目次
- 知ってるつもりになっていない!?アルコールストーブって、一体なに?
- 人気の理由は、なんと「面倒くささ」
- アルコールストーブを使うために用意しておくモノ
- アルコールストーブの使い方
- お待たせしました!いよいよ点火・検証です!!
- ①まずは、定番のトランギア/ミニトランギアから!!
- ②スローの真髄、エスビット/985ml クックセット アルコールバーナー付
- ③軽さと高火力が魅力のエバニュー/チタンポット500ストーブセットRED
- ④UL道具の真髄、T's Stove/ NEW WW サイドB combo
- ⑤車で踏んでも壊れない!?バーゴ/チタニウム デカゴンストーブ
- ⑥カップにも収納できる軽量ゴトク、エバニュー/チタンゴトクTriveTi
- ⑦見た目がクールな、ベルモント/チタントライアングルストーブ
- ⑧ペラペラのシート状に驚く、ミュニーク/X-MESH STOVE (large)
- アルコールストーブでスローな山時間を楽しんで!
知ってるつもりになっていない!?アルコールストーブって、一体なに?

ストーブには、他にもガソリンや灯油を燃料にする「ガソリンストーブ」「マルチフューエルストーブ」や、エスビットに代表される「固形燃料ストーブ」等があります。

無水エタノールは消毒薬としても使用されるアルコールなので、薬局でも入手できます。世界の辺境地を旅するバックパッカーが、ガス缶よりも燃料を入手しやすいからと、古くから愛用してきました。
ULハイカーが注目し、最近はスローハイカーに人気

軽さを求めるウルトラライト=ULハイカーが、”長期間のハイクになるほど、ガスストーブよりも軽量化できること”に注目。
同時に、アウトドア道具の自作好き=MYOGが流行り、多くの人がアルコールストーブ自作に挑戦しました。
近年ではチタン製のモデルやアルミ製の飲料缶をベースに自作したり、ガレージブランドがさまざまな工夫を凝らしたアルコールストーブを製作、販売しています。

しかし、昨今のコロナ禍のアウトドアブームによって、スローなキャンプ・登山を楽しみたい人達には、「これまであまり見かけたことのない新しい道具」として人気を集めているようです。
人気の理由は、なんと「面倒くささ」

①火力が強くないので、湯沸かしに時間が掛かる。
②自動点火装置は付いていないので、マッチやライターで着火。
③昼間の明るい場所では見えにくい炎が、ちょっと危険。
④風の影響を受けやすく、風防で囲む必要あり。
⑤消火は付属のフタを被せるか、なければ燃やし切る。

面倒のなかに、手間をかけて「育てる」楽しさを見つけるか。
キャンプ・焚火・登山はそもそも面倒なアクティビティーですから、「育てる」楽しさを面白がる人が多いのだと思います。
例えば、最近人気のアルミ製飯ごうの「メスティン」。焦げ付き防止加工がされていなく、シーズニングと呼ぶ「油ならし」が必要。さらにメスティンによっては、フチが切りっぱなしのためバリ取りをして、ケガの予防する等、面倒なアウトドア道具ですよね。
アルコールストーブを使うために用意しておくモノ

着火には、ライターやマッチを

その中でも、時に風が強く吹く山では、アウトドア用の耐風バーナーがあると便利。
写真右のソト/スライドガストーチ ST-480Cなら、火傷の心配がなく、安心です。また極細集中炎は、風に強いのが特長。
しかし2500m以上の高所では、トーチが点火しない事例もあるので、マッチやフリント式のライターを予備で用意しておくとよいです。
アルコールストーブの使い方

まずアルコールを注入。この時、くれぐれもタンクの外側にアルコールをこぼしたり、指につかないように注意!

テント前室での使用はやめたほうがよい!
また、山では、落ち葉のつもった場所に直置きしての使用は絶対禁止!アルコールストーブの炎は案外大きく立ち上がり、火力調節も難しいので、テント前室での使用もやめておきましょう。
通常使用の際でも、万が一に備え、風防で囲い、バーナー用断熱シートや金属製のソロテーブル上での使用がマストです。
着火はタンク上部から。ストーブによってはヨコから火を点けることが可能
火が点かない・・・と覗き込むのは厳禁!

最悪、前髪やまつげを燃やしてしまうこともあります。
火が点いているかどうかわからない場合は、タンクの上部に手をかざして確認してください。点火していれば、火が見えなくても手の平に温かい空気が当たるのがわかります。
火が点いたら、クッカーをゴトクに載せ、沸騰を気長に待つ!

点火してすぐにクッカーをゴトクにのせると酸欠で火が消えてしまうことがあるので、私はアルコールストーブ本体の火口から火が出る本燃焼が始まってから、クッカーを載せるようにしています。
今回行なった200mlの湯沸かしテストでは、沸騰までの時間は風がない時は約4分、強風下では約8分掛かりました。
アルコールストーブは風や気温の影響を受けやすいので、効率よく湯沸かしするには、風防で囲んだり風の影響を受けない場所で煮炊きしたり等、工夫が必要です。
消火は専用のフタか、クッカーを被せて。
基本的には消火後、タンク残った燃料用アルコールを入れたまま持ち運ぶことはできません。中蓋の備わっているトランギアとエスビットは、液漏れしにくく、持ち運んでいる人もいるようですが・・・。
さらに残ったアルコールを小分けボトル等に戻そうとすると、本体火口等からアルコールがこぼれてうまくできません。スポイト等で吸い上げるという方法もありますが、最終的には白湯を少量つくりながら、燃やし切るのが燃料をムダにしないベターな方法だと思います。
その燃やし切るという点で、「何mlの燃料でどれだけの湯を沸かせるか」を、風の強弱・気温等を含めて経験によって判断することが求められるのが、アルコールストーブで湯沸かし・調理をする奥深さでもあります。
お待たせしました!いよいよ点火・検証です!!

全8モデルは以下の通りです。
【アルコールストーブ】
燃焼シーンは動画でも解説しています。①トランギア/ミニトランギア
②エスビット/985ml クックセット アルコールバーナー付
③エバニュー/チタンポット500ストーブセットRED
④T’s Stove/ NEW WW サイドB combo
⑤バーゴ/チタニウム デカゴンストーブ
【風防&ゴトク】
⑥エバニュー/チタンゴトクTriveTi
⑦ベルモント/チタントライアングルストーブ
⑧ミュニーク/X-MESH STOVE (large)
約200mlの水を湯沸かしするテストを含め、点火から消火までの一連をまとめていますので、是非ご覧ください!
①まずは、定番のトランギア/ミニトランギアから!!

価格:5,060円
重量:350g
収納サイズ:Φ15cm×H7cm
アルコールバーナー本体と専用ゴトク(TR-281)、0.8ℓのソースパン、ミニフライパン、ミニハンドルがセットになったクッカーセットです。コンパクトなセットですが、ソロでの湯沸かし、慣れれば簡単な調理も十分に行えます。
アルコールストーブで調理も行えるクッカーセットというと、同社のストームクッカーの愛用者も多いですが、重量は軽量なウルトラライトでも740g。価格は1万円オーバー。
今回使用したミニトランギアでもできることは多くあり、重量も価格も半分以下。アルコールストーブ初心者は、このミニトランギアからはじめることをオススメします。
では、気になる燃焼シーンを動画で!
検証時には強めの風が吹いていたので、その影響をかなり受けてしまいました。
実際に山で使用する際には、風防で本体を囲めば、より効率的に湯沸かしができるでしょう。
また動画では使用していませんが、消火用のフタは火力調節用に使え、これからの季節は、弱火で長時間燃焼させ、鍋等を楽しむ際に有効です。
ミニトランギアの詳細はこちら
②スローの真髄、エスビット/985ml クックセット アルコールバーナー付

価格:7,480円
重量:430g
収納サイズ:Φ12.8cm×H14.7cm
これは985mlと470mlのポット、ウインドシールド、真鍮製アルコールバーナー、エスビット固形燃料タブレットトレイのセット。それでいて430gに抑えられた重量は、ソロハイクでも十分に携帯に値するものです。

またフタ部分の刻印がアウトドアらしさを感じさせます。
このセットひとつで調理もできる、燃焼シーンを動画で!
正直に感想を言えば、強い風が吹いているとはいえ約200mlの水の沸騰に5分40秒も掛かるのは、火力が弱い・・・です。でも、なんだか許せてしまうところがあるのも、このアルコールストーブの利点。
焚火的というか、クッカーを燃やす炎を見ていると、なんだかノンビリとした気分になれるんです。スローな山時間を楽しむなら、むしろこの火力弱めのアルコールストーブが、いいのかもしれません。
エスビット/985ml クックセット アルコールバーナー付の詳細はこちら
③軽さと高火力が魅力のエバニュー/チタンポット500ストーブセットRED

価格:13,750円
重量:165g(実測値)
収納サイズ:Φ9.7cm×H8.7cm
内容は写真上段左からチタンマグポット500 RED、風防&ゴトク、スタンド、下段左からチタンアルコールストーブ、パワープレート。
このパワープレートは、寒さで火力が上がらない時にアルコールストーブの上に載せて火力を上げるもの。他、アルコールストーブを使用せず、固形燃料や細枝を燃やしてミニ焚火台とする際に、スタンド下部に受け皿としてセットします。
私はアルコールストーブ使用時にこのパワープレートを用いることは、ありません。

しかしそれは条件のよい場合の話。今回検証時に強い風の中では、200mlでも8分掛かりました。が、ほとんど風がなければ2分程という結果も出たので、他のアルコールストーブと比べて高火力であることは、間違いありません。
では、実際にどのように燃焼するかは動画で!
動画内でも説明しましたが、着火は上部スタンドの風防&ゴトクをセットしてからでもOK。その際は、上部スタンドの上からスライドガストーチ等で着火してもよいですが、メーカーは安全のためスタンドのヨコに開けられた着火用の小口から行なうことを推奨しています。
検証時は強風で条件が悪かったこともありますが、無風時でも上部スタンドの上に開けられたいくつもの穴から炎が出て、クッカーの底部に強力な炎をすべて当てられていないため、少し効率が悪いです。もしかすると、セットのチタンマグポット500 REDよりも、底部の直径が広い浅型クッカーを使用した方が、このスタンドのよさを引き出せるかもしれません。
エバニュー チタンポット500ストーブセットREDの詳細はこちら
④UL道具の真髄、T’s Stove/ NEW WW サイドB combo

価格:3,300円
重量:55.7g
収納サイズ:Φ4.5cm×H9.0cm
しかしその細やかなつくりは、とても空き缶再利用品とは思えない美しさです。


また炎は案外広がりが大きく、コンパクトなケトルや浅型クッカーの方が燃焼効率はよさそうです。
どのように燃えるのか、早速動画で確認!
ご覧の通り、検証時は強い風のためケトルやクッカーの大きさに合わせられる付属の風防が、大変役立ちました。それでも炎は暴れていましたが、湯沸かし時間の速さから、その効果は大きいことがわかります。
小さいながらも高火力・高効率なセットで、価格は3,300円とはコスパが素晴らしい!
道具の軽量コンパクト化を考えているなら、まずはこのアルコールストーブセットを試してみることを、強くオススメします。
T’s Stove/ NEW WW サイドB comboの詳細はこちら
⑤車で踏んでも壊れない!?バーゴ/チタニウム デカゴンストーブ

価格:5,060円
重量:34g
収納サイズ:Φ5.7cm×H3.2cm
このチタニウム デカゴンストーブは、チタン製で重量34gながら、踏んでも壊れない驚異の強度を求めて製作されたアルコールストーブだそう。バーゴ社内のテストでは、なんと車で踏んでも壊れなかったとか!

今回はUL的な深型チタンクッカーで湯沸かしをしましたが、火口からの炎が外側に広がるように設計されているので、本体は浅型クッカー等、底部の直径が広いクッカーの方が相性がよいストーブです。
その燃焼シーンを動画で見てみましょう!
風強めのなかで、風防もなく、風の影響は直接的。燃焼効率が悪そうに思えますが、水200mlの沸騰時間は3分50秒。同条件での他ストーブと比べても、少し速く沸きました。とはいえカタログ値では水400mlが5~6分で沸騰とあるので、火力は平均的。
風防で囲い、浅型クッカーに使えば、炎をクッカー底部に当てられ、上手く活用できそうです。
バーゴ チタニウム デカゴンストーブの詳細はこちら
さて、ココからは風防&ゴトクを、上記で紹介したアルコールストーブ本体と組み合わせて検証した3モデルの紹介です。
⑥カップにも収納できる軽量ゴトク、エバニュー/チタンゴトクTriveTi

価格:1,430円
重量:13g
収納サイズ:長さ8.1㎝×高さ4.0㎝×厚さ0.1㎝
またトランギアやエスビットのアルコールストーブ本体にも使用可能。+13gで最低限の煮炊きができます。

では、実際に使用した動画を!
弱い風が吹いていて炎は揺れていましたが、水200mlが約1分30秒と、圧倒的な速さで沸騰しました。結果だけを見ると、チタンポット500ストーブセットREDのアルコールストーブ用スタンドDXよりも、高効率といえます。
たまたま、この検証時だけ風が弱かったのかもしれませんが、やはりクッカーの底部に炎がよく当たると、ムダが少ないのでしょう。風が強い時には風防で囲めばよいので、このゴトクは、かなり使える逸品です!
エバニュー/チタンゴトクTriveTiの詳細はこちら
⑦見た目がクールな、ベルモント/チタントライアングルストーブ

価格:3,300円
重量:49.5g(実測値)
収納サイズ:長さ13㎝×高さ7.5㎝×厚さ0.4㎝
トランギアやエスビットの本体のように縁のあるストーブはスリットにセットして固定、他のストーブはトライアングルにセットしてから、囲んで使用します。

チタン製なので使用する程に色味が渋くなっていく楽しみもありそうです。
燃焼シーンを見てみましょう!
もう少し風防としての効果を期待しましたが、水200mlの沸騰時間は3分45秒でした。悪くない、でも飛び抜けていい訳でもありませんでした。
ただしゴトクとしての安定感はピカイチ。浅型クッカー、大きめクッカーを使う場合は、選択肢に入れたくなります。ちなみに、シエラカップも安定して載せられるので、小型&深型クッカーでも機能します。
ベルモント/チタントライアングルストーブの詳細はこちら
⑧ペラペラのシート状に驚く、ミュニーク/X-MESH STOVE (large)

価格:3,200円
重量:17g
収納サイズ:長さ27㎝×高さ6.7㎝×厚さ0.17㎜(※厚さだけ単位が違います)


へぇ~と感心する燃焼シーンを動画でどうぞ!
いやはや、驚きました。こんなんで大丈夫なんだろうか?と期待値が低かったこともあり、浅型クッカーの底部に広がった炎を確認した時には、「これはスゴい!」と声を出して感心しました。
クッカーを外した直後、X-MESH STOVE内部に広がる炎を見た時には、この風防&ゴトクは間違いなくアルコールストーブのポテンシャルを最大化しているに違いないと確信しました。
メッシュ部分は風を抑えながらも、火に効率よく空気を供給。より強くなった炎を、切れ込み部分から出しているように思えます。
ペラペラのメッシュシートながら、検証時においての機能性は今回紹介した中で最も優秀だといえます。
ミュニーク/X-MESH STOVE (large)の詳細はこちら
アルコールストーブでスローな山時間を楽しんで!

8モデルを検証する中で、ストーブ、風防&ゴトクそれぞれに個性があり、それを感じるだけでワクワクする時間を過ごせました。
山では時に厳しい条件で苦戦することもあるかもしれません。でも、その中でどうやったら上手く扱えるかを楽しむのがアルコールストーブです。とはいえ、山で初めて使うのではなく、自宅周辺やキャンプで何度か試して、そのアルコールストーブの個性を知って、面倒を楽しめる余裕をつくってからの方が、山で大変な目に遭う可能性は減り、より楽しめると思いますよ!
それでは皆さん、よい山旅を!