COCOHELI 山岳遭難対策制度(ココヘリ) 550万円までの捜索救助を実施 入会金1,100円OFFで申込む
“不快”や“危険”とおさらば! 悪天候時にテントを張るカシコイ方法【吊り下げ式の設営方法】

“不快”や“危険”とおさらば! 悪天候時にテントを張るカシコイ方法【吊り下げ式の設営方法】

テントを快適に使えるように張るのにはコツがいりますが、晴れていて風がないときならば、時間をかければなんとかなるもの。

しかし難しいのが悪天候のとき。

ただでさえ風雨の影響で設営しにくいのに、こういうときこそキチンとしなければ、テントが壊れたり内部に水が入ってきたりするのですから。

そんなわけで、ここでは”悪天候時のテントの設営方法”を伝授します。テントにはいくつかのタイプがありますが、今回は「吊り下げ式テント」の設営方法を紹介します。

目次

悪天候時のテント設営って…

きちんと設営さえすれば、強烈な風雨の影響を最大限に取り除き、想像以上に快適に過ごせるのが、現代の山岳用テント。とはいえ、風と雨にさらされながら“きちんと”テントを張るのは大変です。
しかし、コツさえつかめば、意外となんとかなるもの。

左/スリーブ式、右/吊り下げ式

山岳用テントの大半は“スリーブ式”か“吊り下げ式”。
このうち“スリーブ式”に関しては、別記事にて解説しており、ここでこれから紹介していくのは『吊り下げ式テントの設営方法』です。
しかし、スリーブ式テントの設営&撤収方法と共通する点は非常に多く、それらにも目を通してもいただいておくと格段に理解が深まります。ぜひリンク先からご一読ください!

悪天時でも設営しやすい「吊り下げ式」テント

そもそも“吊り下げ式”のテントとは、インナーテントの外側で組み立てたポールに、インナーテントに取り付けられている複数のフックでインナーテント自体を吊り下げる、という仕組みです。
そして、ポールに吊り下げられたインナーテントの上に、雨除けのフライシートをかけて完成します。

ただでさえ設営が簡単な吊り下げ式テントですが、要領さえうまくつかめば、悪天候時の設営もそれほど難しくありません。しかも悪天時でもインナーテントや体が濡れにくく、スリーブ式以上に楽なのです。

まずは風の向きをチェック。テントの長辺ではなく、「短辺を風上」に

はじめに風向きを確認するのは、どんなテントでも一緒。そのうえで、風の圧力があまりかからないように、風が吹きつけてくる方向がテントの短辺になる位置にテントを設営していきます。
このとき、テントの短辺に出入り口があるテントの場合は、内部に風雨が吹き込まないように、出入り口が風下になるようにします。

そこからは以下のような順番で設営を進めていきます。
バックパックはできるだけ濡れにくいところに、カバーをかけて置いておきましょう。

【1】風上に移動し、風に背を向けてインナーテントを広げます。このとき、インナーテントの上に膝をついて飛ばされないように作業しましょう。

【2】風上側にペグを打って、インナーテントのフロアを固定します。これでもうテントは吹き飛ばされません。
そしてフライシートをインナーテントの上にかぶせ、両者をバックルで連結します。

【3】風下に移動し、同じようにペグを打ってから、こちら側もインナーテントとフライシートを連結します。

晴天時とは逆の順番! 内部が濡れる前にフライシートをかけてしまう

この時点で、インナーテントの上はフライシートで覆われ、すでに居住空間は濡れから守られている状態です。
これだけやってしまえば、まずは一安心です。

次にフライシートをかけたままでインナーテントを立体化していきます。
晴天時の一般的な設営方法では、インナーテントを立体化してからフライシートをかけるので、順番が反対です。
要するに、インナーテントをできるだけ雨に濡らさないために、フライシートを早めにかけてしまうのです。

【4】あらかじめ組み立てておいたポールをフライシートとインナーテントの間に入れ、インナーテントの角にあるグロメット(穴)にポールの末端を差し込みます。

【5】グロメットにポールの末端を差し込んでテンションをかけていくと、フライシートが大きく持ち上がります。

【6】すべてのポールの末端をインナーテントのフロアに組み合わせれば、フライシートが完全に立体化。ただし、この状態でもインナーテントは地面に広がったままです。

【7】この状態のうちに、フライシートの面ファスナーなどでフライシートとポールを固定します。

【8】再び外に出て、フライシートのガイラインにペグを打ち、ポールごとテントにテンションを与えます。これで強風の圧力に対抗できるようになり、テントの破損の心配が激減します。

ここがポイント! フライシートの裏側から、ポールにフックをかけていく

次にインナーテントも立体化させます。フライシートの出入り口から体を入れ、インナーテントの“奥のフック”からポールにかけていきます。
間違って手前のフックからポールにかけていくと、あとから奥のフックが非常にかけにくくなるので注意しましょう。

【9】フックをかけるのは奥から! フライシートがポールに密着しているため、少々フックがかけにくいかもしれませんが、落ち着いてやれば難しくはありません。

【10】手前までフックをかけていくと、完成はもう目の前です。

【11】テントが立体化した時点で、荷物を中へ。もう大事なものを濡らす心配はありません。

【12】前室となる部分の生地を引っ張り、ペグを打ちます。これで悪天時の吊り下げ式テントの設営は、その完成形が見えてきました。

さらに風雨に強くするために欠かせない、細かなポイント

ここまで設営できればかなり安心できる状態になっています。しかし、まだ気を抜いてはいけません!
風が弱い晴天時であれば、この状態でも十分に一夜を明かせるでしょうが、悪天候時はまだまだ足りません。

暴風雨に耐えるためには細部までしっかりと調整しなければならず、とくにガイラインに適切なテンションを与えることは重要です。

【13】改めてガイラインのテンションの調整をします。どこかだけに強いテンションがかからないように、均等なテンションを考えましょう。
また、風の圧力でペグが抜けやすい風上側は、ペグを根元まで確実に打っておきます。

【14】難しいのは、換気用のベンチレーター。風雨が強いときは閉めて、テント内部と外部を遮断しておく基本ですが、状況に応じて風下だけ少し開け、空気がこもらないようにしてもいいでしょう。

【15】フライシートの出入り口につけられている面ファスナーを貼り合わせ、フラップの部分が風でまくり上がらないようにすると、ますます浸水を避けられます。
この写真はわかりやすさのために外で撮影していますが、実際はテント内から手を伸ばして貼り合わせることになります。

設営終了後もときどきテントをチェック! 快適空間を長くキープする

最後に簡単にまとめると…

  • ・インナーテントの風上を固定
  • ・フライシートをかけ、インナーテントの風下を固定
  • ・フライシートを立体化
  • ・インナーテントを内側に吊るす
  • ・細部を整えて強風・強雨に対処する


というのが、悪天候時の吊り下げ式テントの基本的な設営方法でした。山ではいつなんどき天気が崩れるかわかりません。ぜひ頭に入れておきましょう。

また、忘れてはいけないのが、しっかりと設営したはずのテントでも、強い風雨に長い時間さらされていると、ガイラインは緩み始め、ペグも地面から浮いてきたりすることです。
テント内からもある程度は調整可能ですが、安全性を高めるためには短時間だけでもテントから出て、ガイラインを引っ張り直し、ペグを打ち直すことも重要です。

まずは適切な設営方法を覚え、状況に合わせてそれを応用したり、手直ししたりしながら、山岳テントがもつポテンシャルを最大に発揮してあげてください! 少々手間がかかっても強度を高めて設営されたテントは、悪天候が楽しくなってくるほどの快適な空間に大変身しますよ。

次回は吊り下げ式テントの「撤収方法」を紹介します。

この記事が気になる人にはこちらの記事もおすすめ

スリーブ式の設営・撤収方法を再度チェック

こんな記事もおすすめ