湊 かなえ作『山女日記』
『告白』や『少女』、『白ゆき姫殺人事件』など、数々のヒット作を生み出してきた湊(みなと) かなえさんの作品である『山女日記』をご紹介します。この小説は、幻冬舎の雑誌『GINGER.L』で全8回短編として連載され、その後2014年7月にまとめて書籍として出版されました。2015年8月には山と渓谷社『山と渓谷』にて番外編が掲載され、2016年8月にはその番外編も加えて文庫版が出版されました。
読み方は”やまおんなにっき”
読み方がわからない!という方、結構いるのでは?正しい読み方は「やまおんなにっき」です。「山女」「山ガール」どちらも登山好きな女性のことを呼ぶ言い方です。遭難がない山岳小説、「山に登ってみたい」と思えるような小説になるよう考えられています。
『山女日記』の気になるあらすじ
『告白』など、ドロドロとした内容が印象的な湊かなえさんの作品ですが、今回初の試みとなった山岳小説はそれまでの小説とは雰囲気が違います。湊かなえさん自身が実際に登った山である妙高山、火打山、槍ヶ岳、利尻岳、白馬岳、金時山、そしてトンガリロを舞台に、山ごとに違った女性が主人公として描かれています。
「妙高山」の主人公の”律子”は、このまま結婚するか否かの悩みを晴らすために初の登山に挑戦します。部長と不倫中の同僚”由美”と一緒に登るものの、彼女の言動全てにイラついてしまいます。
医者と結婚した実の姉から登山に誘われた”希美”が「利尻山」の主人公。翻訳家の仕事をしているが上手くいかず、親の脛をかじっている彼女は、「姉は自分を見下している」という気持ちが追い払えません。
帽子デザイナーの”柚月”は、以前付き合っていた彼と行ったニュージーランドにあるトンガリロ国立公園のトレッキングツアーに参加します。元彼との思い出を忘れるために参加したこのツアーで、柚月の心は変化していきます。
女性ならではの複雑で繊細な心理があざやかに描き出されており、彼女たちが登る山の風景と相まって美しく物語が進みます。最後に希望を感じさせる終わり方も、多くの読者に感動を与えています。
『山女日記』は幻冬舎文庫から
山女日記は幻冬舎文庫から出版されています。Amazonや楽天でも購入できるので、ドラマと一緒にチェックしてみても良いかもしれませんね。
山女日記 (幻冬舎文庫)
NHKでドラマ化もされた『山女日記』
そんな『山女日記』を原作としたドラマが、2016年にNHKでドラマ化されました。登山経験豊かな女優工藤夕貴さんが主演を務め、経験豊かな俳優たちが主要人物を固めます。全7回のドラマは、湊かなえファンも山好きも納得の内容で幕を閉じました。
2017年10月には続編も!
2016年の放送が好評で、2017年にはファン待望の続編も放送されています。全2回の放送で、番外編の「カラフェス」が描かれており、登山ガイドとして1人前に成長した柚月は山のWEBサイトに投稿する女性たちを山フェスに誘います。そこで描かれる様々な人間模様や、舞台となった常念岳と燕岳が美しく描かれていました。
『山女日記』を読んで自分の人生も振り返ろう!
このドラマの見どころは、人生に迷いや悩みが生じたときに、山に登って自分なりの答えを見い出していくというところにあります。主人公は女性ですが、女性、男性に限らず、自分の人生に疑問を感じた時、このドラマのように山に登って自分自身を見つめ、ヒントを探してみてはいかがでしょうか。