時はきた!ついにリアル開催で帰ってきたぞ!
2023年冬、ついに八ヶ岳の名物イベント「アイスキャンディフェスティバル」がリアル開催で帰ってきました。
新型コロナウイルスの影響により、2021年と2022年はオンライン開催となっていた同イベント。まずは、2020年以来3年ぶりのリアル開催の盛り上がりを振り返る前に、イベントについて簡単におさらいしていきましょう。
アイスクライミングの楽しさと安全登山の啓発のために
アイスキャンディとは、冬になると赤岳鉱泉の隣に出現する大きな人工氷瀑のこと。
2003年からスタートし、今年で20周年を迎えたアイスキャンディは、アイスクライミングの体験・スキルアップの場として多くのクライマーを支えてきました。
アイスクライミングは雪山登山に比べて敷居が高いので、まずは比較的安全な環境でチャレンジできる環境を作りました。冬の遊びとして、もっとポピュラーにしたいと思っています。

それとともに、赤岳鉱泉で力を注いできたのが、アイスクライミングの楽しさと安全登山の啓発をテーマにしたアイスキャンディフェスティバル。
アイスクライミングが盛んな八ヶ岳で気軽に参加できる初心者体験会や、スキルアップを目指すクライマーのための技術講習会などを催す中、最も大きなイベントとして継続してきました。
それを生かすことで、しっかりと中身があって楽しいものを提供できると思ったんです。

リアル開催の中止から、オンライン開催という選択へ
そんなアイスキャンディフェスティバルもコロナ禍により状況は一変。2020年は、山小屋運営においても創業60年初の休業を迫られるなどの不安定な状況が続きました。
転機となったのは2021年。クラウドファンディングを募り、山小屋初の試みとなるオンライン配信での開催を実現しました。
デジタルに弱いので、最初は「オンラインイベントってどうやるんだろう?」という状態でした。でも、この時も山と人さんやhatte(ハッテ)さんなどWEBに強い人がいることがわかって、試行錯誤を繰り返しながら開催にたどりつけました。

困難を乗り越え、3年ぶりのリアル開催!
さらに、2022年はリアルとバーチャルを融合させたアイスキャンディフェスティバル2022 HYBRIDを開催。
スマホのカメラでアイスキャンディが可視化できる仕掛けや、動画配信、オリジナル商品の販売など、さまざまな仕掛けが光る、まったく新しいイベントとなりました。しかし、ここでもウイルスの影響を考慮し、予定していたリアル開催は断念。
でも、前に進もうとしている時っていろんな人が助けてくれるんですよ。
それに、僕自身が新しいことに挑戦するのが好きなんで、結局はやってよかったなと。

そして、2023年2月。3年ぶりとなる赤岳鉱泉でのアイスキャンディフェスティバルがリアルで開催されることとなったのです。
ということで、編集部も思いっきり楽しんできました!
アイスキャンディフェスティバルリアル開催復活を聞き、編集部も参加。その大盛りあがりの様子をレポートしていきます。
アイスクライミング以外でも
楽しく学べるコンテンツが盛りだくさん!
実は、アイスキャンディフェスティバルでは、アイスクライミング以外にも、さまざまな楽しみがあるのもポイント。協賛企業ごとにコンテンツが用意されているので、「クライミングはちょっと……」という方でも安心して参加できます。
▼2023年はこんなメーカー別イベントがありました▼
メーカー | イベント名 |
山と人 | 山と人×赤岳鉱泉 アイスキャンディフェスティバル2023ツアー |
アルテリア(Petzl) | Petzl アイスクライミング体験会 |
マムート・キャラバン | ・初心者のためのアイスクライミング講習 ・アバランチビーコン体験会 |
アスティー(SALEWA) | SALEWA PRESENTS ジョウゴ沢氷瀑散策 |
ウィルダネスメディカル アソシエイツジャパン | 野外災害救急法体験会 |
ヤマテン | 硫黄岳空見(そらみ)&スノーハイキング |
ジャパンエナジーフード | 日本の伝統から学ぶ、健康と体力を伸ばす食事とは? |
スポルティバジャパン株式会社 ミレー・マウンテン・グループ・ ジャパン株式会社 | 花谷泰広・八木名恵 アイスクライミング体験会 |
赤岳鉱泉 | アイスキャンディスペシャル初心者体験会 |
ちなみに、アイスキャンディフェスティバルそのものに入場料はなく、基本は赤岳鉱泉にいる人なら誰でも参加可能。アイスクライミング体験などは、保険料として500円の参加費が必要となります。
すべてのイベントを回ることはできませんでしたが、イベントの様子を見ていきましょう。
〈マムート〉のアバランチビーコン体験会
マムートのブースでは、世界最高レベルのサーチ性能を持った雪崩ビーコン「Barryvox」使った、セルフレスキュー体験が行われました。
使用したのはアバランチビーコン・スコップ・プローブという3つの道具。これらの雪崩対策装備は、雪崩の危険がある山域においては必須の装備とされています。
体験して感じた、ビーコンの重要さ!
今回は<仲間が雪崩に巻き込まれた>というシチュエーションで、雪に埋まった4つのビーコンを掘り起こすまでの一連の流れを体験しました。
雪崩で埋まった場合、7〜8分で脳に障害が残り、15分で心肺が停止すると言われています。そのため、その場にいる仲間と効率良く手分けをして、15分以内に見つけ出すことが大切。雪山を楽しむ一人として、反復して覚えておきたい技術・知識だと感じました。

バリーボックスの操作は初めてでしたが、シンプルなので捜索に集中できたことが大きかったです。
実はちょっとしたハプニングで、参加者の一人がスマートフォンを落としたかもしれないという話に。
実際はポケットに入っていて事なきを得ましたが、なんの手がかりもなく探すことを考えると、かなりの絶望感でした。

ココヘリもそうですが、雪崩ビーコンもやはり身につけておくことが大切だと再確認する良いきっかけになりました。
〈WMAJ〉の野外災害救急法体験会
世界31ヶ国で選ばれている野外救急法「ウィルダネスファーストエイド」を普及するウィルダネス・メディカル・アソシエイツ・ジャパン(WMAJ)では、野外災害救急法体験会が行われました。
フィールドでは、予期せぬ事故により命を左右する危険な状況に陥ることもあります。もしもの事態に備え、より正解に近い手法を知識として頭に入れておくことの重要性を感じました。

楽しく学べるナイトトークショー
初日の夜、食堂にて特別ゲストを招いたトークショーが開催。
クイズ形式で楽しく学べる山の天気
最初に登壇されたのは、株式会社ヤマテン代表で山岳気象予報の第一人者である猪熊隆之さん。冬の八ヶ岳の気象をテーマに、クイズ形式で楽しく学ぶことができました。

ちなみに全問正解者には豪華賞品もあり、会場は大盛り上がり!
救助隊からのリアルな遭難の話
続いては、長野県警察山岳遭難救助隊 茅野警察署の村上さん。八ヶ岳における遭難事故の発生件数やコロナ後の増加傾向など、グラフを用いてわかりやすく解説。安全に登山を楽しむためにも、一人ひとりの意識の大切さを感じさせるお話でした。
ラストは登山YouTuberのかほさんと、国際山岳ガイドの近藤謙司さんのコンビ。年末年始に南米最高峰アコンカグアへ登ったときのエピソードを中心に、ヨーロッパの山々や八ヶ岳の思い出など、和気あいあいとした楽しい話を聞かせてもらいました。

もちろんアイスキャンディも熱気に包まれているぞ!
フェスのメインでもあるアイスクライミングは、もちろん大盛り上がり!各メーカーごとに体験会が行われていて、参加者は講師にアドバイスをもらいながら果敢にトライしていました。
近い距離で一流のガイドと交流できる
年齢層は幅広く、若い女性グループも参加されていました。講師の中には、山岳ガイドの花谷泰広さんの姿も。一流のプロに直接教えてもらえる、またとない機会ではないでしょうか。
こちらは国際山岳ガイドでマムートのアドバイザリースタッフを務める熊田光治さん。アイスクライミングの指導にも熱が入っています!

笑顔と活気が溢れ出していました
トップまで登り切ったときの達成感もアイスクライミングの醍醐味!みなさんいい表情をされています。
無事、降りてきた時のワンシーン。グータッチに達成感を感じます。
参加者同士で「ガンバ!」「いけー!」などの声かけも聞こえてきました。ここで生まれる繋がりも、このフェスならではの魅力ではないでしょうか。

基本から体験できるから安心
アイスキャンディは自分のレベルに応じたコース選びができるのもいいところ。難易度の高い垂壁や、階段上になった比較的やさしい場所など、いろんな楽しみ方や練習ができます。
その他にも、凍った斜面でのアイゼン歩行やアイスアックスの使い方など、初心者でも安心してスタートできる体験会も行われていました。いきなり本番ではなく、基本から学んでいけるのも嬉しいですね。

夜は幻想的なナイトクライミングショー
初日の夜にアイスキャンディのライトアップイベントがありました。プロジェクションマッピングにより、アイスキャンディに流れる滝を表現。その幻想的な氷壁を、赤岳鉱泉スタッフが迫真のクライミングで会場を沸かせてくれました。
随所にあらわれる、赤岳鉱泉のホスピタリティ
夜にもなれば気温は-10度以上に冷え込みますが、赤岳鉱泉スタッフがホットワインや甘酒を振る舞ってくれたので、体もしっかり温まりました。

道具もレンタルできるから安心
アイスクライミングはアイスアックスやアイゼン、ハーネス、ロープなどの装備が必要となるハードなアクティビティ。その敷居はとても高く感じますが、アイスキャンディフェスティバルでは、道具類をレンタルできるのも嬉しいポイント。
「アイスクライミングに興味がある!けど、道具を揃えようか迷っている」という人も、まずはこのフェスで体験してから考えてみても良さそうですね。

腹が減ってはなんとやら。おいしい“食”もいっぱい
そしてイベントに欠かせない要素が“食べ物”。これもご安心を!アイスキャンディフェスティバルは食も間違いなしです!
アクティビティ後に嬉しい出店ブース
小屋からの焼肉の差し入れも最高に美味しかったですが、それ以外にも魅力的な出店ブースが。
エイトピークス・ブルーイング
八ヶ岳山麓のクラフトビールブランド「エイトピークス・ブルーイング」とのコラボによる赤岳鉱泉オリジナルクラフトビールも販売!

イエティ ジェラート
八ヶ岳の南麓標高800mの森の中にあるジェラートファクトリー「イエティ ジェラート」も、赤岳鉱泉オリジナルパッケージのジェラートを販売。
なんといってもその魅力は、ジェラートのほとんどが八ヶ岳の素材で作られていること。着色料などは一切使用せず素材本来のおいしさを大切にした、八ヶ岳の自然が感じられるやさしい味です。

ジャパンエナジーフード
和食をベースにした健康食品を開発する「ジャパンエナジーフード」のブースでは、玄米×味噌のシリアルバーを販売。
甘くなく手軽に摂取できるエネルギー源で、脂肪をほとんど含んでいないのに満腹感が得られるのが特徴。登山の行動食やスポーツの栄養補給に最適なシリアルバーです。

COFFEE LAB by hatte
八ヶ岳の麓で自家焙煎コーヒーを販売する「COFFEE LAB by hatte」からは、無料のコーヒーサービスがありました。
心も体もホッと一息つける、やさしい味わいのコーヒーです。

とろとろお肉のビーフシチュー
今回の夕食メニューはビーフシチューでした。じっくり煮込まれたお肉がとろとろで、濃厚なソースが食欲を掻き立てます。ポトフも具沢山でおかわり自由!大満足な夕食でした。
八ヶ岳を、そして赤岳鉱泉を愛する人たちがつくるあったかいフェス
イベントに参加して印象的だったのが、参加者も、スタッフも、協賛企業も、みんなが同じ目線で楽しんでいる姿。八ヶ岳を愛し、赤岳鉱泉を愛する人たちが集まり、その思いが形となっていることを感じました。


新型コロナウィルスという先の見えない不安を乗り越え、3年ぶりのリアル開催となったアイスキャンディフェスティバル。八ヶ岳らしい心地よい青空に恵まれ、終始和やか雰囲気に包まれた、たくさんの笑顔があふれる2日間でした。

取材協力:マムート・スポーツグループジャパン株式会社
赤岳鉱泉・行者小屋