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ガイドに聞く雪山ギア選びには意外なコツがあった!自分を守る装備術を学ぶ【雪山チャレンジ・準備編】(2ページ目)

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寒さ対策のアイテム

撮影:株式会社GOLDWIN・鰐渕さん

馬目さんがもっとも重要視している「寒さ」をしのぐためのアイテムの選び方について、ひとつずつ見ていきましょう。

雪山用登山靴

シングルブーツの登山靴(内山さん私物)

夏山用では代用できないのが、登山靴です。雪山用の登山靴には内側に保温材が入っているため、夏山用と比べて温かさを保てるのが大きな特徴。さらに「シングルブーツ」と取り外し可能なインナーが入っている「ダブルブーツ」の2種類があり、ダブルブーツのほうが保温性が高くなります。

馬目
馬目
今回のように山小屋泊で赤岳を目指すならシングルブーツで十分。厳冬期のテント泊や長期縦走、海外の高所登山などではダブルブーツがおすすめですね。

夏山用ともうひとつ大きく異なるのがコバです。雪山用の場合は、アイゼンが装着できるようにつま先やカカトにコバが付き、ソールがフラットな形状になっています。また、つま先部分に雪にしっかりと蹴り込めるよう硬い素材が使用されているのも特徴です。

トップス

・ベースレイヤーとインナー

左から、メッシュ地のタンクトップ、ロングスリーブ(いずれも内山さん私物)

ベースレイヤーやその下に着るインナーの役割は肌を汗で濡らさないこと。そのため、速乾性のあるポリエステルなどの化繊類や吸湿性のあるウールを選びましょう。冒頭で説明したとおり、「汗をかいて体を冷やさない」ために、このベースレイヤーの速乾性や吸湿性はとても重要です。

肌に直接触れるため、肌触りのよさもチェックしておきましょう。最近では、ウールと化繊素材のハイブリッドタイプなどもあり、肌触りのよさと汗抜けのよさを追究したウェアも出てきています。

・ミドルレイヤー(ミドラー)

左から、Expedition Grid Fleece Hoodie 、Mountain Versa Micro Jacket、Ventrix Jacket(いずれもTHE NORTH FACE)

保温性を調整するのが、ミドルレイヤーの役割です。今回の赤岳には、薄手でフード付きのロングスリーブ、薄手のフリース、化繊のインシュレーションジャケットをセレクト。行動時の気温に合わせてこれらを組み合わせることで、体温をほどよい状態にキープしましょう。

馬目
馬目
雪山では、行動中でもとても寒いので、保温性と通気性のバランスが取れたミドルレイヤーを選ぶ必要があります。ダウンジャケットは休憩時などはいいですが、汗で濡れたらロフトが潰れて保温力が低下するので、行動中は化繊の中綿か化繊とダウンのハイブリッドタイプを選ぶのがベストです。

・アウターレイヤー

とくに雪や風があるときに一番外側に羽織ることになるのが、防水透湿性のあるシェルジャケットです。雪山用は、夏山用に比べて生地が厚めに作られていたり、脇の下に体温調整のためのベンチレーションが設けられていたりします。

ジャケットを選ぶ上で意外と重要なのが、ヘルメットを着用した状態でフードをかぶったときに、額の部分までしっかり覆えるかどうか。また首回りにゆとりがあるかどうかも、実際に重ね着をしたうえでチェックしましょう。

馬目
馬目
今回は私が持っていくので不要ですが、アウターレイヤーとして、シェルジャケットの上に着る保温用のジャケットもあるといいですね。3,000m級の雪山では、山頂に着いて10分もすれば、すぐ寒くなってしまいますから。
これまでの日帰りの雪山では、レインウェアで登っていましたが、雪山用アウターの特徴と必要性がよくわかりました。
内山
内山

ボトムス

左から、WARM Trouser、Mountain Versa Micro Pant、All Mountain Pant(いずれもTHE NORTH FACE)

ボトムスも、基本的にはトップスの選び方と同じ要領で、ベースレイヤー・ミドルレイヤー・アウターレイヤーに該当するアイテムをピックアップ。高い保温性と肌触りのよさが特徴のアンダータイツの上に、冬用トレッキングパンツ、そしてフルジップタイプで防水透湿性に優れたシェルパンツを重ねます。寒さに不安があれば、さらにダウンパンツを携行するのもよいでしょう。今回、内山さんはタイツの上に保温性のあるフリースパンツを選んでいました。

グローブ

左はL1 Inner GloveにMountain Gloveを重ねた状態(いずれもTHE NORTH FACE)。右は軍手にテムレス 02 Winter(ショーワグローブ)を重ねている

グローブもウェアと同様に、シーンに応じて使い分けるのが雪山登山の大原則。晴天無風時は、薄手のインナーグローブや中綿入りのグローブだけでも大丈夫ですが、みぞれや強風時には、手先を濡れや寒さから守るために、防水性の高いオーバーグローブやテムレスがあると快適です。スペアのグローブを持っていくことも忘れずに。

オーバーグローブを選ぶときの注意点としては、中綿入りのグローブの上に着用してもゆとりがあるサイズを選ぶこと。冒頭で解説したとおり、手先の圧迫は雪山では命取りなので、中綿入りのグローブの上に着用してもゆとりがあるサイズを選ぶようにしましょう。

馬目
馬目
雪山では、操作性より保温性重視!タイトじゃないほうが、空気の層ができるから暖かく感じます。本当に寒いときは、3本指のオーバーミトンを着けたりしますね。

バラクラバ

Lightweight Balacraba(THE NORTH FACE)

吹雪のときなど、フードだけでは顔をカバーしきれないので、こういったバラクラバがひとつあると安心。フード部分がバラクラバのような形状になっているウェアもありますが、山小屋に着いたときなどに、自分の息や鼻水などで濡れてしまっていると不快なので、バラクラバのほうが使い勝手はよいかもしれません。また、フードタイプよりもバラクラバの方がフィット感が増し、きちんと顔を隠せるので保温が高いです。

雪山歩行をサポートしてくれるギア

出典:PIXTA

さまざまなコンディションが想定される雪上で、安定感のある歩行のために欠かせないギアを紹介します。

アイゼン(クランポン)

雪上で安定感をもって歩くために必要なのが、このアイゼンです。6本爪、10本爪など、刃の数でいくつかの種類がありますが、厳冬期の赤岳を目指すなら前爪のついた12本爪のものがマスト。靴への装着方法の違いから、「ワンタッチ式」「セミワンタッチ式」といったタイプもあります。

左がワンタッチ式のアイゼン、右がチェーンアイゼン(いずれも馬目さん私物)

「ワンタッチ式」は、つま先とかかとの両方にコバがついている登山靴に使用できます。ワンタッチ式のほうが着脱が用意で、前爪がセミワンタッチ式よりも長く取れることが特徴です。

一方「セミワンタッチ式」は、カカトのクリップとストラップで固定するため、コバがカカトだけにある登山靴にも装着可能。ワンタッチタイプよりも前爪が短くなることが多いですが、アイゼンと靴をストラップでしっかり固定できるため、フィット感が高くなると言われています。

いずれにせよ、靴との相性があるので、アイゼンを購入する際は登山靴を店頭に持ち込んで、装着できるかどうかを確認しておきましょう。

セミワンタッチのアイゼン(内山さん私物)
馬目
馬目
今回の八ヶ岳山行では美濃戸口から続く平坦な林道を歩きます。平坦な道を長めに歩く場合は、チェーンアイゼンがあると便利です。初冬や春先のハイキングでも使えますし。12本爪アイゼンとチェーンアイゼンがあれば、だいたいの山をカバーすることができますよ。

アイゼン装着時のワンポイント

装着方法はシンプルですが、慣れるまでは、ちょっと練習が必要なアイゼン。ポイントは、カカトのクリップやストラップを締めない状態で、アイゼンが落ちないくらいアイゼンの縦幅をタイトに調整すること。しっかり締めたつもりでも、山行中に緩むことはよくあるので、確認しながら歩きましょう。

馬目
馬目
セミワンタッチ式の場合、ストラップを長く余らせておくのも危険です。ゲイターを着けた状態でアイゼンを装着して、余ったストラップは10㎝くらい残して切っておくといいでしょう。切った箇所は、ライターであぶって末端処理をすれば大丈夫です。

ピッケル(アイスアックス)

雪山での滑落防止のために、アイゼンとともに絶対に必要なギアがこちら。シャフトの部分がストレートなタイプと曲がっているタイプがあります。選ぶうえでの基本的な考えは、ピッケルは杖として使うのが目的ではなく、急斜面で転ばないように自分を確保するためのものということ。登る山や好みにもよりますが、より急斜面で突きやすいのは、シャフトが曲がっているタイプになります。

馬目
馬目
ピッケルは、歩きながら左右持ち替えて使うことが多いので、スリングとカラビナを使って肩掛けできるようにしておくと、使いやすいですよ。

ワカン、スノーシュー

雪が深い場所では、アイゼンよりも浮力のあるワカンやスノーシューを履いたほうが、機動力が上がります。わかんは傾斜がある場所、スノーシューは斜度が小さくて平坦な場所で使います。

ゲイター

Alpine Long Gaiter(THE NORTH FACE)

足元への雪の侵入を防いでくれるゲイターも、寒さをしのぐために必要なギアのひとつです。雪山用のモデルには、内側にアイゼンガードが施されているなど、ハードな使用にも耐えうる造りになっています。

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