ウェアを回収し、原料に再生、再びウェアに
山、そしてアウトドアでのアクティビティ好きにとっては、暮らしの基本となっている、地球環境や人々の健康を守るための日々の取り組み。
その基礎は、ゴミを減らすために長く使うこと。ゴミを無駄にしないために、リサイクルにだすこと。リサイクルされた素材を使用した道具や服を購入すること。
そうした現代人の生活や経済活動の課題に向き合い、2017年からメーカーとして解決のための一歩を踏み出しているのが、『BRING(ブリング)』というアウトドアウェアを手掛けるブランドです。
これまでのリサイクルは、ペットボトルを回収してポリエステル糸に再生し、ウェア等に利用する方法でした。
しかし、ウェアを回収・リサイクルして、再度ウェアにすることまでは、できていなかったのです。
BRINGの工場では、ポリステル素材のウェアを再生ポリエステル樹脂にし、再びウェアに。それがBRINGの取り組みの新しさです。
また回収したポリエステル以外の素材も、協力企業と連携してリサイクルしているそう。
回収は自社ブランドのウェアだけでなく、パタゴニアやザ・ノース・フェイス、アンドワンダー、スノーピーク等のアウトドアブランドをはじめ、アパレルブランドを含めて2022年8月31日時点で、188ブランド、3409地点。
回収地点にはボックス(上の画像)を設置。また、BRINGのオンラインストアでウェアを購入した際に同送されるウェアの回収用封筒(下の画像)の利用でも回収してくれます。
ちなみに、ポリエステル100%のTシャツをリサイクルすると、LサイズがMサイズになるくらいの割合で、再生できるそう!
ほぼ無駄のないリサイクル技術に驚くとともに、不要なウェアをそのまま廃棄してしまうことは、資源の廃棄だと再認識。BRINGの回収箱を探して利用することは、必至です。
再生した素材からできたウェアですが、機能に問題ありません!
さて、リサイクル素材でできたウェアと聞くと、どれくらいのレベルの機能性なのかが気になるかもしれません。
ですが現在、すでに多くのアウトドアブランドが、リサイクル素材を使ったウェアを発売しています。
さらにいえば、どれだけリサイクル素材と使ってできたウェアなのか、その使用率を競っているような状況にもなっています。
つまり、新品の素材もリサイクル素材も機能性に大きな違いはなく、むしろ環境負荷の低いリサイクル素材の方が、ウェアづくりにおいて求められている素材といえるのです。
BRINGは自社工場で再生したポリエステル樹脂を、他のアウトドアブランドに提供するだけでなく、自社オリジナルの素材を開発。それを使って独自にデザインしたアウトドアウェアを手掛けています。
次に、BRINGのアウトドアウェアを紹介していきましょう!
コットンのような柔らかさとポリエステルの機能性を兼備
BRING Tシャツベーシック ドライコットニー ¥4,730
DRYCOTTONYという、BRING独自素材を使った、コットンライクな柔らかな肌触りが特長のポリエステル100%のTシャツ。
他のアウトドアブランドの速乾高機能Tシャツと比べると厚みがあって、本当にコットン的。でも、乾きが速く、少しゆったりめにデザインされた身頃はスポーティ過ぎず、山着から普段着まで、そして一年中着たくなるものです。
とても着心地がよいTシャツなのですが、少し気になるのが、肩の縫い目です。
アタりを和らげる当て布がされていて、バックパックのショルダーベルトが当たってスレないように工夫されているのですが、それがやや厚みがあって、5時間程バックパックを背負って歩いた時、最後の方で違和感がありました。
ほんの少しの違和感なのですが、もう少し縫い目の位置をずらすか、ラグランスリーブのように肩上部に縫い目がないようなデザインになると、最高の一枚になりそうです。
ウールと再生ポリエステル混紡のTシャツは、ドライな風合い
ワンダーウェア ミッドTシャツ ¥9,900
メリノウール70%、BRING Materialの再生ポリエステル30%を混紡。ウールが持つ防臭・調湿機能はそのままに、ポリエステルの強度がプラスされています。
やや厚みのある素材は、ざっくりとした着心地。気温の高い季節はドライさを感じ、気温が低くなってくると温もりに包まれます。
今回、8月下旬のまだかなり暑い山から、10月の冷え込んできた山まで着て歩いてみました。ゆったりめのサイズなのにモタつくところがなく、体への馴染みがよくて動きやすいTシャツです。絶妙な厚みも、ウールの特性を引き出すのに機能しているように感じます。
他ブランドのウール製アームウォーマーと組み合わせれば、真冬以外、幅広い季節にも対応可能でしょう。
ロングスリーブもラインナップされていて気になるところですが、暑がりで、ファストハイクのような運動量の高い登山をするなら、ワンダーウェア ミッドTシャツ+アームウォーマーの方が温度調節がしやすく、ハイクの定番着にしたくなりました!
「WUNDERWEAR」という驚きの新機軸ウェア
BRINGには、「WUNDERWEAR(ワンダーウェア)」と名前が付けられたアンダーウェアがラインナップされています。先に紹介したワンダーウェア ミッドTシャツも、そのウェア群のひとつ。
WUNDERWEARは、英語の“WONDER”と“UNDERWEAR”を組み合わせた造語で、「驚きの」とか「不思議な」アンダーウェアを意味しているのでしょう。
驚き、不思議の理由のひとつは、オールジェンダーです。BRINGのウェアは、そのほとんどがオールジェンダー=男女兼用。すべての性別に向けてデザインされいますが、ワンダーウェアも同様です。
さらにホールガーメントニットと呼ぶ、無縫製の編み地を採用。ホールガーメントは、本来はトップスであれば身頃や袖まですべてを無縫製で編むのですが、ワンダーウェアは、WUNDER STRETCH seamlessと呼ぶ独自の編み地を採用しています。
身頃等の着心地に大きく影響する部分のみを無縫製。強度を求める部分等を最小限の縫い合わせで完成させています。
しかも凸凹とした編み地は伸縮性が非常に高く、着る人の体型にジャストフィットします。その昔、「のびのび手袋」という子供用の手袋がありましたが、それ同様に伸びて、フィットしてくれます。
まさに驚きのウェアです!
前後リバーシブルで着用可能なアンダーウェア
ワンダーウェア50/50 ¥3,740
今回、BRINGを紹介したいと思ったのは、このアンダーウェアを知ったからです。
ウエストのバンド部以外は、無縫製のホールガーメントニット地を採用。オールジェンダー対応。
そしてなんと、前後関係なく着用可能!無縫製ニットなので、リバーシブルでも着用可能。洗濯のできない山では、前後、裏返して4日間着られるという、古い山ヤの考えを実践可能なアンダーウェアです。
素材は高品質なエクストラファインメリノウールと再生ポリエステルの混紡。紹介しているモデルは混紡率がメリノウール50%、再生ポリエステル50%で、速乾性を重視したもの。
同じモデルでメリノウール70%、再生ポリエステル30%混紡モデルも用意され、価格は¥4,180。登山ならこちらでもOKだそう。
オールジェンダー対応のこのアンダーウェア。2サイズ展開で、Sがウエスト58.0~86.0cm、Mが74.0~108.0cm。
ウエスト83cmの私は、ヒップが100cmあるけれどMサイズで大丈夫かな?と不安でしたが、問題なし。本当に生地がよく伸びます。
でもソフトな着用感の本体に比べて、やや硬めのバンド部が、長時間穿いていると、少し気になりました。またランニング時には、私が汗かきだからということもありますが、バンド部に汗がたまります。ウエスト90cm以上の人は、果たして快適なのか?はなかなか疑問ですが、ウエストが細い人は問題なさそう。
しかしバンド部だけ、もう少し幅が細く、ソフトなものに改善されるともっと調子がいいのになぁと思っていたら、この秋、ウエストバンド部まで無縫製のモデルが登場しました!
ウエストバンドまで無縫製のストレスフリーモデル
ワンダーウェア“ワン” 50/50:¥4,620 70/30:¥4,980
上の画像で見ると、通常のワンダーウェアとの違いがわかりにくいですが……
このワンダーウェア“ワン”は、バンド部と本体生地を縫い合わせることなく、無縫製で編まれています。
通常のワンダーウェアに比べると、ウエスト部のフィット感はゆったり。締め付け感や汗だまりも、かなり解消されています。
バンドの食い込みが心配な人、ゆったりめが好みな人は、この“ワン”がよさそうです。
動的保温着に最適のフーディは、BRINGを象徴するウェア!
ワンダーウェア フーディ ¥15,400
2022年秋の新作で、もっとも注目したいのがこのフーディです。
肩部分に縫い目に見える箇所がありますが、それはデザインで、フード、身頃、袖までのすべてを無縫製で編まれた、ホールガーメントニット地でできています。
「ジャストフィットでアンダーウェア、ルーズフィットでタウンユースに」とカタログにはありますが、Tシャツやロングスリーブシャツをアンダーに着て、このワンダーウェア フーディをミッドレイヤーとして着用すれば、行動保温着として最適だと感じました。
フードを被るとバラクラバとなり、脱げば首元を温めるネックウォーマーに。WUNDER STRETCH seamlessで編まれた生地は、伸縮性が非常に高く、動きをまったく邪魔しません。
アンダーウェアとしては厚手、ミッドレイヤーとしては薄手。素材はメリノウール70%、再生ポリエステル30%の混紡。
ワンダーウェアの特長である、表面が凹凸に編まれているので、保温力が高いのに、通気性があってムレにくいのです。ウールの調温機能のよさを活かし、さらに向上させている印象です。
袖はフーディらしく、サムホールを採用していて、手先をしっかり保温してくれます。
こうしたつくりはミッドレイヤー的ですが、しかし厳冬期の高所登山にはミッドレイヤーとしては、ちょっと保温性が足りない……が、そのときはアンダーレイヤーとして使い、他のミッドレイヤーを重ねられる、マルチさも備えています。
最近、注目を集めている行動保温着は、アクティブインサレーションとも呼ばれるように、中綿を封入したウェアが中心になっています。それらは確かに暖かく、ムレにくいのですが、ナイロン生地のシャリシャリした冷たい肌触りは、決して快適なものではありません。
その点でこのワンダーウェア フーディは、ウール混紡地をやわらかく編み上げ、ふんわりとした着心地が特長です。
デザインも街着として違和感のないものなので、冬はセーター代わり毎日着てしまうかも……ウールは防臭効果も高いですし!
機能、そしてデザイン性も高い、再生ウェアの時代に!
アウトドアの雰囲気があるのだけれども、それが前面には出ていない。でもアウトドアで着れば、しっかり機能する。BRINGのウェアは、Tシャツ1枚を見ても、肩にチカラが入っていないのが、よさだと感じます。
BRINGのウェアを開発するディレクターさんは、UL系のハイカーであり、自転車好き。だからそのウェアは、クライミングのようなストイックな縦の移動よりも、ハイキングのような横移動の旅を意識しているのでは。
機能性はしっかりこだわりつつ、心地よさを大事にして、普段着感覚で纏って、そのまま山へ向かえるウェアです。
冒険という非日常のためのウェアではなく、日常にもアウトドアの楽しさをプラスするウェア。
しかも、BRINGの場合は、再生素材でできていて、大好きな自然に配慮できるもの。
気負わず山を旅したい人に、ぜひ着てみてほしいウェアです。
それでは皆さん、よい山旅を!
BRING DRYCOTTONY Long sleeve T-shirt
素材 | ポリエステル 100%(BRING Material 100% ※Heather Grayのみ50%) |
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サイズ | XS~3XL |
BRING WUNDERWEAR Mid T-shirt Long sleeve
素材 | ウール70%、ポリエステル30%(BRING Material™ 100%) |
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サイズ | XS~2XL |
BRING WUNDERWEAR 50/50
素材 | ウール50%、リサイクル・ポリエステル50% |
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サイズ | S、M |