記事内の写真はすべて撮影:吉本悠哉
ザ・ノース・フェイスの60年の「EXPLORING」

1966年に誕生し、2026年に60周年を迎えたザ・ノース・フェイス。
その歩みを振り返る「NEVER STOP EXPLORING EXHIBITION」が、10月1日より東京・青山のゴールドウイン本社で開催されています。
展示のテーマは、「EXPLORING WITH NATURE|自然とともに探求すること」。
ブランドを形づくってきた「テクノロジー」「素材開発」「デザイン」「文化」「教育」「環境保全」「冒険」などを10のエレメントに分け、それぞれを小惑星に見立てて巡るような構成になっています。
会場を歩いていくと、一見すると異なるこれらの活動が、ひとつの思想でつながっていることが見えてきました。
今回、青山ではそのうち9つを展示。残るひとつは、京都で開催されるサテライト展で紹介されます。
ザ・ノース・フェイスの原点~OPEN ROAD~

まず見ておきたいのが「OPEN ROAD」と名付けられた展示です。
1968年、サンフランシスコ・ノースビーチの初代店舗を引き継ぎ、その後のものづくりを本格化させたケネス・ハップ・クロップ。
ここでは、彼がブランドに込めた思いとともに、ザ・ノース・フェイス初期のプロダクトを見ることができます。
初のオリジナルプロダクト『Superlight』

ザ・ノース・フェイス初のオリジナルプロダクトとして、1966年に登場した寝袋「Superlight」。
重い化繊寝袋や軍放出品が一般的だった当時、薄手で丈夫なリップストップナイロンを採用し、高品質なグースダウンをたっぷりと充填。軽さや暖かさ、使いやすさを追求した寝袋として、幅広いユーザーから支持されたといいます。
会場にはそのほかにも、ブランド初期を代表するバックパック「Ruth Sack」やダウンジャケット「Sierra Parka」も並んでいました。
もちろん、どれも半世紀以上前に生まれたアウトドア用品です。しかし、その背景にあるのは、
「どうすれば、もっと軽くできるのか」
「どうすれば、もっと快適に自然の中を動けるのか」
という問い。
60年前のプロダクトを見ているはずなのに、その根底にある考え方には、今のザ・ノース・フェイスにもつながるものが感じられます。
象徴とも言えるアスリートたちの冒険~TRUE NORTH~

ザ・ノース・フェイスの歴史を語るうえで、もちろん「冒険」は欠かせません。
「TRUE NORTH」では、ブランドとともに挑戦を続けてきたアスリート、その冒険、そして彼らを支えてきたプロダクトという3つの視点から、その関係を紐解いています。
冒険の経験を、次の冒険へつなぐ

極地や高所などの過酷な環境に挑むアスリートからフィードバックを受け、プロダクトを開発する。そして実際のフィールドで得られた知見や技術を、また次のプロダクトへと生かしていく。
さらに、そこで培われた技術は、やがて私たちが楽しむ身近なアウトドアにも広がっていきます。
「アスリートの冒険がプロダクトを進化させ、そのプロダクトがまた次の冒険を支える」
そんな循環が、ザ・ノース・フェイスのものづくりを支えてきました。
自然へ一歩踏み出すということ~TRAILHEAD~

ここに展示されているのは、ザ・ノース・フェイスと関わりの深い写真家・石川直樹さんとともに、ヒマラヤを初めて訪れた人々の旅の記録。写真や、その土地で手にした思い出の品々が並んでいます。
ザ・ノース・フェイスが提供しているのは、山へ行くためのプロダクトだけではありません。「石川直樹さんと行くヒマラヤツアー」のように、実際に自然の中へ一歩踏み出すきっかけもつくっています。
それぞれの「一歩」の登山口になる

「TRUE NORTH」で描かれていたような、極地や高所を目指すことだけが冒険ではありません。
初めて山に登る。初めてテントで眠る。行ったことのない土地を歩いてみる。その人にとっての“未知”へ一歩踏み出すこともまた、ひとつの冒険です。
だからこそ、難易度や経験の有無にかかわらず、一人ひとりが持つ「やってみたい」を後押しする。「TRAILHEAD=登山口」という名前には、そんなブランドの姿勢が表れているように感じました。
60年の「探求」は山だけに向けられてきたわけではありません。

ここまで見てきたのは、プロダクトやアスリートの冒険、そして自然へ踏み出すきっかけづくり。
しかし、ザ・ノース・フェイスが向き合ってきたのは、「どう自然へ行くか」だけではありません。自然とどう付き合い続けるのか。異なる文化と交わることで何が生まれるのか。そして、次の世代は自然とどう出会うのか。
展示をさらに巡っていくと、「探求」という言葉が指すものが、もっと広いことに気づきます。
異なる領域から新しい価値を ~CROSSOVER~

ザ・ノース・フェイスは、異なる思想や文化、デザインを持つブランドやクリエイターとも数多く協業してきました。山で培われた機能が街へ、街で生まれた文化やデザインがアウトドアへ。
領域を越えて交わることで、これまでになかった新しい価値を生み出してきた歴史が紹介されています。
自然とどう付き合い続けるか ~RECREATION~

登山道の侵食は、やがて川を通じて下流へとつながり、山だけの問題ではなくなっていきます。
ザ・ノース・フェイスでは、自治体などと連携し、「近自然工法」などを取り入れた登山道整備にも取り組んでいます。
「自然で遊ぶだけでなく、遊び続けられる環境そのものを考える」。そんな山と街のつながりを、ひとつの循環として表現したピタゴラ装置が展示されています。
未来の好奇心を育む ~LITTLE WILD~

子どもたちの「これは何だろう?」という好奇心に目を向けた「LITTLE WILD」。今回のテーマは「水」で、水を含ませた筆で自由に描ける壁が用意されています。
触れて、遊んで、考えてみる。何かを達成することだけではなく、自然を知りたいと思う気持ちそのものを大切にした展示です。
自然から学び続ける~NEXT NATURE~と~SILENT WARMTH~

ザ・ノース・フェイスはこれまで、さまざまなテクノロジーや素材を生み出してきました。その発想のヒントとなってきたのが、私たちの身のまわりにある「自然」です。
例えば、2015年から研究開発を続ける「Brewed Protein™ fiber」。微生物による発酵プロセスを利用してつくられる素材を通して、これからの素材のあり方を探っています。
「空気そのもの」を、もっと積極的に使えないか

そして、もうひとつ目を引いたのが、未来の高所登山を想定したプロトタイプ「Air Chamber Himalayan Suit(エアチャンバーヒマラヤンスーツ)」です。使われているのは、ザ・ノース・フェイスを取り扱うゴールドウインが開発を進める『Voxeloft(ヴォクセロフト)』というテクノロジー。
一般的な防寒着は、ダウンや化繊綿などによって空気を蓄え、その層を利用して保温します。一方、Voxeloftは生地を多層化した独自構造によって複数の空気層をつくり、内部の空気量を変えることで暖かさを調節するという発想です。
実用化に向けては、高所での気圧など、まだ検証すべきこともあるといいます。それでも、ここで示されているのは完成された答えではなく、「こんな未来があり得るのではないか」という問いそのもの。
自然にある「空気」に改めて目を向け、まだないものを形にしようとする。その姿勢にも、ザ・ノース・フェイスらしさを感じました。
60年を振り返って見えてきた「変わらないもの」と未来の姿

プロダクト、アスリートの冒険、自然保全、異なる文化との交わり、そして未来への試行錯誤。
60年の活動は実にさまざまですが、展示を巡ると、その根底にはずっと変わらないものがあるように感じます。
それは何なのか。そして、この先どこへ向かうのか。
60周年という節目に、長年ザ・ノース・フェイス事業を率いてきた大坪さんに話を聞きました。
根底にあり続けているのは、「自然から学ぶ」こと。

ザ・ノース・フェイス事業を率いる大坪さんは、ブランドが大切にしてきたものについて、時代ごとの流行ではなく、数年後、さらにその先にも価値を感じてもらえる「普遍性」の重要性を話していました。
60年の間に、プロダクトもテクノロジーも、アウトドアを取り巻く環境も大きく変わりました。では、「探求する(Exploring)」という考え方そのものも変わってきたのでしょうか。
「変化してきたもの」と「変わらず受け継がれてきたもの」

環境や社会が変われば、そこから生まれるプロダクトや表現も変わる。けれど、自然に向き合い、そこから何かを発見し、また次の探求へ向かう。その根っこは、60年間変わっていないといいます。
「NEVER STOP EXPLORING」が示すのも、どこか遠くへ行き続けることだけではありません。
ひとつの探求を終えて帰ってきて、そこで得たものから、また次の好奇心が生まれる。その繰り返しです。
だからこそ、その大きさは人によって違っていい。
高所登山へ向かうことも、初めてヒマラヤを見ることも、子どもが水や森に触れることも。それぞれに、その人なりの「探求のカタチ」があります。
一人でも多くの人がアウトドアを体験できる環境を広げていくこと。

最後に、大坪さんにこんな質問をしました。
「THE NORTH FACEが100周年を迎えたとき何をしていれば「NEVER STOP EXPLORING」と言えるブランドであると言えますか?」
返ってきたのは、さらに過酷な場所へ行くことでも、さらに高機能なウェアを作ることでもありません。
個人的な思いも少しあるかもしれませんが、目指すのは、年齢や性別などにかかわらず探求したいっていう気持ちはあると思っています。そういった人たちが一人でも多く、アウトドアを体験できる環境を広げていくこと。
そのために、国立公園など自然の近くに拠点をつくることもあれば、登山道を整備することもある。子どもたちが自然に触れられる場所をつくることもあると思います。
プロダクトを作ることは、もちろん続いていきますが、プロダクトを売ったところで終わりではありません。
その先にある自然へ人を送り出し、そこで何かを感じてもらい、また次の好奇心につなげていく体験をいかに増やしていくかっていうことを今、考えています。
そう考えると、展示「TRAILHEAD」に書かれていた言葉の意味が、もう一度浮かび上がってきます。
ウェアやギアをつくることの、先へ

60年前、寝袋やバックパックから始まった探求は、いまやフィールドや体験そのものへ広がっています。
極地や高所など、未知のフィールドへ挑む。
知らない道を歩いてみる。
子どもが自然に触れてワクワクする。
いつもの山を守るために、登山道を直す。
挑戦の大きさも、自然との関わり方も、人それぞれ。
60周年を迎えた今も、ザ・ノース・フェイスの探求は、その先へと続いています。
「NEVER STOP EXPLORING EXHIBITION」開催概要

今回の展示テーマ「EXPLORING WITH NATURE」。私は取材を通じて、自然の中で遊ぶ時に感じる「景色を見たい」 「知らないことを知りたい」という、『自分の領域を一歩踏み出したくなるワクワク感』がEXPLORING(探求)のように感じました。
ぜひ、皆さんも会場に足を運んで展示を通して、EXPLORINGって一体何なんだろう?と考えてみてください。
▼展覧会名:NEVER STOP EXPLORING EXHIBITION
▼会期:2026年10月1日(木)~10月31日(土)
▼会場:株式会社ゴールドウイン1階イベントスペース(東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル)
▼開館時間:11:00~19:00 ※変更になる場合もございます。
▼料金:無料
会場内売店では、60周年記念グッズや展示内容につながる書籍も

THE NORTH FACE 60thグラフィックロゴフーディ(ユニセックス)
[ザ・ノース・フェイス] パーカー スウェット 60th Graphic Logo Hoodie ミックスグレー L
自然と人間の関係を象徴的に表現したアートワークと左胸の60周年ロゴが印象的なコットン100%のスウェットパーカ。
