その雪山ルート、自分に合ってる?ガイドに聞く山選びとそのリスク【雪山チャレンジ・計画編】 夏山編に続き、ステップアップを目指す登山者を応援し続けてきた<THE NORTH FACE>と山岳ガイド馬目弘仁さんの全面サポートのもと、読者と一緒に1泊2日の山小屋泊で雪山登山にチャレンジするという企画を実施しました!計画編・準備編・実践編の3回にわたって、その模様をお届けします!
制作者
YAMAHACK 編集部
YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。
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YAMAHACK 編集部のプロフィール
雪山でステップアップチャレンジ
出典:PIXTA
白く覆われた雪山は、登山者を惹きつけてやまない魅力があります。一方で、夏山にはない数多くのリスクがあることも事実。「自分の実力や装備でどこまで行けるのか?」がわからず、二の足を踏んでいる人も多いはず。そんな人に向けてのステップアップチャレンジ企画です。
2021年12月某日。今回の雪山登山チャレンジに参加するメンバーが、ガイドの馬目弘仁さんから直接レクチャーを受けるために、都内にある<THE NORTH FACE>のプレスルームに集結。左から、YAMA HACK編集部の荻原枝里子、読者代表の内山舞さん、THE NORTH FACEマーケティングの中村真記子さんです。
今回は以下の条件で読者の参加メンバーを募集しました。
・アイゼンを着用した日帰りでの雪山登山の経験があり、基本の雪山装備を持っている方 ・山小屋・テント問わず、宿泊を伴う雪山登山は未経験の方
・無雪期において、山小屋・テント問わず、宿泊を伴う山行経験がある方
そして、手を挙げてくれた読者が内山舞さんです。雪山はまだ日帰りしか行ったことがないけれど、「冬の富士山にも登ってみたい」、「雪のなかでテント泊をしてみたい」 といった目標があり、レベルアップのために、今回の企画に応募してくれました。
11月末に、立山のロープウェイ山頂駅から雄山まで往復した山行が、今までで一番過酷な雪山体験でした。途中からスノーシューが効かないくらいに硬い雪になり、風も強くなって、「ここを滑り落ちたら大変だな」という状況に。でも、そんなリスクと隣り合わせなところ に、雪山の魅力を感じました。
THE NORTH FACEマーケティングの中村真記子さんは、トレイルランニングで国内外のレースに参加しているほどの健脚派。雪山デビューはなんと、馬目さんのガイディングによる、テント泊での前穂高岳山行だったそうです。
テント泊で体験した雪山は、「登る」っていうアクティビティ以外のところ、たとえば荷物を持って行くとか、排泄をするとか、そういった行動のひとつひとつが過酷で、達成感が夏山とは比べ物になりません でした。本能むき出しになれて、面白かったです(笑)。限界のなかで、普段鈍っている五感を発揮 できた気がします。
夏山に続き、編集部代表として参加する荻原は、読者の内山さん同様に、宿泊をともなう雪山登山は初体験。今回のチャレンジにも、意気揚々と参加を表明しました。
雪山の、真っ白な世界がすごく綺麗だなと思います 。あと、冷たい空気が好き。景色が綺麗に見えるし、澄み切った空気が心地よい んですよね。
女性チームの雪山登山チャレンジをサポートする、頼れるガイドはこの方! 「1泊2日の雪山登山にチャレンジしたい」という女性たちを白銀の世界へ誘ってくれるのは、THE NORTH FACEグローバルアスリートである、山岳ガイドの馬目弘仁さんです。
山岳ガイド 馬目弘仁
2009年ネパールヒマラヤテンカンポチェ峰(6,550m)北東壁初登攀、「ピオレドール賞」を受賞した2012年キャシャール南ピラー(6,770m)初登攀など、国内外の山々で先鋭的な登攀を重ねてきた、日本を代表する登山家のひとり。北アルプスの麓・長野県松本市に住み、林業家という生業をもちながら、数年に一度は海外へ趣きチャレンジングな登攀をしたり、若手育成を目的に「アルパインクライマーミーティング」を主催したりと、日本のアルパインクライミングシーンを牽引し続けています。 雪山のなによりの魅力は、すべてが白く覆われるところですよね。気温も低く、夏に比べると非常に厳しい環境なんですけど、その厳しさがあるからこその美しさがある。感覚も研ぎ澄まされていきます 。夏に比べると人も少ないですし、自分や仲間と向き合う時間になるはずです。
無雪期の登山と違うのは「気温の低さ」
撮影:松元麻希
雪山へ向かう前に改めて知っておくべきことが、「雪山は夏山と具体的にどのように違い、どのようなリスクがあるの?」ということ。馬目さんがもっとも強調していたのは、雪山特有の「寒さ」 についてでした。
極寒のなかで自分の身体がどうなるのかというのは、個人差もあるので経験してみないとわからないもの。ガイドの有無に関わらず、自分で自分を管理すること が、夏山よりとてもより重要になるわけです。
今回目指す八ヶ岳の標高は3,000m近いので、荒れるとマイナス20度以下になることも。風が吹くと体感温度が一気に下がります。実は八ヶ岳は雪山のなかでもとても寒い山なんです。「手先が冷たい」「足が冷たい」という感覚を、自分でしっかり感じ取っていくことが大事だと思いますね。
しっかり体を動かせるように栄養・水分補給するのも凍傷予防の一対策に
撮影:washio dasuke
「寒さに強ければ山で強いわけではありません」 と馬目さんは語ります。女性チームも実際に馬目さんの手を握って確認して驚いていましたが、実は馬目さんは冷え性なのだとか。そんな馬目さんですが、これまで凍傷になったことは一度もないそうです。
気温に応じて適切な手袋 を用意したり、身体の内側からエネルギーを出すためにしっかり食べたり、充分に水分を補給したり すれば、日本の雪山なら対処できるとのこと。
寒さに強いに越したことはないのですが、寒さに弱くても、凍傷は防げます。