エクストリームスモック

20年以上愛用している真冬の行動保温着『エクストリームスモック』|定番道具のモノ語り#7

1998年から日本でも発売がはじまったアウトドアブランド<MONTANE(モンテイン)>。当時から現在まで継続して販売されているウエアに『エクストリームスモック』があります。そのスモックは最近流行りの行動保温着の元祖的ウエア。20年以上も使い続けた完成度、耐久性の高さを解説します。

目次

アイキャッチ画像:PONCHO

ミスマッチ、オーバースペックで使いこなせなかったモノ

モンテインのアウター

撮影:PONCHO

1998年、イギリスのアウトドアウエア・ブランド<MONTANE(モンテイン)>が日本に上陸。その年から、冬の山へと向かう際に、私の防寒着の定番になったのが『エクストリームスモック』です。

早いもので、もう24シーズン目。これほど長く使い続けることができたウエアは、私の場合、次回取り上げようと予定しているウールのセーターと、このスモックだけです。

冬のアクティビティー

撮影:PONCHO

アウトドアアクティビティを趣味として、そしてアウトドア雑誌の編集部員、編集・ライターという仕事を続けながら、これまで多くのウエアや道具を購入し、使ってきました。

しかし、購入の際には選んだウエアや道具に魅力を感じて手に入れたのですが、使ってみると、ミスマッチ、オーバースペックなモノも多くありました。

例えば舗装路を走って旅することがメインなのにマウンテンバイクに乗っていたり……。

山道具であれば、1週間以上のハイキングをすることはほとんどないのに、80Lもの容量のある大型バックパックを手に入れ、実際には物置に仕舞ったまま……、雪山登山やアイスクライミングをしないのに、高所登山対応の分厚いダウンや化繊の保温ジャケットを低山ハイクで着て、大汗をかいたり……。

まったく役に立たなかったとはいえませんが、それらの道具やウエアが持つ機能を使いこなせなかったことは事実です。

高機能さに憧れて手に入れた一着

雪上を滑る筆者

撮影:PONCHO

高機能な道具やウエアって、それを使い、着用するだけで、なんだか自分のスペックが上がったような感じがしてとても魅力的です。だから、欲しくなる。

『エクストリームスモック』も、そうした高機能さに憧れて手に入れたモノです。

エクストリーム=極限という商品名で、アンダーシャツの上に着用するだけで充分にあたたかいこのスモックは、いつか冬のアルプス登山にも行くぞっ!と、意気込んで手に入れたウエアでした。

モンテインのロゴマーク

撮影:PONCHO

けれども、私が向かう冬の山は、軽アイゼンやチェーンスパイクで登る低山、スノーシューでハイクする雪原といったレベル。まるでエクストリームとは無縁のフィールドです。

ただそんな楽しみが中心のフィールドでも、『エクストリームスモック』は意外なほどに快適で、ちょうどよいウエアとして機能してくれました。だから、20年以上も愛用しているのだと思います。

レイヤリングではなく、一着で状況に対応する行動保温着

アウターを着用した筆者

撮影:PONCHO

近年、アクティブインサレーションとか行動保温着と呼ばれるウエアが、冬のハイキングや冬山登山向きのウエアとして主流になってきています。レイヤリング時のミドルレイヤーとアウターレイヤーの機能を一着で併せ持つのが、行動保温着です。

冬は気温が低く雨は雪になるため防水性を必要とするシーンがほとんどありません。そのため行動保温着は、表地に撥水性や速乾性を備えているだけ。レインウエアやマウンテンパーカのように防水透湿メンブレンを装備していないので、通気性に長け、ウエア内はムレにくく、オーバーヒートもしにくいのが特徴です。

レイヤリングの場合は、気温や天候に合わせて脱ぎ着しなければなりませんが、行動保温着は脱ぎ着の必要なし。一着で、冬山の多くの状況に対応してくれるのが利点です。

内側はフリース生地

撮影:PONCHO

『エクストリームスモック』は、その行動保温着同様の考え方でつくられたウエアです。しかも20年以上も前に!

当時、行動保温着というジャンルはありませんでしたが、ウィンドブレーカーに吸汗速乾素材の内張りや保温のためのフリース地を貼ったウエアはありました。『エクストリームスモック』が新しかったのは、より保温性を重視してパイル地のフリースを貼ったことです。

また軽量でしなやか、速乾性に長けた“PERTEX”という素材を、他のアウトドアブランドに先駆けて表地に採用。伸縮性はありませんが、ゴワつくこともなく、動きにくさを感じることもありません。

素肌に直に着ても大丈夫!?

スモックの内側

撮影:PONCHO

裏側全面に貼られた吸汗速乾性のある厚手のパイルフリースは、中厚手のダウンや化繊インサレーションウエア同様の保温性があると感じています。

発売当時、某アウトドア雑誌では、アンダーシャツを着ず、素肌にこの『エクストリームスモック』を直に着るフィールドテストも行なっていました。アンダー、ミドル、アウターレイヤーの機能を、これ一着でカバーできる高機能ウエアとして紹介されていましたが、私は素肌の上に着てハイキングしたことはなく、アンダーシャツに合わせて使用しています。

昨今の行動保温着は、軽量中綿や内張りを採用して、重量が400g前後。対して、『エクストリームスモック』は厚手のパイルフリースを内張りしているので840gとかなり重いです。暑くなって脱ぐと、だいぶ嵩張ります。だから、脱ぐ必要のない気温、季節限定で着用しています。

重量あるスモック

撮影:PONCHO

春が近づき気温が10度近くまで上がってしまうと暑く、気温が0度以下で行動できる季節が、私の場合の着用シーズン。しかし私は暑がりなので、寒がりな方なら、気温10度くらいでも快適かもしれません。

暑さを感じたら、歩みを緩め、オーバーヒートしないようにして、その後にやってくる汗冷えを防いでいます。冬山では急がず、ゆっくりと進むことが安全を確保することにもなるので、ちょうどよいのです。

スモックというアウトドア向きのスタイル

2着のスモック

撮影:PONCHO

今回、『エクストリームスモック』という、フロントジッパーが半分ほどしか開かないスモックタイプを取り上げていますが、実は私は『エクストリームジャケット』というフロントジッパーがフルオープンするジャケットタイプも持っていて、今も愛用しています。

このジャケットは、脱ぎ着がラクなので主に街着にしています。

サイドのベンチレーション

撮影:PONCHO

一方でスモックタイプは、脱ぎ着が面倒ということもあって、日本では不人気のスタイル。

でもスモックタイプのウエアは、アウトドア、山で着続けることを前提にすれば、防風性、保温性に長け、フロントジッパー、ジッパーをカバーするフラップと面ファスナーのゴワつきもないので動きやすく、とても機能的です。

脱ぎ着しやすいスモック

撮影:PONCHO

それに『エクストリームスモック』は脱ぎ着を少しでもラクにするため、身頃の左右にジッパーを備えています。

この左右のジッパーは、脱ぎ着以外にも利点があるのです。

ウエストベルトを身頃の下に通してゴワつき防止

ウエストベルトを内側に通す

撮影:PONCHO

それはこの左右のジッパーを開いて、バックパックのウエストベルトを前身頃の内側に通して締められる点。

前身頃に備わったハンドポケットやカンガルーポケットへのアクセスを邪魔しません。スモックの上からウエストベルトを締めるとゴワついて動きにくくなりますが、その心配もないのです。

後ろから見た図

撮影:PONCHO

身頃左右のジッパーは上下どちらからでも開閉できるダブルジッパーなので、寒い時にはウエストベルトに合わせて閉められます。暑さを感じたらジッパーを開けたままウエストベルトの上に被せ、ベンチレーションとして機能させることもできます。

この仕様は、ジャケットタイプでは装備できない機能なのはもちろん、スモックタイプでも装備しているウエアをほとんど見たことがありません。

モンテインは、こういう細部へのこだわりが秀逸です。

使い勝手を考慮した細かい仕様は他にも

細かいポイント

撮影:PONCHO

『エクストリームスモック』には、フィールドで「おっ!」と感心する仕様がいくつもあります。

まず袖に備わったリング。これはオーバーグローブを連結することで、オーバーグローブを行動中に外した際に落下、紛失を防止するものです。この時期のアウタージャケットには多く採用されていましたが、最近は少数派。

バックル付きのスモック

撮影:PONCHO

裾にはバックルで開閉できるストラップを装備しています。このストラップを股の下に通して閉めることで、ラッセル等、激しく動いた際に裾がまくりあがったり、雪が進入することを防いでくれます。使用しない時には、丸めて後ろ裾にまとめておけ、邪魔にならないようになっています。

ポケットの内側

撮影:PONCHO

身頃の左右に備わったハンドポケットの内側には、ウエアの内張りと同じパイル地のフリースが貼られています。手先をポケット内に入れた時に温かいのはもちろん、寒い冬山ではスマホやデジカメ、ライトの電池消耗を防ぎながら、使いたい時にすぐに取り出せるので便利です。

長く着続けるられるということ

味のあるスモック

撮影:PONCHO

最後に、最も感心している点について。

なんといっても耐久性の高さです。

化繊素材は、劣化することが必然です。20年前に手に入れたテント、バックパック、レインウエア、インサレーションウエア、そのほぼすべては化繊製。どれも劣化して、当初の機能を発揮できなくなり、処分することになりました。

しかしこの『エクストリームスモック』そして『エクストリームジャケット』は、20年以上使って少しヘタったものの、機能的な劣化は感じません。

私が冒険的なハードなアクティビティで使用していないということもあるのかもしれませんが、それにしてもこの耐久性の高さは、他にはない機能です。

筆者が愛用しているスモック

撮影:PONCHO

アウトドアウエア、そしてアウトドアの道具は、自然の中で使用する人をサポートし、その高機能によって命を守るためにつくられたもの。加えて、長く使えるという耐久性の高さによって、限りある地球の資源を無駄にしないことも大切な役割です。

ファッションブランドやアウトドアテイストのアイテムとの大きな違いは、耐久性の高さにあります。

『エクストリームスモック』は、最新の行動保温着と比較すれば、運動性や軽量性は劣ります。でも、新しいものに買い替えようと思う程の機能の差を、私は感じません。

筆者とスモック

撮影:PONCHO

防水透湿ウエアが5年程度で寿命を迎えることを考えれば、このウエアの耐久性はエクストリームといえるでしょう。軽さを重視した最新の行動保温着が、同じくらいの耐久性を備えているかはわかりません。

20年以上前に発売された『エクストリームスモック』は、マイナーチェンジされているものの、現在も継続して販売されています。そのことは完成度の高さを証明するとともに、モンテインというブランドが、この『エクストリームスモック』に注ぐ熱量の高さを感じます。

そういうブランド、そういうウエア、道具を見つけ、使い続けてきたことを誇りに思います。

ところで『モンテイン』は今シーズン輸入代理店変更でほとんど流通していません。来シーズンから新しい代理店が販売するようなので、是非『エクストリームスモック』を扱ってもらえたらと期待しています。

それでは皆さん、よい山旅を!

現行モデルの『エクストリームスモック』はこちら

MONTANE|EXTREME SMOCK

重量:1120g
素材:PERTEX® Classic、DRYACTIV 3000、POLARDRI® Mini-Rip