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メンテナンス:長く使い続けるための洗濯

エピソード 5

アウトドア道具の洗濯は汚れを落とすだけではなく、本来の機能を維持し、過酷な環境で身を守るために大切です。今回は洗濯することの大切さや、洗濯洗剤に注目と環境の関係について見ていきましょう。

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お手入れするからこそ維持できる機能

アウトドア道具のお手入れ、していますか?

自然の中で使うアウトドア道具は汚れがつきやすいもの。土や砂ぼこりはもちろんのこと、汗や皮脂などの目に見えない汚れは、生地の目詰まりなどの原因になります。それが、吸汗速乾性や撥水性、透湿性といった機能を低下させ、レインウェアが雨を弾かなかったり、ウェア内が蒸れて汗冷えにつながるなど、さまざまなトラブルを引き起こすのです。

そんなトラブルを防ぐため、普段から洗濯をしましょう。登山のあとに、しっかり汚れを落とすと、ウェア本来の機能を維持できます。

ベースレイヤーやトレッキングパンツだけではなく、アウターシェル(レインウェアなど)やギア類も忘れずに。とくにアウターシェルは、洗わない方がいいと思われがちですが、トラブルの原因になる目に見えない汚れを落とすために、登山で着用するたびに洗濯をするのが理想的です。

長く使い続けることが、環境へのやさしさに

アウトドア道具のお手入れは、機能を維持するだけではありません。道具を長く使えるようにもなります。

お手入れは、自分の道具と向き合う行為。「襟裏が垢で汚れているな」、「水を弾かなくなってきたかな」、「ここにほつれがあるな」など、手に取りながら道具を見つめる時間が長くなり、手をかけた分だけ愛着が湧いてきます。そして、道具との山の思い出が増えていくほど、「大切にする」気持ちは増していくのです。

ひとつのものを大事に長く使うことは、環境にやさしいアクションでもあります。

当たり前ですが、道具を捨てるとゴミになり、それを焼却するときに二酸化炭素が発生します。ひとりひとりのゴミは少ないかもしれませんが、塵も積もれば山となるため、今あるものをお手入れしながら大切に使い、道具が壊れて使えなくなるまでの時間を長くすることが大切なのです。

まずは、はじめの一歩として、ウェアを使ったらしっかりと汚れを落とすことを習慣にしていきましょう。一見難しそうなアウターシェルも、実は家庭用洗濯洗剤で洗濯できます。

ただし、その前に必ず洗濯洗剤の成分を確かめてください。柔軟剤や芳香剤が入っているとウェア本来の機能に蓋をしてしまい、かえって機能を低下させてしまいます。

そして、お手入れが習慣になってきたら、洗濯洗剤の環境インパクトをイメージしてみてください。洗濯洗剤には、汚れを落とすために使われる石油由来の界面活性剤など、自然界で分解されにくい成分が入っていることもあります。

きちんとメンテナンスを行い、ひとつの道具を長く使うことが大切ですが、できる範囲で自然にやさしい選択を取り入れられると理想的です。

そこで、「より優れたケアキットを自然に寄り添って作りたい」と立ち上げられたケア用品ブランド「STORM(ストーム)」を取り扱う牛田さんにお話を伺いました。

ウェアにも環境にもやさしい「ストーム」

「家庭用の洗濯洗剤でも洗えなくはないですが、アウトドアウェア専用に作られたストームのケア用品だと、機能の阻害や環境インパクトを心配することなく使えていいですよね」とは、牛田さん。

「ストーム」は、日本と同じように雨が多いイギリスで2002年に創業したケア用品ブランドです。大手クリーナーブランドの社長を12年間務めてきたティムが、より地球環境に配慮したケア用品を作るために創業しました。

工場はイギリスのピークディストリクト国立公園にあり、ハイキングやクライミングを楽しみながら、開発した製品をすぐにテストできるうってつけの環境です。

「アウターシェルを洗濯するのに、ストームのケアキットがすごく楽なんですよ」と、山に釣りにスキーにと、一年中アウトドアフィールドでアウターシェルを着倒す牛田さんはいいます。

一般的なアウトドア用ケア用品は、洗濯と撥水を別々でケアする必要があり、洗濯機を2度回す分、時間と手間が掛かり、水も電気も2回分消費してしまいます。

しかし、「WASH(洗剤)」と「PROOF(撥水剤)」がセットになったストームの「APPAREL CARE KIT(アパレルケアキット)」なら、洗濯と撥水ケアが同時にできるといいます。洗濯機を回すときに「WASH」は洗濯洗剤入れに、「PROOF」は柔軟剤入れに入れるだけ。洗濯機を1度回すだけで、汚れが落ちて、撥水もケアでき、時間も資源も節約できる優れたケア用品です。

もちろん、「WASH」は100%生分解性のため、自然環境で分解されます。「PROOF」は、環境汚染の原因になるPFC(フッ素化合物)を使用せずに、特殊な構造によって長く持続する撥水性をケアできます。

また、環境へのやさしさは成分だけではありません。

自然に寄り添い続けてたどり着いた、アルミボトルと量り売り

ケア用品といえば、ペットボトル容器に入ったものをイメージしますが、ストームはアルミニウム素材のボトルを選択しました。

「アルミニウム素材のボトルは、繰り返し使えるほど丈夫で、ペットボトルよりもリサイクル率が高いんですよ。ストームの自然へ寄り添う姿勢はボトルの素材だけじゃなくて、洗剤の売り方にも現れています」

ストームの洗剤はボトルで購入するだけでなく、提携するアウトドアショップで洗剤だけの量り売りを実施。洗剤の量り売りには決められた容器はなく、必要なときに必要な量を買うことができるといいます。

もともとのアルミボトルを再利用したり、お気に入りの容器を用意すると、毎回ボトルごと洗剤を買わなくてよくなり、ゴミも減らせます。さらにうれしいことに、量り売りで買う方が、価格もお得です。

牛田さん「量り売りをしてくれるアウトドアショップさんが全国に少しずつ増えてきました。でも、もっと多くの賛同をいただいて、お手入れの大切さを登山者に広めていきたいです」

それぞれの道具に合わせたケアキット

ストームは、すべてのアウトドア道具を長く使えるようにと、道具に合わせたケアキットを展開しています。ダウン用、テント用、シューズ用など、あらゆる道具のお手入れに対応できます。

ダウン用にはドライヤーボールが付属し、テント用にはリペアテープが付属。洗濯のしやすさだけではなく、保温力の復元や、生地の破れなども直しながら、ひとつの道具を長く使ってもらいたい想いが伝わってくるようです。

「アウトドア道具のお手入れって正直いうと、手間なんです。でも、その手間をかけるからこそ、道具の機能が維持できて、登山の快適さや安全に繋がります。それに、しっかり洗ってあるウェアを着る方が、気持ちいいですよね」

すぐにできる環境にやさしいアクション「洗濯」

今回は、洗濯について注目しました。汚れたものを洗うのは習慣になっていますが、大切なのは何のためにお手入れをするのか。

それは、アウトドア道具が本来持つ機能を発揮するためでもあります。

撥水性が落ちてきたアウターシェルは濡れそぼって蒸れやすくなり、ロフトが潰れたダウンウェアは保温力が低下。そうなっては、登山のリスクは上がり、不快さは増してしまいます。

登山の安全と快適のためにも、アウトドア道具のお手入れをして、機能を維持しましょう。本来の機能を発揮できれば、たくさんの登山を共にしてきた道具でも、まだまだ長く使うことができます。

そして、ひとつの物を長く使うことが、余計なゴミを出さないという環境へのやさしさにもつながります。
日本人は、洋服のお直しや、包丁研ぎなど物をお手入れしながら、ひとつの物を大切に使ってきました。新しいものは機能が優れているかもしれませんが、思い出と愛着のある道具で登ると、また一味違った登山になるでしょう。

そのためにも、まずはいまお持ちのアウトドア道具を洗濯することから始めてみてください。

文: 大堀 啓太
写真: 後藤 武久
イラスト: 大西 土夢
編集: 大迫 倫太郎(YAMA HACK)