100マイルレースの常連が「夢の墓場」と呼ぶレースがある
「100miles 100times」をテーマに、過酷なウルトラランニングに取り組む井原知一さん。これまでに井原さんが完走した「100マイル(約160km)」レースは49回、途中リタイアはたった2回だけというから驚きです。その2回は、ともに容赦なしの過酷すぎるレース「バークレーマラソン」のとき。
昨年に引き続いてエントリーした今年3月も、井原さんは完走できませんでした。
「なにしろ1986年に始まってから、34回で15人しか完走者がいないんですよ! 僕も当初は“オレだったら完走できる”という根拠のない自信でエントリーしましたが、昨年はたった1周でリタイア。今年こそと思いましたが、今回も3周だけ……。あれは夢が崩れる墓場です(笑)」
「お悔やみ」が届けば参加可能!?独特すぎるルールとは
バークレーマラソンは、アメリカ中部・テネシー州の荒野のなか、1周50キロのコースを5周、つまり250キロを制限時間60時間で走破するという超ハードなレースです。
コースといっても目印があるわけではなく、顔に土がつきそうな斜面を這い上がり、ウェアがボロボロに破けるほどのヤブを通り、昼夜を問わずに進んでいくというもの。
想像するだけで気が遠くなりそうです。
「エントリーするためには、“バークレーを走りたい”という気持ちを込めたエッセイを英語で提出します。その思いが主催者に認められると、後で“お悔やみ”のメールが来るんですよ。
残念ながらバークレーに当選しました。~(中略)~来てもいいことはひとつもありませんが、お待ちしています。
こんな感じでね(笑)」
バークレーマラソンはただハードなだけではなく、ほかにもユニークなレギュレーションがあるそうです。
「1周のなかに13~15か所、ヤブの中に本が隠されているんです。出場者は地図を読んで、その本を探し、自分のエントリー番号のページを破ってこなければならないんです。その手間が大変で……」
トータルでの制限時間以外に、1周ごとの制限時間も設けられ、出場者42名で1周目を突破したのは28名のみ。その後、3周目に突入したのは6名のみ。4周目にはたった2名になり、完走者はゼロという結果でした。
途中リタイアとはいえ、井原さんは3周目に入っているわけですから、少なくても42名中6番目以内という成績。世界中から集まったツワモノを相手に、この成績は十分に誇れるのではないでしょうか。もちろん井原さん本人は満足できず、また来年も出場を目指しているそうですが……。