実はキャンプだけでなく、山も沢も大好きな代表&デザイナー小杉さん

ゼインアーツの代表であり、デザイナーでもある小杉 敬さん。
同ブランドを長野県松本市で立ち上げるまでは、国内アウトドアブランドでデザイナーを務めていて、プロダクトデザインに携わって30年以上。
その小杉さんのアウトドア歴は、「キャンプだけでなく、登山、ロッククライミング等も好きで、会社員時代から取り組んでいます」。
会社員時代に登った冬の八ヶ岳。そこで圧倒的に美しい景色に出合ったことが、ゼインアーツへとつながったそう。
「八ヶ岳の美しい冬景色を見て、あぁそうか、僕はこの景色が見たかったんだ!と気が付きました。キャンプ好きも登山好きも、それぞれ自然へのアプローチの仕方は異なります。
でも、僕自身がそうであるように、美しいと感じる心はきっと同じなんだと思いました。そこで、アウトドアギアを通してたくさんの人を自然の入り口にお誘いしたい!とゼインアーツをはじめることを決心したんです」。

ゼインアーツ立ち上げを決めた小杉さんには、当初4つのテントを準備していたといいます。
「3つはキャンプ用、1つは登山用です。その登山用テントは、ちょっと変わったフレームワークで、ヤールよりも軽量なものでした。ちょうどウルトラライト(以下UL)なギアや登山スタイルにハマっていた時期でもあったのですが、結局直前に登山用テントの販売は取りやめました」。
なぜでしょう?
「ULって、軽さを活かして、イメージ力を用いて、登れないと思っていた山に登れるようになる方法でもあります。だから男性に限らず、年配の方や女性等、体力的に自信のない人のなかには、軽量化に興味を持っている人は多くいらっしゃいます。
でも、反面でULギアについてはちょっと・・・・・・とも思っているようなんです。その理由は、安心、安全に使えそうにないということが大きい」。
当時を振り返る小杉さんは、当初考えていたUL登山用テントをそのまま発売していたら、きっと失敗していただろうともいいます。山好きからは、ちょっと斜めに見られたモノになっていたかもしれないともいいます。
使いやすさと、軽さの両立

「ゼインアーツというブランド、ギアが信頼を得てきた」と小杉さん自身が手応えを感じられるようになった、2024年。スタンダードなデザインで軽量な山岳テント『ヤール』を発売します。
この記事の冒頭で、「オートキャンプブランドが、山岳テント?」と書きましたが、そんな斜めな目線は、多くの真っ直ぐに道具そのもののよさを見る目線にかき消されました。
「キャンプ用のギア同様に、多くの人に使ってほしい、使いたいと思ってもらえるよう、軽さにだけ特化するのではなく、安心、安全の範囲を越えないモノへと、時間を掛けて仕上げたテントです」。
それはX字フレームで山岳テントのスタンダードなスタイルだけれども、最小重量は2人用でも1キロ以下と軽量な『ヤール』。山岳テントよりも軽く、ULテントよりも丈夫。耐風性を上げる工夫を凝らした吊り下げ式で設営がしやすく、出入口も広く、快適そうなことは、一目瞭然。

それに恐らく多くの登山好きの心を捉えたのは、スペック以上にそのカラーだったかもしれません。
「エマージェンシーカラーの必要性も理解していますが、現在の多くの方が楽しまれている登山の領域においては、自然のなかに溶け込むシックなカラーで、より自然と一体になれるカラーでも良いのではと思い、グレーにしました」。
見えないところでの機能性も見逃せません。ボトム素材には20Dの薄いナイロンながら、30D同等の引き裂き強度を得られるシリコーンコーティングを採用。軽さ追求型ではなく、軽さと強度、使いやすさを装備したバランス型テントを目指したこだわりの素材です。
「軽いけれどもUL仕様の軽さに特化したテントではなく、スタンダードな山岳テント同様の安心感があって、でもしっかりと軽い。水や食料、燃料を除いた装備重量=ベースウェイト10キロ以下を目指すためのテントです」。
それはULではなく、ライトウェイト。ゼインアーツが提案したのは、多くの人にとって安心感のある軽さといえます。
自らの体験を通して、使いやすい道具で登山をしてもらうために
軽さだけでなく、使いやすさ、安心感のある道具。それを具現化するために、小杉さんは、自らデザインした道具を、登山で使い、検証しているそうです。
「これまで使ってきた道具の課題を洗い出し、解決のための仮説を立て、サンプルをつくり、山で検証、体感。そのサイクルで道具づくりを行い、ひとつひとつの道具を時間を掛けて、どうすればよくなるのかを詰めていっています」。

例えば寝袋の『クモ』は、放熱の少ないボックス構造や首元から温まった空気が逃げないようにするボリュームのあるネックチューブを装備。
暖気が逃げていかなければ、冷気は侵入しにくくなりますが、さらにサイドジッパーを通常よりも上側に装備して、冷気が入りにくい仕様に。よく考えられた構造になっています。
小杉さんが手掛ける道具は、さまざまな体験、そして検証を経て、考えて、機能を積み重ねて、生み出されているのです。

考える。そのことで印象に残ったのは、小杉さんに好きな登山スタイルを聞いた時です。
「一番面白いのは、沢登りですね。切羽詰まった状況に身を置くと、どうやって乗り越えようか、ヒリヒリした状態になるのが、好きなんです。
簡単な沢でも、滝をそのまま登るか否か、左に行くか、右にまわり込むか。遡行図もありますが、それらは他人が書いたもの。それに地形は大雨が降れば変わります。
だから自分で目印になるものを見つけて、考える。GPSに頼っていると見えないものを、見て、考えて、立体的に記憶していくのが面白いです」
小杉さんは、その過程を「自由」と捉えているそうです。
「スマホを置いて、すべてを忘れて、集中できるのが、沢登り」という自由な時間だといいます。もしかすると、沢登りだけでなく、モノづくりも、小杉さんは固定観念に捕らわれない「自由」さを、大切にしているのでしょう。
機能と美は異なるもの

ところで、RabのバックパックやHanwagのトレッキングシューズが、神戸三宮店で販売されている理由が、気になります。それだけモノづくりに真摯に向き合っている小杉さん、ゼインアーツであれば、自ら手掛けるということも考えたのではないでしょうか?
「バックパックにしても、シューズにしても、その道のプロが積み上げてきたモノと同等、それ以上のものは簡単にはつくれません。それは曲線でできた人間の身体にフィットさせるパターンもそうですし、どうやって縫っているのかさえもわからない奥深さがあって、感動するレベルでスゴイんです」。
RabもHanwagも、小杉さん自身が使い、感動した道具だそう。

それに、こんな話も聞かせてくれました。
「機能美という言葉がありますが、機能を追求、積み上げていけば、その道具は美しくなると、僕自身もある時まで思っていました。でも、いつまで経っても、そうならないんです。それは、機能と美は異なるものだからなんです。
そこで、機能と美を同時進行、別々に詰めていったら、すごく上手くいくようになったんです」
そしてゼインアーツのモノづくりの根幹にあるものは、次のようなことです。
「変わったモノをつくりたいわけではありません。ギミックも評価されることが多々ありますが、シンプルな道具の方が、使いやすくて、長く使えるモノになります。
自分たちはアーティストではなく職人です。だから、それを使った人がやりたいことができるようになる、快適になれる、アウトドアに興味を持った人をサポートできる道具をつくろうと思っています」
本質を突き詰めた美しい道具、楽しみ方を知る場所

ゼインアーツ神戸三宮店。そこは、ゼインアーツが手掛けた道具と出合い、触れて、聞いて、フィールドや山で使う時間、風景を想像できる場所となりそうです。
ネットでもいろいろな情報を得ることができる時代ですが、実際に並べられたさまざまな美しい道具を見れば、アウトドアへの一歩、山の新たな楽しみ方を知ることができるでしょう。
ゼインアーツ神戸三宮
- 所在地:〒650-0033 兵庫県神戸市中央区江戸町98番地1 東町・江戸町ビル102
- 営業日:インスタグラムのハイライトでご確認ください。
- 営業時間:11:00 – 19:00
- 電話番号:090-3270-0549
- 定休日:火・水(祝日営業)
- 最寄駅:JR/三ノ宮駅、阪急電鉄/神戸三宮駅、地下鉄/三宮駅
- 駐車場:なし/近隣有料パーキングをご利用ください。
