地面寝る野営スタイル「フロアレスシェルター」。雨とか虫は大丈夫?気になる疑問をULの達人に訊いてみた

2021/07/19 更新

「フロアレスシェルター」とは、テントのような床がなく、地面に直接設営するシェルターのこと。軽量でデザイン性も高いため、UL登山者に人気のアイテムです。一方で「本当に山で使えるの?」と感じてしまうのが正直なところ。そこで今回は山で実際に使用してレビュー。雨や虫、風などの気になるポイントや魅力を紹介します。


アイキャッチ画像撮影:橋爪勇志

UL界隈で人気の「フロアレスシェルター」。でも使い勝手はどうなの?

提供:MoonlightGear
「フロアレスシェルター」は、文字どおりフロア(床)がなく、地面がむき出しになったシェルターのこと。

軽くて薄い生地やテントポールをストックで代用できることから有用性が高く、個性的なデザインもあいまり、ULスタイルの登山者を中心に人気を博しています。

フロアレスはデメリットが多い?こんな疑問の声も

作成:橋爪勇志
そんなフロアレスシェルターですが、使ったことのない登山者からはこんな疑問の声が。

登山者A
見た目はオシャレで軽そうだけど、山ではちょっと無理して使ってない?

登山者B
地面がむき出しだから雨や虫が入ってきそう……
あとは着替えの際とか、プライバシーは守られるのかな?

登山者C
絶対に山岳用テントの方が安心でしょ!風に弱そうだけど実際のところどうなの?

どうやらフロアやフレームがないことをデメリットと捉えている人が多い様子。
ただ、何事もやってみないとわかりませんよね。

そこで今回、実際にフロアレスシェルター泊を体験し、気になる疑問点や魅力を掘り下げてみることに!
そしてこの企画をサポートしてくれるのがこの方です。

強力な助っ人登場!ムーンライトギア店長の服部さん

提供:服部賢治さん

服部賢治さん
神田・岩本町のアウトドアセレクトショップ「ムーンライトギア」の店長。ULハイキングを軸に楽しみながら、様々なバリエーションルートや沢、山岳滑走などにチャレンジしつつ、山の楽しさや野営の楽しさを提案している。

ライター
橋爪
よろしくお願いします!
フロアレスシェルター泊に挑戦してみたいと思っているのですが、山でも問題なく使えるんですか?

服部さん
一般的な山岳用テントと使い勝手は異なりますが、そのシェルターの特性を理解すれば山岳環境でも充分に使えます

どうやらモデルによっても使用シーンが異なる様子。
ということで、まずはフロアレスシェルターのモデルごとの特性について教えてもらいました。

コンセプトの異なるさまざまなシェルターがあるらしい

ひとくくりに「フロアレスシェルター」といっても、その種類や用途はさまざま。ここでは【山岳向け】【開放感を楽しみたい人向け】【ロングトレイル向け】【大人数向け】の4モデルを紹介します。

①ベーシックな山岳モデル|<ローカスギア>クフ

提供:MoonlightGear
国産ULブランド「ローカスギア」の日本の山岳域を想定して作られた山岳シェルター。地面にピタリと設営できるので耐風性が高く、4シーズンテントとしても活躍します。インナーメッシュ付きなので、普通のテントのように使えるのも◎
服部さん
耐風性が高く、日本アルプスなどの稜線上でも使えます。日本の高山でガッツリ使いたい人におすすめです。


クフの詳細はこちら

②自由度の高さと安心感を両立|
<マウンテンローレルデザイン>トレイルスター

提供:MoonlightGear
ユニークな五角錐のシェルター。自由度が高く、その日の天候や気分に合わせて設営スタイルを選べるのが特徴です。タープのようにもツェルトの感覚でも使えるバランスの良いシェルターです。
服部さん
このモデルは出入り口が立ち上がっているため風の吹き込みがあり、稜線での使用は推奨されていません。樹林帯などでゆったり野営に向いています。


トレイルスターの詳細はこちら

③ロングトレイル向けの全天候モデル|
<マウンテンローレルデザイン>パトロール・タープ・シェルター

提供:MoonlightGear
タープ感覚でありながらも全方位守られた天候に強いシェルターです。シェルターの高さを変えることで、その日の天候に合わせた楽しみ方が可能。低く設営すれば風が上を避けていき、高く設営すれば新鮮な空気を取り込む構造になっています。

服部さん
長距離を長期間歩くハイカーのために開発されたモデル。出入り口が立ち上がっているので稜線には向いていませんが、低く設営すれば強風でも安心して寝ることができます。


パトロール・タープ・シェルターの詳細はこちら

④圧倒的軽さのビッグシェルター|
<ハイパーライト・マウンテン・ギア>ウルタミッド 4

提供:MoonlightGear
4名の大人が広々と過ごせる超軽量のフロアレスシェルター。雪上を含むオールシーズンで使用でき、4点のペグダウンで瞬時に設営できるのもポイント。2名以上のパーティ山行におすすめです。
服部さん
4人用テントとなると重量は2kg前後になりますが、このシェルターなら650g程度で済んでしまいます。それでいて、驚くほど広く快適です。

日本の山岳にも対応するタフなモデル。高価ですが、故障が圧倒的に少ない納得の一幕です。


ウルタミッド 4の詳細はこちら

開放感のある「トレイルスター」でフロアレスシェルター泊に挑戦!

撮影:橋爪勇志
教えていただいたモデルのなかで気になったのが、マウンテンローレルデザインの「トレイルスター」。普段のテント泊とは違ったワイルドな体験ができそうな予感……!

ということでトレイルスターをお借りして、フロアレスシェルター泊に挑戦です。

場所は南アルプス。絶好の検証日和

撮影:橋爪勇志(夕方からバケツをひっくり返したような土砂降りに)
梅雨まっただ中の6月下旬。実力を知るにはうってつけの天候の中、南アルプスで一夜を過ごしてみました。

【検証の概要】
場所:南アルプス北沢峠(標高1,980m)
天候:夕方から夜にかけて猛烈な雨、風速5m程度
気温:15〜20度前後

装備は40ℓザックでピッタリ

作成:橋爪勇志
今回持っていった設営・就寝用の装備は上の画像のとおり。これに食料やガス、カメラ、小物などを詰めこみ、ピッタリ40ℓザックに収まりました。

【雨・虫・風は?】しっかりとした対策をすることが大切

まずは気になる人も多い【雨】【虫】【風】について、使ってみた感想を詳しく紹介します。
備えあれば憂いなし、フロアレスシェルターの特性や欠点を理解し、それを補う装備と対策が大切だと感じました。

濡れることを前提にすれば、対策も明確に

撮影:橋爪勇志(横殴りの雨でも防水対策をしていたので安心でした)
土砂降りに見舞われましたが、それほど雨は気になりませんでした。その要因として大きかったのが、携行品の事前防水対策。たとえ雨がシェルター内に入ってきても大丈夫なように心構えをして挑みました。

最大の心配事であるシュラフの濡れも、グラウンドシート+シュラフカバーで対策をしていました。これだけでも防水性は十分で、朝までシュラフに水が染み込むことはありませんでした。
ライター
橋爪
また、衣類や小物は厚手のポリ袋に入れて濡れをガード。荷物もまとめておけるので、持っていると便利だと感じました。

虫は間違いなくやってくる!刺されないための工夫を

撮影:橋爪勇志(日中はブヨやアブが大量発生。夜には落ち着きました)
やはり山にいる限り、虫はやってきます。閉鎖空間を作れるテントとは異なるフロアレスシェルターでは、今回も頭や肌の露出部分などを6箇所ほど刺されてしまい、虫対策が甘かったです。

しかし虫は来るモノだと思って、割り切ることも大切。その中で、刺されないように工夫することが必要だと感じました。
ライター
橋爪
「肌の露出は避ける」「虫除けスプレーを携帯する」などが基本。気になる方はメッシュテントを用意するのもアリだと思います。

シェルターの固定は念入りに!

撮影:橋爪勇志(ペグアウトができなかったためロープワークで石に固定)
稜線使用はNGとのことですが、耐風性は想像以上にしっかりしている印象。5m前後の風ではまったく不安はありませんでした。ただしテント以上にペグダウンを念入りにする必要がありそうです。

ライター
橋爪
テント場によっても土質もさまざまなので、ペグダウンができない場合に応じて、基本的なロープワークを覚えておくと活躍しそうです。



これはハマるぞ!フロアレスシェルターは魅力がいっぱい

撮影:橋爪勇志
上記のように事前の対策は必要になりますが、フロアレスシェルターにはその欠点を補って余りある「テント生活をワクワクさせてくれる」ポイントがありました。

土足OKな空間がものすごくラク

撮影:橋爪勇志
床がないので空間の使い方がとても自由。ガスを使えたり、基本的に靴を履いたまま過ごすことができるので、トイレの時など出入りがとてもラクでした。
服部さん
室内でアルコールストーブやガスが使用できるのはフロアレスシェルターならでは。換気は忘れずに!

ライター
橋爪
撤収時にフロア内の掃除をしなくてもいいのもメリット!テントだと、けっこう小石や草が入り込んじゃうんですよね。

軽さは文句なし!もしものときはツェルト代わりにも

撮影:橋爪勇志(収納袋は余裕のある大きさで、収納時はこの3分の2ほどに圧縮可能)
今回使用したシェルターは重量510g。一般的な2人用ダブルウォールテントの半分近い軽さです。ストックをテントポールとして代用できるのも魅力。

シェルターは緊急時のツェルトとしても活躍するので、アイテムを一石二鳥でまかなえるのもULらしいメリットだと感じました。
服部さん
軽いものであれば200g程度です。しっかりしたモデルでも500g前後で持っていけるのは魅力ですよ。

気になるポイントは?

撮影:橋爪勇志(山岳用テントよりも広い場所が必要です)
使っていて不便に感じることはありませんでしたが、あえて言うならばサイズが大きいのでテント場によっては場所取りが大変かも?というところ。

混雑した時期や狭いテント場よりも、ゆったりと過ごせる空間にマッチすると感じました。
服部さん
このシェルターの場合、アメリカの広大な土地をより早く、自然を感じながら野営する目的で作られました。

それぞれシェルターによって作り分けされているので、ご自身のニーズに合ったモデルを選ぶことも大切です。

【結論】自然に近い感覚がたまらない!ワイルドに山を楽しみたい人におすすめ

撮影:橋爪勇志
結論として、当初気にしていた【雨・虫・風】などのデメリットはカバーできるもので、それ以上に刺激的な魅力があることがわかりました。
ライター
橋爪
ワイルド感が本当に楽しかったです!山をより近くに感じられるスタイルですね

服部さん
そうですね。フロアレスシェルターの最大の魅力は自然を感じながら安心して眠れること

また、テント場でもプライベート空間を守りながらも自然を間近に感じることができます。

ライター
橋爪
シェルターを低く調整することで、女性も安心して使えそうです。

ビビイサックがあればさらに快適に!

提供:MoonlightGear
服部さんが「これがあると便利」と答えたのが、ビビィサック。人が横になって足を伸ばせるサイズのもので、寝袋や荷物を入れることもできます。モデルにより防水や撥水、蚊帳など様々な目的で作られており状況に応じてはこれだけで寝れてしまいそうですよね。
服部さん
これがあれば雨や虫も問題ありません。ULのビビィサックは蚊帳付きのものが多いため効率的。気密性が上がるため寝袋も薄くできます。

タープやツェルトとはどう違うの?

出典: Photo AC
従来の登山でもテント以外に、タープやツェルトという軽量での宿泊ギアがありました。感覚的にはタープ泊やツェルト泊に似ている部分もあり、スペックや設営方法だけで単純に区別できるかというと難しいところがあります。「メーカーがどのようなコンセプトを持ってつくっているか」がフロアレスシェルターやタープ、ツェルトの分類分けとなります。
服部さん
タープは「解放的な野営」、ツェルトは「山岳用の非常用シェルター」として、それぞれ用途に応じて使い分けされています。

自然をより間近に、ダイナミックに感じられるテントスタイル

撮影:橋爪勇志(翌朝目を覚ますと、目の前には雄大な自然が)
今回フロアレスシェルター泊を体験し、そのワイルドなスタイルにすっかり魅了されてしまいました。たしかに山岳用テントに比べて不都合な部分もありますが、その不便さも楽しみのひとつと思えば、まったく苦になりません。

ただし、やはりテント泊に慣れた上級者向け。「山でちょっと違った夜を楽しみたいな」そんな方におすすめしたいです。

自然が間近に感じられるような開放感はフロアレスシェルターならでは。これからの夏の時期にピッタリですよ。

フロアレスシェルターを見つけるならここ!

提供:Moonlightgear
アドバイスをくださった服部さんが店長を務める「ムーンライトギア」では、フロアレスシェルターなどのULアウトドアギアをはじめ、ユニークな厳選されたアイテムを取り揃えています。
今回紹介したシェルターも取り扱いがあるので、気になる方はぜひショップに足を運んでみてください!、


ムーンライトギア 東京店
住所:東京都千代田区岩本町2丁目8−10
電話:03-6884-8143
ムーンライトギア|公式サイト

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橋爪 勇志

日本アルプスに囲まれた、長野県の伊那谷生まれ。登山好きな母親に連れられ、山を駆け巡って育つ。アルパインクライミングや沢登り、冬山縦走など、ちょこっとスパイスの効いた登山が大好き。

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