出典表記のない写真はすべて撮影:YAMA HACK編集部
大都会東京にも山があったんだ……

出典:PIXTA
東京の山といえば、高尾山や奥多摩エリアの山が有名です。でも、それは都心から離れた自然豊かなエリアの話。
なんと今回は、大きなビルが立ち並ぶ新宿エリアに山があると聞き、世界中のトレイルを歩いたプロハイカーの斉藤さんをはるばる山形から呼び出して登ってもらうことになりました。
山手線最高峰に挑む!プロハイカー 斉藤正史

アメリカの3大トレイル(アパラチアン・トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル、コンチネンタル・ディバイド・トレイル)を踏破したトリプルクラウナー。国内外問わずトレイルを歩くことをライフワークとし、これまで歩いた総距離はなんと22,000km以上で地球を半周歩いている計算です。
自然豊かな山形に住む斉藤さん。仕事で東京に来るとふいに自然に触れたくなって、仕事の合間に下町や公園を歩くことが好きなんだそう。世界中のトレイルを踏破してきた斉藤さんが挑む山は一体どんな山なのでしょうか?
思っていたよりも”山”を感じられる山手線最高峰

本当にオフィスがひしめく都内に自然を感じられる場所があるのでしょうか?その場所はどうやら「箱根山」というそうです。
ここからは、斉藤さんが実際に歩いたルポをお届けします。
今回の登山口はJR高田馬場駅

私は都内を歩き回ることをアーバンハイクと呼んで、楽しんでいます。
地図を見てどこから歩くかを考えるのは登山と同じで、アーバンハイクの登山口はだいたい最寄り駅。
今回挑む箱根山の最寄りの登山口は、JR新大久保駅かJR高田馬場駅。新大久保駅登山口は観光客も多く混雑していることが多いため、今回は比較的混雑を避けられる高田馬場駅登山口にしました。
高田馬場駅から戸山公園までいっき見
ビジネスマンや学生とすれ違いながらベルサール高田馬場方面へ進んでいきます。ここではまだ、「山へ行くぞ!」という要素はありません。本当に山があるのか不安になるくらい、ごく普通の都会の道を歩きます。
ビル林道のアプローチが終わり、いよいよ山手線最高峰へ
高いビルに囲まれた林道が終わり、少しずつ緑が増えてきました。戸山公園と新宿コズミック通りを抜け、なんだか古き良き昭和の時代を思い出させる集合住宅を眺めながらしばらく歩くと、箱根山の道標が出現。
このあたりから一気に山の感じが濃くなり、自然と足取りも軽やかに。
鳥のさえずりを聞き、古く大きな美しい木々を眺めながら登っていくと、斜度はドンドン上がっていきます。
山頂直下は手強い急登!
坂を少し登ると箱根山の道標が。再度、右にトラバースしていくと、小高い山に向かって階段が伸びているところにたどり着きます。
山頂に続く道は全部で3つ。どれを選んでも結構な急登です。

少し、汗ばみながら一歩一歩進み、最後の登りをのぼりきると

遂に山頂に到着!
標高は44.6m。山手線内の最高峰「箱根山」です。
広い山頂の中心部にはベンチが設置されており、桜の木に囲まれているため、春には多くの登山客が桜のいっぱいの山頂を求めて登ってくるのだとか。
山頂から山でなく大きなビルが見えるのも、新宿にある箱根山ならではの景色ですね。

元々箱根山は江戸時代、回遊式庭園(※)「戸山荘」として整備された際に、池を掘った残土を積み上げ固めて造成された築山です。
※日本庭園の形式のひとつ。園内を回遊しながら鑑賞する庭園のこと。
当時は築山のことを「玉円峰(ぎょくえんぽう)」と呼んでいました。明治維新後はこの地が陸軍戸山学校用地となり、「函根山」「箱根山」と呼ばれるようになったそうです(戸山公園事務所談)。
その昔、戸山荘だったころは、美しい庭園が眼下に広がっていたのかもしれません。スマホの地図アプリ「大江戸今昔めぐり」を見ながら想いを馳せました。
箱根山ハイキングの全貌はこちら
帰りにはなんと登頂証明も貰える

実は、箱根山の山頂に登ると登頂証明書を発行してもらえます。
戸山公園大久保地区にある戸山公園サービスセンターに行けば、即日発行してもらえるので、ぜひ下山ルートに入れて立ち寄ってみてください。

近くに美味しそうなお店もたくさんあるので、どういったルートで帰るのか考えるのもアーバンハイクの楽しみです。
ぜひ、「こうしなければいけない」ということに縛られずに自由に気楽に身近な自然を歩きながら感じてみてください。
身近な自然や歴史を楽しむ自由なアーバンハイキング

今回斉藤さんが登った箱根山も山手線最高峰とはいえ、山としては少し控えめなサイズ。ただ、標高の高さだけじゃなく、身近な自然や景色をゆっくりと味わうことにアーバンハイクの楽しさがあるんです。
道中のいろんな発見を楽しもう
今回の高田馬場駅発箱根山ルートであれば、途中にあったコズミック通り。
新宿区では名前のない歩道に名称をつけ、住人の方に愛着を持ってもらえるようにしているそうです。
先に「新宿区コズミックセンター」という新宿区の教育施設が作られているので、それにちなんでつけられた名前なのではないか、という説も(新宿区談)。
ただ道を歩くだけでなく、「これはなんだろう?」とそこにあるものに目を向けて興味を持つとたくさんの発見があります。これは自然の中でも同じようなことが言えますね。
東京にはおもしろい歴史がたくさん
箱根山も少し調べてみると「築山」ということがわかります。
この築山というものは人工的に作られた山のことで、江戸時代に大名が回遊式庭として作った山のことを主に呼びます。
つまり、箱根山は人の手で作られた山手線最高峰の山。ちなみに天然の山での山手線最高峰は愛宕山です。
これは私たちがよく登る山でも同じですが、土地のことを事前に調べたり、案内板などで知ることによってより解像度があがり、山行が深く味わい深いものになります。
アーバンハイクは気軽な格好でOK

アーバンハイクは山に行くよりも気軽な服装でOK。なんだったら、スーツでもできちゃいます。
歩きやすい靴があると最高ですが、服装にこだわり過ぎず、まずは気軽にチャレンジしてみてください。
ルート選びも自由度が高い

もちろん目的の場所への最短ルートもいいですが、自然が多い場所、美味しそうなお店など行きたいところや面白そうなものを優先してルートを決めましょう。グーグルマップを使って歩くことができるので、雰囲気や見た目で決めてもOK。
気軽に歩いて、身近な自然を再発見しよう

もともと斉藤さんは打ち合わせのちょっとしたすきま時間に自然に触れたいという気持ちで始めたアーバンハイク。
今回の箱根山ハイキングも片道2km弱のコースですが、山を歩いている時は都会の喧騒を忘れるような雰囲気で、リフレッシュにとてもおすすめです。
都内の山とその周辺には色々な物語があります。都会の山を登るからこそ見つけられる自然と歴史。遠くの山よりも、近くの山。東京アーバンハイキング、まずは一度身近な自然の中を歩いてみてください。
都内の山を見つけるなら本で探してみて

箱根山以外にも都内にはいろいろな山があります。街中の山に関する本もたくさん出版されているので、ぜひ手にとってみてください。
江戸東京百名山を行く(中古)
著者 | 手島宗太郎 |
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東京まちなか超低山 50メートル以下、都会の名山100を登る
絵と文 | 中村 みつを |
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東京 街なか山さんぽ 地形と歴史を楽しむ超低山ガイド
著者 | 「江戸楽」編集部 |
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