーミングアップになってしまいましたね。笑

もじゃさん

ゴールした後に気づいたんですけど「こんなところに筋肉あったっけ?」みたいな筋肉がありました。笑 それを見て、それなりに身体に蓄積したんだなと。

よぎらなかった「リタイア」という言葉

ーーー常に120%の疲労感で2週間以上歩いていて、リタイアなどは浮かばなかったんですか?

もじゃさん

それは一切なかったですね。やっぱり、お店もスタッフがやってくれていたりと、自分たちはこんな素敵なことをするために山に行かしてもらっていると思っていたので。
 
ただ、まるちゃんが体調悪いときは、一旦2人で降りて体調回復してから再開するっていうことは考えました。
なので、しんどいからやめようとか、完全な撤退は1度もありませんでした。

まるさん

2日目は体調が悪くて、ごはんが食べられなかった時はありました。でも、完全に山行をやめようっていうよりは、もじゃくんにはそのまま進んでもらって、私は体調が回復しなければ1回降りて、回復してから合流できるところに向かうっていう考えでしたね。
どれだけ登るのがきつくても、やめたいまでは思うことはなかったです。

もじゃさん

まぁ、総じて楽しかったもんね。
登山する人って、ちょっとつらい環境が好きな人も多いじゃないですか?なので、それを乗り越えてやるっていう感覚が常にあったかなと。

経験値がついたからこそのしんどさも

もじゃさん

補給したての状態での仙丈ヶ岳への登り返しとか、コンクリート区間もしんどかったですね。いろんな道を歩いて、いろんな疲れがありました。
 
あと、心折れそうだったのがラストの富士山です。ゼロから登るので、今回の旅の中で1日での上りが最大だったんです。3,000mちょっとくらい上がらないといけないという。

まるさん

そうだね。蓄積している疲れもあって、荷物は軽くなっているけど、登る前はけっこうドキドキでした。

ーーーたくさんの上りを経験したからこそ、今までよりも「3,000m」登るということが具体的にイメージできるようになっていたのかもしれませんね。

まるさん

そうそう。300mアップでもしんどかったのに、3,000mアップってどういうこと?みたいな。

難所も確実に乗り越えて、日々の自信につなげていく

疲労度とは別に、悪天候も重なり不帰ノ嶮(かえらずのけん)や八峰キレット、大キレット、ジャンダルムなど数々の難所を通過した今回の旅。そういった困難を越えることで、どんな変化があったのでしょうか?

まるさん

これまでもしっかり登山をしてきたので、今のスキルで乗り切れるとは思っていましたが、悪天候でのキレット越えなど、緊張感がある場所を通過したことで、改めて自信につながりました。

もじゃさん

船窪や烏帽子の間とかは、崩壊がすごくて。単純に道が崩れる危険だったりで、緊張感がありました。
ただ、改めて道を整備してくれていることへの感謝も同時に感じる場所でしたね

くり替えす「安心」と「緊張」で気持ちがグチャグチャに

ーーー全行程を通して、一番難しかったところはどこでした?

もじゃさん

ジャンダルムから上高地に降りる時に使った、天狗沢のバリエーションルートの下りです。
 
数年前にあった地震の影響でガレのたまり場みたいになっていて、足の置き場や置き方を一歩でも間違えると崩れてしまいそうでした。キレットとは違う緊張感がありましたね。
 
ジャンダルムを超えた後で精神的な疲労感もあったし、北アルプスを10日間くらい歩いて足が鉛みたいになっている状態でした。
ゴールも下に見えかかっているという安心感と緊張感で、あそこらへんは気持ちがぐちゃぐちゃでしたね

確実にクリアしてくことで自信に

ーーーまるさんは、けして身体が大きい方じゃないので、動画では少し岩場で苦労しているようにも見えましたが。

まるさん

たしかに、身長的に届きにくいところはありました。でも、怖さとかはアドレナリンで消えていたのもありますし、苦手意識はないのでこれまでの経験を自信にして着実に進みました。
クリアしたらまたひとつ自信になると思いながら、登っていましたね。

もじゃさん

2人とも根はビビリなんですよ。なので、自分たちが本当に無理だ!ってなったら突っ込まずに絶対に引くっていうのは、登山者向きだなって勝手に客観視してます。

いつか「もう歩き尽くした」って言えると、かっこいい!

ーーー24日間も山にいたら、さすがに飽きませんでしたか?

もじゃさん

これが不思議なもんで、行きたいところが増えました。笑
僕も「さすがにもう北アルプスいいわって思うかな」って思ってたんですよ。でも、歩いてみたら、そこから見える反対の尾根とかが気になりだしちゃって。

まるさん

今回みたいなことをすぐにしたいとは思わないですけど、逆にゆっくりあの道を通りたいなとか、あの人にあの景色見せたいな、みたいなことはすごく思いました。
なので、意外と飽きなかったというのが正直な感想です。

もじゃさん

むしろ、登りたい場所がたくさん増えたので、一生かけても歩ききれないんじゃないか?という不安がでました。笑

まるさん

天候がいろいろだったのも、飽きない要因だったのかもしれません。
ずっと天気が良くて景色を見渡せていたら、それはそれで飽きてしまっていたかも。見えなかったものが見えたからこそ感動するじゃないですか
 
前半、悪天候の中歩いていたからこそ、後半ずっと天気が良かった景色に飽きなかったのかもしれませんね。

ーーー雨も晴れもいろんな山の景色や表情を見ることができたっていう捉え方は素敵ですね。

もじゃさん

それはあるかもね。山の中ではあったけど、ずっと同じ環境じゃなかったもんね。
 
いつか「歩き尽くして飽きた」って思えることがあるとしたら、それはそれでかっこいいのかもって今話していて感じました。でも、今は行けていないところのほうが多いので、そこに行きたいですね。

登るだけじゃない、山の楽しさを思い出した

ーーー景色以外での思い出はどんなものがありますか?

もじゃさん

これまでテント泊が99.9%だったので、小屋での交流が一番の思い出です。今回の旅のテーマのひとつだったので。
 
小屋ってこんなにみんなフレンドリーに話かけてくれて、年齢とか何を知っているとか関係なく、みんなで楽しくできるっていう環境があることを知れたっていうことが、自分の中では山登りがより深くなって、まだまだ遊べるなっていう気づきになりました。
 
バックパッカーの時のゲストハウスでの交流がフラッシュバックした感覚で、楽しかったです。

まるさん

私も交流っていうのが新鮮だったので、鮮明に残っている部分です。
やっぱり今回は、応援してくれている人や小屋の人とか初めての人たちとの出会いもあったりして。年配の人と話しをした時も、お年を召していてもまだまだ元気に山を歩いている姿を見てこっちも感動しちゃったり、純粋に私たちがやっていることに興味を持ってくれたのも嬉しかったです。

ーーーいろんな場所やコンディションに出会うだけではなく、いろんな人に出会うっていうことも「山の思い出」を深めるのに大切なんだなと、今回お話を聞いて印象深かったです。

常に満たされていた幸せな520km

24日間、520kmという長くてタフな山行。週末に楽しむ登山と比べると長く感じてしまいますが、1日1日の環境の変化や出会い、そして2人で歩いた景色を楽しんだことで充実した時間だったようです。そして、今までの自分たちよりも少し広く山を捉えることができるようになったと話してくれました。

520kmという挑戦は誰でもできるものではありませんが、自分にとってのチャレンジや目的を持って山を歩くことで、もっと山を楽しむことができるようになるかもしれませんね

もじゃさん

2人で一緒に歩ききれて、改めて結婚してよかったなと。こんなこと一緒にやってくれる人って、なかなかいないと思うんですよ。
 
ゴールした時に、まるちゃんがしんどうとかきつかったっていうネガで終わるんじゃなくて笑顔やったんです。道中も「次どういうことしようね」っていう話が多かったので、結婚してよかったなってすげぇ思いました。

今回の旅の振返り

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