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パーゴワークス最新作「ZENN DOME SHELTER」は、“ダブルウォール級の使い勝手”を装備した軽量シングルウォールテントでした!(2ページ目)

シングルウォールテントの課題

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

さて、冒頭で書いた通り、シングルウォールの山岳テントの多くには、前室が装備されていません。しかし15年程前から少しずつ前室付きシングルウォールテントがつくられるようになってきていて、2025年はパーゴワークスに加えて、プロモンテやシックスムーンデザインズ、ゼログラムからも前室付きシングルウォールテントが登場しました。

これは山岳テントの定番ブランドの多くがUL(超軽量)モデルを出していることでもわかるように、耐久性や強度よりも、軽さを優先させる登山者が増えている傾向が影響しているのでしょう。

そのULモデルのなかで、シングルウォールテントは、使用者が身体から発する水分、さらに呼気によって、テント内側に小さな水滴が発生する「結露」の抑制が課題です。

前室が装備される最大のメリットは、結露軽減

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

特に、これまでの前室なしのシングルウォールテントは、開口部を締めてしまうとベンチレーションを備えていても換気が追い付かず、条件が悪いと漏水かと間違えるくらいに結露した水分が床に水たまりをつくってしまうことがあります。

一方で前室を装備したシングルウォールテントだと、内部空間が広がることと、本体の開口部にメッシュパネルを装着することで換気能力がアップ。気温が低く結露が発生しやすい季節でも、天気がよければ、前室の開口部下を少し開けて、より換気を促せば、結露をかなり軽減できるのです。

その代わりに冷気が入ってテント内が寒くなるので、温かい寝袋で対策する必要があります。

「ゼン ドーム シェルター」は、ダブルウォール的使い勝手のよさ

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

私はこれまでニーモやシートゥサミットの前室付きシングルウォールテントを長く使ってきていますが、結露が発生してもヒドいというレベルを経験していません。シートゥサミットにシングルウォールテントは、防水透湿素材を採用して結露を軽減していることも考えられますが、一定の湿度や気温差の中では、防水透湿素材でも結露はします。

軽いけれど、狭くて結露する……ということが弱点だったシングルウォールテント。それが前室を装備して換気性能がよくなることで、ほとんどのダブルウォールテントよりも軽く、荷物を前室に置けて使い勝手がよく、結露は軽減されます。

ゼン ドーム シェルターも、その効果を狙って、前室を装備したのではないかと推測します。

ただし、今回のテストでは、気温も高く、昼寝程度しか寝ていないので、ゼン ドーム シェルターにどれくらい結露が発生するかは体験できていません。
しかし開口部の大きなメッシュパネルに加えて、上画像の通り、天井部にはベンチレーションも装備。雨中、高い湿度、気温差等、結露が発生しやすい、つまり悪天での使用でなければ、気にならないレベルの結露で済むと予想します。

慣れれば3分で設営・撤収できるのが、装備したくなる最大の理由

ゼン ドーム シェルターを使ってみて、もっとも「いいな!」と感じたのは、設営撤収を素早く行なえることです。

  • ゼン ドーム シェルター

説明書も読まず、収納袋から取り出して、そのまま設営に要した時間は約5分でした。そして撤収は3分!慣れて、ペグダウンしやすい場所でなら、設営も3分でできるようになるでしょう。

素早い設営撤収ができるということは、風に吹かれたり、雨に降られたりの悪天のなかでも、ヒドイめに遭いにくいので、安全性も高まります。

設営撤収が素早く行える理由は、フライを掛ける必要のないシングルウォールテントだからという他に、3つあります。

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

ひとつは、2本のポールをクロスさせてセットするのですが、そのポール中央がハブ仕様になっていて、簡単にセットできるからです。

ふたつめは、吊り下げ式なので、テント本体に装備されたフックを設営時はポールに掛けて、撤収時は外すだけで済みます。袋状のスリーブ式だと設営時に引っ掛かったり、最悪は破いてしまったり、撤収時にポールが連結部から外れたり折れたりといったトラブルがありますが、吊り下げ式はそうした煩わしさがありません。

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

3つめは、テントのコーナーにポール端をセットする方法が、フックに掛けるだけのシンプルな仕様だということ。さらにポール端は黄色のマーキングが施され、フック部分にリフレクターコードを装備しているので、朝夕の薄暗い時間帯の設営となっても視認性がよく、迷うことがありません。

フツーに見えるけれども、シングルウォールテントの選択が「らしさ」

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

山岳テント選びのポイントは、まず軽く、でも狭すぎず、小さく収納でき、風に強く、設営撤収がラク、さらにお手頃価格ならベスト!でしょう。

自立型のダブルウォールテントでも重量1キロを下回り、上記したような特長を装備した山岳テントが増えてきています。そんな中で、パーゴワークスが選んだ「日本の山の最適解」のテントは、重量895gの前室付きシングルウォールテントでした。

装備されている機能や仕様は、ダブルウォールテントあればフツーですが、それを自立式前室付きシングルウォールテントで装備していることが、個性的でパーゴワークスらしさといえます。

同時発売モデルには、非自立型シングルウォールシェルターもあります!

パーゴワークス ゼン 2ポール シェルター
提供:パーゴワークス

実は、レビューしたゼン ドーム シェルターと同時発売されたシングルウォールテントがあります。「ZENN 2 POLE SHELTER(¥45,100)」といって、ポールが装備されておらず、2本のトレッキングポールで設営する非自立型です。その最小重量は410gと超々軽量です。

この手のシェルターは、2本のトレッキングポールを室内にセットするタイプが多いのですが、コレは外側からセットするので、素早い設営が可能。また軽さを装備しながらも、ゼン ドーム シェルター同様に「安心して眠れる」耐風性と居住性も併せ持っているモデルです。

「ゼン 2ポールシェルター」はスルーハイクに、「ゼン ドーム シェルター」は縦走に

パーゴワークス ゼンドームシェルター

この2つのテント、いやパーゴワークスの考えで表現すれば「シェルター」の違いを考えて思い浮かんだ使用シーンがあります。

ゼン 2ポールシェルターは、日本海から太平洋までアルプスの山々を越えて約415キロを踏破する「トランスジャパンアルプスレース」。過酷さゆえにギリギリまでの軽量化を図りつつ、疲労困憊のなかでもストレスなく設営撤収でき、短時間でもぐっすりと眠ることができる幕。私たちフツーのハイカーなら、いつもより長い行程となる、例えば信越トレイルのスルーハイクに挑戦する際に携行するとよさそうです。テント場も樹林帯なので、非自立型に慣れていなくても安心です。

ゼン ドーム シェルターは、自立型のドームテントなので、アルプス縦走で使いたいもの。天気がよければメッシュの開口部を開けて景色を眺めながら、夕飯や読書を楽しみたくなります。だから、静かな山をじっくり味わう時間を大切したくなる幕。アルプスなら南が似合いそう。北海道や東北の山をのんびりと歩くのもよさそうです。そんな想像をするだけでワクワクしてきます。

“美しさ”という機能

パーゴワークス ゼンドームシェルター
撮影:ポンチョ

ゼン ドーム シェルターは20Dの薄いナイロン素材を使用。それくらいの薄い生地になると、テントによっては張りがイマイチなことがあるんです。でもゼン ドーム シェルターは、しっかり美しく張れます。ピンと張っているので風に吹かれてもうるさくありません。

それに前室開口部に配された滑りのよい止水ジッパーも、フラップのない軽さと美しさを演出しています。その前室が通常よりも約40cmも広く突き出たフォルムは、美しさとともに風を上手く逃がす機能を発揮してくれそうです。

本体クロスポールで、フツーの山岳テントに見えて、よくよく見て、知ると、まったくフツーじゃない。機能を追求したことで纏った美しさを感じられるのが、ゼン ドーム シェルターです。

ただし、極薄素材を使ったULテント。設営・撤収、そして取り扱いは慎重に。悪天時には山小屋や避難小屋利用を選択等、無理をしない、早めの判断を!

それでは皆さん、よい山を~~~!!!

▼山で使用したレビューはこちら

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