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シュイナードドラゴン

現代山道具の系譜を辿る。70年代の銘品「シュイナードザック」

1970年半ば、パタゴニアの前身「シュイナード イクイップメント」から発売されたアタックザック、通称「シュイナードザック」。クライマーから多くの評価を得たそのザックは、日本で製造されたものでした。

今回、そのシュイナードザックを受け継いだ当時のバックパックや復刻モデル、最新モデルをメーカーから借りることができたので、詳細をレポートします。

目次

撮影:ポンチョ

パタゴニア創業者、イヴォン・シュイナード氏最初のブランドのバックパック

シュイナードドラゴン シュイナードイクイップメント
撮影:YAMA HACK編集部

1970年代、当時「ショイナードザック」と呼ばれていたアルパイン・パックがありました。英国の「カリマー」、仏国の「ミレー」とともにアルピニストやクライマーから人気を得たそのザックは、米国・西海岸ベンチュラ発のクライミングギアブランド「シュイナード イクイップメント」のものです。

シュイナードザック(シュイナードイクイップメント)

撮影:YAMA HACK編集部

「ショイナード」は当時の呼び方で、現在では「シュイナード」と呼ばれています。アウトドア好きであれば気がつくと思いますが、これはイヴォン・シュイナード氏の名前。アウトドアブランド「パタゴニア」の創業者であるイヴォン氏が、1964年に立ち上げたのが、「シュイナード イクイップメント」です。

シュイナードザックは、日本のメーカーが製造していた!

「シュイナードザック」の製造を担当し、日本でのライセンスも持っていたのは、バックパック、テントや寝袋等のアウトドアギアの製造を行なっている日本の会社「クロスター」でした。

そんな「シュイナードザック」の日本版が、下のバックパックです。

シュイナードドラゴン

撮影:ポンチョシュイナードドラゴンのタグ
撮影:ポンチョ

タグには「chouinard dragon」の文字が。

筆者は、1990年代半ばに雑誌でバックパックのカタログ記事を制作していた際、「シュイナードザック」を所有している方を取材。アメリカで購入したそのモデルにもドラゴンのイラストがありましたが、ロゴは「chouinard」のみのタグでした。このことから、「シュイナード ドラゴン」は、日本で販売された商品だと考えられます。

シュイナードザックの画期的な機能

シュイナードドラゴン

撮影:ポンチョ

さて、「シュイナードザック」、そして写真の日本版「シュイナード ドラゴン」の特長は2つあります。

①70年代の日本の登山シーンでは横型のキスリングが主流。その時代に岩場でバランスの取りやすい縦型を採用

これは、「シュイナードザック」が最初という訳ではなく、「ミレー」が1964年にすでに縦型パックを発売しています。しかし当時、そのパックは高価なものでした。70年代に「シュイナード ドラゴン」の縦型アタックザックが発売されたことで、日本でも普及が進んだと考えられます。

シュイナードドラゴン

撮影:ポンチョ

②ナイロン生地に、ウレタン防水加工を世界で初めて採用

ナイロン生地自体は、1964年に発売された前述の「ミレー」の縦型パックで初めて採用されました。ですが調べてみると、クロスターが製造していた「シュイナードザック」は、世界で初めてウレタン防水加工が施されたバックパックだといいます。

今回撮影した「シュイナード ドラゴン」もナイロン生地に防水加工が施されていました。

70年代製の「シュイナード ドラゴン」を背負ってみた!

シュイナードドラゴン背負ってみた

撮影:ポンチョ

重量は1,500g、容量は45L前後。バックルやスライダーは金属製、皮革製の当て革を採用。本体には軽量なナイロン生地を使い、背面には金属フレームも内蔵されています。

現在のスペックで比較すると重量はありますが、フレームが機能して軽やかな背負い心地です。

シュイナードドラゴンのウエストベルト

撮影:ポンチョ

ウエストベルトも装備。片側固定で、反対側のスライダーに通し、面テープで留める仕様です。
荷物が多く、重くなった際には、しっかりと機能。背負い心地の軽さも生んでいるベルトでした。

シュイナードドラゴン

撮影:ポンチョ

実際に背負って歩いてみると、中型パックとして現在でも十分に使いたくなるもの。

このパックの発売から約50年が経過。軽量性・機能性で進化を遂げた現代の最新パックは、いわゆるULパック以外は、シンプルさに欠けているのではないか?

当時のシュイナード イクイップメント、そしてその後のパタゴニアのデザインのベースにある、「なにが必要かより、なにが必要でないか」というイヴォン・シュイナード氏のモノづくりの考えを、このバックパックからは感じられます。

その後、クロスタードラゴンへ

クロスタードラゴン

撮影:ポンチョ(クロスタードラゴン)

「シュイナードザック」の系譜を持つバックパックは、2013年に「croster dragon(クロスタードラゴン)」として復刻し、販売もされていました。上の写真のバックパックがそれ。かなり使い込まれていますが、復刻モデルです。

本体には丈夫なコーデュラナイロンを採用。金属製のバックルやスライダー、底部の皮革等、往時の「シュイナードザック」の雰囲気を再現したデイパックです。

クロスタードラゴン最新

撮影:ポンチョ(クロスタードラゴン 50L|26,400円、重量2.1kg)

そして上のバックパックが、現在の「クロスタードラゴン」50Lモデル。

「シュイナードザック」から続く、「クロスター」が持つバックパックづくりのノウハウ、経験を活かしたもの。これも実際に背負って歩いてみましたが、さすがに最新モデル。安定感があり、荷物の重さを感じさせません。

左から、「クロスタードラゴン」最新モデル、「シュイナードドラゴン」、「クロスタードラゴン」復刻モデル

撮影:ポンチョ(左から、「クロスタードラゴン」最新モデル、「シュイナードドラゴン」、「クロスタードラゴン」復刻モデル)

「シュイナードドラゴン」、「クロスタードラゴン」の復刻モデルと最新モデルを並べてみました。色味や素材感、デザイン、どれをとっても中央の「シュイナードドラゴン」のカッコよさが光ります。

「シュイナードドラゴン」を現代的にアップデートして、必要でないものを吟味、シンプルにした30L程度の容量のバックパックがあったら、背負ってみたいものです。

「シュイナードドラゴン」を背負った様子

撮影:ポンチョ

復刻モデル程はクラシックでなく、最新モデル程に機能を盛り込まず。かといってULまで削ぎ落とさない、シンプルな中型バックパック。道具好きは、結構興味を示すと思うのですが、クロスターさんいがでしょう?!

と、思わせるくらい、「シュイナードザック」のデザインと機能は、時代を越えています。

それでは、みなさん、よい山旅を!

クロスタードラゴンについての詳細はこちら

クロスタードラゴン バックパック 50L

3~4泊向けに制作されたバックパック

素材:
(表地)210D リップストップナイロン ポリカーボネート加工
(裏面)PUコーティング 耐水圧1,000mm
(裏地)ナイロン210D PUコーティング
サイズ:W35×H59×D26cm
容量:50L
重量:約2.1kg
カラー:BLUE
価格:26,400円

クロスタードラゴン バックパック 70L

5~6泊向けに制作されたバックパック

素材:
(表地)210D リップストップナイロン ポリカーボネート加工
(裏面)PUコーティング 耐水圧1,000mm
(裏地)ナイロン210D PUコーティング
サイズ:W37×H63×D28cm
容量:70L
重量:約2.6kg
カラー:BLUE
価格:31,900円