遭遇3000回以上、9回生還の研究者が明かす。知っておくべき「クマの真実」と対処法

山を楽しむ私たちにとって、クマとの遭遇は決して他人事ではありません。しかし、私たちは本当にクマのことを知っているのでしょうか?
2026年4月17日、一冊の科学ノンフィクションが発売されます。タイトルは『家に帰ったらクマがいた』(PHP新書)。著者は、秋田県庁での勤務を経て、50年以上クマを追い続けてきた日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏です。
3000回の遭遇から学んだ、クマと「共存」するための知恵
著者の米田氏は、これまでに3000回以上クマと遭遇し、9回も襲われながら生還してきたという、類を見ない経験を持つ研究家です。
本書は、その膨大な研究成果と日常生活を通じて、クマの本当の姿を綴った一冊。「駆除か保護か」という二項対立を超え、本来あるべき自然の姿を考えさせる内容は、山に入る機会の多い登山者にとって、非常に説得力のある教訓に満ちています。
「2歳グマ」が市街地に出没する理由とは
近年、青森県津軽半島や石川県能登半島など、従来は生息が少なかった地域でも目撃や事故が相次いでいます。米田氏の指摘によれば、その大きな要因は2018年生まれの「2歳グマ」にあります。
若グマは群れの中で立場が弱く、安全を求めて移動する過程で人間社会の周辺に居場所を求める傾向があるといいます。騒音や車両の多い場所にも生息域を求める実態もあり、登山道だけでなく市街地での接触リスクも高まっているのが現状です。
もし出会ってしまったら?生存率を高める「石になる」という選択
万が一、山の中でクマと対峙してしまったら。米田氏が55年間の活動で導き出した答えは、「石のように固まり、クマが去るのを待つ」ことでした。
「クマがうなったときは、私はとにかく石のように固まり、クマが去るのを待つようにしている」
大切なのは、クマを刺激しないこと。特に「食事中」や「近くに子グマがいるとき」は、母グマの警戒心が非常に強く危険です。こちらが動かないことで無視され続ける状況を作り、クマが去るのを待つ。この「情動を見極める」姿勢こそが、生還率を高める鍵となると述べています。
本書が投げかける問いと、この一冊から得られるもの
本書は単なる危険回避マニュアルではありません。クマを「怖い存在」として遠ざけるのか、それとも自然の一部としてどう向き合うのか。私たちの価値観そのものに問いを投げかけてきます。
同時に、クマ問題はもはや山の中だけの話ではなく、日常のすぐそばにある現実でもあります。体験と科学の両面から描かれた『家に帰ったらクマがいた』は、アウトドアを楽しむ人にとっても「知っておくべき現実」を静かに突きつける一冊です。
PHP新書 家に帰ったらクマがいた
| 著者 | 米田一彦 |
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著者プロフィール
日本ツキノワグマ研究所所長。1948年、青森県生まれ。秋田大学教育学部卒業。秋田県生活環境部自然保護課勤務。86年に同庁を退職し、フリーのクマ研究家となる。島根県、山口県、鳥取県からの委託によるツキノワグマ生息状況調査(2000~04年)のほか、環境省のもとでも調査を行なってきた。青森県十和田市民文化賞受賞(98年)、第14回日韓国際環境賞受賞(08年)。著書に『クマ追い犬 タロ』(小峰書店)、『山でクマに会う方法』(ヤマケイ文庫)、『熊が人を襲うとき』(つり人社)など。
目次より一部抜粋
- 目の前3メートルまでクマ接近
- クマが頭上から襲ってきた
- 家に帰ったらクマがいた
- 手負いグマの逆襲
- 135キログラムのオスグマは恐ろしい
- メスグマにも襲われた
- クマの頭の上で弁当を食った
- クマと一緒に眠ってみた
- 山でクマの死体が見つからない理由
- クマは首を吊って死ぬ?
- 密猟して高値で売られていた
- 樹上からクマが降ってくる
- クローバーを食う理由
- 兄弟が長く一緒に行動するということ
- 老練な母グマは子育てがうまい
