知ってる?じいちゃんばあちゃんの知恵「お灸」が今、再注目されているワケ

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みなさんは、「お灸」にどんなイメージを持っているでしょうか?
熱そう、痕が残りそう、古臭い……といったマイナスの印象や、効果について半信半疑の人もいるかもしれません。かくいう私もそうでした。実際に使ってみるまでは。
あるときSNSで、某メジャーリーガーが練習後のセルフケアにお灸を活用しているのを目にして、「登山後の身体のケアにもよいいのでは?」と試してみることに。そしたら、なんということでしょう。お灸を取り入れることで、翌日の疲労が軽く感じられたんです!
もちろん感じ方には個人差があります。でも、お灸は昔の人の単なる健康法ではありません。現在では科学的根拠に基づいた研究が進められており、血行促進、鎮痛効果、免疫機能への影響、自律神経の調整作用などが期待されています。
お灸のこと、もっと詳しく教えて!

提供:せんねん灸(銀座にある「せんねん灸 お灸ルーム」 )
膝が痛くなったり、全身の疲労感がしばらく抜けなかったり……そんな登山者の体の悩みに、「お灸」はどんな風に寄り添ってくれるのか。鍼灸師であり、お灸専門治療室「せんねん灸 お灸ルーム」所長の小泉洋一さんにお話を伺いました。
なんで痛くなるの?体を動かすと「組織が壊れる」という事実

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登山中に足腰が痛くなる主な原因は、歩行による筋肉や軟部組織への負担です。長時間の歩行や急な傾斜で筋肉が使われると、一時的に筋繊維や組織に微細な損傷が生じます。この損傷により発生する疲労物質や炎症物質が痛みを引き起こす要因に。
小泉さん
運動すればするほど、傷つく部分が増えていきます。アスリートなんかは、まさに体中が「傷だらけ」になっている状態です。
体を動かすたびに刺激を受けるので、どうしても痛みが出てしまうんですよね。これって鉄の棒を何度も折り曲げると、最後にはパキッと折れてしまうのと似ています。体の中でも同じようなことが起こっているんです。
痛みを放置すると炎症が悪化し、慢性的な問題に繋がる懸念も。だからこそ、疲労・炎症物質をできるだけ溜めこまないことが大切。そこで、「お灸」でのケアが有用なんです。
「お灸」がコンディショニングにぴったりな2つの理由

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お灸は、もぐさを燃焼させてツボを温めるケア方法です。この温熱刺激による血行促進は、登山で酷使した身体を健やかに保つ効果が期待できます。
筋肉の疲れをとるのに役立つ

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疲労物質が溜まったツボは、押すと「痛い」と感じる場所です。そこにお灸で熱を加えることで、血行がよくなり、筋肉の疲れやこりをやわらげることが期待できます。
指圧やマッサージだけでは届きにくい深部にも、お灸の温熱効果は有用な手段の一つ。
小泉さん
血行を促すなら、お風呂に浸かればいいと思うかもしれませんが、私たち鍼灸師がミリ単位でツボを探すのは、身体のトラブルに対してピンポイントで刺激を与えることで最大の効果を引き出すためです。
ツボを温めると皮膚に張りが出てきますが、正常な皮膚まで広く温めすぎると、かえって皮膚がたるんでしまい、その結果、より痛みが悪化することもあるんです。
「脳」にも作用する可能性がある

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灸治療における熱刺激は、皮膚の受容体から脊髄を通じて脳に伝わり、その後自律神経系に影響を与えると考えられています。この過程が、体のリラックスや疲労感の軽減に寄与する可能性が示唆されています。
小泉さん
疲れているとき、考える力が低下することがありますよね。
そんなときも、心身を健やかに保つためにお灸の温熱効果が役立ちます。
無駄な力が抜けて体がリラックスし、下山時の転倒リスクの軽減や安眠のサポートになることが考えられます。
登山中よりも〇〇が原因だった!?不調の意外な真実

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登山者のよくある悩みの膝痛は、登山中の負荷だけでなく、普段の生活習慣も大きく影響します。姿勢や運動不足、過度な座り仕事など、筋肉のアンバランスや柔軟性の欠如、体重のかかり方が慢性的な痛みの原因となります。
つまり、「登山による身体への負荷」と「自分の体質」に対する2つのケアをする必要があるんです。
小泉さん
例えば、冷たい飲み物をよく摂ることで、胃腸の調子が崩れ、血行が悪化することがあります。その結果、膝を支える筋肉の柔軟性や機能に影響が出ることも考えられます。
ツボは体のエネルギーの通路なので、内臓とも関りがあるんです。自分の体のウィークポイントも意識しながら“お灸ケア”を取り入れてみましょう。結果的に足腰の疲れをほぐすことに繋がる場合があります。