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鎌倉・逗子|史跡と寺社めぐりハイキングコース

【お寺めぐり×絶景ハイク】鎌倉から逗子へ、史跡と山を欲張り散歩!

山岳ライター・登山ガイドである筆者が「お手軽なのに最高!」なイチオシのハイキングコースをご紹介!今回は、歴史と自然が調和したロマンあふれる景観が点在する鎌倉・逗子を歩きます。

いにしえの人々が自然の山を切り開いた史跡をハイライトに、季節の花が美しい寺社や富士山・湘南海岸を望む絶景スポットまで、その魅力を余すことなくお伝えします。

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目次

アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔

史跡好きな少年時代が登山ガイド活動へリンク

天香久山
撮影:鷲尾 太輔(天香久山・1996年撮影)

こんにちは、山岳ライターの鷲尾太輔です。登山ガイドとしても活動している私が最初に山にのめり込んだのは10半ばごろ。山に魅せられ、学生山岳部やそのOBとして、何度も日本アルプスや関東甲信の山々を縦走していました。

その一方で、奈良の古墳・古道・霊山など悠久の歴史にも深く関心があり「自然の中に残る史跡」へも足繁く旅をしていたものです。

丹沢大山・前社前の鳥居
撮影:鷲尾 太輔(丹沢大山・前社前の鳥居)

自然豊かな山も歴史ロマンも好きな当時の私にとって「山=ピークハントの対象」 「史跡=知的好奇心の対象」といった感じで、あくまで別物扱いでした。しかし登山ガイドとして本格的に活動していく過程で、これらの経験が融合して活かされることになります。

例えば、生まれ故郷に近い高尾山をはじめ、奥多摩、丹沢には、山岳信仰の対象として古くから登拝されてきた山があります。

「ただ登るだけならガイドは不要」と思われがちなこうした低山も、山中に残る史跡や信仰の足跡などのバックグラウンドを解説しながら案内することで「学びや発見がある」と多くの方から好評をいただいています。

歴史と自然の調和にロマンを求めて|鎌倉・逗子の史跡と寺社めぐり

鎌倉東側の山を切り開いた道である朝比奈切通し
撮影:鷲尾 太輔(鎌倉東側の山を切り開いた道である朝比奈切通し)

そんな私が今回おすすめする「お手軽なのに最高!」なコースは、武家の古都・鎌倉周辺のハイキングです。

三方を山に囲まれた天然の要塞ともいえる鎌倉周辺には、山を切り開いて人や馬が通行できるようにした道がいくつもあります。

今回は自然との調和が特に美しい「名越切通し」と「お猿畠の大切岸」という史跡を中心に、豊かな自然や四季を感じ取ることができる寺院と、鎌倉の街や湘南海岸、富士山を望む絶景の山も結んだ、とっておきのコースを紹介します。

コースの魅力ポイントを徹底解説!

鎌倉・逗子MAP
地図の出典:YAMAP(地図をタップすると拡大できます)

体力レベル:★☆☆☆☆

日帰り|約2時間10分

参考:らくルート

技術的難易度:★☆☆☆☆

・概ね整備されている
・道迷いの心配が少ない
・歩きやすい靴と動きやすい服装が必要

凡例:グレーディング表

コース概要

鎌倉駅(5分)→大巧寺(10分)→妙本寺(15分)→妙法寺(5分)→名越切通入口(10分)→名越切通登山口(10分)→名越切通分岐(5分)→名越第1切通(5分)→名越切通分岐(10分)→お猿畠の大切岸(30分)→浅間山(5分)→衣張山(20分)→杉本観音バス停

鎌倉駅東口
撮影:鷲尾 太輔(鎌倉駅東口)

それでは、鎌倉・逗子の寺社と史跡を巡るとっておきコースをご案内します。スタートはJR鎌倉駅東口です。

四季折々の花が美しい大巧寺

大巧寺
撮影:鷲尾 太輔(大巧寺)

東口ロータリーの先にある大通りを渡るとすぐ見えてくるのが、大巧寺(だいぎょうじ)です。ご本尊の産女霊神(うぶめれいしん)は安産にご利益があるとされ「おんめさま」の愛称で親しまれています。

こじんまりとした境内ですが、春の梅、夏の蓮、秋の紫式部、冬の椿など、四季折々の花が彩を添えます。賑やかな小町通りや鶴岡八幡宮と比べ、駅チカとは思えないほど静かな雰囲気を味わうことができるのも推しポイントです。

日蓮宗の総本山・身延山久遠寺から日蓮上人の遺骨が分骨され「東身延」と呼ばれる本覚寺
撮影:鷲尾 太輔(本覚寺)

大巧寺のすぐ近くには、日蓮上人の遺骨が分骨されているという本覚寺があります。こちらも春の桜や夏の百日紅(サルスベリ)の花が美しい寺院です。

日蓮上人は度々この地を訪れ布教していたことから、鎌倉にはこの他にも、日蓮宗の寺院が多数存在します。

しかし日蓮上人は、時の権力者・北条時頼が信仰していた禅宗や当時主流だった浄土宗など他の宗派の教えを否定したため、様々な迫害を受け、その人生は苛烈なものだったようです。

静けさに包まれた大寺院・妙本寺

妙本寺の山門・二天門
撮影:鷲尾 太輔(妙本寺の山門・二天門)

本覚寺を過ぎて橋を渡ると、日蓮上人が開山した比企谷(ひきがやつ)妙本寺の総門に突き当たります。妙本寺は日蓮宗本山の大寺院でありながら比較的空いており、ゆったりとした空間が広がるのが私のお気に入りです。

参道を覆う新緑のモミジがトンネルのようになっており、秋は真紅に色づきます。季節の花木も見事で、春のカイドウ・梅雨のアジサイ・夏のノウゼンカズラが特に目を惹きます。時の経つのを忘れてしまいそうな静けさを味わってみてください。

妙本寺の参道を総門まで戻ったら、小さな路地を南へ向かいましょう。県道311号鎌倉葉山線に出たら左へ進み、しばらくは車道沿いを歩きます。名越バス停の手前で住宅地へ入り路地を進むと、次なる目的地である妙法寺です。

苔寺の別名にふさわしい緑の階段が見事な妙法寺

妙法寺本堂
撮影:鷲尾 太輔(妙法寺本堂)

妙法寺の魅力は、なんといっても自然との調和。妙本寺と比べると小規模ながら、背後の山に溶け込むような境内と庭園は一度訪れる価値ありです。

妙法寺・苔の階段
撮影:鷲尾 太輔(妙法寺・苔の階段)

妙法寺は別名・苔寺ともいわれており、境内奥の苔の階段は、まさに史跡と自然が美しく調和したものといえるでしょう。苔の保護のために通行はできませんが、見上げるだけでも息を呑むフォトジェニックな光景です。

もうひとつの私のお気に入りは、妙法寺ならではのお参りの流れ。境内入口で拝観料を支払うと、貴重な香木・白檀(びゃくだん)を使った太いお線香を手渡されます。これを本堂前の香炉に立てて祈りを捧げることで、清らかな心で苔の階段などに向き合うことができますよ。

妙法寺を後にしてJR横須賀線の踏切を南へ渡ると、ようやく現れるのが次の目的地・名越切通しの入口です。ここから線路沿いに住宅街を進み、今度は踏切を北へ渡ると、名越切通し登山口です。しばらくそのまま進むと土道へと変わり、ここから先は散策路となります。

切り開かれた断崖が印象的な名越切通し

名越第3切通し
撮影:鷲尾 太輔(名越第3切通し)

照葉樹林の中に続く坂道を登り詰めて苔むした巨岩を越えた先にあるのが、名越第3切通しです。ここまでのシダをはじめとした低草木に囲まれた散策路の景色が一変、両側が岩肌むき出しの断崖となっているのが特徴的な景観です。

この断崖は鎌倉時代に人の手によって削り取られたもの。鎌倉の三方を囲む山々には、このように人工的に稜線を切り開いた道がいくつも設けられ、切通しと呼ばれました。この切通しが、鎌倉と外部を結ぶ数少ない交易路となり、時には外敵の侵入を防ぐ防衛拠点とされたのです。

この切り通しがちょうど分岐になっており、そのまま直進すれば名越第2切通し・名越第1切通しにも訪れることができますよ。

名越第2切通し
撮影:鷲尾 太輔(名越第2切通し)

名越第2切通しは、切り開かれた断崖が第1切通しより深くなり、表面も苔むしていてまた違った風情を感じることができます。

まんだら堂やぐら群
撮影:鷲尾 太輔(まんだら堂やぐら群)

近くには、まんだら堂やぐら群があります。やぐらとは斜面の岩肌をくり抜いて遺骨を安置して供養のための五輪塔などを立てた、いわゆる中世のお墓です。

やぐらは鎌倉市内でも随所で見ることができますが、ここは150以上のやぐらが集まっている珍しい場所。普段はフェンスに囲まれて立ち入ることはできませんが、毎年春と秋に公開されて間近で見学することができます。

名越第1切通し
撮影:鷲尾 太輔(名越第1切通し)

名越第2切通しからさらに下ると、名越第1切通しです。深く絶妙にラウンドした断崖が両側から迫る絶景は、まるで射し込む太陽光が美しいアメリカのアンテロープキャニオンのよう。しかもこちらは人間の力で削られた場所というから驚きです。

鎌倉周辺には7つの切通しが現存していますが、この不思議な景観が見られるのは名越第1切通しだけです。

800m続く大迫力の断崖「お猿畠の大切岸」

お猿畠の大切岸
撮影:鷲尾 太輔(お猿畠の大切岸)

登り返して先ほどの名越切通し分岐から北東方面に進むと、逗子市街や三浦半島の海岸線を望める大切岸展望広場に到着です。さらにすぐ先には「お猿畠の大切岸」といわれる人工的に削られた断崖があらわれ、景色が一変。

断崖の高さは5〜10mほどでその長さはなんと約800m。近年の研究では大規模な採石場だったという説が有力で、迫力ある景色が続きます。浄土宗の信徒に住まいを焼き討ちされた日蓮上人が、この付近で3匹の白猿に助けられて避難したという伝承もあるのだとか。

猿畑山からの大切岸
撮影:鷲尾 太輔(猿畑山からの大切岸)

なお展望広場から東に見える高台は、法性寺の奥の院に隣接した猿畠山。山頂からは逗子方面だけでなく、振り返れば大切岸の全容を一望。大切岸展望広場の手前にある法性寺方面への分岐から往復するのもおすすめです。

大切岸が終わると、鎌倉市子ども自然ふれあいの森の敷地内へと入っていきます。公園のように整備された散策路で、トイレも設置されており休憩にはぴったりです。

富士山や湘南海岸までを一望できる衣張山

浅間山からの眺望
撮影:鷲尾 太輔(浅間山からの眺望)

鎌倉市子ども自然ふれあいの森を抜けると、いよいよ本格的な登山道が始まります。樹林帯の中の稜線はさほど急ではありませんが道幅が狭く左右の斜面へ滑落する危険性もあるので、気を引き締めて登りましょう。

最初に樹林が開ける場所が、浅間山(120m)の山頂です。小さな石仏と石塔が安置されており、振り返ると歩いてきた道のりと相模湾を眺望することができます。

衣張山からの湘南海岸と富士山
撮影:鷲尾 太輔(衣張山からの湘南海岸と富士山)

浅間山から稜線を5分ほど進むと、こちらも小さな石仏と2つの石塔が安置された衣張山(121m)です。山頂はちょっとした広場になっており、特に東側の樹林が開けているため、眼下の鎌倉市街や湘南海岸から富士山まで眺望することができます。

路傍の石仏
撮影:鷲尾 太輔(路傍の石仏)

衣張山から先は笹や樹林に覆われて展望はなく、部分的に階段状になっています。地面が濡れている時はスリップに注意しながら下りましょう。路傍には、こんな可愛らしい石仏も安置されています。

下りきったら、あとは平坦な雑木林を進みます。季節によってはヤブで足元が見えにくい場合もありますが、樹間からは住宅街が見えるので道迷いの心配はありません。住宅街へ出たら、あとは舗装路をまっすぐ進み、ゴールの杉本観音バス停に到着。ここから鎌倉駅へ戻りましょう。

寄り道にいかが?報国寺の竹林

報国寺の竹林
撮影:鷲尾 太輔(報国寺の竹林)

時間に余裕があれば、ぜひ報国寺にも寄り道してみましょう。衣張山から下山して「田楽辻子のみち」という標識のある十字路を右に曲がり300mほど進むと山門があります。

この寺院は、ミシュラン・グリーンガイドで三ツ星を獲得したこともある広大な竹林や、苔と砂を巧みに利用した枯山水の庭園が魅力。茶席では青々とした竹林を見ながら、抹茶で一服することもできます。

史跡と自然を組み合わせた山歩きを、様々にカスタマイズできる鎌倉

天園ハイキングコース
撮影:鷲尾 太輔(天園ハイキングコース)

昨今はオーバーツーリズムで常に混雑している印象を抱きがちな鎌倉ですが、著名な観光スポットから少し離れるだけで、今回紹介したような自然と史跡の調和を楽しめるスポットを訪れることができます。

この他にも、建長寺から瑞泉寺をつなぐ天園ハイキングコース(通称・鎌倉アルプス)など、鎌倉ならではの史跡とハイキングコースの組合せは無限大です。

地図やガイドブックを見ながら自分だけのお気に入りのコースをカスタマイズして、ぜひ鎌倉の自然と史跡を楽しみながら歩いてみてください。

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