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苦手意識をガイドが解決!地図読みのキホンはそんなに難しくない【地図・磁北線・コンパス編】(2ページ目)

磁北って何モノ?北とは別モノなの?

真北と磁北
作成:washio daisuke・イラストの出典:PIXTA(真北と磁北)

方位磁針(コンパス)の赤い針が指す方向は北!そう思っているあなた、その知識は半分本当で半分嘘です。
経度を示す経線を上に辿ると到達するのが北極点。この方向を「真北」と呼びますが、コンパスの赤い針が示す方向は「磁北」という別の方角なのです。

地形図とコンパスを組み合わせて使うには、この原則を理解する必要があるので、もう少し詳しくみていきましょう。

地図の真上が「真北」、コンパスの針が指すのが「磁北」

真北と磁北
撮影・作成:washio daisuke(真北と磁北)
“ガイド鷲尾”
地形図をはじめ、一般的な地図は「真北」が真上になるように作られている。だから地図上の真上に向かってひたすら進むと、北極点(北緯90度)に到着するようになっている。

でも、コンパスの赤い針が示す北は別なんだ。

“登山者Aさん”
コンパスの針が指す方向に向かって進むとどこに行くんですか?

“ガイド鷲尾”
北磁極という場所に着いちゃう。

実はこの北磁極はカナダ北西部にあって周期的に移動していたりするんだけど、とにかく北には「真北」と「磁北」の2種類があるということを覚えておいて欲しい。

“登山者Aさん”
ややこしいなあ。

“ガイド鷲尾”
だからコンパスワークを正確に行うためには、地図上の真上(真北)とコンパスの赤い針が示す北(磁北)がどれだけずれているかを可視化する「磁北線」を書きこむ必要があるんだ。

“登山者Aさん”
実際どれだけずれているんですか。

“ガイド鷲尾”
緯度によってずれは変わってくる。日本の場合、磁北は真北に対して5度から10度西にずれている。

そして、このずれは北(高緯度)ほど大きく、南(低緯度)ほど小さくなるんだ。

“登山者Aさん”
つまり、北海道の地形図と九州の地形図では、書きこむ磁北線の角度が違うという訳ですか?

“ガイド鷲尾”
そう。地形図のここ(赤枠部)に磁針方位とか西偏角度とか磁気偏角という言葉で何度ずれているか書いてあるよ。

この地形図の場合は西に約7度0分ずれていますね
撮影・作成:washio daisuke(この地形図の場合は西に約7度0分ずれていますね)
“ガイド鷲尾”
この地形図の場合は、7度ちょうどだね。つまり、西に7度ずれている磁北線を書けばいいってこと。

さあ、磁北線を引いてみよう!

真北と磁北の違いがわかったところで、次は実際に磁北線を地図に書きこんでいきます。
〈磁北線を引くための流れ〉
①地図のタテ幅の長さを求める
②縦幅と地図に書いてあるズレの角度を計算サイトに入力する(自分で計算してもOK)
③計算で出た数字を使って磁北線を引く
④等間隔で磁北線を引いていく
それでは、詳しい磁北線の引き方の手順を見ていきしょう。
西に約7度ずれている磁北線を引くには…
撮影・作成:washio daisuke(西に約7度ずれている磁北線を引くには…)

“ガイド鷲尾”
この地図は西に7度ずれているから、こんな感じで磁北線を引けばOK。

“登山者Aさん”
なるほど。でもどうやって角度を測るんですか?

“ガイド鷲尾”
三角関数を使うのがいちばん正確でわかりやすいよ。

“登山者Aさん”
サイン!コサイン!タンジェント!ですね。

〜数学の苦手な方!少しスクロールすると簡単な答えが書いてあります。読むのをやめないでください!〜

“ガイド鷲尾”
そう!例えばこの地図の場合だと、こうなるね。

サイン!コサイン!タンジェント!

撮影・作成:washio daisuke

“登山者Aさん”
この場合、地図のタテ幅がXですね。

“ガイド鷲尾”
そう!ただし旧地形図と新地形図では地図の印刷されている部分のタテ幅が変わってくるので注意が必要だよ。
余白の広い旧地形図は37cm(370mm)、余白の狭い新地形図は42cm(420mm)になる。
左下は新地形図・右上は旧地形図
撮影・作成:washio daisuke(左下は新地形図・右上は旧地形図)
“登山者Aさん”
でも、知りたいのはzの長さですよね…。
つまり、タンジェントか!
“ガイド鷲尾”
さすが数学が得意だっただけあるねえ。

僕の場合は計算するのが大変だから下記のようなサイトを使っている。角度のところに、この地図の場合は「7」を入力して算出された数値のうちタンジェント(tan)を見てみよう。

▶生活や実務に役立つ計算サイト|CASIO

“登山者Aさん”
0.122785…ずいぶん細かい数値ですね。

“ガイド鷲尾”
この数値にxを掛けるとzの長さになるんだ。

“登山者Aさん”
つまり新地形図で7度の場合は、タンジェントの数値0.122785×地図のタテ幅42cmだから…。
地図の右上から約5.16cmのところと地図の右下を結べば、自動的に7度の磁北線になる訳ですね。

〜ややこしい話は、ここでおしまいです!〜
磁北線の書き方

撮影・作成:washio daisuke(磁北線の書き方)
“ガイド鷲尾”
その通り!ただ、磁針方位が変わる度にいちいち計算するのも大変だから、ここに一覧表を載せておくね。

ただし定規とかで5.16cmをピタリと当てるのも大変だと思うから、大体5.2cm弱とかで十分だからね。

偏差タンジェント表
作成:washio daisuke(偏差タンジェント表)
“ガイド鷲尾”
最初の一本が引けたら、あとは平行に追加して引いていくだけ。

磁北線はコンパスの透明プラスチック越しでも見やすいように濃く、赤とか目立つ色で書き込もう。

追加する間隔はお任せだけど、25000分の1の地形図の場合は4cm間隔がオススメ。
縮尺的に1cmが250mだから、4cmがちょうど1kmになるんだ。

磁北線を4cm間隔で追加していく
撮影・作成:washio daisuke(磁北線を4cm間隔で追加していく)

“ガイド鷲尾”
自動的に磁北線が書き込めて印刷できるサイトもあるので、必要に応じて使ってみると良いよ。

地図プリ|ヤマレコ
YAMAP
▶ヤマタイム|Yamakei Online

“ガイド鷲尾”
地形図に磁北線を引いて、ようやくコンパスの出番だね。

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