【山岳医監修】ポイズンリムーバーって意味あるの?おすすめモデルの比較レビューと効果的な使用法
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蚊・ダニ・ブヨ・蜂などの害虫は、アウトドアを楽しむ人々を悩ませる存在。刺されたり咬まれたりすると、体内に侵入した物質によって痒みや痛み、腫れなどのアレルギー症状が引き起こされ、重篤な事態になることも。これらの有害物質を素早く吸い出すためのアイテムが、ポイズンリムーバーです。
その効果には懐疑的な意見もありますが、果たして意味がないのでしょうか?今回は国際山岳医の先生に有用性や使用方法を伺いつつ、12種類のポイズンリムーバーを実際に使用してみました。
2025/08/25 更新
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監修者
日本登山医学会認定 国際山岳医
稲田千秋
国際認定山岳医、形成外科医。現在はフリーランスで医業を続けながら、国内外の登山ツアーへの帯同や山小屋での診療など山岳医療の場での活動をメインに行なう。
登山歴は約15年。
学生の頃に登山をはじめ、以後、アルパインクライミングを中心とした様々なジャンルのアウトドアアクティビティに熱中。アウトドアブランド<カリマーインターナショナル>のアンバサダークライマーとして製品開発などにも協力している。
稲田千秋のプロフィール
編集者
YAMA HACK編集部
月間350万人が訪れる日本最大級の登山メディア『YAMA HACK』の運営&記事編集担当。山や登山に関する幅広い情報(登山用品、山の情報、山ごはん、登山知識、最新ニュースなど)を専門家や読者の皆さんと協力しながら日々発信しています。
登山者が「安全に」「自分らしく」山や自然を楽しむサポートをするため、登山、トレイルランニング、ボルダリングなどさまざまなアクティビティに挑戦しています。
YAMA HACK編集部のプロフィール
制作者
山岳ライター・登山ガイド
鷲尾 太輔
登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。登山ガイド・登山教室講師・山岳地域の観光コンサルタント・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。登山歴は30年以上、ガイド歴は10年以上。得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。山と人をつなぐ架け橋をめざして活動しています。
公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅠ 総合旅行業務取扱管理者
鷲尾 太輔のプロフィール
アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
ポイズンリムーバーの使用は意味がないってホント?
撮影:鷲尾 太輔様々な検索エンジンで「ポイズンリムーバー」と入力すると、かなりの確率で「意味ない」の言葉も表示されるこのアイテム。
けれども登山者のみならず、キャンプや釣りなどのアウトドアアクティビティや、森林を仕事場とする人でもポイズンリムーバーを常に携帯している人が多いのも事実です。
今回は国際山岳医・稲田千秋先生の監修で、効果的な使用法と様々なポイズンリムーバーを実際に使用してみたレビューを紹介します。
医学的には解明されていない虫刺されに対するポイズンリムーバーの効能
出典:PIXTA残念ながら、現段階で医学的にはポイズンリムーバーの効能は実証されていません。
まったく効果がないとも断言はできないのですが、虫刺されに対するポイズンリムーバーの研究報告自体が存在しないのです。その理由を、稲田先生に伺いました。

稲田先生
ポイズンリムーバーで蜂の毒液(蚊やブヨであれば唾液腺物質)を吸い出せるとすれば刺された直後であり、そうした突発的な事象について研究モデルを作るのは極めて難しいからです。
効いたか効かなかったかも個人の感じ方に違いがあり、実際のアレルギー反応にも個人差があるため、定量的に評価することや正しい結果を得られる研究モデルを作ること自体が難しいのではないでしょうか。
ポイズンリムーバーの有効性が報告されている事例も
撮影:鷲尾 太輔害虫に刺されたり咬まれたりしたときに、体内に侵入した蚊・ブヨによるアレルギー性皮膚炎を引き起こす唾液腺物質や、蜂による毒液を体外に吸い出すのがポイズンリムーバーの役割。
あくまでも個人的な体験談の範疇ですが、ポイズンリムーバーを使用することで腫れ・痒み・痛みなどが軽減されたという報告も複数存在します。
また蜂刺されにおいては、医師により「ポイズンリムーバーによって毒液が吸引される」という診療事例が掲載されている書籍も。
山と渓谷社
人を襲うハチ 4482件の事例からの報告
とはいえこれらは唾液腺物質や毒液を「吸い出す効果」であり、「症状を軽減する」という医学的根拠は、やはりないのが現状なのです。

稲田先生
症状をある程度緩和する可能性はあると考えられるものの、それが保証されるものではありません。
また、刺されてから時間がたつと吸い出す効果はほとんどなくなってしまうため、なるべく刺されてすぐに使用するのが有効という意見があります。
ポイズンリムーバーを正しく使おう!害虫被害の対処手順
撮影:鷲尾 太輔このように医学的な根拠はないものの、体内に注入された物質を吸引することで症状の軽減につながったという実例もあるポイズンリムーバー。まったく意味がないとは言い切れないかもしれません。それでは実際に害虫に刺された場合、どのような手順で対処すれば良いのでしょうか。
1. 安全な場所へ素早く移動する
出典:PIXTA蜂に刺された場合、近くに巣があることが想定されます。また毒液や唾液腺物質が注入されてから時間を空けずに処置することが、症状の軽減に有効という意見も。再び刺される心配がなく、落ち着いて処置できる場所へ素早く移動しましょう。
2. ポイズンリムーバーでの吸い出し
撮影:鷲尾 太輔続いてポイズンリムーバーを使用しての、毒液や唾液腺物質の患部からの吸い出し。吸引器具はモデルによって、ピストンを「押し下げる」タイプとレバーを「引き上げる」タイプがあります。
使用方法は各アイテムの取扱説明書に従いますが、基本的には以下の手順です。
- 吸引器具のピストンを目一杯引き上げる、もしくはレバーを下げる。
- 吸引カップを患部に垂直に当てて、しっかりおさえる。
- 吸引器具を操作して、吸引する。
- 患部がしっかり吸引されたら、その状態を60秒〜90秒キープ。
- ピストンをゆっくり引き上げる、もしくはレバーを下げる。
- 1〜5を3回程度繰り返す。
素早くきちんと吸い出しを行うために、ザックの雨蓋など取り出しやすい場所に収納しておくのがおすすめ。もちろん事前に取扱説明書を読んだ上で、吸い出しの処置を練習しておくことも重要です。
3. 真水での洗浄
撮影:鷲尾 太輔ポイズンリムーバーでの吸い出しが完了したら、患部を真水で洗浄します。山中には水道がないので、飲料水以外に500mlペットボトル1本程度の真水を常に用意しておきましょう。
同じ製品の蓋に穴をあけておいて付け替えると、水鉄砲のような強い水圧でピンポイントに洗浄することが可能。これは出血をともなう外傷を負った際に、傷口をきれいにするためにも役立ちますよ。
4. 軟膏(抗ヒスタミン・ステロイド剤)の塗布
撮影:鷲尾 太輔患部を洗浄したら、虫刺され用の抗ヒスタミン剤(痒みを抑制する)を含む、ステロイド剤(炎症を抑制する)を塗りましょう。可能であれば患部を冷やしておくと良いでしょう。

稲田先生
蜂の針などが残っていれば取り除いた方が良いのですが、ミツバチなど返しのついている針で容易に引き抜けないこともあります。
こうした場合は無理に引き抜かないで、なるべく早く医療機関を受診してください。
ここで紹介した
- 安全な場所への退避
- ポイズンリムーバーでの吸い出し
- 患部の洗浄
- 軟膏の塗布
という手順は治療ではなく、あくまでも現場での応急処置。ミツバチ以外の害虫の場合も、なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。
ポイズンリムーバー選びでチェックすべきポイントは?
撮影:鷲尾 太輔それでは、もしもに備えてポイズンリムーバーを携行するとしたら、どのような点をチェックして選べば良いのでしょうか。
「なるべく刺されてすぐに使用するのが有効という意見がある」ことや、「とっさに処置できるよう使いやすいものが良い」という稲田先生のアドバイスなどを踏まえると、以下のような点をチェックするのが良いでしょう。
- ケースからの取り出しやすさ
ケースのないモデルもありますが、衝撃を受けても壊れないようにケースに入っているモデルは、蓋の開けやすさや取り出しやすさをチェック。 - 吸引カップと吸引器具の組み立てやすさ
患部の位置や大きさに合わせて吸引カップを吸引器具(本体)にセットするため、組み立てのスムーズさをチェック。 - 吸引する時の操作性
手の大きさや握力に関係なくスムーズに吸い出しできるかや、どこを刺されるかわからないので利き手とは逆の手でも吸引できるかをチェック。 - 吸引力
しっかりと吸い出しを行うために、吸引カップが患部を吸引する力そのものをチェック。
※付加的ポイントとして重量・サイズ
素早く取り出せる場所に収納しておくことも重要なため、使用シーンに合わせて持ち運びやすさも確認すると良いでしょう。