アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
鎌倉市街や富士山・相模湾の眺望も抜群の縦走コース

鎌倉市街地の北東には、鷲峰山(127m)・大平山(159m)・天台山(141m)などの山々が連なり、鎌倉アルプスとも呼ばれています。
稜線からの展望はもちろん、登山口・下山口周辺には数多くの社寺が点在し、パワースポットめぐりにもぴったり。春〜夏の花々や秋の紅葉も見事です。
2019年秋の台風で甚大な被害を受けましたが、2022年春に全面復旧して再び楽しめるようになった、歩きごたえ抜群のコースをたどってみます。
天園ハイキングコース(鎌倉アルプス)概要

コース概要
北鎌倉駅(1km・19分) → 建長寺入口(0.8km・19分) → 半増坊(0.3km・17分) → 十王岩(0.6km・15分) → 鷲峰山(0.7km・20分) → 大平山(1.2km・25分) → 天園ハイキングコース入口(0.2km・7分) → 瑞泉寺(1km・17分) → 鎌倉宮(0.2km・4分) → 大塔宮バス停
参考:ヤマレコ(上記の所要時間に見どころの観光時間や休憩時間は含まれていません)
登山口情報

スタート地点はJR横須賀線・北鎌倉駅東口ですが、ここは交通系ICカードでの出入場専用。トイレや自動精算機は西口に設置されています。
トイレを済ませたい人や交通系ICカードが残高不足の人は、線路を渡った西口へ立ち寄りましょう。西口から出場しても、すぐ南側の円覚寺前踏切を渡って線路の東側に戻ることができます。
コース詳細ガイド

今回はコースを3つのセクションに分けて紹介します。
- Section1:北鎌倉駅〜半蔵坊(1.8km・約38分)
- Section2:半蔵坊〜大平山(1.6km・約52分)
- Section3:大平山〜大塔宮バス停(2.6km・約53分)
Section1:北鎌倉駅〜半蔵坊(1.8km・約38分)

最初のセクションはJR北鎌倉駅からの舗装路と、建長寺の境内を歩きます。広大な建長寺境内に点在する、様々な堂宇が見どころです。

北鎌倉駅東口からすぐに、円覚寺があります。鎌倉時代中期、当時世界を席巻していたモンゴル帝国からの侵略(蒙古襲来)から日本を守りながら、若くして亡くなった北条時宗公のお墓があります。

円覚寺の先の踏切を渡り、車道と歩道が分けられた横須賀線西側の鎌倉街道沿いを進みます。ただし踏切を渡らずに車の通行量が少ない横須賀線東側を進んでもOK。途中には紫陽花寺として知られる明月院への道もあります。

和食・会席料理「鉢の木新館」の先の踏切を鎌倉街道に沿って渡ります。

踏切を渡った場所にある案内板。まずは、ハイキングコースの入口である建長寺をめざします。

鎌倉街道沿いを運行する江ノ電バスでは、建長寺バス停のひとつ前にあたる上町バス停。周辺には自動販売機が充実しているので、ハイキング用の水分が足りない人はここで補給しましょう。

バス停ひとつ分を歩き、建長寺に到着です。奥に見える天下門の向こうは、駐車場になっています。

総門となる巨福門をくぐり境内へ。この先で拝観料(大人500円)を支払います。

国指定重要文化財の山門は、その下をくぐると心が清浄になるといわれています。

こちらも国指定重要文化財の仏殿。この建物にご本尊の地蔵菩薩坐像が安置されています。

本殿の左側を進み唐門へ。この左手に進むと天園ハイキングコースへの道です。近くにはトイレも設置されています。

建長寺の塔頭(大きな寺院の寺域内にある小寺院や小さな坊)のひとつである「正統院」の右へと進んでいきます。

竹林を左手に見ながら、ゆるやかに登っていきます。

鳥居をくぐり、石段を上がって行きます。半僧坊は特別御朱印が人気で、季節限定のものもあります。

半僧坊直下の階段を登っていくと、両脇からは剣を持った烏天狗とうちわを持った大天狗が参詣者を見守っています。

建長寺奥の院・半僧坊へ到着です。近くの富士見台からは、天気がよければ富士山を眺望することができます。
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Section2:半蔵坊〜大平山(1.6km・約52分)

このセクションは、ほぼ自然のハイキングコースです。展望ポイントや史跡も点在する沿道を楽しみながら、鎌倉市最高峰の大平山(おおひらやま)をめざします。

半僧坊から約250段の石段を登ると、勝上献(正式には山冠に献と表記)展望台です。眼下の建長寺境内から鎌倉市街、湘南海岸までを見渡す絶景が広がります。

今泉台からのルートと合流して、いよいよ本格的なハイキングコースが始まります。

コースは基本的に土道で、温暖な鎌倉らしい照葉樹林の中へと続いています。

やや進むと「十王岩」が現れます。如意輪観音・血盆菩薩・閻魔大王が岩に彫られたパワースポットですが、夜ごとに喚くような不気味な音を立てていたため「喚き十王」とも呼ばれていたそうです。

十王岩の展望は、「かながわの景勝50選」に選ばれており、鎌倉方面の明るい展望が広がります。

十王岩の先にも、やぐら(横穴式の中世のお墓)らしきものがあります。

鎌倉周辺の他のハイキングコースと同じく、路面には、凹凸の少ない岩肌が露出している箇所が多く現れます。
この岩は比較的グリップが効いて滑りにくい地質。むしろ土道の部分は雨上がりにはぬかるんで滑りやすいので注意が必要です。

こちらもやぐらの跡でしょうか。草木に包み込まれつつある史跡があり、ちょっとノスタルジックな光景です。

下り坂の岩場にかけられたロープ。足元に不安があれば、これにつかまってゆっくりと下りましょう。

ここもやぐらの跡のようですが、苔むしており年代を感じさせます。

道標にしたがって、ゆるやかな階段を下っていきます。

今泉台分岐です。右方向へ進むと覚円寺に下りますが、今回は直進します。

コース脇に柵が設けられた区間です。台風被害からの復旧の際に、新しく設置されました。

少し登っていくと鷲峰山(127m)です。道標などはありませんが、山頂直下に大規模なやぐらがあります。

鷲峰山を越えて送電線をくぐり、露岩帯を下っていきます。

登り返した場所にも大規模なやぐらの跡があり、地層の重なりまで確認することができます。

ところどころ周囲のやぶが濃くなる場所もありますが、踏み跡は明瞭で迷いやすいということはありません。

道標にしたがって登り返して、小さなピークを越えます。

この場所は柵ではなく、設置された橋を渡るようになっています。橋の先の斜面では木がなぎ倒されて山肌が露出した斜面もあり、2019年の台風の爪あとを感じます。

苔むした岩が露出した斜面を登り、大平山をめざします。

やがて左前方に、めざす大平山に建つ白い電波塔が見えてきます。

左側にフェンスが現れ先の視界が開けてくると、大平山は目前です。

鎌倉市最高峰・大平山(159m)は、フェンスにかけられたこの看板で表示されています。地形図やGPSアプリで大平山と記載されているのは実は天園で、この山頂とは別の場所です。

ゴルフ場・鎌倉カントリークラブに隣接した山頂直下の広場は展望がよく、草原状になっています。休憩にはもってこいのポイントです。
ただしここでお弁当などを広げると、周囲に生息するトビが食べものを狙って襲ってくることがあります。食事は樹木の下などですませるのが安全です。
JTBパブリッシング るるぶ鎌倉'26(るるぶ情報版)