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「KAHA」はハイキングカテゴリーの定番モデル

「KAHA」(カハ)は、<HOKA>がラインナップするハイキングカテゴリーのなかで、耐久性とクッション性を重視する定番モデル。これまでに「KAHA」「KAHA 2」が発売され、2025年に3世代目となる「KAHA 3」がリリースされました。
ちなみに、HOKAは2009年にフランス・アルプスで誕生し、現在は開発拠点をアメリカに置くパフォーマンスフットウェア&アパレルブランド。手がけるシューズはどれも圧倒的な存在感を放つ厚底ソールが特徴で、トレイルランニング中に膝と足首にかかる負担を減らすアイデアから誕生しました。
3世代目になってどこが変わった?
まず「KAHA 2」から「KAHA 3」への進化でアップデートした改良点を見ていきましょう。リニューアルポイントは主に4つ。それぞれを詳しく紹介します。
KAHA 3のリニューアルポイント
- アッパーの作りをシンプルにしてフィット感を向上
- つま先をガードして耐久性をアップ
- かかとにもパーツを追加して安定性を増強
- 反発力に優れるミッドソールで推進力がアップ
アッパーの作りをシンプルにしてフィット感を向上

改良点のひとつめは、ゴアテックスインビジブルフィットテクノロジーの採用です。アッパーに防水透湿素材のゴアテックスを直接貼り付ける技術を用いることで、アッパー生地の構造が従来の2枚から1枚に改良されました。
よりシンプルな作りに生まれ変わったことで、足を入れたときのフィット感がアップしています。
つま先をガードして耐久性をアップ

トウキャップがつま先に追加された作りも大きな変更点。特にダメージを受けやすいつま先が、成形TPU素材製のプレートでカバーされるようになりました。
行動中に受ける傷や擦れからシューズが守られる作りになり、耐久性が向上しています。
かかとにもパーツを追加して安定性を増強

かかとにはトウキャップと同じ素材から作られるヒールカウンターを新たに搭載。かかとを支える羽のようなプレートが加わったことで、着地時に生じる足の横ブレが抑制されるようになりました。
前作より安定性が高まっている点もKAHA 3の進化のポイントです。
反発力に優れるミッドソールで推進力がアップ

ミッドソールの素材には、環境への負荷が少ないサトウキビ由来のEVAを新たに使用。
クッション性の異なるソールを組み合わせた2層構造にすることで、衝撃吸収時の衝撃をしっかり吸収しつつ、その反動による反発力が向上。さらなる推進力を得ながら行動できるようになりました。
性能の要、厚底ソールを徹底解剖!
次に、独特な厚底ソールの作りを見ていきましょう。ひときわ分厚いソールパッケージには膝と足首への負担を減らしつつ、足元を安定させてスムーズな体重移動をもたらすテクノロジーが秘められています。
ロッカー形状がスムーズな体重移動を実現

まず注目すべきは、ゆりかごのようなソールのロッカー形状です。上の写真からも、つま先とかかとが大きく反り上がっている様子がわかるでしょう。
「メタロッカーテクノロジー」と呼ばれる大胆に靴底をカーブさせた設計は、かかとで着地してからつま先で地面を蹴り出すまで、一連のスムーズな体重移動を可能にします。
足裏を支える構造が着地時のブレを抑制

分厚いミッドソールは、ただ柔らかいだけでなく安定性も備えています。それを可能にしているのが「アクティブフットフレーム」という構造です。
土踏まずからかかと付近を支えるようにミッドソールの両サイドが立ち上がる設計で、着地時に起こる足のブレが抑制されます。
二股&幅広ヒールで安定かつ歩きやすい

スムーズな足運びと高い安定性には、ヒールの構造も関わっています。よく見ると、ツバメの尾のように二股に分かれ、外に大きくはみ出しているのがわかるでしょう。
この独特なヒール形状が着地時の安定感をもたらし、同時に高いクッション性で衝撃を吸収。さらに、その反動から生まれる反発力が滑らかな体重移動を可能にしています。
4mmのラグで安心のグリップ性を搭載

アウトソールにはヴィブラムメガグリップを採用。耐久性とグリップ性は他の登山靴に劣りません。
そのうえでラグ(突起)の高さを4mmで設計することで、スパイクのようなブロックパターンが路面に食いつき高い摩擦力と牽引力を発揮します。

ブロックパターンがつま先の先端ギリギリまで続いている点も注目です。登山靴ではめったに見かけないこの作りはトレイルランニングシューズ由来のテクノロジー。
つま先で地面を蹴り出す最後の一瞬まで路面を捉えることができ、高い推進力を生み出します。
気になる履き心地をフィールドテスト

KAHA 3はミッドカットとローカットの2種類が用意されています。今回は足首のサポート性に優れるミッドカットタイプの「KAHA 3 GTX」を履いて山行に出かけてきました。
テストした計画は、日帰りと2泊3日のテント泊縦走。約64kmの山道を歩いて感じた印象をお伝えします。
群を抜くクッション性で膝の痛みがゼロに

KAHA 3 GTXに限らず、HOKAのハイキングシューズを履くのは今回が初めて。当初、分厚いソールは見た目からしてバランスが悪そうで、登山には不向きと思っていました。ただ、実際に歩いてみると思っていたより不安定さは感じられず、歩き心地は他の登山靴と遜色ありません。確かなグリップ性も感じられて、下り斜面でも安定して歩くことができました。
それ以上に印象的だったのが、やはりクッション性の高さです。地面の凹凸をほとんど感じず、そのためか足裏に疲れをほぼ感じませんでした。
さらにスゴイと感じたのが、下山後に膝の痛みがなかったこと。普段は山を下りてから膝が痛くなることが多いのですが、今回のテストではその兆候が一切現れず。この嬉しい事実にもミッドソールのクッション性が関わっていると思われます。

クッション性が高いゆえに踏ん張る力が伝わりにくい
しかし、優れたクッション性には短所もあります。それを如実に感じたのはテント泊縦走の2日目。10時間以上歩き続けて疲弊した足で岩場の急坂を登っているときでした。高めの段差に足を置いて立ち上がったとき、一瞬体が後ろにフラついたのです。
すぐにバランスを保とうと足裏に力を入れて踏ん張りますが、クッション性が高すぎるため力が逃げるような感覚があり、うまく力が地面に伝わりません。なんとか耐えてトラブルには至りませんでしたが、同じような感覚をそのあとも数回経験しました。
重たい荷物を背負って片足で立ち込もうとするとき、しっかり意識していないとバランスを崩す可能性があります。それがテストから得たもうひとつの印象でした。
長所を引き出してハイキングを楽しもう!

KAHA 3は、耐久性とクッション性に優れるHOKAの定番シューズです。クッション性の高さは実証済みで、フィールドテストからは足裏にも膝にも優しい印象を受けました。しかしその裏には、場合によってはバランスを崩しやすい短所があるように思われます。
筆者の感覚でおすすめできる計画は、日帰りや食事付きの山小屋泊といった荷物が軽い山行で、極端に疲れない距離、岩場のように険しい地形が現れないルート。
逆に、荷物が重くなるテント泊で、足が疲弊するほどの距離を歩き、岩稜帯が現われるテクニカルなルートで使うのは避けたほうがいいでしょう。
とはいえ、使うシチュエーションを意識して長所だけを引き出せば、膝や足首にかかる負担を軽減できる特徴は魅力的。上手に付き合えば体へのダメージを減らして登山を楽しむことができるはずです。
▼今回紹介したアイテム
HOKA メンズ KAHA 3 GTX
カラー | ブラック×ブラック、シーモス×オートミルク |
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サイズ | 25.0〜29,0、30.0cm |
重量 | 567g |
HOKA メンズ KAHA 3 LOW GTX
カラー | ブラック×ブラック、ユーカリプタス×バーチ、ロウリネン×オートミルク |
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サイズ | 25.0〜29.0、30.0cm |
重量 | 485g |
HOKA レディース KAHA 3 GTX
カラー | マウンテンフォグ×ドゥルージー、ブラック×ブラック |
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サイズ | 22.0〜25.0cm |
重量 | 476g |
HOKA レディース KAHA 3 LOW GTX
カラー | ロウリネン×オートミルク、バニラ×ミントフローライト、ブラック×ブラック |
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サイズ | 22.0〜25.0cm |
重量 | 394g |
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