アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
史跡好きな少年時代が登山ガイド活動へリンク

こんにちは、山岳ライターの鷲尾太輔です。登山ガイドとしても活動している私が最初に山にのめり込んだのは10半ばごろ。山に魅せられ、学生山岳部やそのOBとして、何度も日本アルプスや関東甲信の山々を縦走していました。
その一方で、奈良の古墳・古道・霊山など悠久の歴史にも深く関心があり「自然の中に残る史跡」へも足繁く旅をしていたものです。

自然豊かな山も歴史ロマンも好きな当時の私にとって「山=ピークハントの対象」 「史跡=知的好奇心の対象」といった感じで、あくまで別物扱いでした。しかし登山ガイドとして本格的に活動していく過程で、これらの経験が融合して活かされることになります。
例えば、生まれ故郷に近い高尾山をはじめ、奥多摩、丹沢には、山岳信仰の対象として古くから登拝されてきた山があります。
「ただ登るだけならガイドは不要」と思われがちなこうした低山も、山中に残る史跡や信仰の足跡などのバックグラウンドを解説しながら案内することで「学びや発見がある」と多くの方から好評をいただいています。
歴史と自然の調和にロマンを求めて|鎌倉・逗子の史跡と寺社めぐり

そんな私が今回おすすめする「お手軽なのに最高!」なコースは、武家の古都・鎌倉周辺のハイキングです。
三方を山に囲まれた天然の要塞ともいえる鎌倉周辺には、山を切り開いて人や馬が通行できるようにした道がいくつもあります。
今回は自然との調和が特に美しい「名越切通し」と「お猿畠の大切岸」という史跡を中心に、豊かな自然や四季を感じ取ることができる寺院と、鎌倉の街や湘南海岸、富士山を望む絶景の山も結んだ、とっておきのコースを紹介します。
コースの魅力ポイントを徹底解説!

コース概要
鎌倉駅(5分)→大巧寺(10分)→妙本寺(15分)→妙法寺(5分)→名越切通入口(10分)→名越切通登山口(10分)→名越切通分岐(5分)→名越第1切通(5分)→名越切通分岐(10分)→お猿畠の大切岸(30分)→浅間山(5分)→衣張山(20分)→杉本観音バス停

それでは、鎌倉・逗子の寺社と史跡を巡るとっておきコースをご案内します。スタートはJR鎌倉駅東口です。
四季折々の花が美しい大巧寺

東口ロータリーの先にある大通りを渡るとすぐ見えてくるのが、大巧寺(だいぎょうじ)です。ご本尊の産女霊神(うぶめれいしん)は安産にご利益があるとされ「おんめさま」の愛称で親しまれています。
こじんまりとした境内ですが、春の梅、夏の蓮、秋の紫式部、冬の椿など、四季折々の花が彩を添えます。賑やかな小町通りや鶴岡八幡宮と比べ、駅チカとは思えないほど静かな雰囲気を味わうことができるのも推しポイントです。

大巧寺のすぐ近くには、日蓮上人の遺骨が分骨されているという本覚寺があります。こちらも春の桜や夏の百日紅(サルスベリ)の花が美しい寺院です。
日蓮上人は度々この地を訪れ布教していたことから、鎌倉にはこの他にも、日蓮宗の寺院が多数存在します。
しかし日蓮上人は、時の権力者・北条時頼が信仰していた禅宗や当時主流だった浄土宗など他の宗派の教えを否定したため、様々な迫害を受け、その人生は苛烈なものだったようです。
静けさに包まれた大寺院・妙本寺

本覚寺を過ぎて橋を渡ると、日蓮上人が開山した比企谷(ひきがやつ)妙本寺の総門に突き当たります。妙本寺は日蓮宗本山の大寺院でありながら比較的空いており、ゆったりとした空間が広がるのが私のお気に入りです。
参道を覆う新緑のモミジがトンネルのようになっており、秋は真紅に色づきます。季節の花木も見事で、春のカイドウ・梅雨のアジサイ・夏のノウゼンカズラが特に目を惹きます。時の経つのを忘れてしまいそうな静けさを味わってみてください。
妙本寺の参道を総門まで戻ったら、小さな路地を南へ向かいましょう。県道311号鎌倉葉山線に出たら左へ進み、しばらくは車道沿いを歩きます。名越バス停の手前で住宅地へ入り路地を進むと、次なる目的地である妙法寺です。
苔寺の別名にふさわしい緑の階段が見事な妙法寺

妙法寺の魅力は、なんといっても自然との調和。妙本寺と比べると小規模ながら、背後の山に溶け込むような境内と庭園は一度訪れる価値ありです。

妙法寺は別名・苔寺ともいわれており、境内奥の苔の階段は、まさに史跡と自然が美しく調和したものといえるでしょう。苔の保護のために通行はできませんが、見上げるだけでも息を呑むフォトジェニックな光景です。
もうひとつの私のお気に入りは、妙法寺ならではのお参りの流れ。境内入口で拝観料を支払うと、貴重な香木・白檀(びゃくだん)を使った太いお線香を手渡されます。これを本堂前の香炉に立てて祈りを捧げることで、清らかな心で苔の階段などに向き合うことができますよ。
妙法寺を後にしてJR横須賀線の踏切を南へ渡ると、ようやく現れるのが次の目的地・名越切通しの入口です。ここから線路沿いに住宅街を進み、今度は踏切を北へ渡ると、名越切通し登山口です。しばらくそのまま進むと土道へと変わり、ここから先は散策路となります。
