ロングハイキングとアドベンチャーレースから生まれた
アメリカには、東海岸の「アパラチアントレイル」や西海岸の「パシフィック・クレスト・トレイル」など、数千キロに及ぶロングトレイルがいくつもあります。それらを、数カ月かけて一気に踏破することをスルーハイクと呼ぶそう。
「長期間歩き続けるスルーハイクの場合、歩くことが日常となります。そうなると、週末だけのアウトドアレジャーとは違い、過剰な装備をできるだけ減らし、無駄なものは持ちたくないということになるわけです。ハイカーたちは、必要ない部分を極力削ぎ落とした、シンプルなザックを自作したり、1つの道具でいくつもの用途を兼ねるなど、使い方を工夫することによって荷物を減らしてきました。そういったハイカーのニーズに応える形で、シンプルで軽量なギアを作る小規模なメーカーが出てくるようになったんです」(土屋さん)
また、スルーハイクのムーブメントとは別に、ウルトラライトが生まれたもう1つの背景にあるのがアドベンチャーレースだそうです。
「スルーハイクの盛り上がりと時を同じくして2000年代初頭頃に、アドベンチャーレースの盛り上がりもありました。アドベンチャーレースは、山を走ったり、マウンテンバイク、カヌーなど様々なアウトドア競技を行いながら数日かけてゴールを目指すレースですが、早く動くために軽さを追求するメーカーが出てきました。それがもう1つのウルトラライト系ギアのルーツとなりました」(同)
ウルトラライト系のザック、どんなメーカーが作ってる?
ウルトラライト系のギアの開発は、以上のように、スルーハイクとアドベンチャーレースにコミットしてきたメーカーが担ってきたということなのです。
「スルーハイカーたちに支持されて発展してきたメーカーの代表的なところでは、アメリカのULA(ウルトラライトアドベンチャーイクイップメント)やゴッサマーギア、大手ではグラナイトギアやオスプレイなどもあります。また、アドベンチャーレースをサポートして発展してきたブランドとしては、イギリスのOMMやニュージーランドのmacpacなどがあります」(同)
そういったウルトラライト系のメーカーから、ビギナーでも使いやすいおすすめのザックを教えてもらいました。
日帰りハイキングに最適なトレイルバム「ビッグタートル」
まず日帰りハイキング用として選んでくれたのがトレイルバムの「ビッグタートル」(税込9,680円)。軽くて背負い心地が良く、日帰り登山であれば容量も十分です。
「最近の小型のザックはランニング用が多いのですが、これは昔のナップザックのような形をしています。トレイルバムは、ロングトレイルハイカーたちの意見を反映して物作りをしている日本のブランドですが、ビッグタートルは、このメーカーの中でも一番シンプルなバックパック。あまり大げさでないところが、スナフキンっぽくてかっこいいかなと思っています。容量は13〜19Lほど、重さは約250g。日帰りであれば、これくらいの大きさで十分だと思います」(同)
ウエストベルトなどは何もついていないものの、背負ってみるとフィット感があり、快適でした。
日帰りからテント泊まで自由自在なジマービルト「パイカパック」
次は、日帰りから山小屋泊まで、広い用途で使えるこちらのザック。ポケットや上部の吹き流しの部分を上手に使えば、テント泊にも使えるそう。
「ジマービルトは、アメリカの小さな工房で、ここにハイカーズデポが別注して作ったオリジナルが、このパイカパック(最大容量35L、重さ340g、税込25,300円)です。典型的なウルトラライトのザックを現代風にアレンジしたデザイン。上部の吹き流しを上に伸ばして容量を大きくしたり、ポケットを活用したりできるので、用途や行き先に応じて、容量に融通が利くのがいいと思います。素材は防水なので、ちょっとした雨なら中身が濡れることもありません(縫い目の防水加工は無し)」(同)
背負ってみると、ショルダーも柔らかく軽い。何よりも、シンプルなデザインなので、街でも使えそうなところがいいですね。ウエストベルトは後から付けることができるそうです。