「今度はあの山に挑戦してみたい!」
登山に少しずつ慣れてきたら、自然と行き先の山レベルもだんだん上がってくるもの。しかし、そうなってくるとすべての山が「平坦で整備された道」というわけにはいきません。普通に歩くだけでは通過しにくい箇所も出てきます。
そんな時ボルダリング(クライミング)の技術を身に着けていれば、それらの場面をうまくこなせることがあるんです。今回は、編集部スタッフの実体験を交えてお話したいと思います。
実際に山で思った「ボルダリングやっててよかった!」
YAMA HACK編集部のスタッフ・Kは登山歴7年(うちクライミング歴は4年)。のんびり山ごはんを楽しむ時もあれば、アルプスの山を日帰りソロ登山したり、数日間テント泊をしたりと気ままに山を楽しんできました。
「私、赤岳に行ってみたい!」登山好きな友人のひとこと
ある時、登山好きな女性の友人が「私、赤岳に行ってみたい!」と申し出てきました。彼女は当時、山を始めて3年目。少しずつ標高の高い山へチャレンジし、山小屋泊も経験済み、長時間歩くことにもだいぶ慣れてきていた状態でした。
スタッフK:大丈夫?かなり急なところもあるし、岩場歩きが続くよ?
友人:岩稜帯歩きは、立山とか、一応いくつかトレーニングしたから大丈夫! 憧れの山だったから、今年こそ行ってみたいんだよね~。
との事。それならば、と2人で赤岳へ向かったのです。
結果としては、2人とも無事に登頂! 天気も良く、2人で「わーい!」と喜びながら写真を撮り、景色を楽しみました。
しかし、登山道で……
でも、今回の問題は「登頂できたかどうか」ではありません。稜線上などで要所要所に出てくる極端に細い道、切れ落ちている箇所、急な斜面で友人は急激にスピードダウン。「わー怖い」とか「きゃー!」とか声を上げていました。
それこそ本気で怖がっているトーンではありませんでしたが腰が引けており、恐る恐る歩く場面がちらほら。
この時、スタッフKは思ったのです。
「ボルダリングやっててよかった~!」と。
スピードダウンすることが決して悪い、というわけではありません。危険な箇所は、渋滞が起きていても後ろから急かされていると焦ってはいけません。落ち着いてゆっくり、安全に通過することが一番です。
でも、「どうすれば楽に通過できるか」を体が判断できるようになれば、緊張を強いられていた場面でも、きっと気持ちが軽くなります。
でもボルダリングって、力のない自分には無理無理!
「ボルダリング」と聞くと、ばーん!と飛んだり、筋骨隆々とした人がパワーを振るうスポーツで、「自分には無理、縁がない!」と思っている方もいるのではないでしょうか。一見、登山とはまったく別のアクティビティにも思えます。
しかし、ボルダリング・クライミングは限られた支点を使って体のベストポジションを探すスポーツです。そのため、バランス感覚が磨かれるスポーツでもあります。それがどのように登山に活かせるのか?
具体的に3つのシチュエーションを見ていきましょう。
①足置きがうまくなる
ボルダリングでは、腕の力に頼りすぎないよう足の踏ん張りも重要です。小さいホールドにつま先を乗せて支えることもしばしば。
このとき、片方の足からもう片方の足へ、体の体重(重心)を移動してバランスを取ります。この「重心移動」がスムーズにできると足使いが上手になるので、下りの際などには活躍する技術です。
②狭い道や急斜面でバランスを取るのがうまくなる
急斜面や狭い岩稜帯で徹底したいのが「3点支持」。両手両足の4本のうち、3本で体を支えて残りの1本で前進するのが岩登りの基本です。
ボルダリングでも、両手両足で使うホールドは限られています。このとき、「このホールドを使って、いかに辛くない体勢をキープできるか」が重要。四肢のどこに体重をかけ、どちらの足を前に出すのか。たくさん登っていると、体が覚えて自然と「無駄のない体勢」ができるようになります。
③鎖場が平気になる
②ができると、鎖場もだいぶと通過しやすくなっているはず。ここもまさに3点支持を発揮する場であり、体を楽なポジションにするために、必要な箇所にのみ力を入れるという判断ができれば、鎖場もへっちゃらですよ!
登山にクライミング技術はつきもの
実際に一緒に赤岳へ行った友人にボルダリングを勧めて、今では本人はそのゲーム性にハマりボルダリングを楽しんでいます。何か変わったか、と聞くと「力の入れ方がわかるようになったし、怖いところは腰が引けてたけど、腰をグッと入れて足で立てるようになった!」と言っていました。
不整地でバランスを取ろうとするのは、登山もボルダリングも同じ。必ず役に立つ感覚なので、なかなか手が出なかった山好きの方! だまされたと思って、ボルダリングを始めてみてはいかがでしょうか?