COCOHELI 山岳遭難対策制度(ココヘリ) 550万円までの捜索救助を実施 入会金1,100円OFFで申込む
買ってよかった“価値あるモノ”は これだ!2025年も使い続ける山道具たち

買ってよかった“価値あるモノ”は これだ!2025年も使い続ける山道具たち

第4回

夏山から秋山へ、まだまだ楽しみが続いていく登山シーズン!厳選して購入した新しい山道具を、今年から使い始めた方も多いのではないでしょうか? それは山道具を紹介する記事をたくさん書いている山岳ライターも同じこと。普段からさまざまなモノに触れているエキスパートだけあって、そのセレクトの様子からは、山道具がどんどん進化していく様子も伝わってきます。

  • Facebook
  • LINE
  • Twitter
  • はてなブックマーク

数ある私物のなかから「よかったもの」だけをピックアップ!

春が近づき、今年も続々とアウトドア用具の新製品が発売開始された。アウトドアギア好きの人でも意外と気づいていないことだが、アウトドア装備の新製品がもっともたくさん発売されるのは、2~3月。近年は少し後ろにずれこむことも多く、4月になってから発売されるものも増えているが、やはりいちばんはこの時期だ。
僕も2025年に使ってみようと考えている最新ギアやウェアを手に入れ始めた。昨年の展示会で確認して期待していた新製品が実際に自分のものになると、やはり心が騒ぐ。いずれそういうものも紹介したい。

だが、その前にやらねばならないことがあった!以前、「今年買った“価値あるモノ”はこれだ!」という記事を書いたが、まだ紹介していないものが残っているのである。それらをまとめてお見せしておかないことには、2025年度のアウトドア生活を始められない!

なお、ここから登場するものはどれも2025年も継続して販売されるもので、現在も購入可能。そして、僕が買ってから数か月は使い、気に入っているものばかりを集めた。裏話的なことをすれば、一度は紹介しようと写真を撮影したのはいいものの、あとからそれほどよくもないことを実感してここで取り上げるのをやめてしまったものもあったりするのだが……。ともあれ、説明を始めよう。

タオル代わりにも使ってしまっている、ファイントラック/ラミースピンニットシャツ

ブルーが好きな僕は、ライトインディゴというカラーをチョイス。ほかに2色あり

Tシャツの上などに軽く着られるアウターにはいろいろな種類があるが、僕はフロントがボタンタイプのシャツが大好きだ。ここ数年、ホグロフスとパタゴニアのシャツを多用してきたが、昨年からそこに加わったのがファイントラックの「ラミースピンニットシャツ」である。

いかにも通気性が高そうなニット地。胸元にはファスナーが見えないようにつけられたポケットがある

こいつはフワッとした肌触りで伸縮性もあり、とにかく着心地がいい! そして速乾性と吸汗性もすばらしいのである。行動中の発汗量がものすごい僕は、つねにタオルで汗を拭きながら歩いているが、あまりに汗をかきすぎて、小さなタオルではどうにもならないことも多い。そんなとき、このシャツを着ていると、裾や袖で汗をぬぐってしまうのだが、これがじつにいい具合なのである。とにかくまあ、汗をよく吸い取って、しかもすぐ乾くのだから。もはやシャツを超えてバスタオルみたいな感覚だ。いっそ、これと同じ生地でタオルを作ってほしいと思うほどである。

袖とフロントには一般的なボタンではなく、スナップボタンを使用

シャツなのに、なぜかタオル的な使用方法の話をしてしまったが、シャツとしての機能性ももちろんすばらしい。夏に着ていると涼しいのだが、一般的なアウトドア系のシャツよりも生地に厚みがあるタイプゆえに保温力も見た目以上。今年も春先から活躍してくれるに違いない。

体にフィットしないのがいい! ONC MERINO/ロングスリーブTEE

2024年に買ったものといっても、これは春から使い始めていたから、もう1年経過。友人のアウトドア系スタイリスト近澤一雅くんが推薦していて興味をもったもので、ブランド名の通りにメリノウール100%を使った長袖Tシャツだ。

この手のウェアはベースレイヤーという言い方をしたくなるが、ベースレイヤーというものは基本的に“汗をすばやく吸い取る”ために、体にフィットするタイトな形状のものが大半だ。しかし、これはよい意味でゆるく、ルーズなシルエットで体に密着しない。だからリラックスしたいときにいいのである。

首元にも余裕があり、締め付け感は一切なし!

このようなシルエットのウェアは、ベースレイヤーとして行動中に着ると汗をあまり吸ってくれず、汗は肌表面を流れ落ちていく。デザイン上、それはもう仕方がなく、僕も行動中はいくぶん体にフィットするベースレイヤーのほうがいい。しかしテント場や山小屋に到着してからこれに着替えると、リラックスウェアとしてとにかく快適なのである。下に別のTシャツやベースレイヤーを着て吸汗性を補えば、ミッドレイヤー的にも活用できる。厚みがある生地なので少々重めなのだが、持っていくのをためらうほどではない!

アウトドア用のウールのウェアは無地ばかりでつまらない。その点、この極細ストライプはいい!

残念なのは、すでに穴を開けてしまったことだ。テント場周りをフラフラと歩きまわっていたときに、どこかに引っかけたらしい。しかし、これが無地だったらけっこう目立ったかもしれないが、細いストライプだからか意外とわからないのであった。ある意味、不幸中の幸いだ。

格段に使いやすくなったダッフルバッグ、グレゴリー/アルパカ

登山の前後やアウトドア旅行のときに、これほど多用しているのに紹介する機会がなかなかないのが、ダッフルバッグだ。正確に言えば、ダッフルバッグのなかでも、ショルダーハーネスが付いていて“背負える”タイプである。

僕はグレゴリーの新旧の「スタッシュダッフル」を5つくらい持っていて、年に数回ある数週間の長旅の際は、シューズでひとつ、ウェアでひとつ、テントやマットでひとつ、その他クッカーやら何やらでひとつ、といった感じでそれぞれ60~90Lくらいのダッフルバッグを使い分け、どっさりとクルマに積み込む。日常的にアウトドア道具のテストを行なっているため、一回の旅で一回しか使わない道具がたくさんあり、いつも信じられないくらい荷物が多いのだ。

光の関係で少し見えにくいが、しっかりとしたショルダーハーネスもついている

しかし、昨年から使い始めたのは、同じクレゴリーのダッフルバッグでも「アルパカ」というモデル。それも容量がいちばんデカい100Lだ。アルパカは定番的なモデルで、コの字型に大きく開くのが売り。しかも大きく開いても形状があまり崩れず、つねに立体的な形状を保つので、荷物の出し入れに便利だ。

だが、僕はアルパカにあまりよい印象を持っていなかった。10年くらい前、昔のアルパカを使っていたが、次第に表面の素材が加水分解を起こし、数年でベタベタに。最終的にはボロボロに剥げてしまった。しかし、この新型アルパカは形状的な特徴はそのままに、素材はもうまったく別のものになっている。そこで、これなら良さそうと、販売停止になったスタッシュダッフルから乗り換えてみたのであった。

全面的に大きくガバっと開く。内側は視認性が高いブルーで、中に入れたものがよく見える

これが正解!一般的なダッフルバッグはファスナーが一直線にしか開かないが、アルパカのように開口すれば荷物の出し入れがやはり簡単なのだ。表面の素材は900デニールリサイクルポリエステルとのことで、僕が昔使っていた旧型アルパカのような劣化はきっとしないだろう。

つぶしてたたむと、ご覧の通り。張りのある素材で容量も大きいわりにかさばらない

アルパカは立体的な形状のために、旧モデルは小さくつぶして収納するのが困難で、正直なところ自宅ではかなり邪魔になった。だが、小さくできるつぶせる新型アルパカならば、そのような問題はなし!今年もこいつといっしょに何度も遠出しそうだ。

あの定番品はもういらない!? キーン/ハイパーポート

定番「ニューポート」の面影が濃厚に残る「ハイパーポート」

キーンのシューズはもう20年以上も愛用し続けてきた。このメーカー最高の代表作が、つま先をしっかりと守るトゥバンパーが付いている「ニューポート」シリーズだ。僕も買い替えながら数モデル使い続けてきたが、これはもう完成し切っているモデルで、もはや大きなリニューアルはないだろうと思っていた。しかし改良ではなく、別方向からのアプローチで兄弟的なモデルが登場した。それが「ハイパーポート」だ。

かかとを覆うのは柔らかな伸縮性素材。この部分は踏みつけて履いてもいい

現行の人気モデルである「ニューポートH2」よりも軽く、柔らかく、しかもかかと部分をつぶして履くこともでき、あくまでも僕の観点ではあるが、これはニューポートの上位互換ともいえる存在。現在履いているニューポートH2にも愛着があるのだが、今後はこのハイパーポートをメインで使うことになるだろう。

アウトソールも新しいパターンで、濡れた場所でも滑りにくい

このハイパーポートに関しては、どこかでいずれ詳細なレポートを書く予定だ。ご興味がある方は、お楽しみに。

隠れた名品とはこのこと! キーン/ワシ ソックス クォーター

写真のものの色はブラックなのだが、独特な素材感のために白っぽくも見える

キーンからはもうひとつ。「ワシ ソックス」シリーズを紹介したい。じつはこれ、今回取り上げたどの製品よりも使用頻度が高く、とくに昨年の春から秋までは毎日のように履いていたソックスなのだ。もしかしたら、今回の記事のなかでの最大の推しはこいつかもしれない。

僕がはじめに買ったものは履きすぎて穴が開いてしまい、いま手元にあるものは2足目と3足目。冬はともかく、温暖な時期は1足洗濯している間に別の1足を履けるように、2足でローテーションを組めるようにしていたから複数もっているのだ。

履き古しつつある2足目。傷みが目立たない素材だが、実際は相当ヨレヨレで、生地はかなり薄くなった

最大の特徴は素材だ。「ワシ」とは「和紙」のことで、具体的には、ポリエステル57% ペーパーヤーン41%、ポリウレタン2%の混紡であり、このなかのペーパーヤーンが和紙のことである。この素材がサラッとしていて、汗ばむ時期は非常に快適!肌がすけるような粗いメッシュになっている面積も広く、通気性もバツグンだ。夏場にフローリングの上を裸足で歩いたり、水濡れに強いサンダルを履いていたりするとべたついて気持ち悪いものだが、これを履いていればどんな場所でもつねにサラっとした感覚。ハッキリ言えば、裸足よりも気持ちがいい。

足裏にはシリコンプリントの滑り止め。シューズやサンダルを合わせたときにズレないようにするためだ

よくもまあ、こんなに気持ちがいい素材を開発したものだ。僕だけではなく、僕の周りのアウトドア仲間にもこのソックスの大ファンが複数いる。ただ、足裏に付けられているシリコンプリントの滑り止めは好き嫌いが分かれ、サンダルを履いたときに滑らなくていいという人もいれば、シューズに足を入れるときに引っ掛かるような感覚になるので邪魔だという人もいる。僕は後者。このソックスのすばらしさはシリコンプリントの有無程度で揺らぐものではないが、プリントがなかったらもっといいのにな、と個人的には思っているのだった。

アレにコレ……。2025年の春から、どんなものを使ってみようか?

そんなわけで、はじめに述べたように僕はすでに2025年の新作を入手し、使い始めている。このところの物価の上昇は恐ろしいほどで、アウトドア分野を仕事の舞台としている山岳ライターの僕ですら、以前ほどいろいろ買って試してみようとは気軽に考えられなくなっている。だが、僕にとってアウトドア用具は遊び道具であり、仕事道具だ。今年もさまざまものを買って試してみることは間違いないので、またいずれご紹介したい。

高橋 庄太郎

高橋 庄太郎 Shotaro Takahashi

山岳/アウトドアライター。仙台市出身。高校の山岳部から山歩きを始め、登山歴は35年以上に。好きな山域は北アルプスでテント泊山行をこよなく愛し、北海道の深山や南の島のジャングルにも通い続けている。近年はイベントやテレビへの出演が多く、アウトドアメーカーとのコラボレーションでアウトドアギアもプロデュース。著書『トレッキング実践学』(ADDIX)『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、共著『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など執筆した著作も多い。
Instagram|@shotarotakahashi