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モンベルの新社長に普段聞けない質問をしたら、「モノづくり」への本音が聞けた(3ページ目)

辰野社長
私たちは登山用品を主に作ってるんですよ。


青柳
はい

辰野社長
そういう時に、例えば無駄な切り返し線をなくしたり、ポケットを最低限にしたり、そういうことを常に考えてます。

つまり、「デザインのためのデザイン」はしないようにしてるんです。



青柳
見た目のためだけにデザインはしないと?

辰野社長
あくまで機能のためのデザインを心がけています。

モンベルが掲げている「Function is Beauty=機能は美しさをまとう」は、「美しさのためのデザイン」を求めているわけじゃないんですね。


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提供:mont-bell(モンベルの製品は機能の中に美しさを見出し、年々洗練されてきた)


青柳
柄物とかもその考え方なのでしょうか?

辰野社長
機能面がスポイル(台無しに)されない形であればやるんですけど、たとえば無駄な刺繍とかそういうのはないですね。

カラーに関しても例えば雪山であれば視認性が第一ですし、すべては「その商品のコンセプトは何か?」から始めるんです。「ピンクが流行ってるから」とか絶対にしません。



青柳
そこに女性社員の意見も取り入れられたりするんでしょうか?

辰野社長
もちろん、一緒に決めてます。
ただ、「かわいいから」という意見があればそこにファンクション(機能性)は持たないので重要視しないですね。そこに機能的な側面があって初めて採用されます。

僕らの中では色味も一つの機能なんです。なので、アンケートでのユーザーの意見も重々わかるところというか・・・



青柳
デザインや色に関しての意見?

辰野社長
そうそう、だから極端な話、フリルを付けたらとか、もっとかわいいカラーに・・・とか、そういうのはないですね。

最近「ウルトラライト」な道具もたくさんありますが・・・

辰野社長

撮影:YAMA HACK編集部


青柳
最近はガレージブランドなどを中心に非常に軽量なザックやウェア、ギアが出ていて特に若い女性の支持の高さを感じることが多いです

機能面や軽さ、おしゃれさなど、様々な要素をみて自分たちがフィットするところを選んでいるような気がして感心します。


辰野社長
ウルトラライト(以下、UL)についても、何をもってULなのかを決めているかどうかですよね。

極端な話、薄い布とひもを組み合わせてULのカバンを作ることも可能です。



青柳
まぁ、確かにそう言われればそうですね(笑

辰野社長
パッキング方法とか重量バランスとか背中にかかる負担とかも、分かったうえでお客様が理解しているかどうかがポイントです。

メーカーが最低限の機能を持たせておきながら作るのか、とにかく軽さを優先させるのか、というところでお客様に各社が説明できてればいいと思います。



青柳
どこに重きを置くかで変わりますね。

辰野社長
軽さだけを追い求めれば削った重量分だけ置いてきた機能もあると思うんですよ。

さっきの「スペリオダウンジャケット」も強度に関しては昔に比べて一部捨ててる部分もあるんですよ。そこを説明できるかしないか。



青柳
どこを犠牲にするかというのも一つのコンセプトなんですね。

Light & Fast

撮影:YAMA HACK編集部

辰野社長
モンベルが掲げているもう一つのメッセージが「Light & Fast」。

これは会長が当時世界最年少で登攀したアイガー北壁に生死をかけて挑んだわけです。その時に装備を減らして素早く登頂することで危険を回避したんですね。
軽さというのも一つの「機能」なんです。



青柳
自分が求めていることがそのアイテムのコンセプトに合致するかどうか、きちんと見極めないといけないですね。

新社長が率いるモンベル。これから何が変わる・・・?


青柳
ちょっと時間も少なくなってきましたが、新社長になったということで、これからのモンベルは何かを始めたりやめたり、変わっていくことはあるんでしょうか?

辰野社長
特に何も変わらないです。


青柳
え・・・何も?

辰野社長
なーーーんにも変わらないです。
あはははは(笑)


青柳
マジか・・・それありきでインタビューしに来ちゃった・・・

辰野社長

撮影:YAMA HACK編集部

辰野社長
だって、僕の生まれたときからある会社で、ずっと見てきたんですよ。

社長が替わったからお客様のニーズが変わるわけではないですし、僕たちはお客様のためであり、フィールドを楽しむ自分たちのためにモノづくりをしていくことに変わりはないです。



青柳
ぐうの音も出ない

辰野社長
しいて言うなら、お客様のニーズを充足することが目的ではないということです。

お客様のイメージを超えていけるような提案をしていきたいと思ってはいますけどね。
例えば、この新作のテーブル


辰野社長

撮影:YAMA HACK編集部 2018年冬発売予定の新作「マルチ フォールディングテーブル」(16092円)

辰野社長
これはキャンプ用だけど、支える脚の部分を内側に向けることで自分の足が干渉しないようになってたり、普通は2段階のハイロー機能のところ、これは座卓までできる。

あとは天板も裏返して使えるから見た目は一緒でも用途に合わせて様々な使い方ができるようにしてます。



青柳
なるほど。私もファミキャンをしたりするので同じテーブルでもここまで機能的なものであれば確かに私も欲しい・・・。持ってる椅子が低いので座卓はうれしいです(笑

ちなみに、山用にもなにか作った新商品はあるんでしょうか?


トレールワレット

撮影:YAMA HACK編集部(トレールワレット)

辰野社長
山用でいえば、この財布(トレールワレット)。
とにかく軽い財布を作りたくて、表は高強度のナイロン、裏はウレタンでコーティングした薄い生地にしてます。
最強の生地と最軽量の生地を組み合わせて作ったんですよ。


青柳
登山で2つ折りの財布だとかさばるし、三つ折りの革の財布も重いし、確かに魅力的です。

この財布を作るアイデアを作るのってどのくらい時間をかけたんですか?


辰野社長
アイディアは5分(笑


青柳
え(笑

辰野社長
アイデアなんて誰でも思いつくんですよ。それをどうやって形にするかっていうのが大変なんです。


青柳
どこまで突き詰めてコンセプトに沿ったものを作るという点?

辰野社長
そうそう、でも、この財布はサンプルだけで7回作り直したんです。


青柳
結構シンプルに見えますけどねぇ。

辰野社長
そう、でもそれが大事なんですよ。

機能を突き詰めるとシンプルになっていってそれが美しさにつながる。「Function is Beauty」の一例だと思うんですよ。実際、すごく人気がでてます。

新社長が考える「遊び心」って?

社長室
撮影:YAMA HACK編集部(自身を「モノ好きの塊」というだけあって社長室には気になる道具がたくさんあった)

辰野社長
あとは、「PLAYFULLMIND(遊び心)」というのが、新しい社長としてのコンセプトであるかもしれないですね。

遊び心ってすごく大事だとおもっていて、ただ面白がるってことじゃないです。遊び心はまじめに基本を分かったうえでの遊びのことなんです。



青柳
全てを分かったうえでの「遊び」なんですね。でもちょっと待ってください。

「遊び心」って、先ほどからおっしゃっている「シンプルな機能美(Function is Beauty)」と比べると、ちょっと矛盾して聞こえるんですけど。


辰野社長
ある意味、そこは高度にリンクさせていかなきゃいけないと思ってますね。だから、どんだけそこに気づいてもらえるか。

思わず無意識にお客様が「あ、これこういう仕組みなんだ」とか「こんなによく考えられてるんだ!」と思わず説明がなくても気づいてもらえるようなことじゃないかな。

いちいち説明すれば「ああ、それは便利かもね」ってなるけど、そうじゃない。

使ううちに、それに気づいて思わずうなってしまうような仕掛けを盛り込んでいくのが必要だと思うんですよね。



青柳
細部までよく考えられたモノづくりに行き着きそうですね。

辰野社長
そうですね。あらゆる人を想像しながら僕らは作りたいものも明確にフォーカスしていて、それを「シンプルに見えて使い勝手がいい」という視点で作ってるんです。

だから、そういう意味で言うと、実は矛盾はしてなくて、創業当時の考え方から変わってないんですよね。


辰野社長

撮影:YAMA HACK編集部 辰野社長「そう!!細かいところに気づいてもらえた時は最高!」


青柳
「遊び心」の真意がわかったような気がします。今ご自身がそこにおいて考え方の信念になっているんですね。

辰野社長
僕、車とかの機械イジリが好きなんです。ビッグベアーのクマさん(※)も車乗っててそのつながりなんですけど、見えないところまで作りこむんですね。わかる人しか気づかないような仕掛けとか。


青柳
「くまさんが気づいてくれれば…!」みたいな(笑

辰野社長
そう!そうなんですよ!!

割とそういう気質なんで、モノづくりをするときは黙々と、シンプルに、かつ機能的なものを無意識のうちに作ろうという感じですね。



青柳
遊び心はあっても、そこに無駄なものはない。というイメージでしょうか?

辰野社長
無駄も許容の中に入った無駄であればいいけどね。そのもの自体の機能性や価値を下げる無駄は絶対にしない。

だから、どちらかというとドイツ的な考え方ですよね。機能がデザインみたいなものが好き。

理にかなったものを作りたいという思いはあるかもしれないですね。



青柳
ドイツ的というのはこれまでの話を聞いてきて、たしかにしっくりきました。
これを聞いたらモンベルのファンはもっとモンベルが好きになりそうですね。

辰野社長
ははは、そういってもらえると嬉しいねぇ~。もっと頑張らないとね!

辰野社長

撮影:YAMA HACK編集部

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