「アイスキャンディ」って知ってる?冬にだけ出現する八ヶ岳のアイスクライミング登竜門をご案内

2020/03/31 更新

南八ヶ岳の山小屋・赤岳鉱泉に毎冬出現する人工の氷瀑「アイスキャンディ」。SNSなどで写真を見る機会も多いでしょう。けれども自分には縁のない存在…だと思っていませんか?今回は、アイスクライミングを安全に体験するために造られた「アイスキャンディ」の成り立ちやアイスクライミングの基礎知識を紹介します。


アイキャッチ画像撮影:washio daisuke

アイスキャンディって…?

アイスキャンディ…?
イラストの出典:いらすとや
日本アルプス・八ヶ岳など中部山岳エリアをフィールドとする、登山者の知識を測るリトマス試験紙のひとつが“アイスキャンディ”です。
アイスキャンディといっても、夏に食べる、あの冷たいスイーツではありませんよ。むしろ冬の風物詩なのです。

アイスキャンディでのアイスクライミング
撮影:washio daisuke
正解はこちら!毎年冬の時期にだけ南八ヶ岳の山小屋・赤岳鉱泉に現れるこの人工氷瀑が“アイスキャンディ”と呼ばれています。
多くのクライマーがアイスクラミングを楽しむための、冬の風物詩です。

しかしこの巨大な氷の塊。どうした経緯で生まれ、どのように使われているのでしょうか。
今回はアイスキャンディが生まれた背景や、そこで体験できる様々なイベントなど、「アイスキャンディ」について詳しく紹介していきます。

アイスキャンディの始まりは「事故が絶えなかった天然氷瀑」

南八ヶ岳の主な氷瀑
提供:YAMAP(南八ヶ岳の主な氷瀑/これ以外にも数々の氷瀑が点在)
撮影:washio daisuke
複雑な谷が入り組んで流れ、冬には厳しい寒さに見舞われる南八ヶ岳周辺。これらの沢に冬になると現れる「氷瀑(凍った滝)」でのアイスクライミングを楽しむために、赤岳鉱泉周辺には古くから多くのクライマーが訪れていました。
当然、これら天然の氷瀑はその年の寒さなどによって規模や氷の状態が変化するもの。アイスクライミング中の事故やトラブルも絶えませんでした。

アイスクライミングを安全に体験できる人工氷瀑を…

上空から見た赤岳鉱泉とアイスキャンディ
提供:赤岳鉱泉・行者小屋公式Facebook(上空から見た赤岳鉱泉とアイスキャンディ)
こうした背景の中、「アイスクライミングを安全に体験できる場」として造られたのが、赤岳鉱泉のアイスキャンディ。日々のメンテナンスによりコンディションを一定に保ち、的確な指導者の元で正しい技術と知識を身に付ける事ができる場所なのです。

▼アイスキャンディの誕生秘話についてはこちらの記事に詳しく書かれています
組立て作業中のアイスキャンディ
撮影:washio daisuke(組立て作業中のアイスキャンディ)
毎年10月から鉄骨を使用した骨組みの組立て作業が開始され、気温が低くなる晩秋から水を撒きながら徐々に氷を厚くしていきます。アイスクライミングのフィールドとして使用できるのは例年12月から翌年3月頃。冬の時期にだけ現れる、期間限定の氷瀑なのです。

アイスキャンディでは「アイスクライミングの基礎」が学べます

2020年2月開催の第10回・アイスキャンディフェスティバル
提供:赤岳鉱泉・行者小屋公式Facebook(2020年2月開催の第10回・アイスキャンディフェスティバル)
期間中は、山岳ガイドがクライアント(顧客)を連れてアイスクライミングの指導を行なったり、赤岳鉱泉が主催してのイベントも開催されています。
その象徴ともいえるのが毎年1回開催されている「アイスキャンディフェスティバル」。多くの山岳メーカーや企業が協賛して、アイスクライミングや雪山登山を安全に楽しむための体験イベントを実施しています。

初心者でも体験できるの…?

アイスキャンディ初心者体験会の様子
提供:赤岳鉱泉・行者小屋公式Facebook(アイスキャンディ初心者体験会の様子)
「アイスクライミングは初心者なので、装備もないし技術も不安…。」そんな人のために赤岳鉱泉では、「初心者体験会」や「鉱泉道場」などのイベントも開催。
「初心者体験会」では小屋番によるビレイ(安全確保)でのアイスクライミング体験、「鉱泉道場」ではプロの山岳ガイドのアドバイスを受けながら、安全にアイスキャンディにチャレンジすることができます。

赤岳鉱泉ではレンタル装備も充実
撮影:washio daisuke(赤岳鉱泉ではレンタル装備も充実)
さらに、赤岳鉱泉ではアイスクライミングに必要なアイテムのレンタルも実施。基本的な雪山装備を持参すれば、レンタルギアでアイスキャンディを体験することもできます。
SNSでも色々な情報が配信されているので、気になる人はぜひチェックしてみてください。

赤岳鉱泉・行者小屋|公式Instagram
赤岳鉱泉・行者小屋|公式Facebook
ブログ|鉱泉日誌

では、実際にアイスキャンディに行ってみよう!

アイスキャンディがどんな物が分かったところで、実際にアイスキャンディに出かけてみましょう。登山口である美濃戸口までのアクセス方法や、そこからアイスキャンディのある赤岳鉱泉までの道のりを詳しくご案内します。

最寄り駅の茅野駅~美濃戸口まで

美濃戸口にある八ヶ岳山荘
撮影:washio daisuke(美濃戸口にある八ヶ岳山荘・併設の登山口補導所では登山届も提出できます)
公共交通機関を利用する場合は、JR中央線特急も停車する茅野駅からアルピコ交通の美濃戸口線で38分(ただし土・日・祝日のみの運行)で到着。運賃は片道1,000円(2020年3月現在)です。
アルピコ交通|美濃戸口線
自家用車の場合は、中央高速道路・諏訪南インターから約20分弱。美濃戸口にある八ヶ岳山荘で駐車料金(1日/500円)を支払い、ステッカーにもなっている日付を書いた駐車券をダッシュボードに置いて、隣接する駐車場に停めましょう。

美濃戸口〜美濃戸(約3km /歩行約1時間)

凍結した道はチェーンスパイクアイゼンを装着して歩きましょう
撮影:washio daisuke(凍結した道はチェーンスパイクアイゼンを装着して歩きましょう)
この先、美濃戸までの約3kmは未舗装の林道。よほど車高の低い車でない限り無雪期であれば通行も可能ですが、アイスキャンディを目的とする冬季は別。
路面が凍結して、カーブやアップダウンもあるため、「四輪駆動・スタッドレスタイヤ装着・チェーン装着」の車でないと進入できません。この条件を満たした車でない場合や、凍結した道での運転が不慣れな場合は、美濃戸口から歩く必要があります。

凍結による転倒を防ぐため、チェーンスパイクアイゼンを装着して歩きましょう。

地図上の番号の場所を写真でご紹介します
提供:YAMAP(地図上の番号の場所を写真でご紹介します)
※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。

撮影:washio daisuke
(1)凍結したカーブを下ります
(2)橋を渡り対岸の斜面をジグザグに登り返します
(3)しばらくは平坦でまっすぐな林道が続きます
(4)カーブが増えて来たら美濃戸まであと少し
(5)やまのこ村・赤岳山荘を通過すると美濃戸駐車場(無雪期も一般車はここまで)

美濃戸〜赤岳鉱泉(約3.6km /歩行約2時間)

美濃戸からしばらくは、未舗装の林道が続きます。堰堤広場から先は樹林帯の中の登山道。並行して流れる北沢の流れに沿って、階段・橋・桟道なども随所に設けられています。これらもアイスキャンディを建設する赤岳鉱泉・行者小屋の小屋番の皆様による登山道整備の結晶です。

※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。


撮影:washio daisuke
(6)北沢・南沢の分岐を北沢方面に進みます
(7)針葉樹林の中の林道を歩きます
(8)堰堤広場からは林道から登山道に変わります
(9)登山道には随所に階段・橋・桟道が設置されています
(10)横岳の岩壁が近づいて来ると赤岳鉱泉まであと少し

最後に…知っておきたいアイスクライミングの基礎知識

アイスキャンディでのアイスクライミングの様子
撮影:washio daisuke(アイスキャンディでのアイスクライミングの様子)
アイスキャンディで体験できる「アイスクライミング」は、さまざまな装備と技術が必要です。
天然の氷瀑を登攀する場合と、アイスキャンディを登攀する場合では、必要な装備・技術はまた異なってきますが、基本だけ最後に少し紹介しておきますね。

 

アイスクライミングで必要な装備
撮影:washio daisuke
アイスクライミングは登攀するための道具として、アイスアックス・前爪付きアイゼンをはじめ、落ちてくる氷から頭や顔を守るヘルメット・サングラスやハーネスなどが必要です。 他にも、天然の氷瀑ではロープの支点とするアイススクリューやクイックドロー(ヌンチャク)と呼ばれる登攀器具なども必要となります。また、準備する前に必ず正しく使いこなす知識も必ず勉強しておきましょう。
ここでは、八ヶ岳・南沢大滝でのアイスクライミングの様子を写真でご紹介します。クライマーは石井スポーツ登山学校校長・天野和明ガイドです。
※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。


撮影:washio daisuke

(1)アイススクリューを氷にしっかりねじ込んで固定します
(2)カラビナをスクリューに掛け、ロープをセットします
(3)アイスアックスとアイゼンを使って氷瀑を登攀します
(4)ある程度まで登ったら、アイススクリューで新たな支点を作りクイックドローでロープと連結します
(5)支点とロープの間隔が広い時はソウンスリングとクイックドローでロープと連結することもあります

アイスキャンディも、きちんとしたスキルを持った経験者やプロガイド同伴でチャレンジする必要があります。

また、アイスキャンディ独自の登攀ルールも。こちらの記事にも詳しくまとめてあるので是非ご覧ください。


新しい冬山の楽しみを…

あなたも体験してみませんか…?
撮影:washio daisuke(あなたも体験してみませんか…?)
さあ、アイスクライミングのイメージが少しは湧いたでしょうか。相応の装備と技術は要求されますが、初心者でも体験することが可能な場所がアイスキャンディ。あなたも一度、出かけてみませんか。

取材協力:赤岳鉱泉・行者小屋 柳沢太貴さん

取材協力:赤岳鉱泉・行者小屋 柳沢太貴さん 赤岳鉱泉・行者小屋の4代目若旦那。アイスキャンディの組立てや解体の際には、自ら危険な最上部に登って作業を指示しています。積極的なSNS発信や安全啓蒙キャラクター「カモシー 」を通じての山岳事故防止の呼びかけなど、次々と新しい取組みを実践している若き小屋番です。

赤岳鉱泉・行者小屋|ホームページ

氷瀑ガイド・アイスクライミング実演:天野和明ガイド

氷瀑ガイド・アイスクライミング実演:天野和明ガイド
撮影:washio daisuke
クライマー・国際アスピランガイド。2009年にインドヒマラヤ・カランカ北壁のアルパインスタイル初登攀により、 登山界のアカデミー賞と呼ばれるピオレドール賞を日本人として初めて受賞。現在は石井スポ ーツ登山学校校長として、スタンダードな登山技術、知識の伝達や後進の育成に努めている。201912月に は、著書『ヤマケイ登山学校 雪山登山』(山と渓谷社)を刊行。
石井スポーツ登山学校|ホームページ

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます。



 

この記事の感想を教えてください
よかった! う~ん・・

関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
washio daisuke
washio daisuke

*登山の総合プロダクション・Allein Adler代表* 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」

アウトドアのすべてを、ひとつのアプリで。

150以上のアウトドアメディアの記事や動画、3万枚以上のみんなの写真も見られる!
アウトドアの「知りたい!」「行きたい!」がきっと見つかる!
お気に入りの記事や写真を集めて、スキマ時間に素早くチェック!