ULパック界で話題。2026年のトレンドとなった新素材『ALUULA』とは?

登山ギア、特にバックパックでは、「軽量性」が長らくキーワードとなっています。しかし、その軽量性は、「背負い心地」や「耐久性」を省略して実現させているともいえます。
反面で、「軽量性」「背負い心地」「耐久性」を上手に融合させ、バランスよく装備したパックも登場してきています。
それは、ULパック以前のいわゆるトラディショナル・パックが元々目指していた方向性を、新たな次元で実現しようとする試みともいえます。
そんな変化の時代に、ULパックの軽さを実現してきたUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)系素材の弱点を克服する、画期的な新素材が登場しました。それが『ALUULA Graflyte(アルーラ グラフライト)』です。
まずはおさらい。ULパックを支えてきた定番素材

ALUULA Graflyteの詳細を解説する前に、既存のUL素材にどんなものがあるのか、おさらいしておきましょう。主なものは以下の3つです。
①DCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック)
鉄の15倍以上の強度を持つ超高分子量ポリエチレン繊維ダイニーマをフィルムで挟んだ素材。圧倒的な軽さと引き裂き強度を誇り、UL素材の定番です。フィルムが水を通さない完全防水(生地自体の性能)。一方で耐摩耗性には劣ります。
②X-Pac(エックスパック)
表生地+X状の補強材+ポリエステルフィルム+裏生地を貼り合わせた4層構造の生地(軽量モデルはフィルムのない3層)。ハリがあり、型崩れしにくく、優れた引き裂き強度があり、突き刺しや引っかけにも強さを発揮。フィルムが入ったものは完全防水(生地自体の性能)。ただし、構造上、他のUL素材より重くなります。
③Ultra(ウルトラ)
超高分子量ポリエチレンの糸を密に織った生地にフィルムを貼り付けたもの。引き裂き強度だけでなく、非常に高い耐摩耗性を持ちます。防水性のある素材ですが、表地は保水し、雨に濡れると重さが増します。
ALUULA Graflyteは何が違う?既存UL素材との決定的な差

上の解説の通り、DCF、X-Pac、Ultraのいずれも、生地や繊維とフィルムを貼り合わせた積層素材であり、異素材を組み合わせた複合素材(ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン等)です。
そのため貼り合わせには、接着剤を使用しています。だから、長期間の使用によって接着剤が劣化したり、摩擦等によってシワが発生したりして、貼り合わせた層が剥離してしまうことが課題としてありました。
その解決のために開発されたのが、ALUULA Graflyteです。
方法は、接着剤を使用せずに、超高分子量ポリエチレン繊維とポリエチレン製防水フィルムを分子レベルで融合・一体化。単一素材の組み合わせなので接着剤を使用する必要がなく、劣化による剥離が起きないのです。

また防水フィルムと一体化しているので、高い防水性と非通気性を備えています。
上画像の通り、水で濡らしても、表地の超高分子量ポリエチレンはプラスチック製のコップと同様の樹脂素材のため、水分を弾きます。よって、雨に濡れても重くなることはありません。もちろん水も通しません。
軽さだけじゃない。ALUULA Graflyteが持つポテンシャル

ALUULA Graflyteの特長を3つ挙げると、次の通りです。
- 鋼鉄の8倍の強度比を持つ「超軽量・高強度」
- 分子融合により剥離しない「高耐久」
- 水を吸わない「完全防水・ゼロ保水」
アウトドア道具において、こんな素材があればいいな!という機能を、すべて実現した素材といえます。
では、マイナス点はないのか?というと、やはりあります。まだ開発間もないということもあって、とても高価なんです。
例えば、主素材に210D ナイロン・エクストリーマ・グリッドを採用したパーゴワークス「ZENN35」は¥38,500。対して、ZENN35の素材違い、ALUULA Graflyte V-98(現ALUULA-98。記事末尾参照)を採用したパーゴワークス「ZENN 35 EXP」は¥66,000。
約1.7倍の価格差。35L容量で¥60,000オーバーは、円安の昨今、海外製ULパックの中にいくつかありますが、それでも購入には覚悟が必要な高価さです。
そこで、ALUULA Graflyte製のパックが、どんなものなのか、次に紹介しましょう。
パーゴワークスは、ZENNパックをタフネス仕様に!

2026年春に発売されたパーゴワークス「ZENN 35 EXP」。これは、2025年に発売された、210D ナイロン・エクストリーマ・グリッド製の「ZENN 35」のALUULA Graflyteバージョンです。
ちなみに私は、ZENN 35の大型モデル、ZENN 45で、北飯豊のテント泊山行でテストしています。その記事はこちら。
ZENN 45はアルミ製フレームを内蔵。ZENN 35とZENN 35 EXPは、着脱式の背面パッドが配されたフレームレスパックです。よって背負い心地=荷重分散は厳密には異なります。
しかし、3ヶ月間、ZENN 35 EXPを数回の山行で使用してみたところ、胸荷重によって肩への負荷が小さく、長時間移動でも疲労が少ない点は、ZENN 45と同様でした。

だから、ALUULA Graflyteを使って軽量化されたら、さらに動きやすくなるのでは!と期待していたんです。ところが、改めてスペックを確認してみると、ちょっと不思議なことがわかりました。
- ZENN 35
- 本体:800g、デタッチャブルポケット:85g、ヒップハーネス:160g
- ZENN 35 EXP
- 本体:830g、デタッチャブルポケット:70g、ヒップハーネス:160g
なんと、軽量素材のALUULA Graflyteを使ったEXPの方が、わずかですが重いんです!この点をパーゴワークスに問うてみると、次のような回答がありました。
「EXPにおけるALUULA採用の狙いは、軽量化を最優先にしたものではなく、耐久性や防水性の向上を重視しています。また、EXPではALUULA以外にもボトム部分の素材などを耐久性重視に変更しており、パック全体としては通常モデルよりタフな構成になっています」
軽さ以上に、強度や耐候性を重視

既存のUL素材のデメリットを改善した新素材。そう知ると、その素材を採用したバックパックは、軽さ重視だと想像しがちです。でも、ALUULA Graflyteの3つの特長を思い出してください。
①超軽量・高強度、②高耐久、③完全防水・ゼロ保水
この素材を活かすなら、よりハードな使用に対応するパックとしてデザインすることも、確かな選択です。
210D ナイロン・エクストリーマ・グリッドを採用したZENN 35は、ファストハイク的な山行や超軽量装備でのULハイクに使用。
ALUULA Graflyteを採用したZENN 35 EXPは、岩稜帯の多い山域、バリエーションルート、雪山登山、バックカントリースキー&スノーボード等、より冒険的な山向き。
私自身はバリエーションルートを登るようなハードな登山はしませんが、数回の山行で背負ってみて、EXPのタフさに安心を感じたのは間違いありません。
なるほど、ALUULA Graflyteは、バックパックに“軽さプラスα”を装備させられる素材でもあるようです。
