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「富士山はただの砂利道」と思っていない?標高差2,900m、0合目から登る“本当の富士山”

「富士山は一度で十分」「ただの単調な登り作業」と思っていませんか?

その印象は、スバルライン5合目より下を知らないからかもしれません。

吉田ルートの0合目(北口本宮冨士浅間神社)から挑む道は、剱岳をも超える標高差約2,900m。深い森林や信仰の史跡から火山の世界へ、めまぐるしく変化する「本当の富士山」を歩く旅へご案内します。

目次

5合目からでは見えない、富士山の「本当の姿」

富士吉田ルートでは、スバルラインを使って5合目まで車でアクセスするのが一般的です。
富士山に登る多くの人の目的は、日本で一番高い場所に立つことや、ご来光を見ること。そのため、どうしても山頂だけに目が向きがちです。

しかし、麓(0合目・標高約850m)から山頂(3,776m)を目指すルートの標高差は約2,900m。日本一の標高を誇る富士山は、麓から歩けば標高差も日本最大級です。

日本百名山の標高差例

  • 馬場島~剣岳:標高差2,249m
  • 駒ケ岳神社~甲斐駒ヶ岳:標高差2,190m
  • 易老渡~聖岳:標高差2,135m

これは、ベテラン登山者が挑む日本屈指の急登ルートすら大きく上回る数字。山麓から登ることで初めて味わえる、もうひとつの富士登山のおもしろさがあります。

草山、木山、焼山。登るほどに姿を変える富士山

また、0合目から歩く富士登山のおもしろはそれだけではありません。

0合目から山頂までの道のりの魅力は、なんといっても標高ごとに描かれる自然の鮮やかなグラデーション。かつて人々は、地質や植生の変化から富士山を大きく3つの領域に区分していたといいます。

  • 草山(くさやま):北口本宮冨士浅間神社~2合目付近(ススキや草原が広がっていたエリア)
  • 木山(きやま):2~5合目付近(深い森林が広がるエリア)
  • 焼山(やけやま):5合目~山頂(火山礫や溶岩に覆われた荒涼としたエリア)

登りはじめに待っているのは、豊かな森や巨木、苔むした道。やがて史跡が現れ、富士山が古くから信仰を集めてきた山であることを知ります。そして、5合目を越えると景色は火山の世界へ。最後は、日本最高峰の山頂へとたどり着きます。

5合目からの富士登山では、このうち最上部の「焼山」しか歩くことができません。

しかし、0合目から一歩ずつ登ることで、豊かな森からダイナミックな火山の世界へとグラデーションのように移り変わる「富士山という山の本当の姿」を五感で味わうことができるのです。

YAMA HACK編集部 大迫

今回初めて0合目から富士山を歩いてみましたが、富士山がこれほど「表情豊かな山」だったのを知りませんでした。

森から始まり、歴史に触れ、最後は火山の世界へ。同じ山とは思えないほど変化があって、歩き続けること自体がおもしろかったです。

今回はそんな本当の富士山の姿を体験すべく、登山ガイドの榎戸さんの案内のもと、自然環境が目まぐるしく変わる富士山を歩きました。

0~5合目生命力あふれる森のなか、先人も踏みしめた古道を登る

0〜5合目に続くのは、一般的な富士登山のイメージとは異なる、静かな森の道。登山者の姿も少なく、美しい森のなかを、先人が歩き継いできた古道に沿って進みます。

YAMA HACK編集部 大迫

0合目~5合目の登山道は、想像していた富士山とはまったく違いました。

静かな森を歩きながら、鳥の声や植物の変化を楽しめる。ピークを目指す登山というより、自然を味わうトレイルのような感覚。

富士山の麓に、こんな生命力あふれる森が広がっていたことが一番の驚きです。

スタートは「北口本宮冨士浅間神社の登山鳥居」。豊かな森から始まる富士登山

吉田登山ルート 0合目のスタートは、北口本宮冨士浅間神社にある登山鳥居。神聖な境内の雰囲気を背に受けて登山道へ進むと、すぐに鬱蒼とした緑の世界へと引き込まれていきました。
いよいよ標高差約2,900mに挑む、長い旅の始まりです。

歩みを進めると、最初はセミやカエルの鳴き声、やがて気づけば鳥のさえずりが響く森へと表情を変えていきます。登り始めに迎えてくれるのは、大きなアカマツ。

かつて中ノ茶屋(標高約1,100m)付近までは大きな木のない草原が広がり、麓から富士山の雄姿を望めたといいます。

一合目を過ぎるとブナやミズナラが姿を見せ、さらに標高を上げると、シラビソなどの針葉樹が増えていきます。先の長い道のりでも、景色と音が次々に移り変わるため、自然と足が前へ進みました。

登山道に踏み入れば、ガラリと変わる空気感

富士山は日本三霊山のひとつとして、昔から崇められてきた山でもあります。かつて人々は大願成就を祈り、浅間神社から山頂を目指したようです。

馬返し(標高約1,450m)の鳥居をくぐると、不思議と場の雰囲気が変わったように感じました。森には清々しくも凛とした静けさが漂い、登りもここから次第に急になります。

道中には小屋跡や神社などの史跡が点在し、案内板を読みながら、往時のにぎわいや信仰の歴史に触れられます。

5合目が近づくと、ダケカンバやシャクナゲが目立つように。森は次第に密度を失い、木山から焼山へ移り変わる気配が漂い始めます。

土、石畳、火山礫。足裏からも富士山の変化を感じる登山道

浅間神社の参道から、中ノ茶屋までの自然歩道、馬返しからの登山道へ、標高を上げるほどに、植生だけではなく、道の表情も変わっていきます。

砂利、土、石畳、火山礫、火山泥流。これほど路面の変化を楽しめるのも、0合目から歩く富士登山ならでは。景色や音だけでなく、足裏からも富士山の移り変わりが伝わってきます。

5合目~山頂荒々しい火山の世界で感じる、タフな自然

5合目を越えると、それまでの森は姿を消し、景色は火山の世界へと一変します。火山砂礫のつづら折りや溶岩が固まった岩場が現れ、登りも一段とタフに。

山頂に立ったときに込み上げるのは、「自分の足で0合目からつないできた」という圧倒的な達成感。
眼下にはここまで歩いてきた麓の景色が広がっており、昨日まで歩いていた森も、神社も、茶屋も一本につながっています。

YAMA HACK編集部 大迫

5合目を越えると、一気に火山の世界へ変わりました。
でも、その変化が印象に残ったのは、0合目から歩いてきたからこそ。

昨日まで歩いていた森が眼下に広がり、『あそこから自分の足でつないできたんだ』という達成感は、5合目スタートでは味わえないものだと思います。

歩き方が試される足元

6合目を過ぎると、踏ん張りが効きにくい火山砂礫や急な岩場がメインの登山道に。歩きにくく、これまでの疲れもあって、転倒のリスクも高まります。

登山ガイド 榎戸さん

いつもの登山と同じで、小股を意識しながら、足裏全体を接地させるフラットフィッティングを心掛けましょう。

この「火山砂礫や急な岩場がメインの登山道」こそ、多くの人が想像する「富士山」なのではないでしょうか。でも5合目以降も、楽しみは隠れています。

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