アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部
天狗原の湿原や白馬大池を経て、絶景の稜線へ

白馬岳への登山コースは数多くありますが、標高1829mの栂池パノラマウェイ・自然園駅までアクセスできる山頂への標高差が最も少ないのが、今回紹介する栂池自然園からのコースです。
コース上には高山植物が美しい湿原・天狗原や青い水をたたえた白馬大池があり、景観の変化が魅力。そして近づくにつれて趣の異なる山容を見せる白馬岳の展望も自慢です。
コース概要
最高点の標高: 2910 m
最低点の標高: 1846 m
累積標高(上り): 1508 m
累積標高(下り): -1508 m
技術的難易度:★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
【1日目】栂池自然園(80分)→天狗原(120分)→白馬大池(120分)→小蓮華山(50分)→三国境(60分)→白馬岳(10分)→白馬山荘(泊)
【2日目】白馬山荘(15分)→白馬岳(30分)→三国境(60分)→小蓮華山(90分)→白馬大池(90分)→天狗原(60分)→栂池自然園
栂池自然園へのアクセス
小谷村の栂池高原まではクルマでもアクセス可能。JR大糸線・白馬駅や北陸新幹線・長野駅からのバスの他、夏山シーズンには東京都内からの高速バスも運行されています。
ここから「栂池ゴンドラリフト」と「栂池ロープウェイ」を乗り継いで、登山口となる栂池自然園へ向かいます。ビジターセンターと栂池山荘の間に登山口があります。
【クルマの場合】
・上信越自動車道「須坂長野東」IC−国道19号−県道31号−県道33号−国道148号−県道433号−栂池駐車場
・長野自動車道「安曇野」IC−県道310号−国道147号−国道148号−県道322号−栂池駐車場
■栂池駐車場
台数:約850台
トイレ:あり
料金:平日無料(冬季一部期間有料)
【公共交通機関の場合】
・JR大糸線「白馬」駅下車、アルピコ交通バス「白馬駅-白馬八方-栂池高原線」乗車−「栂池高原」バス停下車
・JR「長野」駅下車、「特急バス長野-白馬線」乗車―「栂池高原」バス停下車
【高速バスの場合】
・アルピコ交通バス…都内から栂池高原への直通バス。
コース詳細ガイド

今回は、コースを3つのセクションに分けて紹介します。
セクション①:栂池自然園〜白馬大池(200分)
セクション②:白馬大池〜小蓮華山(120分)
セクション③:小蓮華山〜白馬岳(110分)
*各セクションをクリックすると、そのセクションへジャンプします
セクション①:栂池自然園〜白馬大池(200分)

最初のセクションは栂池自然園入口手前の登山口から、樹林帯をジグザグに登ります。湿原に木道が続く天狗原を通過したら、ゴロゴロした岩場を登って白馬乗鞍岳へ登り、白馬大池へと下っていきます。

栂池パノラマウェイ・自然園駅でロープウェイを下車したら、舗装路を登っていきます。栂池ヒュッテ・栂池山荘の2軒の山小屋を右手に見ながら進み、栂池自然園入口ビジターセンターの手前を右折すると登山道の入口です。

登山口からしばらくは、樹林帯の中の急斜面をジグザグに登る地味な登山道です。銀嶺水という湧水を通過すると、登山道はややなだらかに変わります。

笹や灌木に囲まれた登山道をなだらかに登りながら、天狗原をめざします。

灌木帯の中のやや急な岩場を登ると、天狗原の湿原を横断する木道が始まります。

湿原に池塘が点在する天狗原。夏は高山植物が咲き乱れ、秋は草紅葉が美しい場所です。

天狗原の平坦な木道が終わると、登山道が大きな岩が連なる灌木帯の中の急斜面へと変わります。

灌木帯が開けると、大きな河原を渡ります。その年や時期によっては雪渓になっている場所で、スリップに注意が必要です。

河原を渡ってしばらく登ると、周囲はハイマツ帯になり傾斜もゆるやかに変わります。前方にケルンがつまれた白馬乗鞍岳の山頂が見えてきました。

白馬乗鞍岳からは、白馬大池へとゆるやかに下っていきます。足元は大きな岩が連なる歩きにくいゴーロ帯で、転倒事故も多発しているので注意が必要です。

白馬大池のほとりに沿って登山道を進むと、赤い建物が特徴的な白馬大池山荘に到着です。トイレやベンチもあり、休憩には最適です。
セクション②:白馬大池〜小蓮華山(120分)

このセクションでは、長野・新潟県境を歩き稜線伝いに小蓮華山をめざします。アップダウンも比較的なだらかで、歩きやすい登山道です。

白馬大池山荘を後にして、グリーンロープで仕切られた砂利道をゆるやかに登っていきます。周囲の草原は、夏にはチングルマなどの高山植物が咲き乱れます。

初めのうちは、写真のようなゆるやかな登りが続きます。ハイマツ帯を抜けて稜線に近づくと、ジグザグのやや急な登りに変わります。

稜線直下をトラバース気味に進むと、小さな鞍部で稜線に出ます。

地形図やGPSアプリに・2612と記載されている最初のピーク・船越ノ頭に到着です。

晴れた日に船越ノ頭から小蓮華山方面を望むと、写真のようにのびやかで美しい稜線が続いています。

稜線の両側はハイマツ帯で、ガスが濃い日などはライチョウの鳴き声があちこちから聞こえます。

船越ノ頭からいったん下り、小蓮華山へとゆるやかに登り返していきます。

三角点や鉄製の剣も設置された、小蓮華山の山頂です。あまり知られていませんが、この山が新潟県の最高峰です。
セクション③:小蓮華山〜白馬岳(110分)

このセクションでは、小蓮華山からゆるやかに下り白馬岳へと登ります。途中で通過する三国境は、富山・新潟・長野の3つの県境です。

小蓮華岳からは、ガレ場の稜線をゆるやかに下っていきます。

小蓮華岳と白馬岳の鞍部付近まで下ると、めざす白馬岳が姿を現しました。

鞍部から三国境へは、ハイマツ帯のガレ場を登り返します。

三国境に到着です。雪倉岳からの縦走コースが、右から合流します。

三国境から先は、やや急な岩場の登りとなります。前方に、白馬岳の前衛峰が見えてきました。

前衛峰を越えると、登山道はゆるやかになります。白馬岳が位置する後立山連峰ならではの、右側(西の富山県側)がゆるやかで、左側(東の長野県側)が急な非対称山稜を実感できます。

いよいよ山頂が近づいてきました。右奥に見える三角形の山は、日本百名山最難関といわれる剱岳です。

ついに白馬岳山頂に到着です。見下ろせば、栂池自然園や小蓮華岳など、ここまで歩いてきた稜線が一望できます。ここから10分ほど下れば、白馬山荘です。

白馬山荘は、長野県側の受付がある一号館、富山県側の二号館・三号館・食堂、そして山頂レストラン・スカイプラザ白馬に分かれています。スカイプラザ白馬ではランチの他、アルコール類やモツ煮・おでん・チーズ盛り合わせなども味わうことができます。

白馬山荘からは、山頂とほぼ同じ絶景を楽しむことができます。夕日・朝日に照らされた山々の絶景を楽しみながら、のんびりと過ごしましょう。翌日は往路を下山します。
他にも魅力的な登山コースや白馬三山縦走も!

白馬岳には他にも魅力的な登山コースがあり、栂池コースとの組合せも可能です。
猿倉から日本三大雪渓のひとつである白馬大雪渓を登るコースは、軽アイゼンやヘルメットなどの装備が必要ですが、白馬岳を代表する人気コースです。
標高1475mにある雲上の秘湯・蓮華温泉からのコースは樹林帯の中の歩きやすい登山道。白馬大池からは栂池コースと合流します。
また杓子岳・白馬鑓ヶ岳とあわせて白馬三山を縦走するプランも、日本アルプスの稜線歩きの魅力を存分に感じ取ることのできるコースです。
白馬岳の登山適期は?

白馬岳登山の適期は7月中旬~9月ごろ。特に7月・8月は山小屋も混雑します。気候面では、夏でも朝晩は冷え込み、山頂付近の稜線へ吹き込む風も冷たいので防寒対策が必要です。9月下旬〜10月上旬は栂池自然園や天狗原の紅葉が美しい時期ですが、稜線は雪に見舞われることもあるので注意しましょう。
白馬岳の天気と地図をチェック
白馬岳は標高が3000m近くあり、開山直後のゴールデンウィークの時期では最低気温は平均-5℃。過去には悪天候による遭難事故もありました。
5月~6月は積雪や残雪があることを踏まえ、自分のレベルに合った山行計画を行い安全な登山をしましょう。
白馬岳の登山指数
日付 | 09月18日 (木) | 09月19日 (金) | 09月20日 (土) | 09月21日 (日) | 09月22日 (月) |
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登山 指数 |
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登山指数の留意点
登山をするための快適さを、山頂や山麓の気象条件から、気象学的知見を用いて登山指数A~Cで表現をしています。降水量、風速、雲量などを総合的に考慮し、気象条件を独自計算したものです。
ただし、以下のリスクは含まれておりません。
- 雷の発生の可能性
- 前日の天気による道のぬかるみ
- 局地的大雨
- 土砂災害の発生の可能性
- 雪崩の発生の可能性
- 噴火の可能性
- 積雪の有無
- 濃霧
- 低温または高温
- 虫やヒルなどの発生状況
山の天気は大きく変わりやすいため、登山指数はあくまで目安としてご利用頂き、最新の気象データや天気図、各登山道情報をご確認ください。
なお、本情報に基づいた行為において発生したいかなる人物の負傷・死亡、所有物の損失・損害に対する全ての求償の責は負いかねます。ご了承下さい。
データ提供元:日本気象株式会社
白馬岳周辺の山と高原地図
昭文社 山と高原地図 白馬岳
白馬岳・栂池コースの山小屋情報

ここでは紹介したコース上にある山小屋を紹介します。登山中の宿泊はもちろんですが、前泊後泊などに利用することで、より余裕のある登山を行うことができますよ。
このコースで宿泊した山小屋
白馬山荘

頂上直下にある日本最大級の山小屋です。一面ガラス張りの展望レストラン・スカイプラザ白馬からは北アルプスの絶景を楽しみながらくつろぐことができます。相部屋だけでなく、山小屋では珍しい2人用ベッドルームの個室などもあります。
電話: 0261-72-2002(株式会社白馬館)
営業期間:4月中旬~10月中旬
料金:15,000円(1泊2食)
白馬岳・栂池コース上の山小屋
白馬岳頂上宿舎

白馬山荘から大雪渓方向に15分ほど下った場所にある山小屋。女性限定のプレミアムレディースルームやテント場もあり、宿泊のスタイルを選ぶことができます。また、山岳パトロールや遭難救助などを行う隊員や昭和大学医学部白馬診療所のスタッフたちがシーズン中は常駐して活動しています。
電話: 0261-72-2002(株式会社白馬館)
営業期間:6月中旬~10月上旬
料金:15,000円(1泊2食)
白馬大池山荘

周囲が開けている白馬大池の畔に建つ静かな山小屋。食堂は談話室としても使用され、昼には喫茶営業も行っています。
電話: 0261-72-2002(株式会社白馬館)
営業期間:7月上旬~10月中旬
料金:15,000円(1泊2食)
栂池ヒュッテ

吹き抜けの2階ラウンジが特徴的で、広々としたレストランや雰囲気の良いテラスも魅力。ゆとりのある洗い場を備えたお風呂も◎。軽アイゼンのレンタルもあります。
電話: 0261-72-2002(株式会社白馬館)
営業期間:6月中旬~10月中旬
料金:14,000円(1泊2食)
栂池山荘

栂池ヒュッテに隣接している地元・長野県小谷村営の宿泊施設。素朴ながらも滋味深い山里の味わいの食事と、絶景のラウンジが魅力です。
電話: 090-7708-6341(衛星電話)
営業期間:6月上旬~10月中旬
料金:12,980円(1泊2食)
帰りに寄りたい温泉情報
白馬岳に来たら外せない温泉!ここでは下山後に立ち寄れる日帰り温泉施設を紹介します。
白馬八方温泉 みみずくの湯

白馬三山の眺望が楽しめる温泉です。桜の時期には夜桜も楽しめます。温泉うどんが名物の茶屋が併設されています。
住所:長野県北安曇郡白馬村大字北城八方口5480-1
電話:0261-72-6542
営業時間:10:00~21:00(最終受付20:30)※季節によって変動するため要確認
料金:大人700円、子供400円
八方の湯

白馬八方バスターミナル向かいにある、アクセスが便利な日帰り温泉施設です。外には足湯もあるので、時間がないときにはそこで温泉気分を味わうこともできますよ。
住所:長野県北安曇郡白馬村北城大字5701-2
電話:0261-72-5705
営業時間:10:00~21:00(受付終了20:30)※季節によって変動するため要確認
料金:大人850円、小人500円
山の魅力が盛りだくさんの白馬岳へ!

可憐な高山植物や神秘的な水鏡、大展望の稜線など登山の魅力が盛り沢山の白馬岳。
難易度は中級者以上向けですが、ぜひ白馬岳へ行ってみてはいかがでしょうか?きっと忘れられない体験ができることでしょう!
白馬岳のコースを再度チェック
各コース詳細
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