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モンベルが意外な【新商品】を発売!クレイジーな仕掛け人に聞く、新しすぎる登山の楽しみ方(3ページ目)

YAMAHACK青柳
「野筆セット」をどうして作ろうと思ったのか、聞かせてください。アウトドアと毛筆って普通に考えたら交わらない領域では?と思ったのですが。

製硯師
青栁さん
始まりはTVです。普段から硯を作る時にはモンベルの服を愛用させてもらってたのですが、それをTVで話しているのをモンベル会長の辰野さんが聞き、ある日ふらっと工房に遊びに来てくれたのがきっかけですね。

仕事中も着用しているモンベル

撮影:YAMAHACK編集部(今日の服もモンベル)

YAMAHACK青柳
今日着ているのもモンベルですね。PRですか?(笑)

製硯師
青栁さん
いや、ほんとに普段から愛用しているので、、今日もたまたまですよ(笑)

辰野さんと野筆

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師
青栁さん
その時、ちょっと墨を磨って軽く書いてみたんです。墨を磨っていたのも1分程度ですかね。そうしたら「こんな程度で文字が書けるのか!」と驚かれて、辰野会長に火がついたんです(笑)。

YAMAHACK青柳
1分くらいで書けるんですね!

製硯師
青栁さん
そうですね、少し書くくらいなら十分です。その後会長に硯をお贈りしたところ、辰野会長がサイン会などで愛用してくださるようになって。今でも行く先々で使用していただいてますよね。

野筆の原点

提供:青栁貴史(野筆の基になった、青柳さん愛用の筆セット)

製硯師
青栁さん
その後硯の調査に行っている時、ふとホテルの部屋から辰野会長にお電話したんです。
東日本大震災で壊滅してしまった宮城の石を使って、何か一緒に作りたい。携帯毛筆セットのような物を作ってみませんか、と。

YAMAHACK青柳
なるほど。そこから野筆セットはスタートしたんですね。

製硯師
青栁さん
ちょうど情熱大陸に出た後くらいからですかね、ペンケースをカスタマイズして、自分の日記や山に入る時用に筆や硯を持ち歩いていたんですよね。旅先とかでも使っていたんです。それが便利だ!というのが野筆セットの原点ですね。

”上手に書く”必要はない。

野筆 うまくかく必要はない

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師
青栁さん
不思議なんですけど、、筆を持つとみんななぜか緊張するんですよ。

YAMAHACK青柳
はい、、、うまく書かなきゃ!って自然と思っちゃいますよね。

製硯師
青栁さん
そういう点では、山も毛筆も似ているなと思う点があります。
「山=特別な訓練が必要、好きなだけじゃなきゃ行けない」という場所になっている気がするんです。でも山って、登るだけが「山の楽しみ方」じゃないですよね。”気軽に誰でも行ける場所”のはずだと思います。

YAMAHACK青柳
はい、そうですよね。街に遊びに行こうという感覚で、「じゃあ明日は高尾山行こう!」ともっと身近に山を楽しんで欲しいと私も思います。「どうせつらいんでしょ」「どうせ汚れるし…」といった山に対する”イメージ”が先行してしまっているため、実際に山に触れあう人が増えないのかな、と思います。

製硯師
青栁さん
毛筆も一緒で「毛筆=上手く書かなきゃ、きれいに書かなきゃ」って固定概念があると思います。でも、毛筆と習字は違うんです。字も文も流暢である必要もありません。送り手の想いを文で表すだけです。お相手のことを考えて墨を磨って筆を取る。その「最古の通信手段が」毛筆なんです。
「きれいに書かなきゃ」というより、「想いを伝える」という事が何より大切なんですよ。

YAMAHACK青柳
はぁー…。でもやっぱり毛筆はまだ緊張してしまいますね(笑)。

「返信を期待しない」デジタルな時代だからこそ体験して欲しい

毛筆で書く手紙

撮影:YAMAHACK編集部(青栁さんが普段持ち歩いている砕石道具)

毛筆で書く手紙は「返信を期待しない」という青栁さん。青栁さん自身、山に入る時に筆や硯を持っていき、沢の水で墨を磨ってお便りを書くといいます。そこにはメールとは違った良さが。

製硯師
青栁さん
山って時間がゆっくり流れているじゃないですか。僕、その時間が好きで…。沢で水汲んで、そこでハガキでお便りを書いているんですよ。

YAMAHACK青柳
すごい…想像するだけで贅沢な時間ですね。

製硯師
青栁さん
書き始めたきっかけは仕事のためだったんですが。硯のための石を探しに山に行き、いい岩があるとそこで砕石して簡単な加工をするんです。そこで実際に硯としての機能を果たせるのか、現場で墨を磨って書くんですよね。その時に「せっかくだから、誰かにお手紙を書いたほうがいいな」と思ったんです。

YAMAHACK青柳
きっかけはずいぶんライトな感じですね(笑)

製硯師
青栁さん
街で忙しく仕事している人たちにメールをすると、相手が焦っちゃうじゃないですか。早く返信しなきゃって。なので「今こんな場所にいます!いつか一緒に山に来れたらいいですね」みたいに、返信を必要としない内容をお送りしているんです。それから、山に行くときの砕石道具の中に、筆や硯も一緒に入れて持ち歩くようになりました。

YAMAHACK青柳
……粋ですね。

その人にしか出せない”味”が出るのも、デジタルにはない旨味

デジタルならではの深み

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師
青栁さん
その人の人となりが表れるのも毛筆・墨の良さなんですよね。せっかちな人が墨を磨ると、色が薄いかもしれませんよね(笑)でもそれでいいんです。

YAMAHACK青柳
それが”味”ですか?

製硯師
青栁さん
はい。墨汁は全部が同じ色、真っ黒になってしまいますからね。それに、メールは間違えても何度も文字を修正できるじゃないですか。毛筆って修正が利かないんです。間違えたらその文字は残るんですよね。でもそれでいいんです(笑)

YAMAHACK青柳
間違えたところも含めて、その人が書いている背景が映し出されている、という事ですね。

非日常

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師
青栁さん
日常には昔ながらの「和」が溢れているのに、いつの間にかそれが”非日常”のようになってしまっているんです。
「着物着れたら素敵だよね」「毛筆って出来るとカッコいいよね」と。そう思うのであれば、まずは一度やってみて欲しいですね!
自分がやったことに対してどう評価されるのか、という事を気にしてしまうのが多い日本人。周りを気にするのは向上心につながるので悪い事ばかりではありませんが、少なからずハードルを上げてしまっていると思います。そういう点も現代の特徴かもしれませんね。

YAMAHACK青柳
私が山に対して思っていることと同じです。そう聞くと、私も毛筆初めて見ようかな、という想いになりました。

製硯師
青栁さん
毛筆は「家で書く」っていう発想じゃなくて、「外で書く」という事が当たり前になればいいな、と思っています。

水数滴で文字が書ける!「毛筆が苦手…」な編集部が実際に体験

野筆を使っているシーン

「家で書く」という毛筆の概念を覆し、「外で書く毛筆」文化を広める足掛かりになる野筆セット。
従来の「習字=準備も片付けも大変」というイメージを一新する作りとなっています。

令和と書いてみました

ちょうど新元号発表の日だったので、今回は「令和」と書きましたが‥‥無理にきれいに書く必要なんてないんです!

毛筆文化と登山文化、一見別の世界のように聞こえてしまいますが、「野筆セット」はリュックにも場所を取らず収納でき、気軽に山に持っていくことができます。自然の中で筆をとる体験は最初は新鮮でしたが、やってみると意外と楽しくなってしまうもの。あまり肩ひじ張らずに、「今どこの山にいて何が見えるのか」、「どんな山にきているのか」そんな、その場で感じたことを思うがままに書いてみてはいかがですか?

風景印

出典:郵便局

編集部のおすすめは、山の中でしたためためた便りを風景印とともに送ってみること。一部の郵便局では窓口で「風景印を押してください」といえばその土地の文化や名所が描かれた風景印を押してくれます。

山も毛筆も”気軽に”楽しんで!

青柳さんとのトーク

撮影:YAMAHACK編集部

同姓同名の力か、終始リラックスした雰囲気で熱い想いを語ってくれた青栁さん。次々出てくるクレイジーな体験話にも驚かされましたが、様々な経験をされたからこそ芽生えた真っ直ぐな想いが印象的でした。

「山も毛筆も、もっと気軽に楽しんで欲しい。」
青栁さんとモンベル、その双方の強い想いがこの”野筆セット”を通して新しい文化を作り上げていくのでしょう。

《mont-bell×青栁貴史》夢のコラボ「野筆セット」5月入荷予定!

野筆セット

出典:mont-bell

製硯師(せいけんし)の青栁貴史氏とモンベルが共同開発した野筆セット。
素材とフィールドでの使いやすさを吟味した硯板、筆、墨などをコンパクトなケースにまとめました。手軽に携行でき、フィールドで毛筆を楽しむことができるセットです。

野筆セット

硯板:宮城県石巻市雄勝町産の「玄昌石」を使用。手に持っても滑りにくく、耐久性に優れています。
《素材》玄昌石(ウレタンコーティング)

筆:筆先には書き味が非常に滑らかなウサギの毛を使用。先がよくまとまり、程よい弾力があるので、さまざまな大きさの文字をしたためることができます。
《素材》筆管:竹、穂:兎毛

墨:日本最大の墨生産地である奈良産の墨を使用。筆運びがよく、手紙はもちろん写経にも適しています。
《素材》煤(すす)、膠(にかわ)

水差し:「登竜門」の意味を持つ魚を象った水指しです。
《素材》ポリプロピレン

【重量】228g
【カラー】ダークネイビー(DKNV)、タイム(THYM)
【収納サイズ】高さ22.0×幅8.5×奥行き2.2cm

「野筆セット」についての詳細はモンベルでチェック

青栁貴史さん プロフィール

製硯師 青栁貴史

撮影:YAMAHACK編集部

製硯師 青栁貴史(あおやぎたかし)
1979年2月8日 東京都浅草生まれ
16歳の頃より祖父青栁保男、父彰男に作硯を師事。
日本、中国、各地石材を用いた硯の製作、修理、復元を行う。
宝研堂 内硯工房四代目製硯師 大東文化大学文学部書道学科非常勤講師

《宝研堂》
住所:東京都 台東区寿 4丁目-1-11
電話:03-3844-2976
定休日:第2,4,5日曜・祝日
営業時間:9:00~18:00(月~土)/10:00~17:00(第1、3日)

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