絶滅危惧種!?のアルミボトル

一方、金属製のアルミボトルは、ラーケンの『フツーラ1.0』を20年近く使っています。
アルミボトルは、グランテトラ(フランス)、マルキル(ドイツ)、シグ(スイス)、そしてラーケン(スペイン)といったクライミングが盛んな国のブランドのものが、90年代頃まで日本でも手に入れることができました。
グランテトラは、スウィングキャップと呼ぶワイヤーでキャップを固定する丸みを帯びたボトル形状で人気がありました。現在でも、オークションやフリマサイトで、中古品が高値で取引されています。
ですが、ペットボトル飲料の普及、樹脂製ボトル、ソフトボトルの登場によって、重くて、嵩張るアルミボトルは、登山用品店の棚からも姿を消しつつあります。同じ金属製でも、保温・保冷力を誇るステンレス製サーモボトルの愛用者が増えているのとは、対照的です。

そうしたユーザーが求めるものの変化によって、現在、上記した4ブランドのうち手に入るアルミボトルは、シグとラーケンだけです。私が愛用しているフツーラも日本での取り扱いはなくなり、洗浄のしやすい広口キャップモデルのみが販売されています。
ほぼ使う人を目にしないアルミボトルを、なぜ使い続けているのか?
それは十分な軽さと強度、それに愛着です。

私はアルミボトル同様の円筒形の樹脂製ボトルもデイハイクを中心に使用しています。その重さは1L容量で150g前後と、アルミボトルと変わりません。ちょっと意外だと思いますが、アルミボトルも十分に軽いんです。
同じ重量ながら、落下させてしまった際には、樹脂製ボトルの場合、本体は問題ありませんでしたが、キャップが割れてしまいました。一方で、ラーケンのフツーラ1.0は、塗装が剥げ、凹みましたが(上画像)、割れはしませんでした。
異なる状況でのこと、落ち方の違いもあります。本体は擦り傷程度の樹脂製ボトルの方が、凹んだアルミボトルよりも強いと捉えることもできます。でも、ソフトボトルで穴開き、水漏れを経験していることもあり、割れるより、割れない方を、凹んでも穴が開かない方を、選びたくなるんですよね。

ちなみに、どちらの落下も、登山ではなく、サイクリング中のことです。
前傾姿勢で漕いでいるため、サイドポケットに入れていたボトルが滑り出してしまったのです。クルマが滅多に通らない峠道だったので、事故を起こすことがなかったのが不幸中の幸い。以降、フツーラに備わっているアクセサリーカラビナの意味を知り、登山時でもバックパックのコンプレッションストラップ等と連結するようになりました。
樹脂製ボトルも、装備されているフックと市販のアクセサリーカラビナとで、バックパックに連結させています。これも、小さな失敗を防ぐことで、大きな失敗を起こさない、経験からの学びです。
長く使ったからこそ湧く、愛着

20年使ったフツーラは、外側が凹み、塗装が剥げてしまった箇所がありますが、内部を確認しても錆や劣化はありません。パッキンが劣化してもよい頃ですが、まだ水漏れは起きていません。
使い方、使う頻度にもよりますが、耐久性の高さこそが、アルミボトルのよさです。
またソフトボトルや樹脂製ボトルは長く使うと変色等によるヘタリを感じます。だから、古くなると、割とあっさり買い換えしてしまいます。でも、アルミボトルは長く使っていてもヘタリを感じさせず、私の不注意でつけてしまった凹み等には、長く一緒に旅をして、サポートしてきてくれた証に思え、愛着を感じます。
さらに、使ってきた長い時間の思い出に加えて、これからも長い時間を一緒に過ごせるだろう、未来を感じられるから、愛着が強くなるのだと感じています。
たぶん、こちらの方が、理由としては強いかもしれません。既知のことよりも、未知のことの方が、ワクワクしますから!
ソフトボトルとハードボトルの組み合わせのよさ

ボトルについては、他にも失敗がありました。
ベスト型のバックパックを使い始めたときに、ベストのポケットに0.6Lのソフトボトル、パック内にウォーターキャリー2Lのソフトボトルを収納して行きました。山頂でランチ後、飲み切ってしまった0.6Lソフトボトルに2Lソフトボトルから給水しようとして、気が付きました。
0.6Lソフトボトルは自立しないタイプなので、片手で持っていなければなりません。そこにもう一方の手で2Lソフトボトルを持って給水。見事にジャバジャバと水をこぼしてしまいました……。私の想像力の欠如を呆れるとともに、ハードボトルを携帯する意義を学びました。そして、給水のしやすさのために、多くのボトルが細口から広口に変わった理由もわかりました。

アウトドア、そして登山の道具は、基本的には壊れないように、不具合が出ないようにつくられています。しかし使い手が気が付かないミスをしたり、使い方とは異なることをすれば、壊れたり、不具合が生じることがあります。
恐らく、使いづらいとか、機能的ではないと感じる道具も、その多くは、使い手が使い方を工夫したり、どのようにつくられている道具なのかを想像してみれば、使いやすく、機能的な道具になるのです。
経験から学ぶ、失敗から学ぶということは、これまでの自分のやり方とは違ったことを試みてみるということです。自分を変える=固定観念を払拭することが、登山をすること、道具を使うことの意義なのだと思います。小さな失敗を繰り返してきた私は、そう思います。
あっ、そうそう、アルミボトルはシグとラーケンのみと記事冒頭で書きましたが、ステンレス製ならクリーンカンティーン。チタン製ならスノーピーク、マキシ、バーゴなどがあります。ステンレス製はちょっと重め、チタン製はアルミ同等の軽さですが質感のよさが特長で、でも高価です。とはいえ金属製は長く使える、長く使いたくなる道具なのは間違いありません。是非一緒に旅してみてください。
それではみなさん、よい山を!!!
エバニュー ウォーターキャリー2Lグレー
ラーケン クラシック 1.0L