「山たのしかった!」という子どもに、山好きになってほしい!
家族登山や林間学校などで、子どもたちも自然と触れ合う機会が多くなる夏休み。
「山たのしかった!」と小さな冒険と大きな挑戦を振り返り、ちょっと自慢気に成長した子どもたちを、大人はどうやってさらにわくわくさせてあげられるでしょうか?
そんなときに借りたいのが「物語の持つ力」。今回は「東京子ども図書館」の司書で、自身も登山が好きという清水千秋さんに「子どもに読んであげたい本」「子どもに読んでほしい本」を選んでもらいました。
初めての登山のあと、子どもに「読んであげたい本」
小さい子どもには読み聞かせできる「絵本」を選んでもらいました。イラストや写真などを一緒に見ていると、大人の私たちも新鮮な目で山や自然の魅力を再発見できるかもしれません。
『もりのえほん』安野光雅絵 福音館書店
『もりのえほん』
安野光雅/福音館書店
さらにページを開いていくと、うっそうと繁る、さまざまな森の景色が続きます。よく目を凝らすと、あれっ、ウサギが、ダチョウが、パンダがと次々に見えてきて……。森の中に隠れる130余りの動物を見つけて遊びましょう。
『はじめてのキャンプ』林明子さく・え 福音館書店
『はじめてのキャンプ』
林 明子/福音館書店
飯盒炊さん、キャンプファイヤー、こわいお話……時々、約束を忘れそうになるけど、ぐっとがまん。一生懸命がんばった、なほちゃんの満足感が伝わります。
『富士山にのぼる』石川直樹著 アリス館
『富士山に のぼる』[増補版]
石川直樹/アリス館
2001年に23歳で七大陸最高峰登頂を達成し、写真家として活躍する著者による、臨場感あふれる写真絵本です。
『地球のてっぺんに立つ! エベレスト』
『地球のてっぺんに立つ! エベレスト』
スティーブ・ジェンキンズ:作、佐藤見果夢:訳/評論社
簡潔な文章と風合いの異なる紙の美しいコラージュでその魅力を伝える絵本です。自分も登っているような気分になれるはず。
登山が好きになった子どもに「読んでほしい本」
自分で文字が読めるようになった子どもには、ルビなどが振られた読みやすい本を選んでもらいました。「山登り」=冒険の楽しみを知った子どもたちが興味を持って読みたくなる物語やルポタージュ、ノウハウ本などは、大人でも十分に楽しめますよ。
『冒険図鑑―野外で生活するために』
『冒険図鑑―野外で生活するために』
さとうち藍:文、松岡達英:絵/福音館書店
さらに、「歩き方」「ザックのつめ方」「等高線から山のようすを知る」「道に迷ったら」……のような細かな項目に分かれているので、知りたい情報にすぐにたどり着けます。冒険好きには、とても頼りになる一冊です。
『ぼくたちのP(パラダイス)』
『ぼくたちのP(パラダイス)』
にしがきようこ:作、くぼあやこ:挿絵/小学館
フィールドワークを兼ねて、山を守るために道を作る学生達と作業をするうち、自分の居場所を見つけていきます。あるとき、雄太の弱点が役立って……。山ならではの体験がたくさん詰まった本です。
『七大陸最高峰に立って』
『七大陸最高峰に立って』
田部井淳子:著、平野恵理子:イラスト/小学館
主婦として子育てをしながら、明るく元気に世界の山々に挑んだ姿が描かれ、前向きな気持ちにさせてくれます。
『エヴェレストをめざして』
『エヴェレストをめざして』
ジョン・ハント:作、松方三郎:訳/岩波書店(岩波少年文庫)
迫力あるモノクロ写真やキャンプ地を示す地図、丁寧な注も読み手の想像を助けてくれるはず。山岳小説の古典的名著とも言われる本ですので、この夏、読んでみてはいかがでしょうか。
「山好きの司書さん」がいる図書館へようこそ
今回の本を選んでくれたのは、「東京子ども図書館」司書の清水千秋さん。選書はどういった観点で選んだのかをうかがいました。
「コロナの影響で、行動が制限される中、『エヴェレストをめざして』を再読したところ、登山の楽しさや読書という行為そのものがもつ力を再確認しました。幅広い年齢の子どもたちに手に取ってもらえるよう、絵本、物語、ノンフィクションと、タイプの違う本を選びました。今年の夏は、もしかしたら山へは行けないかもしれませんが、ぜひ、本の中で、いろいろな山での体験を味わってもらいたいと思います」
そんな清水さんが好きな山も教えてもらいました。
「好きな山をひとつあげるとしたら、高尾山でしょうか。母の実家に近く、幼い頃から身近な山だったからです。初詣を兼ねて薬王院までの参道を歩いたり、従妹たちと相模湖に抜けたり。季節や一緒に登る人にあわせ、いろいろなコースがあることも魅力ですね。子どもの頃から、高尾山に親しんでいたからこそ、北アルプスやマッターホルンを眺めることが旅の目的になるような、山好きになったのだと思います」
東京子ども図書館ってどんな場所?
清水さんが司書として在籍する、子どもの本と読書を専門とする「東京子ども図書館」。幼児〜中高生を対象にした約8,600冊の蔵書がある「児童室」と、児童書や児童文学の研究書を約19,600冊を揃えた大人向けの「資料室」とがあり、子どもも大人も楽しめます。
この図書館は公立ではなく私立なのですが、もともとは自宅の蔵書を近所の子どもたちに貸し出したり、読み聞かせたりする個人の活動「家庭文庫」から始まったもの。4つの家庭文庫が母体となっていますが、そのなかには『クマのプーさん』の翻訳でも知られる石井桃子さんの「かつら文庫」も含まれています。
東京子ども図書館
住所:東京都中野区江原町1-19-10
開館時間:(児童室)火・水・金13:00~17:00 土10:30~17:00 (資料室)火・水・金10:00~17:00 土10:00~19:00 (事務室)火~土10:00~17:00
電話:03-3565-7711 ※火~土(祝日除く)10:00~17:00※最新の開館時間については、ホームページで確認を。
紹介した本を買いたい場合は?
今回選んでいただいた本は東京子ども図書館はもちろん、その他の図書館でも比較的探しやすいものになります。一部版元品切れ(絶版)を除いては、オンラインで購入できるものもあります。(コロナ禍での)図書館休館の場合や子どもへのプレゼントにといったときには、こちらをどうぞ。
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