モンベルが意外な【新商品】を発売!クレイジーな仕掛け人に聞く、新しすぎる登山の楽しみ方

2019/04/19 更新

モンベルからこの春発売される「野筆(のふで)セット」。”アウトドアブランドから毛筆セット?”と業界でも話題のアイテムです。そのプレス向け発表会で出会ったイケメン、製硯師・青栁貴史さんの秘密とは、どんな人なのか。なぜモンベルと毛筆がコラボしたのか?!様々な疑問を解明するべく、突撃インタビュー!

撮影:YAMAHACK編集部

モンベルのプレス向け発表会に…イケメンの姿が…!

撮影:YAMAHACK編集部
この春モンベルから発売する『野筆セット』。登山業界でも注目されてるその商品のプレス向け発表会に出席した際、私達は運命的な出会いをしました。モンベル会長の辰野さんの横に…なんとびっくりする程のイケメンが…。
撮影:YAMAHACK編集部
「え、すごいイケメンなんだけど!!!この方誰?!」
少し興奮気味の編集部員がパンフレットを見ると、そこに記されていた名前は『製硯師 青栁貴史(せいけんし あおやぎたかし)』さん。

「”製硯師”って…硯(すずり)を作っている人?肩書までなんて素敵!」
「…………ん…?あおやぎ……………たかしさん…?」

撮影:YAMAHACK編集部
そう、このイケメンは、我がYAMAHACK編集長「あおやぎたかし」と同姓同名だったのです。

御礼の手紙もイケメンすぎる青栁さん

撮影:YAMAHACK編集部
運命的な出会いを果たしたプレス向け発表会から数日後。YAMAHACK編集部宛に一通の手紙が。

「手紙………誰だろう…。」

撮影:YAMAHACK編集部
「ん……?青栁…。」

なんと、あのイケメン製硯師・青栁貴史さんからの御礼状だったのです。

本日はプレス向け発表会にお越しくださいまして ありがとうございました。
会場で色々お話したかったのですが、是非今度は工房でゆっくりとお話出来ましたら幸いです。(※以下略)

外見だけでなく、中身もイケメン。
「なぜこんなイケメンが…モンベルとコラボしたの?どうして登山で毛筆なの…?青栁さん自身も「山」が好き、という事…?だからモンベル?」
ふつふつと溢れ出てくる数々の疑問。

是非今度は工房でゆっくりとお話出来ましたら幸いです。

「あ、”ゆっくりとお話出来ましたら幸いです。”って言ってくれている。」

せっかくなので、同姓同名の青柳編集長に、この数々の疑問についてインタビューしてきてもらうことにしました。

撮影:YAMAHACK編集部(書道用具専門店「宝研堂」)
お邪魔したのは、青栁さんの仕事場でもある書道用具専門店「宝研堂」。プレス向け発表会の時のピシッとした姿とは一転、突然の訪問にも関わらず笑顔で私たちを出迎えてくれました。

仕事への向き合い方を変えてくれた山の魅力

撮影:YAMAHACK編集部(今日もめがね姿でイケメンの青栁さん)
今回お話を伺った製硯師(せいけんし)の青栁貴史さんは、昭和14年から浅草で続く書道用具専門店「宝研堂」の4代目。さらに日本で唯一の製硯師として、硯(すずり)の製作や修理はもちろん、日本や中国の山々での採石調査、文化財の復元や執筆活動など、実に幅広い活動をされています。

今では情熱大陸やクレイジージャーニーなどのTVをはじめ、様々なメディアも引っ張りだこの青栁さん。モンベルとコラボし野筆セットを作った経緯から製硯師という立場から見る山の魅力、さらに青栁さん自身の事について語っていただきました。

YAMAHACK青柳
本日はよろしくお願いします。あおやぎたかしです!またお会いできて嬉しいです。

製硯師
青栁さん
こちらこそ、またお会いできて嬉しいです。同姓同名の方にお会いしたの初めてなので、ぜひ色々話したいと思っていたんです!

YAMAHACK青柳
(やっぱりイケメン過ぎて緊張…)
今日はモンベルさんと一緒に作られた「野筆セット」については伺いたいのはもちろんですが、青栁さん自身について丸裸にしていきたいと思います。

「岩が好き」山に入るきっかけはただそれだけ

撮影:YAMAHACK編集部
YAMAHACK青柳
早速ですが、今回コラボされたのが「モンベル」という事で、毛筆とは一切関係ないアウトドアメーカーですよね。青栁さん自身、山に登られてたんですか?

製硯師
青栁さん
そうですね、本格的に山に入るようになったのは20歳くらいですかね。「ミッション・インポッシブル2」の冒頭のクライミングシーンに憧れて、「登山」というよりは外岩が好きでよく登っていました。その時もうすでに仕事で山には入ってましたしね。

YAMAHACK青柳
”仕事で山に入っていた”というのは、硯に使う石を探しに行っていたんですか?

製硯師
青栁さん
んー…その時期はまだ探しに行ってはいなかったんですけど、岩に触れたくなっちゃうんです。(笑)”岩に触れるためだけに”当時は通ってましたね。

YAMAHACK青柳
触れるために…。(苦笑)

YAMAHACK青柳
(……青栁さんって、やばい人…?)


撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
ただ、怪我が多かったので…社員に「行かないでくれ!」ってお願いされちゃったんですよね(笑)。

YAMAHACK青柳
そんなに大怪我しちゃったんですか?

製硯師
青栁さん
そう、上顎の一部を砕いてしまい…。僕の前歯の半分は義歯です(笑)。

YAMAHACK青柳
顎……(絶句)

製硯師
青栁さん
その後さらに大病を患ってしまった事もあり、「体」との向き合い方も変わりました。「山=スピード!走る!」という山の楽しみ方も、「山を静かに歩く。楽しむ」という楽しみ方に変わっていったんです。

YAMAHACK青柳
さすがに無理はしなくなったんですね。良かった…。

製硯師
青栁さん
その頃くらいからですかね、だんだん見え方が変わってきたんですよね。硯はもちろん、人生に対しての向き合い方も変わってきた気がします。

病気と向き合う事で変わった「技術屋」から「継承者」へ

撮影:YAMAHACK編集部
硯を作るための石を探しに、日本はもちろん、中国まで行くことも。その過程で山に入り、様々な経験をする中、「仕事」や「人生」に対する考え方が変わってきたという青栁さん。

製硯師
青栁さん
石を探しに日本や中国の山に行くと、現地の山を散策しながら色々な人と接したり、特産物を色々食べたりしますよね。石を探しながら本当に様々な文化交流があるんですよね。

YAMAHACK青柳
確かに、たくさんの人との出会いがありますね。

製硯師
青栁さん
そうなんです。その交流を重ねていくと、これが”人を育てる”というんですかね。”毛筆のための道具”だと思っていたものが、単なる道具には見えなくなってきたんです。


撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
毛筆はアジア圏最古の筆記用具で、2千年もの歴史があるんですよね。その時代時代の人が、それぞれの想いを持つ人が山に入って、石を削って硯を作って…。その歴史を守り続けてきたんだな、と。
私達が話す「日本語」も筆記用具から派生しているので、今話している言葉を育んでくれたのは間違いなく「毛筆文化」なんです。

YAMAHACK青柳
2千年もの歴史…。

製硯師
青栁さん
私達の仕事は”技術屋”ではなくDNAを受け継ぐ”継承者”という想いにどんどん変わっていきましたね。最近毛筆って聞くと緊張する人が多いみたいなのですが、実は「誰でも気軽に使っていい道具」なんですよ。

山も毛筆も”気軽”に!そんな想いから始まった野筆セット



YAMAHACK青柳
「野筆セット」をどうして作ろうと思ったのか、聞かせてください。アウトドアと毛筆って普通に考えたら交わらない領域では?と思ったのですが。

製硯師
青栁さん
始まりはTVです。普段から硯を作る時にはモンベルの服を愛用させてもらってたのですが、それをTVで話しているのをモンベル会長の辰野さんが聞き、ある日ふらっと工房に遊びに来てくれたのがきっかけですね。


撮影:YAMAHACK編集部(今日の服もモンベル)
YAMAHACK青柳
今日着ているのもモンベルですね。PRですか?(笑)

製硯師
青栁さん
いや、ほんとに普段から愛用しているので、、今日もたまたまですよ(笑)


撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
その時、ちょっと墨を磨って軽く書いてみたんです。墨を磨っていたのも1分程度ですかね。そうしたら「こんな程度で文字が書けるのか!」と驚かれて、辰野会長に火がついたんです(笑)。

YAMAHACK青柳
1分くらいで書けるんですね!

製硯師
青栁さん
そうですね、少し書くくらいなら十分です。その後会長に硯をお贈りしたところ、辰野会長がサイン会などで愛用してくださるようになって。今でも行く先々で使用していただいてますよね。


野筆の原点
提供:青栁貴史(野筆の基になった、青柳さん愛用の筆セット)
製硯師
青栁さん
その後硯の調査に行っている時、ふとホテルの部屋から辰野会長にお電話したんです。
東日本大震災で壊滅してしまった宮城の石を使って、何か一緒に作りたい。携帯毛筆セットのような物を作ってみませんか、と。

YAMAHACK青柳
なるほど。そこから野筆セットはスタートしたんですね。

製硯師
青栁さん
ちょうど情熱大陸に出た後くらいからですかね、ペンケースをカスタマイズして、自分の日記や山に入る時用に筆や硯を持ち歩いていたんですよね。旅先とかでも使っていたんです。それが便利だ!というのが野筆セットの原点ですね。

”上手に書く”必要はない。

撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
不思議なんですけど、、筆を持つとみんななぜか緊張するんですよ。

YAMAHACK青柳
はい、、、うまく書かなきゃ!って自然と思っちゃいますよね。

製硯師
青栁さん
そういう点では、山も毛筆も似ているなと思う点があります。
「山=特別な訓練が必要、好きなだけじゃなきゃ行けない」という場所になっている気がするんです。でも山って、登るだけが「山の楽しみ方」じゃないですよね。”気軽に誰でも行ける場所”のはずだと思います。

YAMAHACK青柳
はい、そうですよね。街に遊びに行こうという感覚で、「じゃあ明日は高尾山行こう!」ともっと身近に山を楽しんで欲しいと私も思います。「どうせつらいんでしょ」「どうせ汚れるし…」といった山に対する”イメージ”が先行してしまっているため、実際に山に触れあう人が増えないのかな、と思います。

製硯師
青栁さん
毛筆も一緒で「毛筆=上手く書かなきゃ、きれいに書かなきゃ」って固定概念があると思います。でも、毛筆と習字は違うんです。字も文も流暢である必要もありません。送り手の想いを文で表すだけです。お相手のことを考えて墨を磨って筆を取る。その「最古の通信手段が」毛筆なんです。
「きれいに書かなきゃ」というより、「想いを伝える」という事が何より大切なんですよ。

YAMAHACK青柳
はぁー…。でもやっぱり毛筆はまだ緊張してしまいますね(笑)。

「返信を期待しない」デジタルな時代だからこそ体験して欲しい

撮影:YAMAHACK編集部(青栁さんが普段持ち歩いている砕石道具)
毛筆で書く手紙は「返信を期待しない」という青栁さん。青栁さん自身、山に入る時に筆や硯を持っていき、沢の水で墨を磨ってお便りを書くといいます。そこにはメールとは違った良さが。
製硯師
青栁さん
山って時間がゆっくり流れているじゃないですか。僕、その時間が好きで…。沢で水汲んで、そこでハガキでお便りを書いているんですよ。

YAMAHACK青柳
すごい…想像するだけで贅沢な時間ですね。

製硯師
青栁さん
書き始めたきっかけは仕事のためだったんですが。硯のための石を探しに山に行き、いい岩があるとそこで砕石して簡単な加工をするんです。そこで実際に硯としての機能を果たせるのか、現場で墨を磨って書くんですよね。その時に「せっかくだから、誰かにお手紙を書いたほうがいいな」と思ったんです。

YAMAHACK青柳
きっかけはずいぶんライトな感じですね(笑)

製硯師
青栁さん
街で忙しく仕事している人たちにメールをすると、相手が焦っちゃうじゃないですか。早く返信しなきゃって。なので「今こんな場所にいます!いつか一緒に山に来れたらいいですね」みたいに、返信を必要としない内容をお送りしているんです。それから、山に行くときの砕石道具の中に、筆や硯も一緒に入れて持ち歩くようになりました。

YAMAHACK青柳
……粋ですね。

その人にしか出せない”味”が出るのも、デジタルにはない旨味

撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
その人の人となりが表れるのも毛筆・墨の良さなんですよね。せっかちな人が墨を磨ると、色が薄いかもしれませんよね(笑)でもそれでいいんです。

YAMAHACK青柳
それが”味”ですか?

製硯師
青栁さん
はい。墨汁は全部が同じ色、真っ黒になってしまいますからね。それに、メールは間違えても何度も文字を修正できるじゃないですか。毛筆って修正が利かないんです。間違えたらその文字は残るんですよね。でもそれでいいんです(笑)

YAMAHACK青柳
間違えたところも含めて、その人が書いている背景が映し出されている、という事ですね。


撮影:YAMAHACK編集部
製硯師
青栁さん
日常には昔ながらの「和」が溢れているのに、いつの間にかそれが”非日常”のようになってしまっているんです。
「着物着れたら素敵だよね」「毛筆って出来るとカッコいいよね」と。そう思うのであれば、まずは一度やってみて欲しいですね!
自分がやったことに対してどう評価されるのか、という事を気にしてしまうのが多い日本人。周りを気にするのは向上心につながるので悪い事ばかりではありませんが、少なからずハードルを上げてしまっていると思います。そういう点も現代の特徴かもしれませんね。

YAMAHACK青柳
私が山に対して思っていることと同じです。そう聞くと、私も毛筆初めて見ようかな、という想いになりました。


製硯師
青栁さん
毛筆は「家で書く」っていう発想じゃなくて、「外で書く」という事が当たり前になればいいな、と思っています。

水数滴で文字が書ける!「毛筆が苦手…」な編集部が実際に体験

野筆を使っているシーン
「家で書く」という毛筆の概念を覆し、「外で書く毛筆」文化を広める足掛かりになる野筆セット。
従来の「習字=準備も片付けも大変」というイメージを一新する作りとなっています。

令和と書いてみました
ちょうど新元号発表の日だったので、今回は「令和」と書きましたが‥‥無理にきれいに書く必要なんてないんです!
毛筆文化と登山文化、一見別の世界のように聞こえてしまいますが、「野筆セット」はリュックにも場所を取らず収納でき、気軽に山に持っていくことができます。自然の中で筆をとる体験は最初は新鮮でしたが、やってみると意外と楽しくなってしまうもの。あまり肩ひじ張らずに、「今どこの山にいて何が見えるのか」、「どんな山にきているのか」そんな、その場で感じたことを思うがままに書いてみてはいかがですか?

風景印
出典:郵便局
編集部のおすすめは、山の中でしたためためた便りを風景印とともに送ってみること。一部の郵便局では窓口で「風景印を押してください」といえばその土地の文化や名所が描かれた風景印を押してくれます。

山も毛筆も”気軽に”楽しんで!

撮影:YAMAHACK編集部
同姓同名の力か、終始リラックスした雰囲気で熱い想いを語ってくれた青栁さん。次々出てくるクレイジーな体験話にも驚かされましたが、様々な経験をされたからこそ芽生えた真っ直ぐな想いが印象的でした。

「山も毛筆も、もっと気軽に楽しんで欲しい。」
青栁さんとモンベル、その双方の強い想いがこの”野筆セット”を通して新しい文化を作り上げていくのでしょう。

《mont-bell×青栁貴史》夢のコラボ「野筆セット」5月入荷予定!

出典:mont-bell
製硯師(せいけんし)の青栁貴史氏とモンベルが共同開発した野筆セット。
素材とフィールドでの使いやすさを吟味した硯板、筆、墨などをコンパクトなケースにまとめました。手軽に携行でき、フィールドで毛筆を楽しむことができるセットです。

野筆セット

硯板:宮城県石巻市雄勝町産の「玄昌石」を使用。手に持っても滑りにくく、耐久性に優れています。
《素材》玄昌石(ウレタンコーティング)

筆:筆先には書き味が非常に滑らかなウサギの毛を使用。先がよくまとまり、程よい弾力があるので、さまざまな大きさの文字をしたためることができます。
《素材》筆管:竹、穂:兎毛

墨:日本最大の墨生産地である奈良産の墨を使用。筆運びがよく、手紙はもちろん写経にも適しています。
《素材》煤(すす)、膠(にかわ)

水差し:「登竜門」の意味を持つ魚を象った水指しです。
《素材》ポリプロピレン

【重量】228g
【カラー】ダークネイビー(DKNV)、タイム(THYM)
【収納サイズ】高さ22.0×幅8.5×奥行き2.2cm

「野筆セット」についての詳細はモンベルでチェック

青栁貴史さん プロフィール

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師 青栁貴史(あおやぎたかし)
1979年2月8日 東京都浅草生まれ
16歳の頃より祖父青栁保男、父彰男に作硯を師事。
日本、中国、各地石材を用いた硯の製作、修理、復元を行う。
宝研堂 内硯工房四代目製硯師 大東文化大学文学部書道学科非常勤講師

《宝研堂》
住所:東京都 台東区寿 4丁目-1-11
電話:03-3844-2976
定休日:第2,4,5日曜・祝日
営業時間:9:00~18:00(月~土)/10:00~17:00(第1、3日)

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YAMAHACK編集部 川尻
YAMAHACK編集部 川尻

YAMAHACK運営&記事編集担当。長野県長野市生まれ。小さい頃から休みのたびに家族でアウトドアを楽しみ、自然に触れて育ってきました。たくさんの人達に山の魅力を伝え、ワクワクするようなメディアを作っていきたいです。

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