ヘッドランプ以外も手掛けるようになった、きっかけは出会い

マイルストーンはヘッドランプブランドですが、現在はトレイルブランドとして認知されています。トレイルランニング向け、ファストハイク向けのアパレルも多く展開しているからです。
「2014年にブランドを始めた時に、知人の紹介で帽子メーカーのCLEF(クレ)の代表・富田さんと出会って、お互い同じ頭につけるもんやから、なんか一緒にできそうやねって話してたんですよ。 それで、ヘッドランプを差し込めるような帽子を作ったんです」

そのヘッドランプ×キャップという異色のコラボ・プロダクトから、マイルストーンのトレイルブランドとしての一歩がはじまりました。それは、偶然の出会いによってはじまり、さらに広がっていきます。
「スリーピークスという山梨でやってるトレイルランニングレースに出展した際に、お客さんから「マイルストーンの帽子カワイイから、ギミックなしで普通に帽子としてやったら?」って言われたんです。で、富田さんに相談して、自分も帽子をしっかりやりたいっていうことを話したんです。
するとコラボではなく、特別にOEMしてもらえることになったんです。
だからクレさんのキャップとウチのキャップは同じ形なんですけれども、デザインだったり色だったりっていうのはオリジナルでやらせてもらってて、このキャップからヘッドランプ以外のプロダクトがはじまりました」
土井 陵さんとの出会いでは、マイルストーンも西岡さんも変化

西岡さんがフラッグシップとなるヘッドランプを開発したいと思っていた頃。出会ったのは、後に3つの日本アルプスを結び日本海から太平洋まで415kmを駆け抜ける「トランス・ジャパン・アルプス・レース」の大会新記録を果たす、トレイルランナーの土井 陵さんでした。
「ブランド設立当初のプロダクトは、ヘッドランプだけ。しかも、登山でもキャンプでも使えるというモデルを、言ってみれば浅く広く展開していたんです。それも中国の協力工場でつくっていて・・・・・・。
でも日本の自社工場、冨士灯器の工場で手掛けて、メイドインジャパンのハイエンドモデルをつくりたい。アウトドア用のヘッドランプのヒエラルキーのトップ、一番上のモノをつくりたいとも思っていたんですよ。そんな時に知り合いの紹介で出会ったのが土井さんです。
2年の開発期間を経てできあがったのは、トップのランナーが勝負レースで使うヘッドランプ『トレイルマスター』です」

この挑戦は、ブランドだけでなく、西岡さん自身も変えていくことになりました。
「 トレイルマスターをつくっている時から、人まかせだけじゃいけないなぁという気付きはありました。自分自身も走って、勉強せなあかんなぁと。とはいえ意図したわけじゃなくて、トレイルマスターを発売後、自然とブランド自体の方向が変わっていって、 なんだか自分も気づいたら走っていて。走っていたらこういうウェアが欲しいよねとか、どんどん作っていったっていうところかな。それが現在です。 はい、そうなんですよ」
ランニング仲間が入社して訪れた、ブランドとしての転機

当初、西岡さんと外部スタッフとの協力で進めていたマイルストーン。2022年、現在ともにディレクターとしてプロダクトを手掛ける吉田直史さんが、入社します。吉田さんは、アパレルメーカーで20年働いた経歴の持ち主で、服が好きな吉田さんの入社が、マイルストーンのターニングポイントになったといいます。
「普段からよく一緒に走ってたり、山に一緒に行ったりする友達やったんですよ。そんな吉田くんが転職したんですけれど、その会社がすごい忙しそうで、大変そうやったんです。 で、走りにも、山にも行けなくなって。 で、よかったらうち来ない? って誘ったのがきっかけですね」
共に走る仲間が加わったことで、マイルストーンのリズムはアップテンポとなり、機能的かつ面白いと感じられるアパレルを、さらに手掛けていくことになります。
「楽しそう!」、そう思わせるチーム『milestone』

トレイルランニングやハイキング用のバックパックで知られる『パーゴワークス』と手掛けた『RUSHLight』は、ヘッドランプ×ヒップバッグという、これも他にはない、かなり意欲的なプロダクトです。西岡さんは、パーゴワークスの斎藤さんとの出会い、仕事を振り返るなかで、こんなことを話しています。
「仕事って本気でやるんだけど、やっぱ遊び心があった方が絶対いいものも生まれるし、なんかちょっとこうね、プラスアルファの要素っていうのが僕はすごく大事だなと思ってるんです。斎藤さんからは、そういった影響も受けましたね」
遊び心。それはプロダクトからも、西岡さん、吉田さん、そして2025年からマーケティングディレクターとしてマイルストーンに加わった大森 遥さんの3人が醸し出す空気からも伝わってきます。

現在、マイルストーンを手掛けるその3人は、いずれもランナーです。100キロ、100マイルを完走、大森さんに至ってはウルトラレースで200キロも走る人。さらに3人でプロダクトのテストを兼ねて昨年2025年にアルプスを登り、熊野古道でもっとも厳しい大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)を今年2026年には3人で走破する予定もあるそうです。
今回の取材前夜、私は5年前の六甲山取材時に立ち寄ったクラフトビール店『VALLE SAGRADO(バジェサグラード)』を再訪しました。当時からランニング好きに愛されていたそのお店は、なんと大森さんがその直後から常連となっていました。そのことを店主の前田 潤さんからうかがい、そしてmilestone TERADACHOでもPOP UPを行ったことがあり、3人とは親しい間柄になっていることを知りました。
「3人は、それぞれに個性が違って、ランニングでも得意が違って、それがマイルストーンの楽しさ、面白さを生んでいると感じています」

マイルストーンのブログ、SNS、ポッドキャストやYouTubeを見た私のアウトドア系の知り合いは、「マイルストーンって、楽しそうだよね」とも、多くが言っています。3人からは、共にに楽しんで仕事をしている、マイルストーンを育て、自分自身を磨いている感じがするんです。
西岡さんは、3人で一緒に過ごした山や、一緒にやっているポッドキャスト、そして一緒に取り組んでいる仕事をこんなふうに思っています。
「山でも仕事でも、同じ目的を持った仲間と時間を共有することが、僕にとってはとても大事で、特別なんです。一応ブランドをスタートさせたから僕が代表ではあるんだけれども、みんな自分事のようにやってくれてると思うから、安心して意見も聞けるし、信頼もしてる。誰が上で、誰が下でとかじゃなくて、みんな横に並んで、同じ風景を見て、時間を共有している。だから会社ではあるけれども、チームって感じです」
出会いが生み出したもの

上の写真、インタビューの最後に出先から大森さんが戻ってきて、「3人で写真撮ってもらおう!」と西岡さんの提案で撮影したもの。この写真からも、3人の距離、空気が伝わると思います。
その距離、空気はマイルストーンのプロダクト、パッケージ、カタログ、プロモーションビデオ、さらにはイベントやSNS等を通して、ユーザーも共有したくなるものでしょう。
西岡さんにランニングにハマった理由を聞くと、
「出会いかな。 この年になって、僕今年 50 ですけど、なんか今でもどんどんと友達とか仲間が増えていくし、プラスの要素しかないから。 メーカーさんもそうですし、ユーザーさんもそうですし、友達もそうだし、刺激のあるフィールドですね。この年になって友達ができるって、他の友達や同い年の友達とかに聞いてもなかなかないから。
僕は本当にこうやってフィールドに出て、友達と同じ時間だったり、同じ状況を共有できるっていうのはすごく恵まれた環境だなといつも思ってますね。 はい。 こういう仕事をやっててほんまによかったなと思う」。
この西岡さんの想いは、きっと吉田さんとも大森さんとも共通しているに違いありません。チーム・マイルストーンの3人のセッションから生まれたプロダクトと晴れわたる笑顔が、そう思わせます。
