ガイドに聞く雪山ギア選びには意外なコツがあった!自分を守る装備術を学ぶ【雪山チャレンジ・準備編】

雪山登山、今シーズンこそは日帰りレベルからステップアップして、より深い雪の世界へ足を踏み入れてみたい!そんな読者のみなさんに向けて、<THE NORTH FACE>、山岳ガイド馬目弘仁さんの全面サポートのもと実施した雪山チャレンジの模様を、全3回にわたってお届けします。【準備編】では、1泊2日の山小屋泊で赤岳に登るために必要な装備の選び方について、馬目さんにアドバイスいただきました。

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YAMAHACK 編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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雪山の道具選びで必要なのは「レイヤリング」と「フィッティング」


雪山ステップアップチャレンジをリポートする第2弾。読者代表の内山舞さん(写真右から2番目)、THE NORTH FACEマーケティングの中村真記子さん(写真右)、YAMA HACK編集部の荻原枝里子(写真左)が1泊2日山小屋泊で厳冬期の赤岳にチャレンジします。そこで、山岳ガイドの馬目弘仁さん(写真左から2番目)に必要な装備について、気になることをトコトン聞いてみました!

雪山登山ルートやリスクについて学んだ第1弾【計画編】はこちら。



馬目さんいわく、ウェアであれギアであれ、道具選びの際に気を付けるべきポイントは2つあるとのこと。それが、適切な「レイヤリング」「フィッティング」です。

とにかく「体を冷やさない」ためのレイヤリング術

出典:PIXTA
雪山で行動するうえで重要なのは、「寒さから身を守ること」と「汗をかかないこと」。なぜならば、寒すぎると低体温症になってしまうし、暑くて汗をかいてしまっても、汗冷えを起こして、結果的に身体を冷やしてしまうことに。寒すぎず暑すぎない、絶妙なバランスを維持しながら雪のなかで行動するためには、こまめに体温調整ができるレイヤリングの工夫が必要不可欠なのです。

行動中に着るのか、または休憩時などに着るのか、山行中のさまざまなシーンを想定して、ウェアを選びましょう。
何枚も重ね着をすることになるので、サイズ選びもとても重要!ベースレイヤーやミドルレイヤーは自分にとってのジャストサイズで選んだとしても、アウターレイヤーはサイズアップをしないと、重ね着したときに動きづらくなってしまうこともあります
馬目
馬目
私は基本的にLサイズを着ていますが、ビレージャケットなどはXLを着たりしています。面倒かもしれませんが一度ウェアを全部着てみて、サイズ感を確認しておきましょう。

凍傷のリスクを回避。末端を圧迫しないフィッティングが超重要


とくにグローブ&靴選びにおいては、手足を圧迫しないサイズを選ぶことが大切です。というのも、ピチピチのサイズを選んでしまい、手足が圧迫されたまま雪山で長時間行動した場合、末端の血行が悪くなり凍傷になるリスクが格段に上がってしまうから。

馬目
馬目
靴でもグローブでも、迷ったら大き目のサイズを選ぶことをおすすめします!



寒さ対策のアイテム

撮影:株式会社GOLDWIN・鰐渕さん
馬目さんがもっとも重要視している「寒さ」をしのぐためのアイテムの選び方について、ひとつずつ見ていきましょう。

雪山用登山靴

シングルブーツの登山靴(内山さん私物)
夏山用では代用できないのが、登山靴です。雪山用の登山靴には内側に保温材が入っているため、夏山用と比べて温かさを保てるのが大きな特徴。さらに「シングルブーツ」と取り外し可能なインナーが入っている「ダブルブーツ」の2種類があり、ダブルブーツのほうが保温性が高くなります。
馬目
馬目
今回のように山小屋泊で赤岳を目指すならシングルブーツで十分。厳冬期のテント泊や長期縦走、海外の高所登山などではダブルブーツがおすすめですね。



夏山用ともうひとつ大きく異なるのがコバです。雪山用の場合は、アイゼンが装着できるようにつま先やカカトにコバが付き、ソールがフラットな形状になっています。また、つま先部分に雪にしっかりと蹴り込めるよう硬い素材が使用されているのも特徴です。

トップス

・ベースレイヤーとインナー
左から、メッシュ地のタンクトップ、ロングスリーブ(いずれも内山さん私物)
ベースレイヤーやその下に着るインナーの役割は肌を汗で濡らさないこと。そのため、速乾性のあるポリエステルなどの化繊類や吸湿性のあるウールを選びましょう。冒頭で説明したとおり、「汗をかいて体を冷やさない」ために、このベースレイヤーの速乾性や吸湿性はとても重要です。

肌に直接触れるため、肌触りのよさもチェックしておきましょう。最近では、ウールと化繊素材のハイブリッドタイプなどもあり、肌触りのよさと汗抜けのよさを追究したウェアも出てきています。

・ミドルレイヤー(ミドラー)
左から、Expedition Grid Fleece Hoodie 、Mountain Versa Micro Jacket、Ventrix Jacket(いずれもTHE NORTH FACE)
保温性を調整するのが、ミドルレイヤーの役割です。今回の赤岳には、薄手でフード付きのロングスリーブ、薄手のフリース、化繊のインシュレーションジャケットをセレクト。行動時の気温に合わせてこれらを組み合わせることで、体温をほどよい状態にキープしましょう。
馬目
馬目
雪山では、行動中でもとても寒いので、保温性と通気性のバランスが取れたミドルレイヤーを選ぶ必要があります。ダウンジャケットは休憩時などはいいですが、汗で濡れたらロフトが潰れて保温力が低下するので、行動中は化繊の中綿か化繊とダウンのハイブリッドタイプを選ぶのがベストです。



・アウターレイヤー

とくに雪や風があるときに一番外側に羽織ることになるのが、防水透湿性のあるシェルジャケットです。雪山用は、夏山用に比べて生地が厚めに作られていたり、脇の下に体温調整のためのベンチレーションが設けられていたりします。


ジャケットを選ぶ上で意外と重要なのが、ヘルメットを着用した状態でフードをかぶったときに、額の部分までしっかり覆えるかどうか。また首回りにゆとりがあるかどうかも、実際に重ね着をしたうえでチェックしましょう。
馬目
馬目
今回は私が持っていくので不要ですが、アウターレイヤーとして、シェルジャケットの上に着る保温用のジャケットもあるといいですね。3,000m級の雪山では、山頂に着いて10分もすれば、すぐ寒くなってしまいますから。

これまでの日帰りの雪山では、レインウェアで登っていましたが、雪山用アウターの特徴と必要性がよくわかりました。
内山
内山

ボトムス

左から、WARM Trouser、Mountain Versa Micro Pant、All Mountain Pant(いずれもTHE NORTH FACE)
ボトムスも、基本的にはトップスの選び方と同じ要領で、ベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤーに該当するアイテムをピックアップ。高い保温性と肌触りのよさが特徴のアンダータイツの上に、冬用トレッキングパンツ、そしてフルジップタイプで防水透湿性に優れたシェルパンツを重ねます。寒さに不安があれば、さらにダウンパンツを携行するのもよいでしょう。今回、内山さんはタイツの上に保温性のあるフリースパンツを選んでいました。

グローブ

左はL1 Inner GloveにMountain Gloveを重ねた状態(いずれもTHE NORTH FACE)。右は軍手にテムレス 02 Winter(ショーワグローブ)を重ねている
グローブもウェアと同様に、シーンに応じて使い分けるのが雪山登山の大原則。晴天無風時は、薄手のインナーグローブや中綿入りのグローブだけでも大丈夫ですが、みぞれや強風時には、手先を濡れや寒さから守るために、防水性の高いオーバーグローブやテムレスがあると快適です。スペアのグローブを持っていくことも忘れずに。

オーバーグローブを選ぶときの注意点としては、中綿入りのグローブの上に着用してもゆとりがあるサイズを選ぶこと。冒頭で解説したとおり、手先の圧迫は雪山では命取りなので、中綿入りのグローブの上に着用してもゆとりがあるサイズを選ぶようにしましょう。
馬目
馬目
雪山では、操作性より保温性重視!タイトじゃないほうが、空気の層ができるから暖かく感じます。本当に寒いときは、3本指のオーバーミトンを着けたりしますね。

バラクラバ

Lightweight Balacraba(THE NORTH FACE)
吹雪のときなど、フードだけでは顔をカバーしきれないので、こういったバラクラバがひとつあると安心。フード部分がバラクラバのような形状になっているウェアもありますが、山小屋に着いたときなどに、自分の息や鼻水などで濡れてしまっていると不快なので、バラクラバのほうが使い勝手はよいかもしれません。また、フードタイプよりもバラクラバの方がフィット感が増し、きちんと顔を隠せるので保温が高いです。

雪山歩行をサポートしてくれるギア

出典:PIXTA
さまざまなコンディションが想定される雪上で、安定感のある歩行のために欠かせないギアを紹介します。

アイゼン(クランポン)

雪上で安定感をもって歩くために必要なのが、このアイゼンです。6本爪、10本爪など、刃の数でいくつかの種類がありますが、厳冬期の赤岳を目指すなら前爪のついた12本爪のものがマスト。靴への装着方法の違いから、「ワンタッチ式」「セミワンタッチ式」といったタイプもあります。

左がワンタッチ式のアイゼン、右がチェーンアイゼン(いずれも馬目さん私物)
「ワンタッチ式」は、つま先とかかとの両方にコバがついている登山靴に使用できます。ワンタッチ式のほうが着脱が用意で、前爪がセミワンタッチ式よりも長く取れることが特徴です。

一方「セミワンタッチ式」は、カカトのクリップとストラップで固定するため、コバがカカトだけにある登山靴にも装着可能。ワンタッチタイプよりも前爪が短くなることが多いですが、アイゼンと靴をストラップでしっかり固定できるため、フィット感が高くなると言われています。

いずれにせよ、靴との相性があるので、アイゼンを購入する際は登山靴を店頭に持ち込んで、装着できるかどうかを確認しておきましょう。

セミワンタッチのアイゼン(内山さん私物)
馬目
馬目
今回の八ヶ岳山行では美濃戸口から続く平坦な林道を歩きます。平坦な道を長めに歩く場合は、チェーンアイゼンがあると便利です。初冬や春先のハイキングでも使えますし。12本爪アイゼンとチェーンアイゼンがあれば、だいたいの山をカバーすることができますよ。

アイゼン装着時のワンポイント


装着方法はシンプルですが、慣れるまでは、ちょっと練習が必要なアイゼン。ポイントは、カカトのクリップやストラップを締めない状態で、アイゼンが落ちないくらいアイゼンの縦幅をタイトに調整すること。しっかり締めたつもりでも、山行中に緩むことはよくあるので、確認しながら歩きましょう。
馬目
馬目
セミワンタッチ式の場合、ストラップを長く余らせておくのも危険です。ゲイターを着けた状態でアイゼンを装着して、余ったストラップは10㎝くらい残して切っておくといいでしょう。切った箇所は、ライターであぶって末端処理をすれば大丈夫です。

ピッケル(アイスアックス)


雪山での滑落防止のために、アイゼンとともに絶対に必要なギアがこちら。シャフトの部分がストレートなタイプと曲がっているタイプがあります。選ぶうえでの基本的な考えは、ピッケルは杖として使うのが目的ではなく、急斜面で転ばないように自分を確保するためのものということ。登る山や好みにもよりますが、より急斜面で突きやすいのは、シャフトが曲がっているタイプになります。
馬目
馬目
ピッケルは、歩きながら左右持ち替えて使うことが多いので、スリングとカラビナを使って肩掛けできるようにしておくと、使いやすいですよ。

ワカン、スノーシュー


雪が深い場所では、アイゼンよりも浮力のあるワカンやスノーシューを履いたほうが、機動力が上がります。わかんは傾斜がある場所、スノーシューは斜度が小さくて平坦な場所で使います。

ゲイター

Alpine Long Gaiter(THE NORTH FACE)
足元への雪の侵入を防いでくれるゲイターも、寒さをしのぐために必要なギアのひとつです。雪山用のモデルには、内側にアイゼンガードが施されているなど、ハードな使用にも耐えうる造りになっています。


夏山のものを代用できるギア

雪山ピッケル
出典:PIXTA
すべてを雪山用に揃えるのはさすがに大変ですよね。夏山で使用しているギアでも、ポイントさえ押さえれば代用することができるのです。

バックパック

左は馬目さん私物のPhantom 50、右はOuranos45 (いずれもTHE NORTH FACE)
雪山用に使用するバックパックを選ぶ際にポイントとなるのは、できるだけシンプルな造りで、かつ丈夫であることです。たとえば外側にポケットがあると、その中に雪が溜まってしまい重みが増えてしまいます。ジッパーやストラップが多いと、みぞれが降ったあとに気温が下がったらその部分が凍ってしまい、重みとなってしまうことも。


雪山では背面にも雪がつくので、右のバックパック(馬目さん私物)のように、背面の生地が平滑なモデルを選ぶとよいでしょう。左のバックパック(内山さん私物)はメッシュ地なので、凹凸部分に雪が詰まったり、背中の汗が氷となって付着したりしやすく、冷えにつながる恐れがあります。
馬目
馬目
シンプルな設計のモデルであれば、夏山用として使っているバックパックでも、代用は可能です!

サングラス


雪山では、太陽の光が雪に反射して照り返すため、夏山以上に目への負担が大きくなります。長時間強い紫外線にさらされ続けると、角膜の表面が傷つく「雪目」になる恐れもあるので、サングラスは必携装備となります。紫外線をしっかりとカットするレンズを装備し、隙間から紫外線が入り込まない、顔の形状に沿ったフレームのモデルを選びましょう。


また、ゴーグルは雪山特有のギアになりますが、吹雪のときなどにお守りとして携帯すると安心。額に着けたまま歩くとすぐに曇って使えなくなってしまうので、悪天時以外はバックパックの中にしまっておくことをおすすめします。

ヘルメット


夏山では、落石などから頭部を守ることがヘルメットの大きな役割ですが、雪山では、雪崩に遭ったとき、滑落したときなどに頭部を守るために持っていきます。

いざという時のためのアバランチギア

上から、スコップ、プローブ、ビーコン(いずれも馬目さん私物)
おもに雪崩に遭遇したときに、雪崩に埋没した人をいち早く探し当てるために携行するのが、これらのアバランチギア。雪山である限り雪崩のリスクゼロではないので、揃えておくに越したことはないですが、今回のようにガイド同伴の場合は、レンタルできることが多いです。レンタルの場合でも、使い方を確認しておきましょう。

あると便利&快適なアイテム

Compact Moc(THE NORTH FACE)

スリッパ

冬の山小屋は寒いので、写真のように中綿入りのスリッパがあるととても快適。持ち運ぶうえで負担にならないように、軽量コンパクトなタイプを選びましょう。

キャップ

アプローチ中、ヘルメットを着用する必要がないようなルートを歩いていて雪が降ってきたときなどに、つばつきのキャップがあるとフードをかぶった状態でも視界を広く保つことができます。

トレッキングポール

夏山での考え方と同様に、使用すればヒザの負担を軽減でき歩行が楽になるので、あれば便利です。おもに稜線に出る前の、アプローチ中に使用。スノーバスケットを着けると、雪上での安定感がアップします。

内山さんの買い足しギアは?


馬目さんからのレクチャーをもとに、改めて自分自身の雪山装備を見直すことになった内山さん。厳冬期の赤岳を目指すにあたり、内山さんが主に買い足したのはこちら!
①雪山用のシェルジャケット&シェルパンツ
これまでの雪山では、夏山にも併用しているレインウェアで登っていたそう。生地が薄いということだけでなく、ジャケットのヘルメット装着時のフィット感やベンチレーションの必要性を学び、パンツとともに買い足しを決意したそうです。
②グローブ
「テムレス02Winter」のMサイズを元々持っていたのですが、中綿入りのグローブを着けたうえで装着したら、手先に圧迫感が……! 同じモデルで、より大きなサイズを買い足すことになりました。
③化繊のインシュレーション
これまで、保温着にはダウンを着用していたのですが、今回のレクチャーを踏まえて、行動中に着ても保温力をキープできる化繊のタイプを購入することに。
馬目
馬目
グローブに関しては、小さなサイズが無駄になるわけではありません。残雪期など、暖かい時期に使えますからね。僕も、同じモデルのサイズ違いをいくつか揃えて使い分けています。



次回はいよいよ、雪山チャレンジ実践編!馬目さんといっしょに、冬の赤岳を1泊2日の山小屋泊で目指します。女性チームは、無事に赤岳に登頂できるのか!?

登山成功には入念な計画が大切!山選びのポイントって?


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