アメリカ発祥のカルチャー・ウルトラライトって?

そこで、今回は、日本でウルトラライトを広めたことで知られる、三鷹のアウトドアショップ「ハイカーズデポ」のオーナー・土屋智哉さんに、ウルトラライト系バックパックのおすすめ5選を選んでもらいました。

ロングハイキングとアドベンチャーレースから生まれた

「長期間歩き続けるスルーハイクの場合、歩くことが日常となります。そうなると、週末だけのアウトドアレジャーとは違い、過剰な装備をできるだけ減らし、無駄なものは持ちたくないということになるわけです。ハイカーたちは、必要ない部分を極力削ぎ落とした、シンプルなザックを自作したり、1つの道具でいくつもの用途を兼ねるなど、使い方を工夫することによって荷物を減らしてきました。そういったハイカーのニーズに応える形で、シンプルで軽量なギアを作る小規模なメーカーが出てくるようになったんです」(土屋さん)

「スルーハイクの盛り上がりと時を同じくして2000年代初頭頃に、アドベンチャーレースの盛り上がりもありました。アドベンチャーレースは、山を走ったり、マウンテンバイク、カヌーなど様々なアウトドア競技を行いながら数日かけてゴールを目指すレースですが、早く動くために軽さを追求するメーカーが出てきました。それがもう1つのウルトラライト系ギアのルーツとなりました」(同)
ウルトラライト系のザック、どんなメーカーが作ってる?

ウルトラライト系のギアの開発は、以上のように、スルーハイクとアドベンチャーレースにコミットしてきたメーカーが担ってきたということなのです。
「スルーハイカーたちに支持されて発展してきたメーカーの代表的なところでは、アメリカのULA(ウルトラライトアドベンチャーイクイップメント)やゴッサマーギア、大手ではグラナイトギアやオスプレイなどもあります。また、アドベンチャーレースをサポートして発展してきたブランドとしては、イギリスのOMMやニュージーランドのmacpacなどがあります」(同)
そういったウルトラライト系のメーカーから、ビギナーでも使いやすいおすすめのザックを教えてもらいました。
日帰りハイキングに最適なトレイルバム「ビッグタートル」

「最近の小型のザックはランニング用が多いのですが、これは昔のナップザックのような形をしています。トレイルバムは、ロングトレイルハイカーたちの意見を反映して物作りをしている日本のブランドですが、ビッグタートルは、このメーカーの中でも一番シンプルなバックパック。あまり大げさでないところが、スナフキンっぽくてかっこいいかなと思っています。容量は13〜19Lほど、重さは約250g。日帰りであれば、これくらいの大きさで十分だと思います」(同)
ウエストベルトなどは何もついていないものの、背負ってみるとフィット感があり、快適でした。
日帰りからテント泊まで自由自在なジマービルト「パイカパック」


アルミフレーム搭載だけど軽いゴッサマーギア「マリポサ」

「ロングトレイルを歩く人に特におすすめしているザックです。重量は800g台、本体の容量は40Lで、ポケットも含めると60Lくらい入ります。ロングハイキングはもちろん、数日間かけて歩くようなテント泊の縦走、海外旅行などにも便利だと思います」(同)
激しく走ってもフィットするOMMの「クラシック」

「マウンテンマラソン、山岳レースのために作られたこのバックパックは、激しい体の動きにもぴったりフィットする安定感が特徴です。25L(全重量670g、15500円+税)と32L(全重量700g、16500円+税)では、背面の長さが違うので、女性には25Lを男性には32Lをおすすめしています。背面には就寝用のマットが内蔵されているので、日帰りのハイキングなら、これをランチシートとして使ってもいいと思います」
走ることを前提として作られたこのザック。フィット感があるので、重いものを入れても、あまり重さを感じないそうです。大き過ぎないサイズ感が、女性にも良さそうです。
機能性と軽さを両立させたmacpac「フィヨルド40」

「アドベンチャーレースが盛んなニュージーランドのブランドmacpacのフィヨルド40(24000円+税)は、フレームの代わりに薄いパネルをサイドに入れることによって、強度と軽さを両立させています。容量は40Lとテント泊にも十分対応している大きさ。雨蓋やヒップベルトは取り外しできたり、ハイドレーションパックにも対応しているなど、機能性と軽さを追求したバックパックです」(同)
ロングハイクだけじゃない、目的に応じて選ぼう

◆お話をお聞きした方:土屋智哉さん
1971年埼玉県生まれ。アウトドアショップバイヤー時代にアメリカでウルトラライトハイキングに出会う。2008年、ジョン・ミューア・トレイルスルーハイクののち、三鷹にウルトラライトハイキングをテーマとしたアウトドアショップ「ハイカーズデポ」をオープン。著書に『ウルトラライトハイキング』(山と渓谷社)がある。