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2つの花が咲く「ニリンソウ」

ニリンソウは、キンポウゲ科イチリンソウ属の北海道から九州まで分布する花。山の林床地帯に咲くことが多い多年草です。1本の茎から、2つのツボミをつける姿からこの名前が付けられました。
ただし、2つのツボミが同時に咲くことはありません。先に一方の花が咲き、もう一方はその花が終わる頃に咲き始めます。
2つの花が咲くニリンソウの花言葉は「友情」「協力」「ずっと離れない」。地下茎で増えるため群生として見られることが多く、春になると多くの登山者の目を楽しませます。
また、まれに花弁が緑色のニリンソウが生えていることも。緑のニリンソウを見つけた人には幸せが訪れるとも言われています。
ただし、ニリンソウは日中の暖かいときに咲き、夜や雨の日は開花しないので、見るタイミングには注意をしましょう。
「ニリンソウ」は食べられる?!だけれど要注意

ニリンソウは山菜として知られ、特に若葉の頃のものが食用として利用されます。味は、あっさりとしながらシャキシャキという歯ごたえがたまらない一品。
しかし、ニリンソウの近くには猛毒のトリカブトが生えていることも多く、若葉の形が似ていることから間違って採取されることもあります。
山菜の知識が浅いと、ニリンソウの若葉とトリカブトは見分けがほとんど付きません。そのため、ニリンソウを食用とする場合は慎重な判断が必要です。
ニリンソウがメインとして見られる6山

ニリンソウが、群生として見られる山は全国各地にあります。ここでは、ニリンソウがメインで見られる山を紹介。ぜひ、ニリンソウを見て春の訪れを感じましょう。
①高尾山(南高尾)|東京都

コース概要
高尾山口駅前(4分)→高尾山口(3分)→高尾山入口南(20分)→梅の木平バス停(5分)→貴布神社(3分)→南浅川(61分)→西山峠(44分)→南浅川(3分)→貴布神社(5分)→梅の木平バス停(19分)→高尾山入口南 (3分)→高尾山口(4分)→高尾山口駅前

ニリンソウを見たいけれど、登山経験が浅いという人におすすめなのが高尾山です。高尾山に咲くニリンソウの見頃は、4月上旬〜5月上旬とされています。
初心者向きの1号路や、沢沿いを歩く6号路などでニリンソウの植生を見られるでしょう。高尾山のなかでも、ニリンソウの名所として有名なのが”南高尾”です。
南高尾のニリンソウは群生として咲き誇ります。高尾山のメイン登山道よりも人気がなく、静かに山歩きができるのも特徴です。

高尾山は、ギネスにも登録されている世界で一番登山者が多い山。初心者~初級者の人でも登りやすく、コース取りによって、さまざまな楽しみが待っています。
特に、1号路はコンクリートで舗装されているので、動きやすい格好であれば、登山未経験者でも登頂が可能。茶屋や見どころがたくさんあるので、観光客にも人気です。
ニリンソウの咲く季節には、ヤマルリソウやハナネコノメの群生など、多くの花々が開花。新緑の季節と重なるため、1年のなかでも特ににぎわいを見せる季節です。
②筑波山|茨城県

コース概要
神社入口(8分)→門前(14分)→宮脇(51分)→中ノ茶屋跡(23分)→男女川源流(45分)→御幸ヶ原(10分)→自然研究路分岐(36分)→男体山(9分)→御幸ヶ原(24分)→男女川源流(14分)→中ノ茶屋跡(29分)→宮脇(15分)→神社入口

ニリンソウが見られる初級者向けの山として、人気が高い筑波山です。見頃は、4月下旬〜5月上旬。筑波山のニリンソウは、メインの登山道にもポツリと咲いているのを見られますが、特におすすめしたいのが自然研究路です。
自然研究路は、筑波山の2つある山頂のうちのひとつ「男体山」側にある登山道。男体山をぐるりと囲む自然研究路には、ニリンソウの群生が見られます。
自然研究路は、約60分ほどで回ることが可能。登山未経験者の場合でもケーブルカーやロープウェーを使えば、簡単に散策ができます。

筑波山は、古くから御神体として親しまれてきた山。筑波山の山域は、筑波山神社の境内となっています。
日本百名山にも指定されており、そのなかで最も標高が低い山が筑波山。「西の富士、東の筑波」と呼ばれ、「女体山」「男体山」と2つの峰があります。
筑波山の登山道は、登山初心者〜初級者でもチャレンジしやすいのが特徴。また、ケーブルカーとロープウェーが整備されており、茨城の有名な観光名所にもなっています。
③上高地|長野県

コース概要
上高地バスターミナル(7分)→河童橋(2分)→ビジターセンター(5分)→小梨平(43分)→明神(5分)→徳本峠分岐(50分)→徳澤園(49分)→徳本峠分岐(4分)→明神(42分)→小梨平(5分)→ビジターセンター(2分)→河童橋(7分)→上高地バスターミナル

ニリンソウの群生地帯として有名な場所が上高地。雪が消えて暖かくなる5月中旬頃〜下旬頃がニリンソウの見頃です。
上高地のニリンソウは広範囲で見られ、河童橋から徳沢のあたりまで群生地があります。上高地バスターミナルから河童橋までは約10分ほどなので、観光客にも人気です。
徳沢まで行くと往復約4時間となり、軽いハイキングも一緒に楽しめるでしょう。ただし、残雪の情報には注意をしてください。

上高地は、冬の間は雪で閉ざされていますが、毎年GW頃になると雪が溶けてさまざまな花が開花。毎年4月27日には、開山祭が河童橋のたもとで行われます。
河童橋から見られる北アルプスの山々と梓川のコラボレーションは、多くの人々を魅了。上高地は標高約1,500mの場所にある避暑地としても知られており、夏の間はバスターミナルを中心に観光客でにぎわいます。
また、上高地は登山口としても人気。無雪期になると、涸沢や穂高の山々を登ろうとする登山者も集結します。
④金剛山|奈良県・大阪府

コース概要
金剛山登山口(26分)→千早城跡(51分)→あずまや(65分)→転法輪寺(2分)→金剛山(約30分※推測)→カトラ谷(約30分※推測)→金剛山(2分)→転法輪寺(37分)→あずまや(35分)→千早城跡(14分)→金剛山登山口

関西で有名なニリンソウスポットがあるのが金剛山。見頃は、4月下旬~5月上旬となっています。
おすすめの場所は、カトラ谷と呼ばれる花畑スポットです。カトラ谷は「まつまさ駐車場」から行けますが、ここは登山道として推奨されていない中級者以上のルートなので注意が必要。できれば、整備された「千早本道」から谷に下りる方がおすすめです。
カトラ谷には、ニリンソウの群生の他に、同時期にエンレイソウの群落、ヤマルリソウ群落などが見られます。

金剛山は、奈良県と大阪府の境に位置する金剛山地の主峰。標高1,125mあり、年間約50万人が訪れる関西屈指の人気がある場所です。
山頂には「金剛山山頂売店」があり、登頂した疲れを癒やせるスポットとなっています。(宿泊できる山小屋は現在閉館)
メインである千早本道ルートは、地元の小学生も登りに来る難易度。大阪市内からのアクセスも良く、健康登山や登山初級者の体力づくりにもピッタリの山と言えるでしょう。
⑤籾糠山|岐阜県

コース概要
天生峠(39分)→匠神社分岐(8分)→木平湿原分岐(62分)→籾糠分岐(32分)→籾糠山(21分)→籾糠分岐(38分)→木平湿原分岐(9分)→匠神社分岐(29分)→天生峠
籾糠山(もみぬかやま)は、飛騨高地にある標高1,744mの山です。ニリンソウの見頃は、5月下旬〜6月上旬頃。
籾糠山は、緑のニリンソウの目撃情報が多数寄せられており、毎年ニリンソウの季節になると多くの人がニリンソウロードに立ち寄ります。同時期に、サンカヨウの花も見られるでしょう。

また、ニリンソウを見に来るのなら天生(あもう)湿原も外せません。天生湿原には、ミズバショウ・リュウキンカのコラボレーションが見られます。

籾糠山は、天生県立自然公園の一部で、ぎふ百名山にも指定されています。天生峠からの登山道がメインであり、お花のシーズンになると駐車場は満車近くになることも。
籾糠山のコースは、湿原をめぐるルート・原生林をめぐるルートなど、さまざまな楽しみがあります。天気が良ければ、頂上から北アルプスや御嶽山などが見られるでしょう。
シーズン中は、森林環境推進協力金(1名/500円)があるので、ぜひ協力をしてください。冬季は登山口への道路が閉鎖されるので注意が必要です。
⑥氾濫原(大倉山)|宮城県

コース概要
桑沼(12分)→大倉山登山口(72分)→氾濫原(77分)→大倉山登山口(12分)→桑沼
氾濫原は、泉ヶ岳の奥に位置する大倉山のふもとにある氾濫原。ここは、ニリンソウの大群落が見られるということで春になると、多くの人が訪れます。見頃は5月上旬~下旬となっています。
沢沿いに咲くポイントや、ニリンソウロードとなっている場所など、まるで時が止まったかのような美しい景色が登山者を魅了。ニリンソウが咲く時期は、まだ残雪がある箇所もあるので、装備に注意をしましょう。

氾濫原へ行くには、コースによっては渡渉ポイントがあります。ニリンソウが咲く時期はまだ寒さを感じるので、濡れないようにしてください。
登山口は、升沢コース登山口や桑沼から氾濫原に入るのが一般的。大倉山自体は見どころが少ないですが、隣にある船形山との縦走を楽しまれる方もいます。
春の花々を見ようとする人で駐車場が満車になることも。ニリンソウと同時期に、エンレイソウやシラネアオイなども見られますよ。