ちょっと気になるニーモのテント
登山を始めると、いつかはやってみたいと思うのが山でのテント泊。山岳用テントと言えば、モンベル、アライテントを筆頭に様々なメーカーがありますが、NEMOのテントも見かける事の多いテントの一つです。
アメリカ発のアウトドアギアメーカー「ニーモ(NEMO)」
ニーモ(NEMO、NEMO Equipment,Inc(ニーモイクイップメント社))は、2002年に創業した、アメリカ発のアウトドアギアメーカー。日本ではイワタニ・プリムスが取り扱っています。
2020年時点の登山向けテントのラインアップは、以下の通り。
8種類のラインナップがあり、様々なシーンに合わたテントが余すところなく網羅されていることが伺えます。
初心者におすすめしたい「アトム」 そのポイントとは?
たくさんあるニーモのテントの中でも、初心者向けのテントが今回紹介する「アトム」。
NEMOのHPにも「初めてテントを購入するユーザーにも」と書かれているように、機能性・デザイン・価格ともにバランスがよく、初心者におすすめのテントです。
■アトム 1P
初めてテントを購⼊するユーザーにもNEMOのクオリティとイノベーションを提供することをコンセプトに開発された1⼈⽤⼭岳テントです。
シンプルかつ考え抜かれたデザインで素早い設営・撤収が可能。ゆとりのある居住スペースと前室、さらに様々なロケーションでの設営を考慮した耐久性のあるフロア素材の採⽤など⼭岳⽤テントに求められる機能を全体の重量を抑えながら実現しています。
【ポイント1】素早い設営・撤収が可能
やっとたどり着いたキャンプ場で、設営に手間取りたくはないものです。
設営撤収が素早いという事は、構造がシンプルだという事。設営経験が少ない初心者にとってはシンプルが一番です。
設営手順はざっくり、以下の通り。
1.本体を広げ、四方をペグ固定。
2.2本のポールをスリーブに通し反対方向から押して立てる。
3.ポールクリップを取り付ける。
4.ガイラインでテントを固定して完成。
全体的には、他のテントと同じような手順ですね。
テントはスリーブにポールを2本通して、反対をコーナーアンカーに止めてグッと持ち上げるだけで立ち上がるシンプルなもの。
次にフックを6カ所掛けてフライシートを掛け、ガイロープをペグ止めしたら完成です。
筆者は初めて立ててここまで約20分。初心者でも慣れれば10~15分以内にはなるのでは。
撤収は、設営の逆で手順は簡単。
ただ、ちょっと手こずったのが、テントからのポール外し。
上の画像のように、ポールの先は、簡単に抜けないように溝を切っています。それが引っ掛かり、なかなかテントから外れませんでした。
しかし、2度目の撤収時は、コツを掴んですんなりと。やはり、試し張りは大切ですね。
【ポイント2】ゆとりのある居住スペースと前室
テントスペースをうまく使う事に慣れていない、テント泊初心者のテント内は手狭になりがち。そんな時、十分なスペースが確保されていることは安心です。
簡単に内寸を測ってみたところ、奥行き約83cm、長さ約205cm、高さ約97cm。わかりやすいように、マットを置いてみました。これだけ余裕があればソロなら十分な広さです。
両側の壁は立っているので、圧迫感は少なく、初心者でも快適に過ごせるでしょう。
前室はフライシートが、2本のペグで前に引っ張られているので台形型に広がり、かなりの余裕です。登山靴はもちろん、物置き場として十分な広さです。
【ポイント3】様々なロケーションでの設営を考慮した耐久性のあるフロア素材
山岳のキャンプ場で、条件の良いテントスペースを確保することは、初心者にとって簡単な事ではありません。岩の多い地面に立ててテントのフロアを痛めてしまう事も。耐久性が高いフロアだったら、気づいたら漏水していたなんてことも少なくなります。
フロアを実際に触ってみたら、確かに、他のテントにくらべ生地の糸が太いようです。かといってゴワゴワ感は無く、折り畳み時にシワが付くようなこともありませんでした。経験が必要な設置場所の選択も、それほど考えずに使えそうなので、初心者でも安心です。
耐久性が高いフロア素材ですが、より長持ちさせるためにもフットプリント(グランドシート)を敷きましょう。
【ポイント4】高いコストパフォーマンス
初めてテント泊をする場合、テントだけではなくシュラフやマットなど、たくさんのギアを用意する必要があり、お財布が寂しくなりがち。他メーカーの同レベルのテントが軒並み40000円を超える中、アトム1Pは税込39600円。この差は、初心者にとって嬉しいポイントですね。
でも、アトムは安いだけじゃない「お値段以上」の機能が他にもたくさん。
【大きく開く出入口】
出入口は大きく半月状に開き、出入りが楽なことに加え、外から荷物を出し入れするときも非常に楽です。
前室全体に渡って開くので、出入口を開いて、前室を閉じれば、前室まで含め広いテントスペースのような感じになり、ゆったりとできそうです。
出入口の半分はメッシュ状態にすることができ通気性抜群。
【通気性がいいベンチレーション】
天井付近には、大きく開くメッシュ付き三角窓状のベンチレーションが印象的。これだけ広ければ、風が通り、暑いときでも快適です。
ベンチレーション部分を外から見たのがコチラ↓。
長さ20cm程度のベントストラット(支え)がありますので、ベンチレーションを効率よく開くことができ、確実に通気性を保ちます。
【高い収納性】
収納するとこんな感じです(サイズ感がわかるように30cmのスケールを置いています)。
左から、ポール、テント(本体、フライシート、ペグ)、フットプリント(別売)。テント本体をスタッフバッグに入れた状態は、縦長のバッグパックでも、横にきれいに収まるサイズ。
下の画像は、40Lバックパックに収めてみましたがピッタリでした。
スタッフバッグは、余裕がある作りなので、収納に苦労しませんでした。スタッフバッグが小さいと、収納するときに手間取る場合があるので、このあたりも初心者向きですね。
アトムを使ってみてわかった、ここがイチ推しポイント
前項では、メーカー商品説明の「初心者向きポイント」を元に、実際に使ったレビューをご紹介しました。それ以外で、筆者が感じた初心者向けイチ推しポイントとしては、スリーブ&吊り下げミックス方式という点。
一般的にテントは、以下の方式のどちらかになります。
■スリーブ式
テントに縫い込まれたスリーブにポールを通し、テントを支える方式(アライテント「エアライズ」など)。メリット…….ポールとテントの接点が面なので、接続が頑丈で安定性がある。
デメリット…ポールを取りまわす広い設営場所が必要。
ポールを通すとき途中で引っ掛かるなど手間がかかる。■吊り下げ式
自立したポールに、下からテントをフックなどで吊り下げる方式(モンベル「ステラリッジ」など)。メリット…….ポールを自立させる場所さえあればよく、設営スペースに困らない。
デメリット…ポールとテントの接点がフックなどの点になるので荷重が偏りがち。
強風時などテントがたわんだ時など、フックが外れる恐怖感がある。
アトムは設営スペースを選ばない
半分吊り下げ方式にしているので、ポールスリーブが短くしかも、両側どちらからでもポールを入れられます。
スリーブ式のテントの中には、片側からしか入れられないものも多く、その場合、設営スペースを確保するところからはじめなければなりません。設営場所の確保に悩みがちな初心者にはメリットです。
アトムは強風時に安心
吊り上げ式は、クリップという点でポールに繋がっているため、強風時にポールへの負荷が偏ってしまい、テントがたわんでしまう事が有ります。経験者であれば、ガイラインの調整などで対応できますが、初心者ではうまく対応できず、最悪、クリップが外れてしまい、倒壊することも考えられます。
アトムは、例え、クリップが全部外れてしまっても、スリーブがあるので倒壊する可能性は低くなっています。
つまり、テント購入時に「吊り下げ式」か「スリーブ式」かを悩まなくていい
前述のとおり、両方式それぞれメリットデメリットがあります。筆者も、初めてのテント購入時は、「吊り下げ式」と「スリーブ式」、どちらを購入するか悩みました。
しかし、アトムは、設営スペースを選ばない、強風に強いなど、吊り下げ式とスリーブ式のイイトコどり。そこで悩む必要は無くなります。
アトムはどんなテント?メーカーの方に聞いてみました
ユーザーの立場から実際に体験した後は、メーカーの立場から、アトムのどんな点が特徴なのか?どんな点が推しポイントなのか?担当者の方に聞いてみました。
山岳地帯のテント場の条件は岩や石などでフラットな場所で設営できないことも多々あります。薄い15Dの素材を使用したタニのようなテントはむしろその良い面、気をつけなくてはならない面を理解している経験値のあるユーザー向けになります。
アトムは多くのテント場に対応しやすい75Dという厚めの素材をボトムに採用しています。それでも初期のタニ1Pより軽く仕上がっています。
また、頭頂部などの圧迫感を軽減させ、一人用としてもゆとりのある空間を作り出しているNEMOのデザイン性の良さ、しっかりとした睡眠は翌日のアクティビティをより楽しいものにしてくれるというブランド哲学を感じていただけるモデルと思います。
やはり、ボトムの耐久性に重点を置いていることがわかりました。テント内の快適性も併せ持つアトムは、初心者向けでありながらも、NEMOのコンセプトをしっかりと貫いた製品という事のようですね。
アトムのラインナップを紹介
アトムのラインナップは2種類でそれぞれ2色。使用人数とお好みの色で選びましょう。
もちろん、2人用を1人で広々と使う事もアリですね。テントの防水性向上と保護のために、フットプリントを使用することをおすすめします。
1人用 アトム 1P
■アトム 1P スペック
就寝人数 1人
最小重量 1.28kg
本体素材 40D ナイロン/メッシュ
フライ素材 20D Sil/PUナイロン
フロア素材 75D PeUポリエステル
フロア面積 1.89㎡
前室面積 0.7㎡
付属品 スタッフサック,ガイライン,リペアツール(応急処置用),ペグ
2人用 アトム 2P
■アトム 2P スペック
就寝人数 2人
最小重量 1.58kg
本体素材 40D ナイロン/メッシュ
フライ素材 20D Sil/PUナイロン
フロア素材 75D PUポリエステル
フロア面積 2.8㎡
前室面積 0.8㎡
付属品 スタッフサック,ガイライン,リペアツール(応急処置用),ペグ
満天の星空の下、アトムで過ごす夜はいかか?
今回の設営中、スタッフバッグを見て気づいたのが上の画像。これは、なんと星座表。テントのスタッフバッグに星座表が縫い込まれているなんて、ちょっと感動しました。アトムで過ごす夜を最高のものにして欲しいというニーモの思いでしょうか?
初心者の方はもちろん、中上級者の方も満足できるニーモの「アトム」。せひ、満天の星空の下、アトムで山の夜を楽しんでみては?