【集まった読者の声】コロナ以降の登山で知っておいてほしいこと<回答編>

2020/07/27 更新

読者から寄せられたコロナウイルスと登山に関しての疑問や質問。「マスクはマナー?」といったことから、「SNSでの発信はNG?」まで。 今回の記事ではそのいくつかをピックアップし、有識者とともに考えてみたいと思います。またコロナ禍における登山の基本的なあり方についても紹介しています。


アイキャッチ画像出典:PIXTA

コロナと共存する登山スタイルを考えよう

登山道を歩く登山者
出典:PIXTA
前回の記事では読者から寄せられた約500件の回答をもとに、登山自粛中や、また登山再開に向けてどんなことを思っていたのかを紹介しました。

ただ、コロナウイルスに関しては「現在進行中」でつねに変化をともなう事象であり、また都会と山岳エリア、低山と高山、日帰りと山中泊、感情と論理……など、二項の間にも濃淡があり、単純な答えを導き出せないということは、この数カ月間を経てうすうすみなさんも気がついているのではないかと思います。

そこで、コロナウイルスを「登山のリスクのひとつ」として、つねに考えて行動をすることが必要になってきます。要は「コロナウイルスのリスクと共存して登山をすること」が求められるのです。

でもそれは難しいことではありません。

例えば、降水確率60%の山行の場合、天気は回復傾向なのか悪化傾向なのか、どのような降り方をする雨雲なのか、山歩きの時間はどれくらいなのかなど、いろいろな事実情報を複合的に考えて、行動を決定していきます。コロナウイルスに対しても、それと同じように考えると、リスクの解像度が上がり、判断もより適切にできるはずです。

登山の解像度
作成:YAMA HACK編集部
今回はアンケートの回答のなかから、いくつかの質問を取り上げ、一緒に考えていきたいと思います。

みなさんからの質問を有識者と考えました

今回、一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン(以下CAJ)の代表理事である三浦務さんにも、みなさんの質問への答えを考えてもらいました。

CAJとは?
アウトドア業界の各社が、ビジネスで得た利益の一部を自然環境保護のために還元する目的で設立した団体。日本では2000年に任意団体として設立され、2019年に一般社団法人化。2019年度までに175のプロジェクトに8800万円以上を拠出するなど、日本のアウトドア活動の基盤となる自然保護・修復に関わっている。

7都道府県に緊急事態宣言が出された後の4月12日に「5つのガイドライン」、6月19日の県をまたぐ移動自粛の解除の前の6月17日に「自然と適切につながるための6つのヒント(10団体による共同提案)」を出すなど、登山だけに限らず、アウトドア業界全体としての「提案」をCAJは発表してきました。

ステイコネクト

コンサベーション・アライアンス・ジャパン(CAJ)

Q1:いま登山をするのって、やっぱり迷惑?

読者からの質問
・地元や山小屋の人が登山者に守ってもらいたいマナーを教えて下さい。登山者を安心して迎えられる環境作りに協力したいです。
・山小屋のそして近隣自治体の本音の気持ち。来てもらいたいのか、今年は自重してほしいのかなど。
 

「これはとても難しい質問ですね(苦笑)」と三浦さん。確かに同じ地域に住んでいても「感情」はひとによって異なるため、ひと括りにして判断することは難しい!

三浦さん
特に感染者の多い都市部からくる人に対して、地元のかたはとても心配しているのは事実。感情的な反発を受ける可能性はゼロではないです。そういう感情があることへの理解を持っていないといけない。

相手はどう思うのかなという視点にたてば、見えないものが見えてくるはずです。利己的ではなく利他的に考える必要があります


都市部と山岳エリアの感染者数の違いを知る上で、参考となるデータがあります。

人口100万人あたりの累積感染者数 都道府県ごとの人口100万人あたりの累積感染者数のデータですが、これを見るだけでも大都市部の感染者割合が多いとわかります。ちなみに大阪府は223.29人、南アルプスや八ヶ岳のある山梨県は93.71人となっています(2020年7月11日のデータ)。

もちろん単純に都道府県では括れませんし、増加傾向にあるのか減少傾向にあるのかなども大きな判断材料ですが、「自分が住む居住地」と「自分の行き先」の感染者数や医療リソースなどを比較してみることはとても大事です。また自治体や地元が出しているメッセージにも自らアクセスするようにする必要があります。

CAJの提案には「食料や装備は事前に準備しよう」とありますが、これは単に商店の休業などだけでなく、山麓の商店での買い物への配慮も含まれています。例年通り、「これから登山だ!」と張り切っている登山者グループが地元コンビニでわいわい大きな声でしゃべりながらおにぎりを買っていたら……。

自分がその町のひとであれば「あ、他府県から来た人たちだ。ちょっと嫌だな」と思うかもしれません。例えば、代表者がまとめて購入して、あとのひとはクルマで待機するだけでも、受け止め方は変わるもの。買い物の例に限らず、これが利他的な行動や考え方です。
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登山装備に付け加えるものはなに?

Q2:いままでの登山装備に新たに付け加えるものはなに?

読者からの質問
・推奨される装備等があれば知りたい。
・今までといっしょの装備でよいのか、新たに付け足すものは、何なのか知りたいです。
 

三浦さんからは代表的な以下のアイテムを挙げてもらいました。
手指消毒液:コロナウイルスは飛沫感染だけでなく接触感染もあります。手を洗えない環境の場合に手指消毒は必須装備。

ネックゲーターやマスク:「人に感染させない道具」として必要。利用法などは後述。

山小屋から指定されている携行品:新たに購入が必要なもの、貸出があるものなど多岐にわたるので、予約時と前日に最新情報の確認を。

三浦さん
付け足すものではありませんが、接触感染を防ぐために「互いのカメラで写真を撮り合いっこ」はやめたほうがいいです。

また「登山者はゴミを持ち帰る」のが基本ですが、ポケットに入れたマスクや鼻をかんだティッシュなどをうっかり落としてしまうことがないように気をつけたいです。


街でも道端にマスクが落ちていたら、このご時世、拾うのは嫌だな……となりますよね。些細なことですが、密閉袋にゴミはすぐに入れるなど、行動の習慣づけで防ぐようにしたいものです。
登山道に落ちていたマスク
撮影:YAMA HACK編集部(7月の週末、とある登山道にて)

Q3:登山中にマスクをしないとマナー違反?

読者からの質問
・登山の際に、マスクはしたほうがいいのか、すれ違う時の挨拶はしない方がいいのか、一緒に行く人数の制限はあるのかなど、気になります。
マナーとして、マスクやバンダナをして登山した方がいいのだろうか
・登山時の挨拶はしない方が良いのか? マスク又はネックゲーターは着用しないとマナー違反になる?
 

これは登山に限らず、街なかでもひとによって感じ方のグラデーションがある問題。難問ですね。

三浦さん
(マナーであるかどうか以前に)何のためにつけているかを理解する必要がありますね。考えることをやめると「つけているか/いないか」でしか判断できなくなってしまいます。

熱中症リスクもありますし、行動時には必ずしも常時着用しなくても大丈夫。お互い息を吹きかけないような配慮をするだけでも十分。

一方、休憩場所や山小屋の中などひととの距離が保てない場所では口と鼻を覆うために着用するなど、場面ごとにきちんと判断することが大事です。


どうしてもひとの目が気になってしまうのは、誰もが心当たりのあること。でも「万一感染させない」ことがマスク着用の目的であって、安全だと判断できる状況でマスクしていないひとに対して「何をやってるんだ!」と糾弾するのは、マナー以前に感染症対策としてはあまり意味がないようです

三浦さん
ただ、「山小屋の中で使うマスク」と「行動中に使うマスク」は意味が違うことを理解しておいたほうがいいですね。山小屋でのマスクは「濃厚接触者にならない」ためという意味合いが大きくなります。


万が一、山小屋を利用したひとから感染者が出たとしても、利用者がきっちり飛沫感染と接触感染の防止対策をしていれば「山小屋内での濃厚接触者」が出ないため、山小屋閉鎖など最悪の事態を防げるというのが、その理由です。

・手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策無しで、患者(確定例)と15分以上の接触があった者

これも「何のためにマスクを着用するか」を考える上で、重要なヒントとなります。

Q4:SNSなどで情報発信するのはOK?

読者からの質問
・インスタグラムには載せないほうがいいのか…首都圏の人の登山の流れを促してしまうかもなので悩みます。
山の混み具合を予測、確認できるサイトやアプリはあるでしょうか?
 

これはYAMA HACK読者らしい質問!
楽しい登山の写真をSNSでアップして、ネガティブなコメントがつくと落ち込んでしまいそうです……。

三浦さん
SNSは一緒に行った仲間との写真をあげるにしても、次に登るひとの役に立つ情報も投稿にプラスするといいかもしれないですね。

混み具合であるとか、何本かルートがある山ではこの道は空いてたよとか。山小屋独自に要請されるものがあれば「絶対忘れないでね」と伝えるか。


もちろん判断をする上でいちばん大切なのは、山小屋や地元自治体や山岳会などが直接出している信頼性の高い一次情報を入手することです。でもそこだけでは得られない「生の情報」もSNSが普及し、すべてのひとが発信できるいまの情報ツールとして有益です。

ただし、それが「いつ発信された」「どういうひとが発信した」情報かなど、見る側にも正確性の高いものかを自分で判断するリテラシーが求められることも忘れずに!

「#ステイコネクティッド」というハッシュタグに加え、「#〇〇岳」「#登山道状況」「#山小屋状況」などを加えて発信してもらうことで、受信者も情報を見つけやすくなります。
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コロナ以降の登山はどうすればいい?

コロナ以降の登山をするうえでの基本的考え

考えること
出典:PIXTA
ここまで個別の質問にできるだけ具体的に答えてきましたが、一度コロナウイルスを登山のリスクとして考える上での「基本的な考え方」を整理しておきたいと思います。

三浦さん
CAJではいきなり高所登山に向かうのではなく「まず段階的に再開をしよう」と提案しています。これは行き先は「家の近くの山→日帰り登山→泊まり登山」、一緒に登るのは「家族→仲間」と段階を踏もうということです。


登山のリスク
制作:YAMA HACK編集部、イラスト出典:いらすとや
三浦さん曰く、これは自粛中に落ちた体力の問題だけでなく、リスクが小さなところから「自分の登山時の行動」を確認するためだといいます。

街では間接的な接触感染を防ぐため、つり革や手すりを触ったあとに顔を触らないなど気を配れているひとでも、登山で汗だくになったときにうっかり顔を触る、さらにその手でいろいろなものを触るなど、無意識の行動をしてしまう可能性がある。リスクのより少ない現場で行動を自覚する練習が必要だと言います。

あと、熱中症と高山病は関係性があります。熱中症で水不足→高度を上げる→高山病になった場合の症状は、コロナの初期症状との見分けがつきにくいのも意識しておきたい点です。可能性を疑う症状を発症するだけで、救助時の対策などにも影響を及ぼすかもしれないからです。

三浦さん
正直この夏の宿泊を含む高所登山はハードルが高いですね。自分で行っていいかどうかを決められない人は行くべきではないと思います

それでも行きたいときはプロガイドと登るという選択肢を考えてください。日本山岳ガイド協会はコロナに関しての安全リスク対策の指針も出していて、プロのガイドはクライアントの安全管理も行っています。


日本山岳ガイド協会|新型コロナウイルスに対する当協会の対策

また、CAJの共同提案の策定にあたっては、共同提案団体のひとつである「山岳医療救助機構」の代表であり、日本初の国際山岳医の大城和恵ドクターからの助言もいただいているとのこと。

三浦さん
大城ドクターがまとめたガイドラインが山岳医療救助機構のHPに公開されています。これは登山再開に向けての基本知識として「計画と準備編」は25ページ、「登山実践編」は19ページあり、ボリューム満点です。

ですが、少なくとも山小屋に泊まって登山をしようと考えているひとには、これくらいは理解しておいてもらいたいと思います


山岳医療救助機構|準備と計画編(ver.2)
山岳医療救助機構|登山実践編

自然と触れ合うことは、社会とつながることも含まれます

登山者
出典:PIXTA
今回、アウトドア業界団体として今回の「#ステイコネクティッド」という共同提案を出したCAJ。三浦さんはこういった行動を自分たちでアウトドアユーザーたちの側で考えないといけないとの思いからだったと言います。

「登山を含め、アウトドア活動は楽しいもので生活に欠かせないものです。自粛生活で人と人とは離れ、社会からも距離を置くことを求められました。でも人間はつながること(=コネクト)で生きています。

またひさびさに外に出て新緑の芽吹きや初夏の風を感じたりすることで、自然と関わることの必要性を再確認しました。自然に触れ合うことは必然的にひととの触れ合いになる。地域社会、アウトドア活動、自然との適切なつながり方を考えて行動しませんか?という提案でもあるのです」と三浦さん。

最新情報を正しく追い、考える続けるということ

考えること
出典:PIXTA
登山を行ううえで大事なイロハ。それは自分で考え、自分で計画し、自分で山を登るです。

なかでも今年は「事前の準備と計画」がとても重要になってきます。また柔軟なプラン変更が必要になる場面も多いかと思います。そんなときにも事前の情報収集をしっかりしておけば、万が一の際にも代替案や対応策を検討しやすくなります。

今回のコロナウイルスは登山も含め、あらゆる物事のあり方を考える大きなきっかけになるかもしれません。最後に三浦さんが話してくれた印象的な言葉で締めくくりたいと思います。
三浦さん
自分で考えることをやめてしまった時代になっていたのかな、とコロナ禍で感じました。紙の地図からカーナビ、いまではそれを歩きながらスマホでできるようになった。それに慣らされていて、考えているようで考えていなかったことに気づきました。

道具はあくまでも判断するための情報を得るだけで、判断するのは自分ということをコロナ禍ですごく感じています。そういう認識でみんなが自分の行動を見直していけば、新しい世界が見えてくると思います

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YAMA HACK編集部 村岡

YAMA HACK運営&記事編集担当。スキー好きが嵩じて北アルプス山麓に移住し、まんまと夏山登山にもはまる。アクティビティとしての登山の楽しみとともに、ライフスタイルとしての「山暮らし」についても発信していきます。

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