コロナ以降の登山をするうえでの基本的考え
ここまで個別の質問にできるだけ具体的に答えてきましたが、一度コロナウイルスを登山のリスクとして考える上での「基本的な考え方」を整理しておきたいと思います。
三浦さん曰く、これは自粛中に落ちた体力の問題だけでなく、リスクが小さなところから「自分の登山時の行動」を確認するためだといいます。
街では間接的な接触感染を防ぐため、つり革や手すりを触ったあとに顔を触らないなど気を配れているひとでも、登山で汗だくになったときにうっかり顔を触る、さらにその手でいろいろなものを触るなど、無意識の行動をしてしまう可能性がある。リスクのより少ない現場で行動を自覚する練習が必要だと言います。
あと、熱中症と高山病は関係性があります。熱中症で水不足→高度を上げる→高山病になった場合の症状は、コロナの初期症状との見分けがつきにくいのも意識しておきたい点です。可能性を疑う症状を発症するだけで、救助時の対策などにも影響を及ぼすかもしれないからです。
それでも行きたいときはプロガイドと登るという選択肢を考えてください。日本山岳ガイド協会はコロナに関しての安全リスク対策の指針も出していて、プロのガイドはクライアントの安全管理も行っています。
また、CAJの共同提案の策定にあたっては、共同提案団体のひとつである「山岳医療救助機構」の代表であり、日本初の国際山岳医の大城和恵ドクターからの助言もいただいているとのこと。
ですが、少なくとも山小屋に泊まって登山をしようと考えているひとには、これくらいは理解しておいてもらいたいと思います。
山岳医療救助機構|準備と計画編(ver.2)
山岳医療救助機構|登山実践編
自然と触れ合うことは、社会とつながることも含まれます
今回、アウトドア業界団体として今回の「#ステイコネクティッド」という共同提案を出したCAJ。三浦さんはこういった行動を「自分たちでアウトドアユーザーたちの側で考えないといけないとの思いからだった」と言います。
「登山を含め、アウトドア活動は楽しいもので生活に欠かせないものです。自粛生活で人と人とは離れ、社会からも距離を置くことを求められました。でも人間はつながること(=コネクト)で生きています。
またひさびさに外に出て新緑の芽吹きや初夏の風を感じたりすることで、自然と関わることの必要性を再確認しました。自然に触れ合うことは必然的にひととの触れ合いになる。地域社会、アウトドア活動、自然との適切なつながり方を考えて行動しませんか?という提案でもあるのです」と三浦さん。
最新情報を正しく追い、考える続けるということ
登山を行ううえで大事なイロハ。それは「自分で考え、自分で計画し、自分で山を登る」です。
なかでも今年は「事前の準備と計画」がとても重要になってきます。また柔軟なプラン変更が必要になる場面も多いかと思います。そんなときにも事前の情報収集をしっかりしておけば、万が一の際にも代替案や対応策を検討しやすくなります。
今回のコロナウイルスは登山も含め、あらゆる物事のあり方を考える大きなきっかけになるかもしれません。最後に三浦さんが話してくれた印象的な言葉で締めくくりたいと思います。
道具はあくまでも判断するための情報を得るだけで、判断するのは自分ということをコロナ禍ですごく感じています。そういう認識でみんなが自分の行動を見直していけば、新しい世界が見えてくると思います