景色から“歩いた記憶”へ。新作「等高線リング」に込められた想い

今回登場した2026年夏の新作は、国土地理院の測量データをもとに、山の等高線をデザインしたシグネットリング。
以前からシグネットリングに興味があり、ブランドをもう一歩進めたいと考えていたタイミングで、「平らな面と等高線は相性がいいのではないか」と思いついたそうです。
ただ、これまで展開してきた稜線リングとは、同じ山をテーマにしながらも、表現したいものが大きく異なります。
指先から、歩いた記憶を振り返る

稜線リングは遠くから眺めた景色ですが、等高線リングは実際に歩いた記憶を表現しています。
中村嘉宏さん
昔から地形図を見るのが好き。歩いた山の地形図を眺めながら「ここでご飯を食べたよね」「この尾根を歩いたよね」と話す時間も、登山の楽しみの一つなんです。
新作のモチーフに選んだのは、剱岳。ブランドの原点である「槍穂リング」をデザインしてくれた友人と出会った場所であり、新しい挑戦となるシグネットリングでも、もう一度向き合いたい山でした。
とくに前剱へ続く尾根は、中村さん自身が歩いているからこそ絶対に入れたかった場所であり、もし歩いていなかったら、このデザインにはならなかったといいます。
山頂からの景色だけではなく、どんなルートを歩き、どこで休憩したのか。等高線リングは、指先の小さな地形図を通して、旅の記憶を呼び起こしてくれるジュエリーなのです。
0.05㎜の違いまで追求した、理想的な等高線

等高線リングは、地図をそのままリングへ写せば完成するわけではありません。
まずは国土地理院の地図をもとにIllustratorでデータを作成し、それを3D CADデータへ変換。鋳造によって原型をつくるという工程を経ています。
しかし、制作で最も苦労したのは、地形を忠実に再現することではなく、「リングとして美しく見せること」でした。地形図をそのまま投影しても、情報量が多く、デザインとして成り立たないのです。
そこで、中村さんは線の太さや本数、間隔まで細かく調整。
特にこだわったのが、等高線の線幅で、0.25㎜では細すぎて潰れてしまい、0.3㎜では太く感じる。そのわずか0.05mmの違いを確かめるため、試作品を何度も作り直し、理想の等高線を追求しました。
中村嘉宏さん
ジュエリーとしての美しさと、歩いた人だけが分かる空気感や地形の特徴を兼ね備えたデザインになったと思います!
街でも山でも。豊かさを感じるジュエリー

ブランド名の「puna」はハワイ語でサンゴ、「moon」は月であり、中村さんが飼っている猫の名前にも由来。山に限らず自然そのものを大切にしたい。そんな中村さんの思いが、ブランド名には込められています。
ところで、さまざまな山の頂を踏んできた中村さんですが、最近は山との向き合い方が少しずつ変わってきているようです。ピークハントにこだわらず、山の中でゆっくりコーヒーを飲み、景色を眺めて帰ることも多くなったとか。
中村嘉宏さん
山へ行くことも自由。行かないことも自由。そんな『余白があること』が、豊かなことだと思っています。
一見、山とジュエリーは結び付かないように思えますが、街でも山でも身につけてもらうことで、その豊かさを感じてもらえたらうれしいですね。
実際に、イベントには登山経験はないものの、デザインに惹かれて足を運ぶ人もいるそう。山を歩いた記憶から生まれたジュエリーは、山好きだけでなく、自然の美しさやデザインに魅力を感じる人の心にも届いています。
そうした出会いを重ねながら、中村さんはこれからも新たなものづくりに挑戦したいと話します。
中村嘉宏さん
今年訪れたニュージーランドで、テカポ湖と山々が織りなす景色に心を動かされ、「湖や水をジュエリーで表現できないか」と構想を膨らませています。
山に限らず、自然のさまざまな風景をモチーフにしながら、「自分だからこそ作れるもの」を形にしていきたいです。
次はどんな自然の景色がジュエリーになるのか。これからのpuna.moonのものづくりにも期待が高まります。
▼リングだけじゃなく、「手ぬぐいどめ」も素敵すぎる!
