出典表記のない画像はすべて筆者撮影
パタゴニアの名作「ナノエア」から再登場した超高通気モデル

冬の登山で使われることの多い「アクティブインサレーション」。生地の裏側には通気性に優れた中綿や起毛素材を使用し保温性がありながらも、汗の蒸れが逃げやすく、行動中でも着続けやすい特徴があります。

提供:パタゴニア
今では定番とも言えるアクティブインサレーションですが、その幕開けは2014年。パタゴニアから登場した「ナノエア」が始まりです。
それまでの化繊のインサレーションは、濡れても保温性が落ちにくいメリットがある一方、風をさえぎる性質があったため蒸れやすく、頻繁な着脱が必要とされていました。
ナノエアはこの問題を解決し、通気性を持たせたミドルレイヤーとして登場。蒸れにくく、伸縮性があり、動きやすい革新的なウェアとして、発売以来、登山やクライミング、バックカントリースキーなど、様々なアウトドアシーンで活躍してきました。
よりアクティブシーンに特化した「ナノエア・ライト・ハイブリッド・シリーズ」

フーディ・ジャケット・ベストの3タイプを展開。写真は「メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディ」 旧カラー
そんな「ナノエア」の保温性と通気性を見直し、よりアクティブなシーンを想定して開発されたのが「メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド」です。
2017年に発売されたこのモデルは、2019年に一時製造が中止されましたが、パタゴニア・アンバサダーからの熱望を受け、2023年に再販されました。
ハイブリッド構造が革新的な着心地を実現

注目すべきは、異なる2種類の生地が適材適所で組み合わされていること。
前面や腕・肩にはインサレーションが封入された生地があてがわれているのに対し、背中や脇の下にはフリース素材が使われています。
これにより、外気にさらされやすい前面は防風・保温・撥水などのプロテクション機能を持ち、汗をかきやすい背面は高いベンチレーションにより、蒸れが逃げやすく乾きやすい、という機能の最適化が実現されています。
ライター 橋爪
とはいえ、「2つの生地がうまく機能するのか」「強風下での行動は寒くないのか」など、冬のフィールドでの使い心地も気になるところです。
ということで、12月の八ヶ岳・中央アルプスで「メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディ」を使用してきました。そのレビューを紹介します。
常識はもう古い?新感覚の爽快&あったか行動着

モデル:169cm Sサイズ着用|スリムフィットでシルエットもスッキリしています
使ってみてもっとも顕著に感じたのが、行動着としてのクオリティの高さです。
私もアクティブインサレーションは好きで冬山ではいつも着用しているのですが、どうしてもバックパックとの兼ね合いで、背中側の汗による蒸れや濡れは避けられませんでした。
しかし、メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディは、これまでのアクティブインサレーションが抱えていた、汗をかきやすい部分の汗処理問題をサラッと解決。
ほどよく暖かく、それでいて、蒸れを感じさせず、冬の運動量が大きいアクティビティでストレスなく使える行動着だと感じました。
ライター 橋爪
正直なところ最初はちょっと舐めてたんですが、ここまで快適に行動できるとは……。
具体的にいいなと思ったポイントは
・2つの生地が効果的に機能を発揮し、ずっと着ていられること
・ウェアの細部まで使い心地が考えられた設計になっていたこと
・軽くてコンパクトに収納でき、持ち運びもしやすいこと
詳しくみていきましょう。
「ちょうど良い」が続く、ずっと着ていたいウェア

前面の「プロテクション」と背面の「ベンチレーション」という、異なる役割の生地がうまく組み合わさっていて、それぞれの機能を最大限に発揮してくれていました。
大げさな表現ではなく、行動中も“ずっと着ていたい”と感じる快適さがあります。
ライター 橋爪
参考までに、今回は中厚手のベースレイヤーの上に着用して使いました。
筆者の体質は代謝が良いため汗をかきやすく、脂肪が少ないためか、止まるとすぐに寒さを感じる傾向があります。
前はポカポカ、後ろはスーッと

これまで着てきたアクティブインサレーションと比べると薄い印象があったため、気温が-3度ほどの朝の出発時は多少の不安もありました。
しかし、歩き始めて程なく体は温まり、行動中は常に「蒸れないけど衣類内はポカポカしている」という、快適な状態が保たれていました。

筆者はコースタイムの0.8倍ほどで歩くため、ペースを上げると汗をかきやすい体質なのですが、それでも背中に汗の不快感を感じることなく行動を続けられたことに驚きました。
ライター 橋爪
背中側に意識を集中すると、スーッと通気が感じられ、たしかに蒸れが逃げているのがわかりました。
パタゴニア×東レの「フルレンジ・インサレーション」

前面側の表地には30デニールのリップストップ生地を採用。軽量で通気性に優れながらも対摩擦性が高い素材です。
その内側に、パタゴニアと日本の繊維メーカー「東レ」が共同開発した高い通気性を持つ40g・フルレンジ・インサレーションが封入されています。
ちなみに、「ナノエアシリーズ」は60g・フルレンジ・インサレーションを採用。つまり、ナノエア・ライト・ハイブリッドシリーズはナノエアシリーズよりも保温性を抑えた設計になっていることがわかります。
ジグザグパターンはおなじみの「R1エア」

背面側には、パタゴニアの人気フリース「R1エア」を採用。中空構造の糸とジグザグ状の起毛構造により、非常に高い通気性とほどよい暖かさを保持。寒い季節の激しい運動でも、重さを感じさせず快適な行動を促進させてくれる高機能素材です。
快適な気温を理解しておこう

テストした山行は気温が-3度〜5度ほどで、12月の山にしては気温が高めでした。あくまで私の感覚ですが、今回ぐらいの気温であれば、ベースレイヤー+メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディの組み合わせで特に保温性に不足を感じることはなさそうです。
逆に気温が10度以上だと、着ていて熱い印象。また、-5度以下での使用では、少し保温性に物足りなさがあるように感じました。歩くペースや体質、レイヤリングなどによっても変わってきますが、-5度〜10度の範囲が快適に使える気温かと思います。
ライター 橋爪
厳冬期などの寒冷下では、メンズ・ナノエア・ライト・ハイブリッド・フーディの下に薄手のフリースなどをレイヤリングして使うのもあり!
このような使い方であれば、-5度以下の環境でも行動着として問題なく使えるかと思います。
強風下ではアウター着用がベター

「風はどうなんだろう?」と思っていましたが、通気性が高い分、やはり侵入してきます。
中央アルプスでは稜線上で5〜10mの風が吹いており、背中や脇の下のR1エア素材の部分は風が入ってくる感覚が顕著でした。
今回は気温もそれほど低くはなかったため、このまま行動を続けましたが、風の強い日や稜線上では基本的にシェルを羽織った方がよいでしょう。
ライター 橋爪
前面の生地はそれなりに防風性があるようで、そこから風が入ってくる感覚はありませんでした。
