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ヘリテイジ シングルウォールテント「エスパースクエスト1」 雪山レビュー

やっぱり設営がラク! ヘリテイジのシングルウォールテント「クエスト」をガチの雪山で試してみた

「クエスト」は、根強いファンをもつヘリテイジの山岳テント「エスパース」シリーズから誕生した新作シングルウォールテントです。シングルウォールならではの特徴だけでなく、クエスト独自の性能は実際のフィールドでどのように生かされるのでしょうか?

リアルな実力を試すべく、12月上旬、重さ15kgを超えるバックパックにクエストを詰めて雪山に向かいました。

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目次

アイキャッチ・記事中撮影:筆者

エスパースシリーズから登場した、シングルウォールテント「クエスト」

エスパース クエスト1  

2023年にリリースされた「エスパース クエスト」

国内の登山用品メーカー<ヘリテイジ>が展開する「クエスト」は、“エスパース“(※)のノウハウがつぎ込まれた、4シーズン対応の新しい登山用シングルウォールテントです。

※“エスパース”は、シンプルなフレーム構造で高い剛性を設計思想として進化を続けている<ヘリテイジ>の山岳テント。日本メーカーによる日本向けの設計は、1970年代の発売から長きにわたり、多くの登山者の支持を集めています

設営方法は、2本のポールをスリーブに通してクロスさせる自立式。入り口を長辺側に配置することで、出入りしやすいデザインを採用しています。

シングルウォールテントは設営撤収の手軽さが魅力

登山用テントを選ぶとき、広く知られているチェックポイントに、フライシートの有無があります。

フライシートを被せる必要があるものは“ダブルウォールテント”と呼ばれていて、昨今の登山用テントの主流といえます。一方、フライシートを省いたものが“シングルウォールテント”で、テント本体に防水透湿素材を使うことでフライシートを被せる必要がなくなり、設営の手間を省ける点が特徴です。

雨の日や吹雪の雪山など、環境が厳しくなるほどパッと設営できてパッと撤収できるシングルウォールテントの長所が際立ちます。

高機能防水透湿素材で結露しにくい

エスパース クエスト1  eVent

シングルウォールテントはスピーディーに設営できる反面、フライシートを省いたことでテントの中と外の温度差が大きくなり、内側に結露が発生しやすいという欠点がありました。

その点、クエストは素材に高機能透湿防水素材「eVent」を使うことでシングルウォールテント特有のデメリットを軽減。高い透湿性(10,000g/sqm/24h)で、結露の原因となる内側で発生した湿気を外に逃がしつつ、優れた耐水性(耐水圧20,000mm)で居住スペースを雨や雪といった水の浸入から守ります。

クエストの実力をスペックからチェック!

クエストは1人用と2人用から選ぶことができ、今回は1人用(クエスト1)を実際のフィールドで使用しました。まずは基本的なスペックから見ていきましょう。

重量は意外と平均的

エスパース クエスト1  重量

クエスト1の実測重量は1434.7g(テント本体、ポール、収納袋、張り綱、ペグを含む)。市場にある1人用テントと比べて、一概に重いとは言えず、かといってすごく軽いとも言えず、わりと平均的といったところ。軽さを求めてクエスト1を手に入れると、ちょっと期待外れになってしまうかもしれません。

ソロなら十分な室内空間

  • エスパース クエスト1  長辺
  • エスパース クエスト1  短辺
  • エスパース クエスト1  フロア面積

フロアサイズは、長さが210cm、奥行きが100cm。テントの中に荷物を入れてもゆっくり横になれるスペースが確保されています。

エスパース クエスト1 天井高

天井の高さは106cm。身長が182cmある筆者が厚みのあるエアマットの上に座って背筋を伸ばしても、上から圧迫されるようなストレスを感じることはありませんでした。

換気を促すベンチレーション

  • エスパース クエスト1  ベンチレーション
  • エスパース クエスト1  ベンチレーション モスキートネット

入り口から見て真裏のパネルに筒型のベンチレーションが備わっており(写真1枚目)、雨風が吹き込むときは換気口をドローコードで閉じることができます。

また、付属するモスキートネットを被せると換気しながら虫の侵入を防ぐことも可能です(写真2枚目)。

好感をもった2つのディテール

実際にクエストを立てながら「イイネ!」と感じたポイントが2つありました。他ブランドのテントにはめったに見られない、クエストならではの個性的なディテールを紹介します。

【 1 】 耐久性を高めたポールスリーブにグッときた

  • エスパース クエスト1 ポールスリーブ 入り口
  • エスパース クエスト1 ポールスリーブ 末端

ポールを通すスリーブの末端が袋綴じになっているので、ポールのエンドチップをグロメットにはめる手間が半分で済みます。

この仕組みは珍しくありませんが、クエストは袋綴じのスリーブ末端からポールのエンドチップが飛び出す点がポイントで(写真2枚目)、スリーブの末端が擦れて穴があくトラブルを減らすことでテント本体の耐久性を高めています。

【 2 】 雪山対応の張り綱にグッときた

エスパース クエスト1  張り綱

テントがもつ本来の耐風性を発揮させるには、ガイラインとも呼ばれる張り綱を正しく地面に固定してテンションをかける必要があります。

一般的に張り綱は、固定する地面側で自在と呼ばれるパーツを動かしてテンションを調整するのですが、クエストはテント側でテンションを調整する正反対の仕組みになっていました。

エスパース クエスト1  張り綱 解説

実はこれ、雪山で固定した張り綱の末端が凍結して掘り出せなくなってしまった場合、張り綱を切っても続けて使えるようにするための工夫なんです。4シーズン対応と謳う所以を垣間見れるポイントといえるでしょう。

静寂の雪山で感じた率直な使い心地

エスパース クエスト1 雪山

冒頭でも触れたとおり、シングルウォールテントは使う環境が厳しければ厳しいほどありがたみを実感できるテントです。12月初旬、すっかり雪化粧した越後駒ヶ岳をめざす山行でクエスト1を試してきました。

当日は、水分をたっぷり含んだ湿雪が横から飛んでくる悪天候。吹雪のなか予定していた幕営地までたどり着けず、急遽ルートの途中にある小倉山(1377m)の山頂直下で泊まることにしました。

設営撤収がめちゃくちゃラク!

エスパース クエスト1  雪山 設営
斜面を整地してクエスト1を張ったようす。吹雪は夜まで止まなかった

適当な斜面を平らに整地したのち、クエスト1を収納袋から取り出して設営開始。組み立てたポールをスリーブに通して立ち上げたら、最後に張り綱で四方向に固定すれば作業は終了です。

吹雪のなかの設営作業は一分一秒でも早く終わらせたいもの。その点、クエスト1の扱いやすさは想像以上で、フライシートを被せる手間がなくなるだけで、作業がずいぶんラクに感じました。

この感動は翌朝も続き、撤収もいつもより早く完了。設営と撤収作業の負担が減る大きなメリットを実感できました。

結露しにくい。だけど温かさは籠りにくい?

エスパース クエスト1 結露
深夜 1時ごろ、目が覚めて天井を見上げると結露がバキバキに凍りついていた

夜、でき上がった夕飯をテントの中でいただきます。熱々のワンタンスープを一口すすると、体の内側から体が温まる……。やっぱり雪山の献立はスープ系に限りますね。そんなスープからは湯気が立ち上っているのですが、クエスト1がもつ透湿性のおかげか、湯気はテントの内側に一旦は籠もるものの、生地のあいだを通り抜けていくように、たちどころにスーッと消えていきました。

透湿性に関する評価は肌感覚の域を出ませんが、クエスト1は普段使っているダブルウォールテントよりも湿気が抜けやすい印象です。それでも結露は発生しますが、シングルウォールテントにしては結露しにくいと感じました。

ただ一方で、透湿性が高いためかフライシートが被さっていないからか、テントの中に熱が籠りにくい感覚もありました。そのため、悪く言えば少々寒さを感じます。夏は快適に過ごせると思いますが、冬は覚悟して使ったほうがいいかもしれません。

長所と短所を理解すれば、かけがえのないテントになる!

エスパース クエスト1  

エスパースがラインナップする「クエスト」は、シングルウォールテントの扱いやすさとスペックどおりの透湿性をもつ高機能テントです。

長所は、設営と撤収をラクに行え、素材がもつ透湿性の高さで結露が発生しにくい点。ただ、雪山で使うと、透湿性の高さゆえの熱の籠りにくさを感じるかも知れません。

そんな長所と短所を理解したうえで、設営と撤収作業を少しでも簡略化したい人にこそ、クエストはぴったりなテントといえるでしょう。

さらに、クエストはオプションパーツを使うことで、より使いやすくカスタムすることができます。使用シーンやニーズに合うオプションを手に入れて、よりベストな形でクエストを使いこなしましょう!

オプションパーツをチェック!

「専用フロントフライ」で前室が出現

エスパース クエスト1  フロントフライ

前室がないシングルウォールテントの弱点を解消するパーツ。入り口の前だけにフライシートが被さる作りで、必要最小限の重量増で前室を手に入れることができます。

「ハンモックネット」で小物を整理しやすい

エスパース クエスト1  ハンモックネット

内側の天井付近にループがあり、ここに「ハンモックネット」を吊るすとカギやスマートフォン、ヘッドランプなど見失いやすいアイテムを頭上に整理可能です。

吹き流し式で入り口凍結の心配なし

エスパース クエスト1  雪山用入り口

雪山ではファスナーが凍りついて動かなくなる可能性があるため、ドローコードで出入り口を開閉する吹き流し式の入り口が用意されています。

メーカー的選び方のポイントをチェック!

最後に、「クエスト」を手がけたメーカー・ヘリテイジの広報担当者に、クエストの選び方を聞いてみました。Q&A形式でお答えいただいた内容を紹介します。

Q.ずばり「クエスト」はどんな状況におすすめですか?

A.季節や天候を問わず、どんなシチュエーションにおいても一定のレベル以上で快適に過ごしたいというのであれば「クエスト」という選択がいいと思います。とくに冬は、雪か雨か微妙な天候のときにも安心して使えます。

Q.「クエスト」は少々重さが気になります。もっと軽さを重視してテントを選んでもOKですか?

A.エスパースシリーズのオールシーズン対応モデルの中にも、「クエスト」より軽量な「マキシム」というテントがあり、少しでも軽くしたいということであれば、間違いなく「マキシム」を単体で使っていただくのがいいと思います。ただ、「マキシム」に備わっているのは、高い撥水性のみ。防水性は備わっていないので、降雨時には別売のフライシートが必要です。

また、ヘリテイジでは気密性が過度に高まる危険を考慮して、雪山でのフライシートの使用を推奨していません。近ごろは温暖化の影響なのか、冬でも山で雨が降ることがあります。そういった状況で防水性を担保できない「マキシム」は、テントの中に雨が浸入してくるリスクが拭えません。

Q.「クエスト」か「マキシム」か、迷った場合に選ぶポイントを一言で表すと……?

A.テント泊に慣れてない初心者には、あらゆる天候に対応できる「クエスト」という選択がいいかもしれません。

一方、山の気候を熟知していて、フライシートを持つ持たないの判断を行えるユーザーが「マキシム」を選ぶと、軽さを最大限に生かしたテント泊を楽しめると思います。


    ヘリテイジ エスパース クエスト1

    素材パネル:30dnナイロンリップストップ eVent WATERPROOF
    グランドシート:40dnナイロンタフタPUコート耐久撥水加工
    ポール:DAC フェザーライトNSL 9mm
    サイズ長辺:210cm
    短辺:100cm
    室内高:106cm
    重量1.34kg(ケース・張り網含む。ペグ8本は別・0.1kg)

      ヘリテイジ エスパースクエスト1 フロントフライ

      素材30dnナイロンリップストップPUコート・耐久撥水
      重量0.29kg(暫定)