ブランドの原点。「稜線リング」はこうして生まれた

2023年にスタートした「puna.moon(プナムーン)」は、登山が趣味の中村嘉宏さんが手がける、自然や山をモチーフにしたジュエリーブランド。
ブランドのシグネチャーであり、山の稜線を繊細かつ美しく表現した「稜線リング」は、山好きの間でじわじわと人気を集めていますが、中村さんが彫金を学び始めたのは意外にも最近でした。
中村嘉宏さん
コロナ禍に自宅でもできる新しい趣味を探していたところ、ふと「金属を扱えたらかっこいいな」と思い彫金を始めました。独学で制作するうちに、その楽しさに一気にのめり込んでいきましたね。
そんな中、転機となったのが剱岳での出会い。登山中に出会った友人に「山の稜線をリングにしたら素敵なんじゃない?」と言われたことを機に、ブランドとして本格的に制作を始めるようになりました。
とはいえ、当時は大々的に販売するつもりはなく、友人に1000円くらいで譲っていたそう。それでも、長野のアウトドアセレクトショップ「itomizu」のオーナー・水野さんから取り扱いの誘いをもらい、徐々に活動の幅を広げていきました。
景色を形にする「稜線リング」

最初の作品「槍穂リング」は、蝶ヶ岳から望む槍ヶ岳・穂高連峰の景色をもとに、友人のデザイナーが描いたデザインから誕生しました。
その後は自らデザインを手掛けるようになりますが、中村さんには、puna.moon立ち上げ当初から変わらない、ものづくりにおけるルールがあります。

それは、「モチーフにするのは自分が実際に歩いた山だけ」ということ。その山に思い出や、何かしらの語れるエピソードがあるかどうかも、中村さんが大切にしているポイントです。
「登ったことのない山」をカタチにした理由。ご当地リングに込めた”恩返し”

そんなルールを大切にする中村さんですが、じつは登ったことがない山をモチーフにした作品もあります。
それが、「日常の機能服」をコンセプトにした吉祥寺の人気アウトドアセレクトショップ「BLACK BRICK」とコラボした限定リング。「BLACK BRICK」のロゴに描かれている、あの架空の山がデザインに落とし込まれています。
中村嘉宏さん
BLACK BRICKさんとは、たまたま店の近くで飲んでいたときにスタッフさんとお会いして。話しているうちに、ポップアップをやろうという話になり、限定品も作らせていただくことになりました。
BLACK BRICKさん以外の限定品もすべて、イベント販売を除き、他の店舗では買えない専売品としています。
これまでご縁の連続に支えられてきたからこそ、『そこへ来たからこそ出会えるリング』を通して、少しでもお店に還元できたらと思っています。
ブランドを育ててくれた人や場所への感謝を、リングという形で返していく。それもまた、puna.moonらしいものづくりの一つです。
山で使うからこそ妥協しないモノづくり

puna.moonの作品は、すべてハンドメイド。中村さんは、稜線リングを油絵のような感覚で、全体のバランスを見ながら、少しずつ削ったり整えたりして作っています。ただ、そのバランスがわずかでも違うなと感じたら、ためらわずに没。作業場には没作品がたくさん転がっているそうです。
そんな中村さんの徹底したこだわりは、素材の選び方にも表れています。

中村嘉宏さん
たとえば「裏銀」のリングは、真鍮の上に銅を貼り付けています。この場合、ジュエリー業界ではメッキにすることが多いそうですが、山では岩やギアとの擦れで摩耗しやすい。だから本物の金属を使うようにしています。
見た目の美しさだけではなく、山で長く使えることまで考えて素材や製法を選ぶ。それも、登山者である中村さんならではの発想です。
そうして一つひとつ手作業で生み出されたリングは、同じモチーフでも表情が少しずつ異なる一点もの。使い込むほどに風合いが増し、自分だけの一本へと育っていきます。
山の景色が季節ごとに表情を変えるように、その変化もまた、このリングならではの魅力です。

