理想の履き心地を求め続ける、ハイキングシューズのヒット作

アメリカのシューズメーカー・メレルのラインナップに、「モアブ 3」という定番のハイキングシューズがあります。
世に誕生したのは2007年。それ以来、瞬く間に多くのユーザーから人気を博し、モデルチェンジを繰り返しながら今日まで脈々と登山者やハイカーに支持されている名品です。
そして、世界中で累計2,800万人以上が履いたともいわれるヒット作について、よく耳にする言葉があります。
それが「すごく履きやすい」という声。
足の形は人によって異なるはずなのに、なぜ多くのユーザーはモアブ 3を履きやすいと感じるのでしょうか?
履きやすさの秘密は、研究に研究を重ねたラストにあり

ラストとは、靴を製造する際に使う足の形を模した木型のこと。シューズの内側に広がる空間はこの木型によって形成され、足の長さや足囲、かかとの収まり具合などに影響します。
モアブ3は、このラスト(木型)の設計に注力し、履き心地の良さを追求してきました。
多くのユーザーが評価するその履き心地は、実際に履いてみると、つま先にはゆとりがあり、土踏まず付近から甲を一周するようにホールドされ、しっかりフィットするのにストレスを感じづらい、というような感覚。
登山靴はフィット感が高い代わりに、ずっと履いているときつく感じて脱ぎたくなってしまう、そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。ですが、モアブ 3はストレスが少なく長時間履いていられる、そんな履き心地を備えている点が大きな魅力です。
足元の2大性能も人気のポイント
モアブ 3の評価ポイントは、履き心地だけではありません。注目すべきは、歩きやすさに関わる“グリップ力”と“クッション性”です。
オリジナルのアウトソールで足元が滑りにくい

モアブ 3のアウトソールに使われているのは、世界有数のアウトソールメーカーであるヴィブラム社製の「Vibram TC5+」。
このアウトソールは、ヴィブラム社がメレル専用に開発したソールであり、ラバーに使われる素材の配合率を調整し、安定のグリップ力と高い耐久性を備えています。
グリップ力には、まるでタコの吸盤のようなラグパターンも関わっており、土の多いトレイルではこのラグパターンがしっかりと地面をとらえ、岩場ではラバーの摩擦力でまさに吸い付くようなグリップ力を発揮します。
ミッドソールのクッション性が高く、不整地も快適に歩行可能

足裏を衝撃から守り、地面からの突き上げを軽減するミッドソールには、低反発性に優れるEVAフォームを使用。さらにミッドソールの内側には、かかとを包むようにカップ状の緩衝材が内蔵されています。
実際に履いて歩いてみると、クッション性の高さは一目瞭然。
足裏は着地と同時に沈み込みながらも反発力で押し戻され、それを繰り返すことで、まるで弾むような足運びで山歩きやハイキングを楽しむことができます。
リサイクル素材を各所に使い、環境への配慮も忘れない

豊かな自然を次世代へつなぐために、メレルは環境に配慮するモノ作りに積極的に取り組むメーカーのひとつです。
モアブ 3は、靴紐や靴紐を通すループ状のパーツ、シューズの内側で足に当たる生地やアッパーのメッシュなどに100%リサイクル素材を採用。
環境への負荷が少ない素材で作られている特徴もまた、モアブ 3が支持される理由のひとつといえるでしょう。
登山にぴったりなミッドカットモデルを3型紹介!

モアブ 3は、メンズ、レディース、使われている素材の違いやつま先の広さ、履き口の高さの違いなどにより、いくつものモデルがラインナップされています。
そこから今回は、登山シーンにおすすめできるミッドカットのモデルを3型紹介。
それぞれにどんな違いがあるのか、詳しく解説していきます!
①モアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックス
モアブ 3のなかで、低価格帯を担うエントリーモデルが「モアブ 3 シンセティック」シリーズ。
そのミッドカットタイプが「モアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックス」です。
合成皮革を使い、軽くて柔らかい履き心地

商品名にもあるとおり、アッパーはシンセティック(合成)レザーとメッシュで構成。軽快な足運びと柔らかな履き心地が特徴です。
ゴアテックスで徒渉や突然の雨にも対応

登山靴に必要とされる透湿防水性は、透湿防湿素材「ゴアテックス」をラミネートして対応。沢を渡るシーンや雨のとき、ぬかるんだトレイルを歩くときも足を濡らす心配がありません。
首回りの動きが制限されず、普段どおりに歩行可能

こちらのモデルは“ミッドカット”なのですが、一般的なミッドカットのシューズと比べると、履き口の高さがやや低い設計。そのため、足首を支えるホールド力に関しては、少々乏しいと言わざるを得ません。
ですが、かえって足首の可動域が狭まらない点が好印象。くるぶしまでカバーしつつ、スニーカーを履いて歩くのと変わらない歩きやすさを備えています。
山岳ライター 吉澤
足裏にしっかりとクッション性を感じ、弾むような足運びを楽しむことができました。アッパーの素材が柔らかいので、履き心地は全体的にソフトな印象。
まさにエントリーユーザーにぴったりな一足だと思います。
メレル モアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックス®[メンズ]
サイズ | Men's / 25.0cm~28.0cm, 29.0cm, 30.0cm |
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重量 | 約470g (27.0cm/片足) |
メレル モアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックス®[ウィメンズ]
サイズ | 22.5cm~25.0cm |
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重量 | 約390g (24.0cm/片足) |
②モアブ 3 ミッド ゴアテックス
こちらは、モアブ 3 シンセティック シリーズをベースに、アッパーの素材が異なるモデル。モアブ 3 ミッド ゴアテックスは、メレルブランドオンラインストア(直営店)限定展開モデルでもあります。
水を弾くスキンレザーでワンランク上のビジュアルを楽しめる

こちらのアッパーには、撥水加工を施したピッグスキンレザーとメッシュが使われています。
シンセティックレザーとは明らかに違う、起毛して光沢のある質感が上品な雰囲気を演出。所有欲を満たしてくれる一足といえるでしょう。
足元を濡れから防ぐ透湿防水性にも妥協なし

透湿防水素材には、モアブ 3 シンセティック シリーズと同じく、性能に定評がある「ゴアテックス」を採用。見た目の良さだけでなく、確かな機能性も備えます。
歩きやすく、異物の侵入も防いでくれる

履き口の高さも、モアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックスと変わりません。くるぶしが隠れる高さがあるので、歩きやすいのはもちろん、砂利や落ち葉などの侵入を防いでくれる点も特徴です。
山岳ライター 吉澤
アッパーに使われている素材が本物のレザーだからか、見た目はモアブ 3 シンセティック ミッド ゴアテックスとまったく変わらないのに、履いて歩くと全体の剛性はこちらのほうがしっかりしていると感じました。
そのうえ、優れたクッション性と軽快な歩行性は変わらず健在。
シンセティックとレザーで悩んだら、値段と見た目の好みが判断を分けるポイントになるでしょう。
③モアブ 3 エイペックス ミッド ウォータープルーフ
商品名にある“エイペックス(apex)”とは、「頂上」を意味する英単語。
その名のとおり、モアブ 3 エイペックス ミッド ウォータープルーフは、従来のモアブ 3 コレクションの設計思想を受け継ぎながら、ワンランク上のステージへ向かう登山者のために開発されたハイエンドモデルです。
希少なレザーを使い、高い耐久性で足を保護

アッパーに使われているのは、撥水フルグレインレザーとメッシュ素材の組み合わせ。
フルグレインレザーとは表皮を備える傷の少ないレザーのことで、ハイブランドのレザー製品に使われることもある希少性の高い素材です。
フルグレインレザーの特徴は見た目の美しさと耐久性の高さにあり、製品寿命が長く、使い込むほど味わい深い表情を見せる点も魅力といえるでしょう。
オリジナルの透湿防水素材で足元を濡れから守る

先に紹介した2型と異なり、使われている透湿防水素材はオリジナルの「M-select DRY Barrier」透湿防水メンブレン。ゴアテックスではありませんが、透湿防水性に遜色はないはず。確かな性能で足を水濡れから防いでくれます。
足首回りをしっかりホールド。足がブレないから疲れにくい

モアブ 3 エイペックス ミッド ウォータープルーフは、足首付近に靴紐を引っかけるフックが2つあり、くるぶしのさらに上まで覆うデザインで設計されています。
特に重たい荷物を背負う山行などでは、足首が固定されるので段差を越えるときなどにバランスを取りやすく、余計な筋力を使わないぶん、疲れにくいと感じることができるはずです。
山岳ライター 吉澤
こちらのモデルは、ソールに地面からの突き上げを軽減するプレートを内蔵しており、そのためか足裏に感じるストレスが他の2型と比べて少ないように感じました。
そして、足首のホールド感は群を抜いて高いです。
ですが、見た目以上に重さや足首回りの窮屈感が気にならず、かなり歩きやすかった点には正直驚かされました。
登山をはじめたばかりで筋力に不安がある方、荷物が重くなりがちな泊りがけの山行に挑戦する方などは、こちらのモデルを積極的に選ぶといいでしょう。
メレル モアブ 3 エイペックス ミッド ウォータープルーフ[メンズ]
サイズ | 25.0cm~28.0cm, 29.0cm, 30.0cm |
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重量 | 約580g (27.0cm/片足) |
メレル モアブ 3 エイペックス ミッド ウォータープルーフ[ウィメンズ]
サイズ | 22.5cm~25.0cm |
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重量 | 約470g (24.0cm/片足) |
巷の評価に偽りなし。履き心地の良さに太鼓判

山登りをはじめたころ、じつは筆者もメレルの靴にお世話になったひとり。
当時履いていた靴はモアブ 3 と異なりますが、ガチガチの登山靴が足に合わず、歩きやすい靴を探していたときにメレルのシューズにたどり着きました。
そんなことを思い出しながら、今回試した3モデルの履き心地を振り返ってみると、当時の自分が欲していた理想的な靴と重なる部分が多い印象。
ソールのグリップ力とクッション性に頼り甲斐があり、剛性が高すぎないので普段どおりに歩くことができ、改良を重ねたラストのおかげで次の山行が待ち遠しくなるほど履きやすい。
このトータルバランスの良さは、僭越ながらはじめの一足として太鼓判を押したくなるほど、エントリーユーザーにおすすめです。
記事を読んで気になった方は、ぜひ店頭でチェックしてみてください!