街でよく見かける「四角のリュック」ですが……
突然ですが、皆さんはこちらの四角いバッグを知っていますか?
店頭で見かけたことがある、友人が背負っていた、もしくはすでに持っている方もいることでしょう。これは「カンケンバッグ」といって、世界的なベストセラーのデイバッグ。日本でも人気が高く、カジュアルショップやアウトドアショップがこぞって販売しています。
スウェーデンでは「ランドセル」のようなリュックらしい
カンケンバッグが誕生したのは、1978年のこと。発売当初から北欧にあるスウェーデンではスクールバッグ(いわゆるランドセル)に採用されており、かれこれ43年も愛され続けているロングセラーでもあります。
では、歴史的な名作でもあるカンケンバッグが、どこのブランドの商品か、皆さんはすぐに答えることができますか?
キツネマークの北欧ブランド<フェールラーベン>とは?
カンケンバッグを作っているのは<フェールラーベン>という北欧スウェーデンのブランド。1960年創業と歴史があります。ちなみに「カンケン」はスウェーデン語で「持ち運ぶ」を意味します。
ロゴマークに描かれているイラストは、スウェーデンを含む北極圏に生息する北極キツネ。フェールラーベンとはスウェーデン語で北極キツネを表す言葉でもあるのです。
このフェールラーベン、カンケンバッグを背負っている日本でのユーザーから想像するに「カジュアル寄りのブランドでしょ?」と思われるかもしれません。
しかし、実際のブランドコンセプトは、その真逆。本格的なバックパックやテントを手掛ける、本格派アウトドアブランドなんです。
バックパックだけじゃなく、テントやウェアもあるとは!
フェールラーベンがガチのアウトドアブランドである証拠は、日本の公式サイトが分かりやすいでしょう。実はカンケンバッグは数ある商品の一部でしかなく、本格的なバックパックやテントも豊富にラインナップ。さらに、ウェアも展開する総合ブランドであることが分かります。
そもそもブランドが立ち上がったきっかけは、創業者のオッケ・ノルディンが、スウェーデン北部から北極圏へ向かう冒険の中で使う、テントやフレームバッグ(背負子に似たバックパック)を開発したことに始まります。以降、バックパックに代表されるトレッキング向けアイテムを数多く手掛けてきました。
大自然を体験できる110kmのトレッキングイベントも主催
また、フェールラーベンは、スウェーデンにある全長450kmにも及ぶ「クングスレーデン(日本語訳:王様の散歩道)」というロングトレイルの一部に当たる、110kmを踏破する「フェールラーベンクラシック」というイベントを、2005年から毎年開催(※)。毎回、世界各国のトレッキング愛好家が2000人も参加し、チケットの入手が非常に困難といわれることからも、その人気ぶりが伺えます。
運良くチケットを入手できた参加者は、日本でいうお盆の時期に、大自然の中でテントに寝泊まりしながらトレッキングを体験。4泊5日を目安に、一歩一歩大自然を感じながらゴールを目指します。
このイベントは、創業者であるオッケ・ノルディンの「より多くの人々に自然を感じてもらいたい」という夢が形になったもので、フェールラーベンは、大自然を体験できるトレッキングで使える商品を主力として展開するブランドなのです。
本格トレッキングパック「Abisko Friluft 45」を使ってみた!
フェールラーベンが展開する本格的なトレッキング向きのバックパックは、日本でも入手可能。今回は国内輸入代理店の協力のもと、山小屋泊に適した「アビスコ フリルフト 45」というモデルを借りて、質感や機能を確かめてみました!
まずはスペックチェック!
素材 | 本体:G-1000(ポリエステル 65%、綿 35%)、裏地:ナイロン 100% |
サイズ | 高さ68cm x 幅32cm x 奥行き30cm |
容量 | 45L |
重量 | 1600g |
Abisko Friluft 45の基本スペックは、容量45Lで、重量は1600g。本体重量から、昨今の流行りである軽量パックとは一線を画すモデルであることが分かります。
フェールラーベンの商品は、夏は30℃近くまで気温が上昇する反面、冬になると零下まで寒くなるというスウェーデンの厳しい環境で長く使えること、そして大切な自然に与える負荷を減らす観点からも、軽量化よりも耐久性が重視されます。
素材はフェールラーベンが独自開発した「G-1000」
そして、理想の耐久性を実現するために開発されたのが、Abisko Friluft 45にも使われている「G-1000」という独自素材。これは「ポリエステル65%+コットン35%」という繊維を高密度に織ることで生まれた生地に、こちらも独自開発した「グリーンランドワックス」というワックスを含浸させた素材です。
ワックスを塗って、「ザックを育てるひと手間」がよい!
実はこの「G-1000」という素材は、ほかのブランドザックのようにPUコーティングによって、耐水性を確保しているのではありません。パラフィンと蜜蝋からなる「グリーンランドワックス」をユーザー自らが塗り込むことで、耐水性が高まるのです。
考え方によっては「ひと手間かかって面倒くさそう……」となりますが、この「ひと手間」によって道具への愛着が増すと、じわじわとこだわり派のアウトドアマンによって、人気が高まっているそうなのです!
しかも、性能が低下した場合は、再び「グリーンランドワックス」を塗ることで、半永久的に元の品質を保てるという優れもの。「G-1000」はバックパックだけでなく、ジャケットやパンツなど主にアパレル製品に使われています。
G-1000とグリーンランドワックスの2つを用いた製品は、「耐久性」「撥水性」「防風性」「通気性」「UV保護性能」など、アウトドアギアに必要な性能をすべて備えているといっても過言ではありません。
使ってみて良いと思ったポイント3選
「G-1000」で作られるAbisko Friluft 45は、コットンライクな質感が特徴のひとつ。また、自然に調和した色合いもフェールラーベンのアイテムに共通するポイントです。そのほかに、実物に触れることで良いと思った特長を3つ紹介しましょう。
背中が暑くならないバックパネル
バックパネルに背中と荷室の間に隙間が生まれるトランポリン構造を採用しているため、背中に熱がこもらず、涼しさを感じながらトレッキングを楽しむことができます。サマーシーズンの登山にもってこいの機能ですね。
荷物が出し入れしやすいフロントアクセス
荷物をパッキングするときは、フロントパネルにある両サイドのファスナーを開くことで、メインコンパートメントにガバっとアクセス可能。これなら山小屋に到着したあと必要な荷物も素早く取り出せます。
腰を優しく包むヒップベルト
ヒップベルトに注目すると、骨盤を包むようにコの字型にデザインされているのが分かります。ヒップベルトが腰骨の出っ張る部分と擦れないので、ストレスがない快適なフィット感を実感できました。
大型から変わり種まで!本格トレッキングパック2選
フェールラーベンがラインナップするバックパックは、「アビスコ フリルフト 45」だけではありません。最後にブランドおすすめのアイテムを2つ紹介しましょう。
テント泊にはコレ!「Kajka75」
カンケンバックと同じ「ビニロンF」という、燃焼時に有害物質の発生がコットンよりも少ない素材を使用した大型バックパックの「カイカ 75」。「アビスコ フリルフト 45」は山小屋泊を想定しているため、テント泊ならこちらがおすすめ。
バックパネルに珍しい特長が秘められていて、背面長を調整できるフレームが白樺の木で作られています。環境に配慮したフェールラーベンらしいバックパックと言えるでしょう。
素材 | 本体:ビニロンF、600D(ポリエステル100%)、フレーム:白樺 |
サイズ | 高さ80cm x 幅37cm x 奥行き29cm |
容量 | 75L |
重量 | 3300g |
歩き疲れたら一休み♪「Singi stubben」
「シンギ スタッベン」はハンティング向けに開発されたバックパック“Singiシリーズ”のひとつ。「G-1000」で作られており、コットンライクな質感と耐久性の高さが魅力です。
商品名の「stubben」とは、スウェーデン語で「切り株」を意味する言葉で、まさに切り株のように腰掛けて使えるのが、こちらのバックパックのおもしろいポイント。
本体には丈夫なフレームが入っており、雨蓋には座面になるパッドが入っています。屋外フェスや人気コンサートの入場待ちなど、ちょっと座りたいときに役立ちそうですね!
素材 | 本体:G-1000(ポリエステル65%, 綿35%)、500D(ポリエステル100%) |
サイズ | 高さ52cm x 幅27cm x 奥行き24cm |
容量 | 27L |
重量 | 2100g |
大自然&ギアと長く付き合えるのが、フェールラーベンの魅力
実は筆者もフェールラーベンのことをカジュアルブランドとばかり思っていて、コンセプトや商品ラインナップを知るほど、このブランドに興味が湧いてきました。
軽量コンパクトとは異なる路線で作られた商品が多いですが、トレッキングで大自然を感じ、環境を大切に想う気持ちが込められています。ブランドコンセプトに共感できるアイテムは、ハード面からもソフト面からも、今後のアウトドアアクティビティーを豊かにしてくれることでしょう。カンケンバッグだけじゃない、フェールラーベンのアイテムを要チェックです!